パチッ
…………変な・・・夢?いや、ありえない。あれは現実だ。
それはまあ、いい。どこのベットだ?とりあえず起きる・・・。
「ウガッ!?」
激痛が走った。もう痛い、何度かこの痛みを経験しているがやっぱり慣れないな。
俺が、この痛みを経験しているのは、うっかり密入国したときだ。俺が目を覚ますと、確実に体に痛みと浦島太郎のように、時間の跳躍が起きる。予測としては最初は、考え過ぎ。次にエネが使っていた。最終的には…………。
「俺がおかしいのか?」
そう、エネのほかに居たもう一人の
「ああ、おかしいな。」
横合いからいきなり声が聞こえた、その声に驚き一瞬だけ硬直した。だが、それだけでも激痛が走りリラックス状態にまで何とか落ち着かせ、その声の主に視線を送る。その声の主は。
「担任殿ですか・・・。」
「いつもそれで呼ぶな、貴様は。」
担任殿改め、織斑千冬教諭が居た。…………たぶん、分裂のことだろうな。
「ええ、まあ呼称としてはあってますし。問題ないでしょう。」
「そうなんだがな…………いささか、他人行儀過ぎではないか?」
ん?え。だって。
「実際に他人じゃないですか?それでも俺は精一杯にフレンドリーに接していたつもりですけど・・・。」
それ以外に何がある?一夏の情報源か、世間話程度しかしていない。それにしたって一夏の情報ぐらいしか取得していなかったし。
「舐めた態度がそれとか言うなよ。」
「分かりました。それで、何の御用件です?」
とりあえず、俺はとぼけた振りをした。何されるか分かったもんじゃない。って言うかあそこに一葉が居たら無言でメスを持つに違いない。
「とぼけるな、貴様あの分裂というか分身と言うか分裂と言うかあの所業はなんだ?」
「分裂?担任殿…………なに言っているんですか?」
微妙な顔の機微で人間は感情や心情、思考を覗き見るという。
「確かに俺は変な人間ですが…………現実的に考えてくださいよ。」
「……………ああ、すまなかった。」
結構あっさりと引くなぁ。まあ、現実味を帯びていないからな見間違いでしょう、で済むもの。
「それは横に置いといて、俺の体はどうなっているんですか?体中がすごく痛いんですけど…。」
「全身の筋肉痛だ、全治三週間。一週間で動けるようになる。」
「わざわざありがとうございます。」
それだけを伝えに来たのだろう。それでなくとも先の分身のことを聞きに来たのだろう。
そしてなぜか、担任殿が黙った。
「…………なあ、相澤。記憶が飛んだりしたことはあるか?」
「なぜ・・・それを?」
「それは、小学校3年のとき以降か?」
「ええ。ばれては仕方がありませんね。頭がおかしい人と…………まあ、思われてるでしょうけど。それでも、隠しておきたかったんですよ。」
とくに思っていない。口からでまかせだ。
「…………なぁ。」
「なんですか?」
「例えば、お前が。どうしようもないくらいの過ちを犯したときお前はどうする?」
「そうですね…………。」
何か変なことを言い始めた。過ちの数なんてどこかの仮面ライダーに問われたら、『今更数え切れるか!』とマジレスするところだが・・・。
「俺はその過ちと戦うと思います。」
まあ、勝てるか分からないし三十六計を使わせてもらう必要も出てくる。特に過ちを犯したこともないしな。
「それはそうと、一つ質問していいですか?」
まあ、聞かれたし。聞き返してもいいだろう
「先生。俺が…………いや、俺が俺以外の一人称になったり。絶対に俺がしえないようなことを。俺がしたようなことがありますか?」
恐らく、俺がうっかり密入国というか、記憶が飛ぶ。つまり仮説もう一人の俺の中の人格が入れ替わっているときに何かをやらかしている気がするのだ。俺はそれを知りたい。むしろ知らなきゃならないという衝動に駆られている。
「……………ああ。あった。」
「それを記録しているような情報媒体に心当たりは在りますか!?・・・痛い。」
やっと出来たつながりに、思わず体を起き上がらせようとしたが、やはり激痛が走った。
「無理をするな。」
「ええ、なれないことはするものじゃありませんね…………。」
冷たいような声が耳朶を叩く。それに俺は癒されたように落ち着き、首を右に向けて窓の外を見る。顔に浴びるように夕日が差し込み少し、顔を歪ませる。
「先の問いはどうあがいても、貴様が確認することは出来ない。としか答えられない。」
