この世界に来てから五年。俺は生きている。
この機にまず情報を整理しよう。
・・・いや、現実逃避をしよう。そうでもしないと俺の精神が耐えられない。
まず、ここに来たのはあの忌々しい俺を殺した夢のあとのこと、いや、これも夢だからどういう扱いをしていいのだか俺にも把握できては居ない。
その夢から覚めた時この世界に居た。
この世界のことを話そう。
この世界は、人が居ない。建物はある。食べ物に困らない。娯楽が無い。インターネットも、漫画や小説むしろ言語が失われている。ただ、道具や物が残されそれ以外の人の痕跡を消しているような感覚。まあ、探しても人が居ないのだから真実かどうか確かめる術は限りなくないが。ああ、これを忘れていたここでは「死なない。」
この世界を端的に現すとしたら命だけは保障されている世界。
その一言に限る。
最初は絞殺。天井から縄を吊り首をくくった。ずいぶんと苦しかった。
その次は刺殺。タンスにナイフを固定して倒した。痛みと血の感触が生暖かく気持ち悪い。
諦めずに溺死。風呂に入り睡眠薬を大量に飲んだ。やった後の自分の手数倍に膨れて気持ち悪い。
リストカットで失血死。貧血で頭がクラクラした。
頭にとても重いものを落として撲殺。頭に鈍痛が走り気持ち悪かったがそれまでだった。
そんなことを何回も繰り返し。それでも死は訪れなかった。
今では。
食べて寝る
それを繰り返している。この世界のサイクル。
もう、何年も繰り返しているこの空虚な時間。
それでも、生きている。死ぬのにも飽きたし生きるのにも飽きた。
このIS学園という箱庭のような場所でいつも起きて見回して。ここで手に入れた能力と言えば天気の予測に更なる行動の自由化ぐらいだろうか?
暇過ぎたなぁ。超動くよ、もはや軟体動物みたいだし。
ひまっす。寝てるからね?ネトゲすらないからね?つか電気すらないからね?地獄だよ、早く羽黒ちゃんに合いたい、ごめんなさいって言われたい・・・。
まあ、やってないんですけどね。HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!
とまあ、こんな毎日を繰り返している。
「暇だ・・・」
「…………安らかに暇だ・・・なんか違う。」
「ひ~ま~ぁあああああ↑ああああああッ!!!。・・・オペラは…………無いな。」
「ワレノ命ニ従イテ ワレノ前ニソノ姿ヲ見セルベシ 生来カラノ
このように、一人で過ごしている。
この世界には、娯楽が無い。というのは先にも整理した項目ではある。それは、食べ物に限ったことではなく、嗜好品、甘味がほぼ無くなっている。大体生きれるほどの食材が毎日支給されているかのように、冷蔵庫内にポツリとその存在を示している。
ここで、寝るというのはどのような意味を持つのか俺にはさっぱり分からない。
謎を整理しよう。
・ここは、どこなのか。
・なぜ、ここでは死なないのか。
この二つ程だろうか。
まあ、ここはどこなのか。の問いは二つ持ち合わせているが・・・。俺をこの世界に連れて来たカミサマが作った世界と言ったところか。もうそこまで言ってしまうと、妄想の域にまで達してしまうから考えないようにしている。
まあ、そんなこんなして俺は、死ぬ時間を見計らい自作の鉤爪ロープを使い。どこか高いところに登る。
空が、赤い。夕暮れ時のマジックアワーに照らされた、俺の学び舎だった巨大な牢獄を見下ろした。上空は風が吹き俺の制服がたなびく。やはり、この景色を見ないことには死ねない。ただ一人の景色を見て、そんなことを思う。
そうだ、この世界のもう一つの問いを言っていなかったなこの世界はこの世界は、俺の夢で
俺はどうしようも無い俺に伝えるために涙を流していた。こんな世界では俺が伝えられるのは俺ぐらいしか居ない。
俺は覚悟を決めた。それまで、一種の形式美。次からは、ただのスプラッターだ。
そして何もない一歩を踏み出した。
足場の消失。浮遊感と落下している感覚が気持ち悪い。その後に及んでもそんなことしか考えられない。さて、今日も死にましょう。
