今日この日は、学年別タッグトーナメント。
出場する張本人たちには、話題には出ていたが・・・と言った具合の感覚だったが、足早にそのイベントはやってきた。
時の流れが速くなったような感覚にこれまでの思いをはせる者達。
今日の日の練習のために時間を費やした者達。
この大会に絡む陰謀に欲を見出した者達。
やる気を出しに出しまくり勝利をものにしようとする者達。
この大会における意義を全く別のそれを見出している者達。
愛でるためだけに出ている者。
ぶっちゃけどうでもいい者。
多種多様な人間が居るこのIS学園であるがその中でも色々な思想、思惑、幻想、理想を持つ人間が居るそんな人間達が交差するこの大会であるが、今回は一つ一つ取り上げていってみよう。
上から順に『時の流れが速くなったような感覚にこれまでの思いをはせる者達』を紹介しよう。
笠森綾香の場合。彼女のようなケースが一番多いのだろう。
彼女は喋っている。今回の大会のことであったり、それとは全く関係の無いことだったり、彼女の友達との会話に花を咲かせている。
「本当に織斑君と付き合えるのかな?」
「買い物ってオチじゃない?」
「ああ、それだ。」
など、模範的に女の子をやっている。それでも、それなりに緊張はしているらしく、徐々に口数が少なくなっていく、あくびを連発する、顔が変形する、どこか上の空になっている、などの症状を発症させている。じわりじわりと試合に近づいてくる恐怖感がそうさせる、なれない人にとっては堪えるのだ。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
そして、完全に沈黙する。気まずい空気がその場に流れ、誰一人として喋れない状況に追い込まれる。そして、重くなった口を開けたのは笠森。
「あ、コンビの人を待たせているから先に行くね・・・。」
「コンビって・・・。あの、声が澪ちゃんに似ている人?」
「篠ノ之博士の妹で覚えていないの!?」
「ない。」キリッ!
自身ありげに胸を張りそう言いのけるモブ一号(仮名)。
「もう一人の男に無理やりだっけ?」
もう一人のモブ二号がそういった。
「うん・・・なんか怖かったからって言うのもあるけど、なんか彼二重人格っぽいんだよね・・・。」
「ああ・・・うん分かる。」
「黒歴史の始まりか・・・・・・。あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。」
「あ、壊れた。」
そこでモブ一号の脳裏に浮かんだのは、忌まわしい記憶。
『それでも、守りたい世界があるんだー!!』
しぱぱぱぱぱぱぱ←花火
『トランザムライザー!!』
しぱぱぱぱぱぱぱ←花火
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!。」
モブ一号の忌まわしい記憶が開放され、笠森は逃げた。
「あ、ちょい笠森ィ!?・・・・・・・・・・・・・直すか。」
ボコッ!
「ハッ!?何をしていた?」
続けて、『今日の日の練習のために時間を費やした者達。』と『この大会に絡む陰謀に欲を見出した者達』のこと。
凰鈴音とセシリア・オルコットの場合。
彼女たちはISスーツに着替え、準備体操しているところだ。
その動作に緊張による動作の遅延などなく、目的のために一徹しているその姿は本人の容姿もあるが美しい。体を解しながら凰が口を開いた。
「なんか、なし崩し的にアンタとコンビ組むことになったけど・・・良かったの?」
それは。前回にも記述したとは思うし今更だが、この大会に絡む陰謀とは一夏とのデート権である。それの獲得にセシリアは目がくらみその決意を・・・。
「ええ、すべては「一夏とのデートのため?」・・・セリフを取らないでいただけます?」
「アンタは大げさ過ぎるのよ、しかも一夏だったら理由が無くても一声掛ければ買い物くらいは付き合ってくれるわよ。」
さらりと、肩をすくめながらそういった。
「はい!?ちょっと。何のためにここまで努力を・・・。」
「次試合よ。」
セシリアの抗議を華麗に受け流し試合場に向かっていく凰を抗議の主が追いかけた。
