「案外あっけなくおわりましたね」
と、狙撃銃を持った女がいった。相澤康一を撃った張本人らしい。
「だが、油断は禁物だ。あの人数相手に立ち回って見せたんだ、まだ生きているかもしれない。」
「絶対防御のシールドを中和して貫通させるしろものっすよ、まあ、気絶ぐらいは余裕でしょ、胸骨の部分にきれいに当たりましたし。」
「まあいい、これより回収作業に入る!一人として死なせるな!」
そういって、戦場をみた。異変は、すぐに訪れた。
「隊長!海から!」
「なに?」
白い球が、海から泡のように浮き上がってきた。泡には二種類海面に浮くものと、空に向かって飛んでいくものの二つだ。海面に浮いているのは比較的大きく空に向かって飛んだものは直径一メートルほど。
「中に生体反応があります!」
「…………三班編成!アルファは人質の救出、ブラボーは敵勢力の無力化の調査、チャーリーは哨戒!各自分隊長に従え!」
「「「了解」」」
子ハエの位にびゅんびゅんと動き回るが、一つ勘違いをしていた。
相手が女王とその奴隷だったということだ。
「人だっ!」
「ここら辺にあるのは人で間違いなさそうだな」
「そのようですね。」
「なにこれ!?白いな…………触感は!?、ざらざら。それなりに強度があるわね!だが脆い!まるで薄く延ばした飴細工のようだ!こんな物は始めて見る、どれ、味も見ておこう。」
白けたような目で見られているがそんなことも気にせず、白い玉を調べている者がいた。
「変人もいるもんですね」
「ほうっておけ、仕事をするぞ」
「だけど、こうして何人もいれば、誰が誰だかわからなくなりそうだね」
「そんな訳あるか。」
「敵の顔も覚えられない。」
話掛けられた者は肩を叩かれた。
「覚えなくていい、なにせ
「お前は!?」
ISが消失した。中身は力なくもがきながら海におぼれていった。いつの間にか青いジャージを着ている康一は舌なめずりをするように周囲を見回し、近場の敵へ。
「呼ばれて出てきてじゃじゃじゃじゃーーーーん!康一だよ!」
白い短刀をISの末端部に突き刺す。いきなり出てきた敵、すべての注意が康一に向けられた。そして一斉射撃が始まる。
「残念でした。」
何度も何度も、同じ手を食うわけには行かない。
ボン!!気の抜けた爆発が起きる。
「その泡爆発するぜ?。」
海水の成分は水 96.6%、塩分 3.4%(ウィキ調べ!)ISはすべてのものを分解してエネルギーに変える力を持っている。なぜそのようなことができるのに、物質の変換ができない訳がない。
女王の力を思う存分に振るった。
銃口から放たれる弾丸は、めちゃくちゃに撃っていたら一つは当たる、そして中に水から作った酸素と水素の混合気体を起爆させてしまうのも無理はないだろう。
「泡はまだあるぜ!」
これで、実質中距離のアサルトやサブマシンの攻撃は無効化されたといっていい。しかも、相手の思考は戦いは数だという古臭い考え方に固執してしまっている。寧ろ自慢じゃないが俺はタイマンだと弱い!
「自慢じゃないわ」
「るせい」
そして此方の思惑通り戦法を変えてきた。距離をとり始めた。距離をとった銃器での一斉射撃、泡を何個か爆発させて、弾丸が襲う。
「エネ、殻だ。」
「了解。」
俺がいまだにファントムタスクの傘下であると思っているのだろう。意識の違いがここで如実に現れる。俺は、一つに集中すればいいだけの話だが、相手は、伏兵の危険性があると勘違いしているので、注意散漫というか少しの変化にも過敏になる。大きければなおさら。
「攻撃中止!」
エネは俺の合図で巨大な塩の殻を生成した。だがこれは、ただの塩の塊で他のISの力で浮かしているし中はただの空気だ、しかし、爆発するかも知れないという先入観が攻撃を中止させた。
「さあ、狩の時間だ」
「君の術中か…………。」
これだ、ここまでエネの情報を隠してきた甲斐があった。
「杭は塩でいいだろ。」
「ああ、一人落とした、ISは回収できる状態にしてある。」
ISに食い込ませた物質を変質させてエネの勢力のエネルギーにする、それを基点にしてISのハード部分での侵食だ。
「まあ、予防接種みたいなものさ、ISにとって害はない。」
俺の疑問に思っていることを先回りして言われた。
「心を読むんじゃねえ。」
「読んでなんかない、分かってしまうのさ。」
言うねぇ。
「喋りはもう少し後だ。後方支援で一番遠い奴から狙うぞ。」
「了解。ポータルを開く。」
相手の敗因は、ISを使っているということだ。
「よいしょ」
白い球体を注視しているところにいきなり後ろから敵が現れたら、なすすべもないだろう?。
「IS回収。」
消えて背後に出て塩の楔をISに打ち込む。それを繰り返し繰り返し、行っていく、何せ自分のISから人が出てくるなどとは思いもしないだろう。
そして無駄に全方位に気を配らなければいけなくなる。たとえるなら、背中にバカとかかれた紙を自分で張っているにも関わらず、慌てふためいているといった状態で実に滑稽だ。
「これ、実弾で回収できないの?」
「やってもいいがめんどくさい。」
