IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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前 体 錬

・・・寒い、寒いしなんか不快・・・しかしこんな寒さ、久しぶりだな・・・。

 

あれ?俺なんでこんなことになってるんだ?・・・確か、神様の粋な計らいでいいところに来たんだよな・・・。

 

・・・なんだよ、結構楽しかったのに。普通の生活っていうのもさ。

 

 

「                    」

 

・・・誰だ?・・・。

 

「         」

 

ごめん、聞き取れない・・・誰だか知らないけど、こんな俺のことを心配してくれてありがとう。

 

・・・ははっ、なに言ってんだか遺言みてーじゃないか。

あぁくそっ声も出やしねえ・・・。

 

 

・・・ありがとう、俺がいた・・・セカイ

 

 

 

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これは、消えてしまった記憶の話。

 

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俺がこの世界に来てから五年がたった。

 

唐突過ぎるが仕方ない俺は五年間で、俺の覚えている範囲で特筆することもなく俺の、相澤康一としての生活基盤が出来上がり、また俺自身も俺を相澤康一と違和感なく自称できるようになっていたのだから。

名前に関しては向こうの世界では俺の名前なんてものは特に機能していなかったから問題なかったのだが・・・。

 

それは置いとき、このようにだんだんとこの世界に慣れてきた俺だが、まだこの世界のことを知らなさ過ぎる・・・生んだ母親の顔も知らないって・・・ねぇ?そんな思考を元に一つ質問することにした。

 

「ああ、そうだお手伝いさん。」

 

「何ですか?」

 

俺はごろごろしながら質問事項お手伝いさんに(仮称)質問することにする。

 

「アンタの依頼主からはこれからどうするとか・・・依頼に関した指示はされていないのか?」

 

お手伝いさんはどこか怪訝な顔をし、聞き返した。

 

「今度は何が言いたいんですか?」

 

「・・・俺の世話止めないの?」

 

お手伝いさんは無言で手を俺の額に伸ばしデコピンの構えをとりそれを敢行した。

俺は軽いやけどのような痛みを訴えている額をさすりながら、非難の込めた目をお手伝いさんに向けた。

 

「変なこと言わないでください。」

 

・・・変なことも何も、俺はそばに誰か居ると安眠できない、だから回数や時間で睡眠不足を解消している。

だがそんなことをやると不毛の極みなので出来れば出て行ってもらいたいのだ。

 

「・・・ごめんなさい。」

 

「よろしいです、あなたはどれだけ中身が年食っていようが体は子供なのですから・・・。」

 

「はいはい。」

 

と、この五年間でお手伝いさんの口癖になっていたその言葉を苦笑交じりに返した。

因みにおきているときは、柔軟や筋トレなどに勤しみ、寝るときは疲労度が一定に達したとき糸が切れるように眠っている。

 

・・・しかし、常識が通用しないとか何とか・・・そうカミサマが言ってたが本当にそうなのか?五年間生きてきたが特に何にも起きなかったし・・・あ、そうだ。

 

「やっぱ、だめなの?あのことは・・・。」

 

「何のことです?」

 

と、少し動きが止まり目を泳がせる。・・・うそ、というか何かを語ってない。

 

このときの・・・あのこと、とはいつの日か俺が質問した事柄である。

 

『俺が寝ている時に何かあったか?』

 

少し気になって質問してみたのだ、常識が通用しない部分が俺の寝ている間に起きてしまっているのだとしたら?といったもある種妄想的なことを考えていた、それ自体は仮説でしかなく、当たってたら面白いな程度だったのだが、反応が・・・。

 

『・・・っ!?・・・何もありません。』

 

だったからな・・・かなり信憑性を増したが・・・この説を却下した。具体的に言い表せないが、これは俺のために嘘をついてるような気がする。

 

・・・嘘をつき続けて来た俺の直感だから・・・当たってると信じたい。

 

だが、真実にたどり着くには、お手伝いさんの口を割るか周りの人に聞くしかないだろう・・・だがどちらも俺の力がないから不可能と結論付けて俺は思考を切り替える。

 

しかし俺はこの世界の同じ年齢からの身体能力平均値的にはどうなっているのだろうか?もしここがZ戦士並みに平均戦闘力が高かったら目も当てられない。

 

「なあ、ここの人間かめ○め波見たいなの出せたりするの?」

 

因みにここは、質問に質問を重ねた結果、文化的に俺の居たところと似通っているらしいことが判明している。

 

「出るわけないでしょう」

 

「ですよね~。」

 

地球破壊されたら・・・そのときは甘んじて受け入れよう・・・うん。

そんな狂った世界でなくて良かったと内心胸を撫で下ろしながら俺は次の質問に行った。

 

「なあ、この近くに武道的な道場って存在するのか?」

 

とりあえず体でも・・・欲張れば技術も会得したい。

 

「・・・分かりました、来週中に調べて参ります。」

 

「そこまで無理しなくてもい「調べて参ります。」・・・」

 

そこで何も言えなくなり押し黙るしかなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

色々飛ばして来週

 

