戦いが、始まる。
それは、学年別タッグトーナメントで、準々決勝の舞台。そして、因縁が最高潮に高まる時である。
その準々決勝の、舞台に立っているのは。ラウラ・ボーデヴィッヒと香。そして、織斑一夏とシャルル・デュノアだ。
以前のように香とラウラは。
「コウ、私は織斑とやる。」
香は首肯し、視線をシャルル・デュノアに向ける。
「久しぶり。」
「・・・?」
そして、そう一言だけ告げた。
その言葉を告げた相手先は、何がなんだか分からないというように首をかしげた。その言葉にコンビの片割れである一夏も同じ行動を取った。
「織斑一夏。」
ラウラが突然、一夏に向け話しかける。
「なんだ?」
「お前にとって、力とはなんだ?」
「……………仲間を、いや大切なものを守るための物だ。」
「そうか。」
その会話でラウラは口を閉ざした。周りの人間が一斉に固唾を飲み込むような空気の中。
「試合開始!!」
戦いが始まった。
◆ ◆ ◆
私は、開始の合図を聞いた途端に飛び出した。多少落ち込むぐらいの気持ちだと、驚くほど集中できるとどこかの執事さんが言っていたけど、その通りだ私は今、かなり集中している。
「ただ、ちょっと敵としては力不足なんじゃないかって思うけどね。」
「それは康一君。」
「私は香だよ。」
苛立ち紛れに私は顔に拳を打ちつける。ただの拳を。
「私だって怒りも溜まるんだ・・・それでもね。」
私は、逃げるシャルルを追ってまた顔に一発入れる。それは、ISの便利なバリヤーみたいなものによって阻まれる。
「何とか、やりくりして仕方ない、しょうがない、諦めようって。」
私は顔を殴る。シャルルはそれを見越して、サブマシンガンを呼び出し私の腹に当て、そして発射する。
「思ったんだ。」
それを避けながら私は顔を殴る。バカみたいに一つの行動しかしない。
「どうしようもないよ。」
私は顔を殴る。シャルルがナイフを振るう。
「仕事を放棄して。」
それを、手を切らないように受け止めて私は顔を殴る。
「こんなことしている私にはね!!」
私は顔を殴った。
「何を言っているんだい?」
「関係無い、ただの捻くれた独り言さ!」
私は、跳ねた。
さて、鬱憤晴らしもすんだことだし。潰しますか!!
「死なないようにISに祈っておきなさい!!」
「それはこっちのセリフだよ!」
私は背後に回るために加速する。足の力を最大限に使う。
「これなら!!」
シャルルはショットガンを瞬間的に呼び出し撃つ。派手にばら撒かれるようにして打ち出されたそれを丁寧に避けれるので避ける。ついでと途中にあった弾を掴み目の辺りに手首の力だけで投げる。
「本当に人間!?」
「一応ね!」
そんなやり取りしながら私は拳をシャルルはナイフとびっくり箱のように出てくる銃火器の類をそれぞれ振るう。
流石に銃火器は当たると痛いどころじゃないから、避けさせてもらってるけど。
避けることを最小限にとどめて。力と根性だけで押し返す。この場合はそうしなくちゃいけないと言うのがある。まあ、ドイツのときの守護対象が一葉ちゃんだったのから、今回はほぼ全域になるように力が落ち着いてきたってだけなんだけど・・・。あれ?これ初めて言った?