上からと言う性質上次は『やる気を出しに出しまくり勝利をものにしようとする者達。』のこと。
織斑一夏とシャルル・デュノアの場合。
「はぁ、康一が動き始めたと思ったら・・・激烈な勢いでトーナメントが改変されたって話だからなぁ。なにやったんだ?康一・・・。」
香と康一の違いが分からない一夏がそう言った。彼はそれでも康一と言う人格を信じていた。
「あはははは・・・僕にはよく分からないよ。」
力なくシャルルは笑い、それに一夏は苦笑した。
「それじゃ、シャルル。まだ試合まで時間があるし、コンビネーションの練習でもするか。・・・正直、足を引っ張っているし。専用機のみの性能だけでやっていけるのか?」
一夏が俯きがちにそういった。まだまだ、弱いと自分に言い聞かせるように。
「分からないけど・・・今までやってきたことを信じて勝ち進むしかない。」
「・・・そうだな。一丁やりますか!。」
「うん、その域だよ一夏。」
二人は、勝利に燃えていた。
『この大会における意義を全く別のそれを見出している者達。』のこと。
ラウラ・ボーデヴィッヒの場合。
彼女は、今ISスーツに着替え今の香からの完璧な篭城。つまり女子更衣室に居た。
彼女は、憂いを含んだ表情をトーナメント表に向けて、ため息を一つ。そして、彼女は彼女自身に本来のこの大会で自分の意義を見出そうとしている。本当の最初期の自身の存在意義は。
『軍での結果および優秀な成績を出すことによる自己形成』
から、ISの時代がやってきて、それが完全に破壊された。
『自己形成崩壊からの、襲い来る劣等感。』
と言う地獄を味わった。だが。
『恩師によってISの最強になる。』
恩人の存在によって、『軍での結果および優秀な成績を出すことによる自己形成』押さえ込まれていた自己満足の塊であるこれが、さらに肥大化してしまった。しかも、ISさえも自身の力として『飲み込んでしまった』のと合わせて恩師を崇拝している故にたちが悪い。そして・・・。
『自分の全てを封じ込め、尚且つ全てを肯定する人物』
この存在によって彼女の本質が大きく揺らぐ。皮肉にも彼女の人生は圧倒的な力によって振り回され、圧倒的な力によって存在し、圧倒的な力で幾分まともになれたのだ。その全てと言ってもいい力の存在が、今、薄れ始めている。
「・・・どうすればいいんだ・・・。」
いま、彼女の中でこの大会は。
自分を見出すために。
『ぶっちゃけどうでもいい者。』のこと。
上から順にと言ったな?あれはウソだ。
更識簪の場合。
「なんで・・・この学校に入っちゃったのかな・・・。いや、一年待って整備科に転属で社蓄化?・・・まあ、遊んでるのも。あ、私代表候補生だった。そしたら、もったいないなぁまあ、国のバックがあるし、親にも恩を返しきれていないし。」
虚ろな目でブツブツと呟いている。それでも、何かをなそうと頑張っている。
「康一君がなんかおかしくなっちゃったし。元から少しおかしかったけど・・・。」
ここで言おう。彼女は康一によって自己形成が破壊されている。
『愛でるためだけに出ている者』のこと。
香。
「・・・早く、一眼レフの準備をしなければッ!。撮る!撮ってやる!!行くぜエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!。あっよだれが・・・。」
変わらない。変われない。
番外として・・・。
「バカンスを満喫している者。」
◆ ◆ ◆
俺は、今思い出の地に旅行に来ている。俺はもう、この世界は何がなんだか分からないが受け入れたこんなに時間があるのに学園に引きこもっていてはどうしようもないからな。と言うわけでこの世界での自宅である。
「・・・食材が腐っていない?」
新たな発見も交えつつ、俺はコーヒーを啜る。
さて、どうするかな?
俺は、遊んだ、なぜか俺以外が居なくて全ての環境をそのままに人だけ抜いたような世界。まあ、上のことも交えても夢・・・だろうな。分かっている。
さてと、次はあの場所にでも・・・あり?動かねえ
なんだ?目の前に映像が流れ込んでくる・・・。
あれ?あれれれれれれ?
◆ ◆ ◆
こうして、人間が交差する舞台は開幕する。
力と思いでこの学園が、揺れる。