そこは、とある歪な関係が形成されている二世帯住宅で起きている日常の一ページの話である。
【オッサン】
どうも、この家のお手伝いをさせていただいています、
私は家政婦をしていまして、お世話した最年少は二十歳の青年だったりして、それ以下は触れるのはもちろん、喋ったりなどはまったく出来ていなくこの仕事・・・つまり幼児のお守りの仕事には一抹の不安を覚えていたのですが・・・。
適当な服 ボサボサの頭 手に新聞 時たまテレビ ・・・を見て大爆笑 好物はイカそうめん
・・・オッサンのフルハウスが完成していました。
「おいおい、アメリカでテロだってよ。」
・・・と、このように一切の可愛気がありません、皆無ですガチャ○ンの中身を見たぐらいのショックを受けました。・・・私は見ていませんが。
「あ、○○会社の株下がってる・・・大丈夫か?」
あなたは、その年で株を気にするな!!何もできないのはわかっているでしょう!?
・・・と、こんな風に依頼主の息子に行きそうな突込みを日々抑えるのに精一杯です。
オチがありませんが大高秋音でした
【散歩。】
俺がこの世界に来てから一年弱の時間が経過した。
それは、プライドの高いねたきり老人の様相を呈していた時間だったが・・・今は違う。
俺は、動きやすい服に着替え、肩掛けポーチ(かなり小さい奴。)を掛ける出で立ちで仁王立ちをして腹のそこから出すような低い声でこういった。
「お手伝いさんよ・・・歩けるようになったのだ。」
と言いながらドヤ顔・・・ドヤ顔である・・・ドヤ顔であるッ!!
「今までだって普通に歩いていたではありませんか・・・。」
と言いながらゴミを見る顔・・・ゴミを見る顔である・・・ゴミを見る顔であるッ!!
・・・ああ、そうだ、この荒ぶるモノローグから分かる通り、通常の年で
「分かっていない・・・分かっていないのだよ!!。」
「何がです?」
「・・・それは。」
と俺はもったいつけるように、言葉を溜め「もったいぶらないでください。」・・・面白いだろうがよぅ・・・。
「生後三ヶ月が歩いていたら目立つだろうが。」
「身も蓋も無いですね。確かに驚きましたが」
「そうつまり・・・散歩に行ってきます。」
と踵を返し、外と言う荒れた海のごとく自由なそれで居て過酷なエデンを目指し俺は
「まて。」
手ががっしりと、さながら万力のごとき握力で俺の腕を掴まれた。
「なんだ?。」
と握られた手が痛いの加味した怒り加味した返事をした、その怒りゆえの無愛想な返事をものともせずいきなり、掴んだ手とは逆の方向の手を差し出す。
その手には ベ ビ ー カ ー ・・・ベビーカーがあった。
人間のストレスの一種に、閉塞空間というものがある。その調べ方としては何の娯楽も無い狭い部屋に閉じ込めただただ時間を経過させるというものだ、その結果人間はそのような環境におかれると耐え難いストレスを感じるらしい。
今回の例を挙げてみよう、生まれてからこの方まともな精神を持ったやつがベビーベット(柵つき)、外出不許可、味気ない飯・・・この惨状を見て分かる通り俺は禿げ上がるかと思うぐらいストレスを溜め込んでいるのだ。
・・・つまり。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!。」
「逃がしませんよ?」
叫んだ、あらん限り叫んだ・・・それに比べお手伝いさんが淡々とした口調で居たのが癇に障っていた・・・のはまあ別の話だ。
「あなたは私に自由を与えないと言うのか!!。」
けど暴力に訴えたら・・・この人強そうだしなぁ。
「表現に誇張が効き過ぎです!!。それに!」
「なんだ?人間としての権利(自由のこと)をさながら傲慢な神の如く『天からのめぼしだ!!』と言いつつ純真無垢な赤子に事情も知らせず権利を奪っていく暴挙がどうしたと言うのだ!!?」
俺の熱いパトスは止められないぜぇ!!。
「長いよ!!。そして早いよ聞き取れません!!。それに話はまだ終わっていません!!。」
「交渉の余地があるとでも?」
あるのなら答えるのに吝かではないな。
「いきなり冷静になられても・・・。はぁ、いいですか?「いいよ~散歩に連れて行ってくれるなら。」諦め早過ぎませんか?」
叫んだら意外と全てスッキリしちゃったんだよねぇ。
「いや、どうせお手伝いさんの行動パターン上ベビーカーで公園に行ってから遊んで遠回りして帰ってくるって感じでしょう?」
「・・・行きましょうか。」
いいねぇ、その分かってるんだけどどこにも行かない苛立ち・・・。それに・・・外に出るのは久しぶりだしな。
散歩は俺に全身の筋肉痛と、倦怠感と、耐え難い睡眠欲求をプレゼントして行った。
【感想】
どうもまたまた変わりました大高です。
この家に勤務してから、三年が経ちました康一様もすくすくと・・・成長してきているようです、私的にはかなり思うところがあるのですが、それは置いておきましょう。
ここで話したいのは彼・・・相澤康一のことです。
彼を三年間世話してきて、彼の異常性が・・・いや、すでに異常性の塊でしかないのでしょうけど・・・人として、二十歳前半の成人男性として(彼がそういっていた)の異常性が垣間見えてきました。
一つは、物事を捻くれた視点で見る癖があると言うこと。たまに・・・いやごく稀にそんな見方があるのかといったことがありますが、それですら下衆な思考から生み出された産物でしかありません。
二つめ、どこでも寝ます。トイレ、廊下、タンス、押入れ、もちろん布団でも寝ますがなぜか端の方に避けて眠り、酷い時は物置の上に寝ていたことがあります。少し思ったのですが共通するのは壁際で、もしくは閉鎖的な空間が割かし多いいようです。・・・そのことについて、「あなたは猫ですか?」と言うと無駄に完璧な声帯模写で「にゃぁ?・・・にゃあ。」と言っていました。
そのときの表情がかなり可愛かったのは思い出に残っています。
それに三つめ・・・食べても大丈夫な野草を持ってくる。これが一番の謎である
「・・・また拾ってきた野草とご飯に?。」
「いいだろ?食費浮くんだから、浮いた食費の五割俺の口座に入れておいてくれ。」
「いいですけど・・・二束三文ですよ?」
「一文を笑うものは一文に泣く。」
「どこの江戸時代ですか?それを言うなら一円でしょう?」
こんなやり取りが多い。散歩途中に少し目を放した隙に野草をビニール袋一杯に詰めて「飯。」と言ってくる姿を見ると叩きたくなるのは恐らく本能でしょう。
ですが・・・なぜか憎めないのです、生まれたところから見てきたからでしょうか?・・・母性?よく分かりません・・・けど、康一様を好意的に見ているのは確かです。
「・・・まためんどくさい事になりそうだな。」
「何がですか?」
今日もまた、彼の捻くれた理論でも聞くことにしましょうか・・・。
これが、私の日常である。
分かりにくいけど、とりあえずこれで終わり。