ここは、闇の中。以下略だ。最近シリアスな雰囲気だが、こんなくそったれな場所だからこそコミカルにすごさなければいけないということもある。
というか、ここはIS学園に負けないくらいコミカルである。
【銃】
射撃練習場というのは、もっぱら新兵の練習のためにあるものだが、ここにしては意味合いが少し違うようで。
初めて来た時には、作戦中だったということもありここはがらんとしていたが、しばらくして銃を生身で撃ちたくなった時に練習場に行くとそこは、ダーツでもしているんじゃないかと言うくらいの和気藹々とした娯楽場になっていた。
「よう、新人。楽しんでるか?」
顔を真っ赤にして酔っ払ったオヤジが俺の肩を持ってそう言った。というか銃声であまり聞こえんぞ。
「ここは、見てのとおり娯楽室だ。」
名前射撃練習場なんですけど?絶対に娯楽で人を殺すようなものを扱ってるんじゃないよ。
「陰鬱なところで働いているストレスをぶっ放すことで発散してやがる。しかも、それぞれ食い扶持を確保しているから性質が悪い」
「良いことじゃないのか?」
「馬鹿言え、全部タバコと酒と女に消えるぜ?」
「恐ろしい使い道だな。」
俺から言わせて見れば金をドブ捨てるようなものだ。ファントムタスクも元々ドブみたいなものだが。
「ばれては学習しばれては学習しのいたちごっこがここの日常さ」
「そうかい」
「どうだ?一発撃っていけよ。」
「遠慮しておく。騒がしいのは好きじゃないし。一番上のババアに目を付けられてるんでね。」
「中々エッジの聞いたジョークじゃないか。すると、土砂降り姉さんに目を付けられてるのか?」
「その通り。俺は部屋で寝てるさ。」
といって、俺はここを去った。もう、今ではここには来ていない。…………何の恨みがあって顔写真がボロボロになるまで撃たれるんだよ。
【金】
金です。この世を動かしているのは金です。とは書いたもののそれは適当ではない。世界を動かすのは欲望であり、その欲望を体現しているのが金というだけだ、金自身が重要であるという訳ではない。
が、もっとも多くの万能性を秘めているのは金である。
「多くね?もっと整理しようよ」
俺が目の前に見たのは、領収書の山。食品や装備の整備代や兵器の購入、その他もろもろを合わせたその領収書だ。
むしろ何で領収書なんてものがあるのか分からないが、あるのは確かだ。そこはまだいい。使い方に問題がある、よくもここまで湯水のように金を使えるものだ。
「いらっしゃい」
「うおっ!?」
いきなり横から声を掛けられた。思わず振り向くとそこには一人の女性が。
「新しい仕事仲間の人?」
「ある意味そうだが……………新入生、転校生の見たいにここらを探検中だ。ここは何をするところなんだ?最もゴミの山にしかみえねーが」
すべてトイレットペーパーにするのであれば納得の量だが。そのような基地外じみた行動はしないだろう
「見れば分かるでしょ領収書の山よ」
「ここにおいといて上から金が出るのか…………」
「私から出るわよ」
…………一枚百円レベルの領収書でもこの量じゃいい値段するぞ。
「これ一年分?」
「一ヶ月分だけど?」
大企業に就職したらこんな風に驚くのだろうか。というか問題はそこじゃない少し前だ、これだけの経費をこいつがまかなっているのか?
「どこの大蔵省もびっくりだ、失礼しました」
「まあ、ゆっくりしていきなさい」
「これを手伝えってか?この量を手伝えってか?」
無茶だ、どれほどの時間が掛かるのだ、睡眠時間まで削れる。
「まあまあ。」
「やらなければいけないことがありますので。」
「まあまあ。」
「……………IS部隊の所属なんで、これから出撃しないといけないんですけど?」
「まあまあ。」
こいつは「まあまあ。」としかいえんのか!?とっととこの場から逃げたい。半ば強引に逃げるしかないか。
「それでは。」
「待ちなさい」
こうも、俺の周りにいる女性は握力が強い人が多い。ふと、嫌味のように織斑千冬やセラフィーナの顔が浮かぶ。がっちりと捕まれて動かないのは女性の嗜みというものなのだろうか?
