これは語るまでもない話だ・・・俺のことなんて・・・言葉を言ったって、叫んだって俺の言葉は届かない、・・・ん、まあこれは自業自得だろう。それを知っているからこそ俺は俺にあの不可解なことをいつも反芻させるのだ。
この時系列は俺がエネを手に入れた(だろうと推定する)・・・もっと言えば篠ノ之道場に入門した一年後の、白騎士事件のこと。
それは、俺が家に居たから休日だったのだろう。あのころは”事件”が起こる前だから小学校に入りたてだったか・・・、そのため俺は曜日感覚が休日かそれ以外かでしか覚えては居ない。
あのころはそうだな、お手伝いさんがいそいそと家事をこなし俺は・・・テレビを聞いていた、そのとき・・・。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
獣の呻きに似たサイレンが鳴り響いた。
近くにでも火事があったか?とでも思い、当時は地震速報などなかったテレビが珍しく被害が出る前に危険を知らせていた。
その内容は・・・。
『日本に各国から発射されたミサイルが東京の○○市内に迫ってきています住民の皆さんは速やかに避難してください!。』
こんなような物だっただろうか?俺はそれを聞いたときに、もはや逃げるのは悪手だろうと結論を下した。
なぜ?この市だけなんだ?仮にそうだとしたら誰かの思惑が入ってきているだろうし、そもそもミサイルの絨毯爆撃が襲ってくるだろうなら逃げても無駄、そして一箇所に集まった時点で無理心中だ。そんなことを考えるのは俺だけじゃない、外に逃げる奴も居るそれが多かったら?渋滞が起こりジ・エンド。
ゆえにここで死ねばオールオッケイというわけだ。
「逃げますよ!。」
「はぁ!?」
なにをゆうとるんやこやつは?
「こっちがはぁ!?ですよ?逃げますよ?」
「オッケィ。まず落ち着こうか。」
「落ち着いていられますか!?」
「逃げるなら、今頃渋滞しているから車は使わない方がいいバイクが望ましいだろう、あるの強奪して来い。」
ペラ・・・あ、今日のコボちゃん見てなかった。
「そうですか?では行きましょう!。」
ダダダダダダダダダダダダダダダダッ
ダダダダダダダダダダダダダダダダッ
「いや来いよ!!ついて来いよ!。」
「いやどこへ逃げてたって無駄だよ、無駄な努力をするくらいならここで死ぬ。」
「っ!?」
あ・・・おいおい、今日のコボちゃんつまんねえな。フアァァめんどくさくなってきたなぁしかしミサイルか・・・さぞかし楽に死ぬッ!?
「ウゴッ!?」
俺はいきなりお手伝いさんに抱きかかえられていた。
そして、前の買い物かごに強引に詰められどこから出るんだその脚力、といわんばかりの力で漕ぎ始めた。
「おい!!あぶないぞ!。」
「・・・。」
俺の言葉を無視してただただ漕いでいる。・・・勝手に逃げりゃあいいのに何で俺まで・・・。
「おい、止まれ。」
「・・・。」
「おい。」
なんで?何でだ?・・・よく分からない。
「とまれ、そこにピザ○ットがある。」
「強奪するんですか!?」
「バカ!拝借するだけだ永久にな。。」
「それを強奪というんです!。」
・・・なにを言っているんだ?
はぁ・・・けど、不思議だ・・・人に心配されることがあるって。
「少し、死ぬ前にキレーな海が見たかったなぁ。」
「生きたら見れますよ!。」
息を切らしながら俺を励ましていた。
「んじゃ空でいいや。」
「なんですかそれ・・・。」
なぜか死ぬ前の晴れ晴れとした笑顔を浮かべて俺は空を見上げた。
あ・・・。
「アッハッハッハッハ俺ミサイルがこんなに近くにあるの始めてみたよ。」
そこには数えるのもばかばかしくなってくるようなおびただしい量のミサイルが雨のように降ってくる光景がただ破壊の美を象徴するかのように存在していた。。
「私だって初めてですよ。」
「そりゃあ、そうだろうなぁ。」
「・・・死ぬのは怖くないんですか?・・・私はすごく怖いです。」
突然お手伝いさんが変な事を言い始めた。
「俺もだ・・・一度死んでるからって死が怖くないって言うわけじゃない。けど、絶対的なものは死だって分かってるから・・・諦められる。簡単に言うなら・・・”生きれば死ぬさ死んだら死んださ”最終的には死しかない。」
「・・・死の前に楽しめればいいんじゃないですか?・・・いつか死ぬからって後の全てのものを諦めるってのは何か違う気がします。」
「そうかい・・・いや、そうなんだろうな・・・。」
「これで私の人生も終わりですかね?。」
「さあな・・・けどなんか俺は結構楽しめたような気がするよ。」
まあ、結構楽しかったかもしれないな・・・この人に会えただけでも・・・な?。
「まだまだ、これからだったりするんじゃないですか?ほらたとえば・・・鉄腕○トムみたいなのが全部打ち落としたり・・・しないですよね。」
「ハッハッハッハッハッハッハ・・・フラグだったらいいのになぁ。」
といって美しい空を見続ける。
「・・・え?」
そのとき、お手伝いさんが声を出した。
「どうした?グレート○ジンガーでも来た・・・あ?」
さっきも見た美しい光景。そこに今までなかった一つの、か細くか弱く、かつ洗練された人型のなにかがいた。
その人型は緋色の炎すら上げずに、ミサイルを切り落としていく。ビームが出てきたり既存の兵器など軽く超越するような機動力を発揮し次々とミサイルを切り捨てる。
ミサイルが発生させる破壊より、人型のそれが上回っていた、だが俺は美しさは感じなかった。ただ”激しい嫌悪感”を覚えた。
それは人型がミサイルを撃墜するたびに強くなっていく、だんだんと俺を蝕み体の芯まで到達し俺は膝をつき胃の中の物を戻した。
「うっ・・・オエェェェェッ。」
吐くだけ吐いて吐き終わったあとには人型がきれいに痕跡すら残さず消え去っていた。
『そんでまあ、逃げても無駄ってわけで家に戻ったんだけど・・・2つほど思ったことがあるんだ。
1つ目はあの人型。後にISだ、ってのは聞いたことだが・・・気になるのは操縦者だ。今になって冷静に考えると・・・あれ。篠ノ之流だったんだよねぇ。
それはどうでもいい、問題は二つめだ。
・・・エネ・・・お前怒っていたのか?』
『無言は肯定と捕らえるよ。まあ、あの契約は今でも有効・・・いや永久に有効だから。それは覚えてくれ。』
『・・・そんなことしたら、君は世界すら騙すだろ?』
これはある転機の話