IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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好意

(はぁ、本当にどうするんだろう・・・一夏にもばれちゃったし・・・。けど、IS学園にあんな制度があったなんて・・・。)

 

これは、IS学園特記事項のこと。

その制度の一つによって一応こうやってシャルロット・デュノアはIS学園に居られるのだ。いや、これは適当ではない勝手にシャルロット・デュノアが勘違いしたために起こった事故だ。

 

そんなことは露知らず、一夏のラッキースケベ(原作通りの行動)によってシャルルの正体がばれてしまい成り行きで特記事項の存在を知りこうして、法的に三年間は守られていることを知り、康一の言葉を忘却の彼方に飛ばしていた。

 

「シャルル、今日はどうするんだ?」

 

一夏が、コーチ役を務めているシャルロットに練習内容を聞いた。

 

「そうだね、もう十分に射撃武器の特性は理解できているし・・・剣一本で戦うとなると今度は機動かな。まだイグニッションブーストは出来るとしても離れていたら一貫の終わりだし。」

 

「う、イグニッションブーストだけでも辛かったのに・・・。」

 

苦い顔をしながら一夏がそう言った

 

「いや、イグニッションブーストだけでもいいけどその使い方だね。一夏は決めようとするときに大振りになるから、隙が出来ているんだよ。日本で言うとピンチがチャンスって奴を体言しちゃっているんだね。」

 

「なるほど、じゃあ…「アリーナでドイツと中国の代表候補生が模擬戦やっているって。」「え?本当に?」

 

練習内容を言おうとしたその時、隣から重要な情報が耳に入った。

 

 

「俺たちも見に行くか。」

 

見学といわんばかりに食い気味に言った。

 

「うん。」

 

そうして、代表候補生達の模擬戦という名の喧嘩を見るために二人は走った。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

その時二人の代表候補生は・・・。

 

「クッ。」

 

「はぁはぁ、っち。」

 

ラウラ、ドイツの代表候補生は苛立ちを視線にぶつけ。凰、中国の代表候補生は疲労の色を見せている。だが凰は、それ以上に頭の中に違和感が残っている。それは・・・。

 

 

二人が距離を詰める二人とも両手で武器を扱うようなので、一合二号、と止め処も無く溢れるように剣戟が続く。だが、ラウラの優勢だ。それは、機体の性能差もあるが第一に操縦者の腕の差が顕著に出ている。

 

 

だが、ここまで拮抗しているのは・・・。

 

 

ラウラが隙を突き恐らくそのままの軌道で致命傷となるような場所にプラズマ手刀を当てれるような攻撃をしているのにもかかわらず。だが、顔に陰りを見せ軌道を変えて当たり障りの無い場所に攻撃した。そう、何かに阻まれるように。

 

その異変を感じた、凰がこういった。

 

 

「アンタ、私をなめてるの・・・こちとら腐っても代表候補生よ。何で本気で戦わないのよ!!」

 

「・・・五月蝿い!!」

 

 

ラウラは子供の癇癪のように憤り戦闘が再開された。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

その時アリーナの感染者(観戦者)たち(一夏、シャルル。そして、前の者が来る前にアリーナに来ていた箒の三人

 

 

「結構、試合できているな。」

 

と、一夏がこの試合をそう評価した。それは、見たままの純粋なそれだ、だがそれゆえに一面を捉えている。そして、もう少しだけだがISの玄人、いや剣道と言う限定的な戦闘の天才。篠ノ之箒は。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒが何か手加減・・・とは違うが、何か行動に迷いがあるな。」

 

そう評価を下した。だが、もっとも、言わせて貰えばシャルルは。

 

「ありえないよ・・・。」

 

そう評価を下した。それは、彼(女)の特有の出自からの言葉だった。その言葉が気になった箒がこう聞いた。

 

「何がありえないんだ?」

 

「ああして渡り合ってること自体さ。」

 

「どういう意味だ?」

 

「同じヨーロッパの機体だから分かるんだけど、あれには(A)アクティブ・(I)イナーシャル・(C)キャンセラーが積まれているから、セシリアが介入しない限り勝ち目は無いんだよ。」

 

「なっ!?あれは構想自体はあったが実現は・・・。」

 

「ああ、出来たんだよ。」

 

「ちょちょちょッ?待て、なんだそれ?」

 

一夏がど素人丸出しの質問をしてきた(笑)。

 

「慣性停止能力っていったとこかな…………動きを止める不思議なバリヤーのことだよ。」

 

「なるほど、分かりやすい。」

 

シャルルは諦めてすごく分かりやすい説明をし一夏は納得した。それでも、秀でているものはあるようで。

 

「ISの兵装で特殊な能力を持っているって言うことは第三世代。そして、特に概観からは操作していないということは、エネルギーの塊にそんな能力を付随させているのか。零落白夜で使用不可能に出来ると思うんだけど、シャルルそこのところどうなんだ?。」

 

「え!?・・・出来ると思う・・・よ?」

 

シャルルはあいまいに肯定した一夏は首肯した。重ねて、言葉を発しようとしたそこに無粋に思わないほど見事に横槍を入れられる。

 

「いやぁ、ラウちゃんには悪いことしちゃったかね?」

 

「「「ウワッ!??」」

 

と、よく通る呟きと共に香が一夏達のとなりに忽然と姿を現した。三人が三人とも間の抜けた声を出した。一番耐性がついていた一夏が最初に聞いた。

 

「康一。お前どうしたんだ?」

 

