「あ゛あ゛ぁぁぁ!?」
ブチッ
私は攻撃を喰らい、吹っ飛ばされながら叩き込まれた情報を完全に理解した瞬間、頭の中で血管がニ、三本千切れたような音が聞こえた。それは、康一と私が入れ替わった直後に生じる情熱と似たようなものと一緒に、私の頭から肢体にじんわりと染み渡っていき、次第に熱を帯びていく。体の全ての放熱機関が全力稼動しているような熱で私は完全に怒っていることを理解した。
なぜ?だれが?ラウちゃんを邪魔しているの?ラウちゃんの意思を無視してまで変えるべきものなの?分からない、人の意思を潰してまで何で君は存在しているの?いや君と呼ぶのもおこがましい。鉄屑ごときがラウちゃんの意思を無視しているんじゃない、従えよ、それが鉄屑の仕事だろうが。誰だ、こんな鉄屑を作ったのは、身から錆が出ているじゃないか。ちゃんと押し込めよその体内に深く深く捻じ込んでやる。ああ、溶けた鉄でラウちゃんと同じ状態にしてやるって言うのも…………いや、それはラウちゃんに悪いなぁ、そこまでターミ○ーター好きじゃないし溶解した鉄に埋め込んであげよう。それじゃあまず……………。
「貴様をぶち殺す!!」
私は格ゲーなどしか見られないであろう空中受身をして着地した。
◆ ◆ ◆
「……………。」
私は、情報を奪った。全くふざけるんじゃない。なんだ、こういうことだったのか、私達をよっぽどなめていると見える。ISが人を乗っ取る?笑止。ふざけるな。私達をそんな使い方している大馬鹿者は一体誰だ。いや、それより今はこの鉄の塊をスクラップにしてやるのが一番だろ。この怒りを、精一杯ぶつけてやる。待ってろどんなに隠れてでも確実に息の根を止めてやる!!
「さあ、ISの底力。見せてやろうじゃないか!!」
私はある世界へ向かった。そう眠れる獅子、いや狐を起こすために。
◆ ◆ ◆
俺は、これまでの俺とは違う俺の物語を見ていた。
「…………あぁ、なんだやっぱりこれが俺か。」
それでも俺と変わらず、死に物狂いに何かをなそうとした所で、それを横から掠め取られる、ただそれだけの人生だった。だから何もやらないし、何も求めない。だけどこの画面の奥の俺は違う。それでもその俺は諦めなかった。
「それより、その使い方はねえよなぁ。」
なんだ、そのISの使い方は……………?。
「うん、よく言った。」
エネがそこに居た。
いきなりだが、問い一。この世界はなんだ?
エネの
これならば、今の状況を完全に完璧に説明できる。
この世界で死ななかったのは?『死を感じたことがないから。』
この世界で人が居なかったのは?『人じゃないから、もしくは処理能力の削減。』
この世界に電気がないのは?『完全に整地されている世界でエネが支配しているから。』
全て、繋がった。そして、エネはこういうだろう。
「「じゃあ、一緒にぶっ殺そう。」」
あ、まだ、動機が分からなかったわ。
だが、そんなものぶっ殺すのには必要ない、怒りを思考に変えて相手を奈落の底まで落としてやる!!
◆ ◆ ◆
私は着地して怒りの力をそのままに足に力を込めて走り出そうとしたその瞬間。情報酔いが訪れる。それはエネがやってくる証、まず、エネの話を聞いてからでも遅くはないと動きを止める。
『康一を連れてきた!!』
……………はい?いやいやいやいやいやいやいやいやいやぁ!?なにやっちゃってるの?
『一緒にぶっ殺そうぜ!』
スポコン漫画とでも間違えそうになるくらい爽やかに殺害予告しているんじゃない!!
『いや、康一君も了承したし。』
………………はぁ、しょうがない。
『うんうん、素直な子は好きですよぉ』
いつか殺す。
『屏風のトラを捕まえるにはまず屏風から出さないといけない。』
比喩だ。
『殺気がダダ漏れなんですけど・・・。まあ良いやそれじゃあ君の体、使わせてもらうよ』
なっ!?・・・あれをやっちゃいますか!?
『敬語?ああ、ISがISであるが故の本当の力を見せ付けてやる!』
はぁ、ここで常識人ポジに納まるのはちょっとどころじゃなくおかしい様な気がするけど。仕方ない、なら早速行こう!!
『「「行くぜェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!見てやがれクソヤロウどもが!!」」』
私は、俺はいや分身した。
「おお、俺がもう二人。」
「中身違うけどね。」
「ああ、ついに、ついに・・・もう、これ問題あるだろう。」
三人の同じ顔が一堂に会した。
「どうしたんだ?俺二号よ。」
「君、同じ顔が目の前にあって気持ち悪くないのかい!?」
「そりゃあ、エネが俺を複製して電脳空間にぶち込むくらいだからな俺がもう一人存在してもおかしくはない。」
「「なんかもう色々麻痺している!?」」
「エネ、お前が言うことじゃないだろう?あ、それはそうと、俺ニ号よお前とはどこかで会ったような気がするんだが…………。」
「べ、別に気のせいじゃない?」
「あ、やべぇ本当に気持ち悪いわ。」
「そんな簪ちゃんの発言から伏線もってこなくていいよ!!伏線かどうかすら怪しいけどね!」
「あ、シュールストレミングの匂いがする。俺ニ号よ使ったか?」
「伏線だよ!前々回のネタ晴らし今やるなよ!!」
「説明しよう!シュールストレミングとは世界一臭い食べ物のことである!」
「エネ、今週のビック○ドッキリメカ見たく言うんじゃない」
「突っ込みどころはそこなの?」
「今週のビックリドッキリ康一は!」
「自分のことをネタにするなって言うか康一君はどこのメカニックドックになってしまわれたのですかな!?」
「おお、さすが俺。口調がおぼつかない。」
「言ってやるな康一、それはさくsyゲフンゲフン…………やさんって可愛いよね。」
「マジ天使!!」
「強引な路線変更!?おい、エネちゃんもうそろそろ行こうよ!むしろもう怒りとか彼方へ行ったんだけど…………。」
「憎しみは何も生みません。」
「だったら康一君
「ええ?じゃあ行く?」
「イクイク~!。」
「二つ返事かよ!!畜生!!」
私は、いや、私たちは一斉に駆け出した。
「「「喰らえグダグダパワー!!」」」
「「戻ってきたと思ったら、何かやってきたぁ!?」」
その掛け声と共に、康一たちが三方向に飛び散りそして一箇所に攻撃を加え、その戦乙女の巨大な体がギャグ漫画のように吹っ飛び壁に叩きつけられる。
「ひゅうすげーな、っていうか、これかなり疲れる。」
「まあ、電脳空間の逆と考えていいだろう。」
「本当にこればかりは止めてくれよ・・・」
三人が三人とも全く別の感想を言った。だが。
「「「けどコイツをぶちのめすのに必要はないな。」」」
口角を吊り上げ凶悪そうに笑い、そう宣言する意思に変わりはなかった。