「……………手伝う。」
「いいの?」
顔を輝かせながら言うんじゃありません。強引過ぎるだろ。
と思いつつも、苦笑しながら俺は懐かしい生徒会に属していた頃の事務仕事を思い出しながら、血生臭ささを洗い流していった。
【戦い】
やっみにかーくれていっきるおれたちゃよう…………人間も闇に生きてるよ…………。
ここにいると本当にそう思う。俺にいたっては修羅場を何回か越えてきたけど、ファントムタスクにいる時にはあれ以上の修羅場はなかった。
あれは、就職して最初の戦闘だったか。
「お前にはテストをして貰う。」
「テスト?」
テストとか筆記であったらいいのだが、ここにいる以上オツムなんぞ評価される訳がない。故に実技、むしろ実戦に駆り出されるという意味だろう。
「ああ、小規模でやっている兵器の研究施設がある。そこにある兵器を鹵獲してくるのが目的だ。」
「作戦の行動人数は?」
「貴様を入れて二人だ」
『おうおう、ブラックにもほどがある。す○屋か何かか?』
むしろす○屋で済んでほしい位だが、拒否はできんよなぁ。
「ISを持っているなら簡単だろうとの判断だ。」
…………もう一人は、お目付け役ってことか。
「分かりました。でもう一人の方はどちらに?」
「ふむ、おい!入って来い」
相当キツイ性格の人が入ってくるだろう憂鬱だ。
「ど、どうも……………アレックス・マッケンジーです」
「」
いろいろな意味できつかった…………。俺も同じくどうもとしか言えなかったじゃないか。
「それでは、作戦立案は貴様に任せる。」
首が180度ほど回ったんじゃないかと言う位に素早く俺は振り向いた。いや、それはコスパ良すぎるだろ。あれよ?RPGの主人公に適当にやって?って話かけるのと同じよ?それ?
てか、置いて行くの?俺をこの状況で置いて行くの?
「くれぐれも背中には気を付けろよ」
「了解いたしました」
まて、ステイ!ステイ!この少し小汚いおっさんを置いて行くな!せめて俺は置いてもいいけど、このおっさんだけはせめてテイクアウトして行け!
願いは届かず、おっさんだけが残った。
「…………。」
じっと、肩を落としながらアレックスとやらを見た。こちらに見られていると感づくと小動物のようにオドオドしていた。これが美少女であれば萌えとなるのだが、そんなものをおっさんに求めたらゴミしかやって来ない。
「はぁ。速攻チケット取って研究施設に行きますか」
「えっ…………は、はい…………。」
◆ ◆ ◆
襲撃当日。目の前には豆腐のような建造物。中では兵器を作っているらしいが…………。まあいいだろう。
「…………。」
「…………。」
隣のおっさんとはこれまでに一言も会話していない。会話というより寧ろ俺の恐喝みたいな印象になる。
「攻撃するけど。…………ああ、もうお前は俺の連絡が入ったら本部に連絡しろ。失敗か成功か知らないが」
「わ、私はどうすれば…………。」
知らん。寧ろ今のこのおっさんに戦力として期待する方がおかしい。
「そこで待っとけ。ほら護身用の拳銃とかないのか?」
「ええ、持ってません」
「じゃあ、これをやる。」
といって、俺は懐から拳銃を取り出して渡した。初めてこう言う物を買ったけど結構安い物だな。
「…………こんな、チンケな銃しかねえのかよ」
ん?
「こんなチンケな銃しかないのか?って聞いてんだよ!」
は?