「康一様。」

「康一でいいつってんだろ?」

 

いつもの掛け合いを済ませてお手伝いさんは本題に入った。

 

「調べました結果、家の近くにある武道・・・私は体や武器を使う格闘術と解釈し、その条件で三十件・・・体を使うものは十八件、残りの十二件は武器を使うものになります。」

 

へぇかなり多いな・・・

「一覧は?」

 

「こちらに、チラシなどがあるものは貼り付けてあります。こちらは隣町のものになります。」

 

「そこまで調べたのか!?どうやって?」

 

ファイルを手渡ししながらさらっとそんなことをの賜った・・・このお手伝いさんはかなり優秀なんだな、とうすうす勘付いていたことを再認識する。

 

「ええ、しかし奥様方の情報網はすばらしいですね。」

 

「おば様方すげえ!!。ッてか俺はアンタが井戸端会議している光景が目に浮ばない!!」

 

なんて情報量の多さだ!怖いレベルに・・・いやむしろお手伝いさんが怖い、このキャラから井戸端会議に参加しているのが想像できない!どうやってやったんだ!?そしてほんとうに

 

「・・・この情報を得るために、依頼主の株が大暴落しましたが・・・。問題ないでしょう。」

 

「そりゃあそうだ!!おば様方の格好のえさみたいなものだからね!。」

 

と、若干叫ぶようにいいながら奪い取るようにファイルを受け取り纏めたものに目を通す。

 

「・・・・・・・・・。五件、面白そうなのがあった。」

 

「そうですか、因みに一番面白そうだと思ったのはどれですか?」

 

俺は無言で一つの道場名を指差した。

 

「・・・篠ノ之道場・・・隣町にある神社の影響を受けたために出来た剣術道場ですか。理由を聞かせてもらっても?」

 

「詳し過ぎね?・・・簡潔に言うと神社から発生したのであれば古武術や剣道とは違う剣術も修練できそうだと思ったからだ・・・なんでそんなことまで?」

 

俺が篠ノ之道場付近の地図を見たことで推測していたことをあっさりと正解判定を出された。・・・ってことは古武術とか体得できるのか?

 

「・・・さて康一様。どうなされますか?」

 

・・・どうしようか?・・・見学?。

 

「一旦行って見よう、それで決める。」

 

「了解しました。早速準備させていただきます」

 

・・・とりあえず、この世界の技術を体得するつながりは出来た。

これからは、それを俺が体得できるかだな・・・。

 

 

 

 

・・・到着~。

 

お手伝いさんが半端ない速度で外へ行く準備をしてくれたおかげで本当に早い時間で篠ノ之道場の周辺にある駐車場に到着した。

 

そこから、移動しながら

 

「・・・ここまで行く道に一切の迷いがなかったよね?」

 

「記憶力がいいので。」

 

「お手伝いさんは今行くところの門下生なの・・・もしくはだった?」

 

このままでは埒が明かないので直球に聞いてみた。

 

「・・・。」

 

イエ~黙秘権発動~と心底がっかりしながらやはり心の奥底で少し悪態をつく、そして思考を持ち直し何か言いたくない理由があるのだろうと結論付け・・・。

 

うん、そっとしておこうということにした。

 

我ながらヘタレである。

 

 

 

しかし・・・なんか鬱屈としたところだな・・・。

 

歩き始めて程なくすると、周りは竹林になっており、俺とお手伝いさんが並べられる位の道が曲がりくねりながら続いていた。それはたとえるなら来るもの拒んで去るものを追う、という言葉を作れるくらいには閉塞感がある場所だった。

 

「ちょっと、こうも暗い雰囲気だと・・・入門している人も少ないんじゃないか?」

 

暗いどころか、からすが鳴いてるけどね。

 

「・・・。」

 

「こんなところに道場建てたのか・・・築十年くらい行っているのかな?」

 

神社と併設だと思うから・・・結構行ってると思う・・・。ぼろ屋敷・・・。

 

「・・・。」

 

クソ・・・誘導尋問に引っかからない・・・。引っかかれ!!

 

「ねえ。」

 

「・・・。」

 

「返事がないただの屍のようだ。」(裏声&腹話術。)

 

ペチン。

 

叩かれた・・・。

まあ、お手伝いさんがどんな人物でもいいんだけど・・・一緒に住んでいる分には知っておきたい。

共同生活にとっても・・・自己防衛にとっても・・・。

 

「付きましたよ・・・ここが、篠ノ之道場です。」

 

といって、道があけたところにある建物を指差した。

 

「・・・。」

 

今度は俺が黙る番だった。

お手伝いさんが指差したそれは、武家屋敷の一言しか形容できない建物だった。

その悠然とした雰囲気を持った建物に飲み込まれ、尊敬の感情を持つにはそう時間は掛からなかった。

 

「・・・かっこいいな。」

 

「では、案内させていただきます。」

 

そんな独り言を黙殺しお手伝いさんは先に行ってしまい、それをあわてて追いかけた。

 

 

 

 

 

胸の中でかすかに生まれた違和感を押し殺しながら・・・。

 

 

 

 


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