「ん?傷ついてるよ。・・・じゃなくて、私が見ていない間どうなってた?」

 

どこか、的外れな特有の言い回し。そして康一の女装とは違い声は男性、つまり康一自身の自然の声であり、それが途轍もなく気持ち悪くなる。そんな、香がそう聞いた。それに、シャルルが顔色を伺いながら努めて自然に答える。

 

「康一・・・まあ、ごらんの通りの状況がずっと続いているよ。」

 

と、ありのままを言った。すると、嬉しそうに香は微笑む。

 

「良かった、本当に・・・。」

 

しかし、悲しそうな声でそう呟いた。表情と声色が一変して明るいそれになって。

 

「あ、ごめんね邪魔しちゃって。私は行くから。」

 

と言って、鼻歌を歌いそうな足取りで香は姿を消した。

それを、あっけに取られながらも、一夏が。

 

「そういえば何でおかしいんだ?」

 

話の続きをしようとシャルルに聞いた。

 

「それは、一対一の戦闘ならまず絶対に負けないうように出来ているからさ、実践ならまだしも試合用に作られたここでならまず勝機は無い。」

 

 

そうして、シャルルはこの話の総括を無意識的に言った。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

戦闘者達は・・・接近戦で腕と大太刀を振るう。火花散り鬼気迫るようなそんな戦いだった。

 

「アンタふざけるんじゃないわよ!特種兵装も使わないで、それが喧嘩を売りに来た奴の態度だって言うの!?」

 

凰は頭に血が上っている。自身のプライドと性格からラウラの戦い方が気に入らなかったのだろう、いつも以上に激しく攻撃している。その言葉を乗せた攻撃に、ラウラはいなすしかなかった。

 

「黙れ!私にも事情があるのだ!!」

 

そういって、近距離戦最強兵装AICを発動させ、凰を拘束する。

 

「・・・やりなさい。」

 

諦めがついたかのようにそういった。だが、攻撃はしない。迷いを見せてたたずんでいる。

 

「・・・やりなさい。」

 

繰り返しそう言った。何かを決したように腕を振り上げ振り下げるその動作だけで、ほぼ全てのものを刈り取れるその手が凰に直撃しようと言うその瞬間。

 

 

「ラウちゃん、止めてね。」

 

 

世界全体のの時を止まらせたかのようにいきなり音も無くラウラの肩に出現した香が居た。周りは嫌に静かだ。だかその声は、ラウラの攻撃を止まらせる。

 

『全く。IS使いが荒いな・・・。』

 

「けどありがとね。」

 

『まあ、いいさ。』

 

外からは突然独り言を話したようにしか見えないが、そんなやり取りをした。そのあと香はラウラに向けて言った。

 

「ダメって・・・言ったよね?」

 

その一言でラウラを硬直させる。まるで悪事を犯した子供が親にばれたくないくらいの心理である。

 

「けど、よく出来ました。」

 

香はラウラの肩から降りて背を向けたままになり、相対的に凰と向かい合って立っている。そうして香が凰に話しかける。すると時の流れが正常になったように凰が口を動かしはじめた。

 

「ねえ、鈴音ちゃんだっけ?」

 

「名前呼びだったら鈴でいいわ。」

 

「ん?・・・そうだね。」

 

一瞬の逡巡の間が妙に重苦しくなる。

 

「それで鈴ちゃん。もう止めてもらってもいいかな?この通り。」

 

香は頭を下げた。

 

「・・・言われなくてもやめてやるわよこんな試合。」

 

「ありがとう。」

 

凰は背中を向けて、ピットに戻った。それを香は遠い目で見送る。

 

「それじゃあ、帰ろう?」

 

香は顔に笑みをたたえながらラウラに手を伸ばす。すると、急に目の色を変えて。

 

 

ブン!!

 

 

それをISの黒光りした手によって振り払った。それは当たれば体ごと吹き飛ばされるほどの力を持つが香は難なく避ける。

 

 

「・・・どうしたの?そんなに悔しそうな顔しているけど?」

 

「お前が!お前が居なければ!!」

 

 

ラウラは激怒しながらその人を殺すには十分な力をただ、自らの内に溜まった鬱憤を晴らす様に振るう。

 

 

「うわっと!?・・・どうしたの?」

 

 

それを問いかけながら紙一重で避け続ける。香は何かに気が付いたかのように攻撃を避け続けながらもラウラに問いかけていた口を閉ざす。

そんな二人だけの美しい世界。

 

やがて、ラウラの攻撃の手が緩まる。攻撃の手が完全に止まった。それを見計らい香は。

 

「一緒に帰ろう?」

 

ラウラは何も言わなかった。だがISの装備を解除し香の隣へ。

 

「貴様。・・・何を考えている?」

 

強気に香に問いかける。本当に何がなんだか分からないと言うように。それもそのはずなのだが、ラウラは。道具だ、人の手によって作られた。まあ、人は大体そんなものなのだろうが。

 

「ラウちゃん私は・・・君が嫌いだ。」

 

その言葉にラウラは顔をしかめた。

 

「だから好きなんだよ。」

 

ラウラの顔が歪む。その顔は百の言葉より雄弁に自身の心境を物語っていた。

 

『何を言っているんだ?』

 

と。それを察した香は

 

 

 

「いつかわかるようになるさ。」

 

 

といって、笑った。

 

 

 

そうして、この変な戦いは幕を閉じた。

 

 

『全く・・・仕事マジ辛い・・・。』

 

 


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