「…………そうでしょうね。」
国際機密のオンパレード学園って二つ名を付けられてもおかしくはない場所だそれなりにセキュリティは上がっているのだろう。…………確か、ここは日本が管理運営を任されているんだよな・・・その内ケチってセキュリティを下げることも考えられなくもない。世界最強居るから大丈夫だろー的な感じで。無いか。無いな。
「相澤。教師は・・・辛いな。」
「担任殿が選んだ道でしょう?…………ああ、それじゃあ、何で教師になったんですか?」
まあ、気になるし。と俺は話を続けさせるべく質問を挟んだ。
「そうだな…………まあ、私達姉弟には親がいない。と言うより、失踪した。」
「そこらへんは、聞いています。と言うより大体予測はついています。」
いつの日か一夏がそんなこと言ってたな。
「一夏が喋ったのか?」
「ほのめかす様な事は多少に。」
もはや自虐ネタとして機能しているけどな。俺と一夏だけの場合だが。
「そして、私は荒れた。一夏に手を挙げまいと抑えてはいたが、苛立ちを一夏にぶつけてしまったりしたこともあったがそれなりに、苦労しながら暮らしていた。」
「良かったですね。」
「……………なにがだ?」
「荒れることが出来て、ということですよ。人は本当にいやなことがあるとあれるって事も出来なくなりますからね。」
実体験だし…………。
「そうか…………続きを話す。ISの登場で私は世界中にその名を知られることになった。」
「IS世界大会ですか・・・。」
「ああ、そこで優勝した・・・のは分かっているな?」
「はい、結構な報道がされていました。二回目の優勝を逃したことも。」
あの時はドラエモ○がつぶれる位報道されていたからな、記憶に新しい。
「あれは、「一夏が何者かによって誘拐されたから。ですよね?」・・・ああ。その通りだ。」
「ええ、一夏に聞きました。」
「そして、まあ、私は恥ずかしながら私は頭の方が弱くてな。安定した仕事が欲しかったんだ、そしたらまあ、教師だろうと。」
「なるほど。そしたら二回ぐらい優勝すれば日本国にIS学園の教師にもしくは教師免許をくれそうになったって所ですか?」
「ああ、そしたらあの騒ぎだ。すぐに行ったね殲滅しかけたね。」
「あの、弟の事になると妙に人間臭くなるの止めてもらっていいですか?」
織斑千冬の特徴その一だ。それに、守ろうとした手段の途中で守る対象が無くなったら本末転倒だしな。
「そんなに?」
「はい、獣がどぎつい体臭を出すのと同じように、隠そうともしないくらいです。そして貴方が教師になった理由は要約すれば弟のため…………ですか?」
「ああ。」
「そうですか。」
大体どころか完全にそれとしか認識できなかったわ。まあ、それについて得に思うことは無い小学校に持っていた嫉妬の念の自責も慣れたし。
「そうだ、気になったことがあるんですけど…………。」
「ん?なんだ?」
一つ、俺の知識を裏付けることをしなければならない。その説明は・・・。
「金銭面…………厳しかったんじゃないですか?」
「いや、実際には親戚筋がお金を振り込んでいたらしくてな、そこまでは苦労していないが私の癪に合わないからな、ちゃんと全額使わずに取ってある。」
「なにそれすごい。」
と言ったものだった。
「まあ、そこまで・・・と言うか親戚を小さいころ親に合わせて貰ったんだが、そこまで人相のよろしい人じゃなかったんだ・・・。」
「…………それは・・・心配になりますね。」
いかん、この人・・・。
「とまあ、このくらいだ。ずいぶんと話し込んでしまったな。用事は済んだ私は帰るとしよう。」
良かった・・・やっと帰る・・・。
「おい、相澤。貴様。良かった・・・やっと帰る・・・。とか思ってないか?」
「そんなことは無いです。」
「そうか・・・。それじゃあ、退席させてもらう。」
と言って担任殿は恐らく保健室であろうベットのそばから離れスライドドアの音を鳴らし帰って行った。
「どこからコピー&ペーストしてきやがったー。」
はぁ。疲れた…………。
◆ ◆ ◆
声が同じ…………だが行動、言動がまるっきり違う。
だれだ?・・・。
本当に。あの。奇人変人変態奇態のあのコウが?・・・普通に喋る?ありえない。
いや、私が見ていないだけなのかもしれない。それより、早く寝よう体と心を休めて。
あの衝撃的な出来事を忘れてしまおう。