なんて事を。まあ、少し考えたら、弾にISのバリアをすり抜ける加工をするそして遠隔でISを回収するっている2ウェイ何たるめんどくささだろうか。
「おーけー」
めんどくさいことをさせるのはまあ、本意ではないし効率的じゃないからな。よし、このまま続けよう。
出ては楔を突き刺し引っ込んで回収、出ては楔を突き刺し引っ込んで回収といったサイクルを繰り返していく。
「あと何機ぐらいあるんだ?」
「そうさな、90ぐらいにはなってきたか。」
普通の戦争じゃ一割の戦力がなくなった時点で敗走って感じだ、だがISはまだ大戦争で使われたとかそういう経験があるわけではない。平和な時期に生まれてしまった因果か、まだそこにいてくれてる。
なぜか、ISを過信しISを使えば「勝利する」と勘違いしているからだろう。そこにつけこむ。
ISの力を使ってオープンチャンネルで話しかけた。
「お前らの指揮官は無能だな。」
「!?」
「そんな指揮官と取引がしたいんだが、どうだ?乗ってみないか?」
いや、乗るしかないんだ。一縷の望みを掛けて。相手は俺が万能であると認識しているはずだ。打てる手は打った後は…………。
「内容は?」
乗った。
「お前らの海上プラントから10キロ圏内の不可侵、と人質をくれ、これは誰でもいい。そうしたら今の戦闘を終わらせてもいい」
「…………。上に掛け合ってみる。」
「果たして、全滅するか引くか、お前らの指揮官はどっちを選ぶかな?」
おちょくるような口調。で、30秒ほど結果はわかった、なにせ絶望しかしていない。
「……………決裂だ。」
その言葉と共にいっせいに銃口を塩の殻に向けている。
「撃ち尽くせええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!!!!」
「ふうん」
攻撃してきた。塩の殻から硬質音が鳴る
「じゃあ、死ねよ。」
「全ポータル開放、康一、今や敵はただの移動道具だ。」
その言葉を聴いて、脳が痛くなった。やわいものに針を突き刺したと錯覚するぐらいに「興奮した」ここが正念場で、死力を尽くす。
ISポータルに突っ込む、そして見かけたものから出現する。もちろん背後を取って
「ラアッ!!」
ISの装甲に突き刺す、なるべく手足のほうがいい、紙の束にナイフを振り下ろす感覚が手に返ってくる。反撃してきたが、それを受け入れるように近づいてポータルに入る。
さっきの取引はここにあるISにすべてポータルをつける作業をする時間を作るための布石だった、あのまま撤退してくれればよかったけど。
三人ほど近接攻撃してきた。いったん消える、そして同じ場所にでた、全く別の場所に出た、すばやく三つの楔を打ち込む
そして消える、神速といっても過言ではない。ノーモーションで移動できるのだから。さて、スナイパーを先にやっておこうか。撃ったらやる。
何人だ…………まあいいや、目に見えたものからやる。
「合図三十!」
「了解だ。」
まだ、塩の楔は起動させない。虎視眈々とそれを起動させるのに最適なタイミングを狙っているだけ。
「作業ゲーだねぇ」
「やってるこっちは体力がんがん削られてくるんだけど!?ああ、ダークソウルの気分が。」
少し食って掛かった、ジョークでも言ってないとやってられない。少し説明するが体力が削られる、それがエネの最弱のISたるゆえんなのだ。
そもそも、エネの力はすべてのISが持っている力の応用だ、なんか聞いた話によると戦闘中にISの経験があがり武器が生成された例があるらしい。それが、塩の殻などになっているだけなのだ。
つまり、エネの正体が何にも付いていないISコアそのものでありゴテゴテした装飾が付いているISのほうが単純に強い。
「使いこなせなければただの鉄くずだけどな」
「お仲間よね!?」
よってパワーアシストなどあるわけがない。
「あ、30まで行ったぞ。」
「了解!」
その合図で、俺はペトゥルを巨大な塩の殻に撃った。それによって体の内を轟かす爆音と閃光が瞬く。海から頂いたマグネシウムやその他もろもろの原子が光を放った。
「回収だ」
ISの回収自体は秒あれば楽、らしい。フラッシュによって作られた盲目の何秒間で味方が半数消えてしまったら、残された奴の士気はどうなるだろうか?
そして光が止んだ。動揺がそこに流れた。
「残党狩りといきましょうかね」
落ちていった奴は後で回収するとして。
「どうする?あのまま、殺してもいいけど。参ったするなら君たちの命は助けてやらんこともない。」
といいつつ、塩の楔を打ち込んでいく、それで塩の楔打ち込まれていないISが半分ほどになりつつある。
「もう士気なんてあったもんじゃねえな。」
楔を打ち込んでいる時点で、もう無抵抗な奴もいたが、容赦なく突き刺していく。なんせ参ったとも何も言わないもの。
「ほい」
すべての楔を起動させ、ハエのようにあったISの大群も消えてなくなっていた。
「お疲れ。」
「お疲れさん。俺頑張った。」
俺は、海上プラントから出たオレンジ色の救難艇を見送りながら、プラントに足を運んだ。
「はぁ。」
一仕事終えた充実感、なぜか、ため息とともに幸せが沸いて出たような気がした。