ワー危ないー(棒)
「って本当に危ないィィ!?なにそれ?」
私は下から上へ跳ね上げるような、足から出てきた隠し腕のようなものが持つビームサーベルの攻撃をバク転するように避ける。その隙を見逃さずシャルルはライフル銃をぶっ放す。そして、私はもう一つ重要なことを見逃さなかった。
『ねえねえねえねえねえねえ!あれ、僕の娘なんだよ!すげくね?すげくね?ヒャッホーカッコイイ!!さすが僕の娘だ!頑張れ!頑張れ!そんなどこの馬糞とも限らない青ジャージクソヤロウなんざぶっ飛ばしちまえ!!。やったやったやったやった!押してる押してる!頑張れ!シャルトットデュノアに栄光あれ!!』
来賓席で、小躍りしている金髪の青年にしか見えない三十台後半のオッサンが、とても嬉しそうに応援しているのを・・・。なんか、左手にスイッチみたいなのがあるし・・・。
「あの、クソ金髪やろうがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
「なにがあったの!?」
驚いているところにもかまわず、フルオートで縦横無尽にビームサーベルが動いている。受け止める訳にも行かずに避けて破壊しようとするのだがそれは二本目によって阻まれる。シャルロット自身の腕と機械腕、合計四つの腕から繰り出される攻撃に私は翻弄されていく。
『え?あれ?なんだね君たちは、え?退場?今いいところなんだよ!!今、内の娘が悪魔のような奴を倒すまるで・・・ちょ!?運ぶな運ぶな~!!』
私は叫んだ、心の底から叫んだその言葉は・・・あ、警護の人たちが連れて行った。
「諸悪の根源は断ち切られたようだ・・・。」
「もう君の発言が何がなんだか・・・。けど隙あり!」
「くそ、君それは本当にラファール・リバイブ(シャルロットの専用機)かい?ジ・○に改名しろ!」
「僕だって知らないよ!!つか隠しきれてない!?」
シャルルは左手の散弾銃を撃ちながら距離を詰めてナイフで牽制するそして、駆動脚からもう一つの機械腕が一夏の零落白夜を思い出させるように展開し私の鼻先を掠め。距離をとった。その隙を見逃さずシャルルは足元にめがけてグレネードランチャーを発射する。全く意味のわからないものだったが。
「!?煙幕代わりか!」
趣旨を理解した。一刻も早く抜け出そうと私は前に動く。
殺気を感じた。そこには盾から割って出た凶悪そうに尖ったパイルバンカーを構えたシャルルが居た。
パイルバンカーとは、まあ当たれば強い。もう少し詳しく言うと杭を炸薬によって打ち出すだけのISの装甲が万能性を可能にしたロマン武器だ。だが、その火薬で打ち出すだけのパイルバンカー、というにはあまりに精緻なつくりとなっているそれは、明らかに機構が違うということが分かる、つまりどこの既製品でもないことに私は気付くべきだったのだ。
見る限りせいぜい射程が3m程度しかないであろう打ち出したパイルバンカーが最大まで伸ばされるそれを肝を冷やしながらバックステップのように避けたのだが・・・。
さらに伸びた。その杭は多段方式にむしろアクエリ○ンの無限○的に伸びた。それは私を吹き飛ばすのには十二分のものだった。それでも額に当たれば痛いのでとりあえず両手でガードしながら吹っ飛ばされる。
「・・・これが、限界か。最後に一つ、なにやってんだよアルさん。」
そう限界だ、シャルルの立場および私の立場を脅かさないように私が劣勢に見せかけるのにだ、まあ私のほうは腕力はあるし・・・けど、シャルルは違う。今はエネのちゃんの力で居てでも出で来れるし大丈夫だろう。さて、これから私は傍観者になろうかな。
『香・・・。』
エネが私に、いきなり話しかけてきた、珍しいね君が私に自ら話しかけるって。
『勝手に読ませてもらってるからな。』
んで?