俺は大地を迎え入れた。
すると赤色が。広がっている。眼球は残っているらしい。肉の感触が気持ち悪い。だんだんと脳が激痛を訴えている。
ここで、説明しておこう。この時間、つまり前に記したとおりに夕暮れの昼と夜が混在した時間。そして。完全に日が沈み当たりは闇に包まれた。
「また、死ねなかったか。」
そう、呟いた。
何度の死亡経験から、日の入りと日の出時、言い換えると光があるか無いかで俺は
「さて、支給されているころだし・・・」
と俺は冷蔵庫を開ける。死ぬことが娯楽ってなんだよ、と思いながら扉を開ける。そこには何かコンビニの弁当みたいなのが入っている。まあ、個人的には焼きそばパンが食べたい。それを割り切りつつ俺は冷蔵庫内に手を伸ばし………………。
俺は飛び退いた。一瞬、俺が居た世界の常識に飲まれこの世界の常識がことごとく破壊されているのに気が付いていなかった。
問い1。なんで、俺は電気すら通っていないはずのこの世界で、夜の時間帯に冷蔵庫の中身を確認できたんだ?。
答え。冷蔵庫についている電球が光ったから。
「どういう・・・ことだよ。」
俺は、走る。五年前と同じように。
だが行動は、イタズラ好きの子供と同じように電気をつけて回ると言ったどうしようもないものだったが。
それでも、変化の予兆を感じ取られずには居られなかった。
そして・・・全ての電気がつけ終わった。
「マジですか?・・・マジなんですか?」
俺は、敬語になっていた。
それはどうでもいい!!まあ、結果は便利になりましたって言うことでめでたしってことで。
「どうでもよくないんだけどなぁ。」
いきなり現れた。何かが居る。だが、害は感じない。
何をしてもされても、対応できると言った風に自然体だ。なら、こちらもそれで問題なし。そして、経験則からこういう手合いは慎重に行動することだ。
「まあ、どこかの誰かがそんなことを言っていたような気がしないでもないな。」
「めんどくさいとか、どうでもいいとかそういうことを言うなって事でしょ?」
「ああ。」
「そう、それでさ。よく君は私を見ても驚かないよね?」
その何かは、人型で、口だけがあり目鼻に耳はない。そういう形で出てきたものは少なくとも一人は居る例えば電脳空間のハッキングゴーレムさんの人型とかね。まあ、驚くことは無い。
「理由は知っているんだけどね。」
「ほう?本当に?」
「うん、君は私のことをただの人型で、顔はなくて。そういう形で出てきたものは少なくとも一人は居る例えば電脳空間のハッキングゴーレムさんの人型とかね。まあ、驚くことは無い。って思ってたんでしょ?」
「どこからコピー&ペーストしてきやがった?」
完全に読まれていた。
「適当な冗談は置いておいて、それで・・・君は楽しかった?この世界に居て。」
そう聞かれた。何を言っている?
「楽しくは無かっただけど、嬉しかった地獄に居られて。」
「ふぅん、君が言ってた。そんなことを。」
その言葉で、一つの仮説が生まれた。それは・・・。
「お前は”俺”なのか?」
と言うことだ、ここで言う俺とは五年前にやられた悪趣味な世界の”俺”のこと。あの時は驚いた、いつも俺がやっていることを自身にもやられるとは・・・。不愉快極まりないな。
「それは・・・違うね。」
「ならなんなんだ?お前は?」
「私は、君の罪だよ。」
「・・・罪か。それならもう背負い過ぎるほど背負っているが?。」
「いや君の罪は。h
その人型は、口元を引き絞った。
ただの激痛。
が走る。
言葉を拒絶するように痛みが起きる。痛みにしか気を取られていない。
「あらら。まだ、ダメか。まあ最初は私を見るだけで
そんな、つぶやき
「それじゃ、ここはつけておくから。楽しんでね。」
また来るからと。そういって、痛みと共に消えた。
「・・・またっておい・・・はぁ、いつ戻れるんだ?。」
それが俺の、この世界での出来事らしい出来事だった。
「・・・いつ戻れるんだ?」
俺はもう一度何かに縋るように、そう呟いていた。