それは教室の真ん中でのこと。いつものように抱きつきながら話している香が、上擦ったような猫なで声で。
「ラウちゃん~。一緒にタッグ組もうよ~」
「断る。」
香は、いつもの通りに一蹴されていた。すでに、この教室の風景に同化してしまっており目新しさもなくなっていた。
「なんで?」
香が微塵も気持ちが汲めていないように純粋な目を向けながら、心底不思議そうに聞いてくる。だが、もうラウラの中には無視と言う選択肢はないそうで。
「・・・お前が居ると邪魔だからだ。」
そう答えていた。だが、言葉の隙を突くのは香も康一も同じようで。
「邪魔って、ラウちゃんの腕だったら誰でも邪魔になるじゃない?少なくともタッグ組んでくれそうな人にはさ。」
「すまんな、間違えてしまったお前限定で邪魔だからだ。」
「酷くない!?ピンポイント過ぎない!?」
悲痛と言うように叫び、抱きつきながら泣き驚くと言う器用な芸当を見せている。
「なんでそう、拒否するかな?」
と、いきなり落ち着いた香が独り言か質問したのか曖昧にそう言った。そして、独り言に切り替えたようにそのまま喋り続ける。
「えっと、確か決まらなかったらランダムで組み合わせが決まって・・・そうか!!!。」
ラウラの拘束を解いて、一瞬にして姿を消した。
「ちょ!?」
目を丸くしてあたりを見回した。
「居ない?」
そして・・・。時間がたち、正確には三日。どこかの”世界”では十年程”地獄”が経過したある日。
「いやぁ、残念だったねラウちゃん。」
香はラウラに殴られた。もう、どうしようもない位に殴られた。往復ビンタで殴られた。ライダーパンチで殴られた。・・・その原因は。
「お前なにをした!?」
学年別タッグトーナメントの対戦表のことタッグ表が・・・。例にも漏れず香の願い通りにラウラとタッグを組むことになった。早い話が話が出来過ぎていると言ったところだ。
「ちょっと、私達だけになるように尽力しただけだよ?」
「本当ならなまらすげくね!?ハッ!地方板見てたら言動が!?・・・何をした!?」
「言動については何にもしていません!まぁ・・・ぼっちに友達が出来たり新たな友情と離反したりしたなぁ。」
遠くを見るような、何かを懐かしむような目をしながらそういった。それでも何かを抱えているらしく小声でブツブツと何かを呟いている、だが、元は康一であるが故に顔に薄く笑顔を貼り付けながら・・・。
「まさか、力を使う事になるとは・・・。本当に面倒だな・・・。」
「おい、何だその不穏当な単語は?」
「いやいや、この作品の第一話から出てるし。」
「知ったことか!!この愚か者が!!」
ラウラも香のあしらい方を覚えてきたようで、面倒なことはスルーして行った。そんなこんなで一日。どこかの世界では五年のつまり今日。待ちに待った学年別タッグトーナメントが開始した。