『嫌な予感がするんだ・・・そう、私の私達の琴線に触れるような・・・。』
ふぅん・・・どれが、だね。まあ、誰でも助けるよ。それが私だし。
『ありがとう。』
どういたしまして。それはそうと、ラウちゃん劣勢だね。しかし、あの金髪クソヤロウとんでもないもの披露したな、こんな衆人環視の中で娘に
気付かなかったけど、パイルバンカーだって第四世代のノウハウを使ってたし・・・。
『規格外だな。』
いや、第四世代の技術を取得した理由を君も知っているでしょ?ああ~、諸外国だって第三世代でしか開発が進んでないのに第四だよ?国際問題になるよ。本当に規格外なのは親バカ度だよ。
『確かに、そういえば。なんか、君の周りには似たような人間が居るな。』
はははッ、本当だよ・・・ヘンタイ英国紳士にチャイニーズホスト。現代忍者さんに百合百合黒兎さんたちに加えてブラック神風さんってねぇ。ああ、師匠・・・彼は柳韻さんに合えてないな。
『その名を聞くのも久しぶりだな。政府によって隠匿されているから仕方がないが』
うん、久しぶりに会いたいな・・・。
ドコン!!バコォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
突如として爆破音と爆風が私の頬を震わした。
爆音に導かれたように視線を音の発生源に向ける。そこには一夏、シャルルが居てそして異常を叫ぶように黒い戦乙女が存在感を発しながらそこに存在した。
その、状況は・・・。
『おい!!』
「分かってる!寝ている場合じゃない!!」
ラウラの消失を意味していた。
私は駆け出して、一夏とシャルルの二人と恐らくラウラであろう者の間に割って入り。その瞬間、袈裟に煌きが走る。その煌きを私は下から上へ跳ね上げるようにして蹴る。その煌きは刀の斬線。守護の対象は全部。つまり香は先ほどの戦いから疲労している二人を背に戦わなければならない。
『三秒だけ待ってくれ情報を持ってくる!!』
「分かった!」
私はアッパーカットのように剣戟を叩き受け流していく。回転運動によって背を逸らして避けて隙を見つけ最大の力で刀を拳で叩きつける。その攻撃に剣戟のカウンターを合わせるがさらに距離を詰めて回避し、膝と肩を足場に跳躍しその跳躍が最大に達した時PICで強引に方向転換させる。
すると、予定より早過ぎる情報が私の頭に叩き込まれた。エネが身柄説明のために康一に情報を叩き込むのと同じように『情報酔い』がやってくる。情報酔いに面食らいながら私は一撃を貰い吹っ飛ばされる。
そして・・・私はラウラの頭の中を一部だけ理解した。
◆ ◆ ◆
私は確か……………織斑一夏と戦って乱入してきた相方に・・・。私は負けたのか・・・。
「嫌だ、負けたくない、あの暗い日々には戻りたくない!!力をもう負けを感じることのない力を、強さ…………を。」
『強さが欲しいか?』
その言葉がいきなり何かに問われた。口に出していたことも意識していなかったのだが…………その問いは、今までに問われれば、答えを迷うことはない問いだった、だが、今では・・・。
「…………私は・・・強さが欲しくないといえばウソになる。」
そう答えていた。言葉が考えてもいないのに次々に想いが言葉になって私の口から滑り出てくる。
『そうか、なら力を』
「だが、強さとは、なんだ?」
『決まっている。死と破壊だ。』
「それを司った私は本当に強いのか?
模倣し与えられた強さを、ただ甘受しているだけではないのか?
それを奪われた程度で、私は地獄と言っているのか?
そんなのは強さじゃない。」
『そうやって洗脳されているだけじゃないのか?お前が思っていた強さのように、そう思わされているだけじゃないのか?』
「それだったら、きっと人の数だけ強さがある。
捻じ曲がったように見える強さだって。
真っ直ぐ見える強さだって。
優しい強さだって。
気高い強さだって。
それは、星の数ほどに。在るって、そう思える。」
『…………。』
「だから、私は私だ!どこの馬の骨とも知らない奴の強さなど受け取れるか!!」
全ての想いが言葉となった時これが私の気持ちだとそう気付いた。ああ、やってやるとも国?世界?知ったことか。私は強くなる!
『お前は…………。』
「なんだ?」
『きっと、強くなったんだろう。』
「・・・ああ、かも知れないな。ここの人間と触れて…………最初はISをファッションかなにかと勘違いしているのかと思ったがな。そうじゃない、それが強さでもあるんだろう。」
本当にそう思う、優しさや厳しさ愛しさが人間を強くさせるんだろう。
『ああ、そうだな。本当に強くなった。』
何かが、優しい声色で子供の成長を喜び祝福する母親のようにそういっていた。
『乗っ取るには不自由なくらいに。』
私に、黒い何かに纏わり付く。
「グッ・・・なんだ!?これは!!」
魔王を髣髴させるような恐ろしい声が私の脳内を揺らした。
『ああ、この時を待っていた。発展途上の肉体に磨耗した精神、そして成熟した技術。どれをとっても我が憑り代にふさわしい。』
「・・・お前は…………なんだ?」
『我か?そうだな、冥土の土産として教えてやろうお前達の言葉だと。
そこでラウラの記憶の供給は断たれた。