「ないですけど?」
「ケッ。ったく」
お前、こ○亀の本田かよ。今の今まで演技していたという訳じゃないだろうし。
「作戦を言うぞ俺が突っ込むその内にお前は内部に侵入し暴れろ」
それは作戦とは言わない。というかそう言うことしかできないってだけでもあるが。
「了解しました」
もう自棄だ。「いくぞ!」とアレックスが言った。
『面白い人間じゃないか』
「付き合わされるこっちの身にもなってくれよ…………」
俺は側面から回り込み、エネに中を探らせながら入った。
『獅子奮迅の活躍といったほうがいいな』
「冷静さを失ってこっちに攻撃してこなきゃいいんだが。」
不意に、俺のお目付け役の状態をエネが知らせてくれた。
『しかし、私を使うなんて良い度胸だ』
「この最初の作戦だけは絶対に失敗したくない。それにこれからの活動を円滑に進めるために必要なことだ。」
『利害が一致しているからね。それに活動する下地を作っていくのは悪いことじゃないさ。』
「よく分かってるゥ!それじゃさっさとぱくって行くわ。」
非常に警備システムがずさんだが、エネを前にして獅子奮迅の活躍とまで言わしめた奴が相手だ、そこまでを求めるのは非情というものだろう。それにこうやって取れるのはそのおかげだ。
俺が見たのは、結構ポピュラーな重火器が多い様だ。とはいっても中身は最新式のものに変えられているんだろうが。
「ごっそりカゲアカシに入れられないか?」
『出来るに決まっているだろう。』
エネは少し、弾んだ声でそういった。なんか、理由は分からないがうれしそうだなと感じた。
しばらくしてすべての重火器が光の粒子となって消えた。カゲアカシにでも入れたのだろう。
「完了だ。」
俺は、アレックスに連絡を取った。
「こちら『男』だ。アレックス退却しろ。」
そう通信を入れたはずなのだが。聞こえるのは気の狂った笑い声だった。
「何があった?」
「ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
だめだ。こうなったら本部に連絡を入れて放置してもいいか聞こう。
「不許可だ、回収してつれて来い」
今。確実に分かった。試験はここを襲撃する事じゃなくアレックスをとめることだった。
「…………めんどくさい。」
『ファントムタスクも回りくどいことをするもんだ』
それにはまったく持って同意する。そういうことだったら一つ方法がある。
「エネ、コウリュウだ」
『了解だ。』
俺は、アレックスの元へ走った。青いジャージで。駆けつけたときにはもう終わっていた。いや、終わってなかった。そこらに蔓延る鉄と硝煙の匂い。そして人の形をしている者は、アレックスしかいなかった。
目は血走り顔つきは殺人鬼と見間違うぐらいに険しいもので、実際に何人か殺しているようにも見え、正気を保っていないようだ。
「誰だテメェは!殺す!」
二言目で完結していらっしゃるじゃねーか。と脳内で突っ込みしているときにはもう襲ってきた。
「龍咆」
……………案外あっさり鎮圧出来たな。
「畜生。」
「帰るぞ」
【とまあ、そんなこともありました】
こうやって振り返ってみると乱暴で楽しかったな。それも、ここで少し変わる。
目の前は、一瞬でも気を抜いたら殺されてしまいそうな凄みがあった。だが、その凶暴な雰囲気をぶつける相手がテレビカメラというのはどうにも間が抜けたところがある。
今、俺は歴史に一つ騒ぎを残すきっかけを目の当たりにしている。そこには実働部隊の幹部どもが勢ぞろいしていて、オータム、M、スコール、そして篠ノ之束までもがいた。
「……………妙な真似は起こすなよ。」
オータムがいつもの敵意をむき出しにした目でそう言ってきた。おそらく、俺が以前篠ノ之束を引っぱたいたということに関連して釘を刺したのだ。いつもの薄っぺらい笑顔で手をひらひらと振って、「どっかいけ」といっておいた。
「これから、宣戦布告を始める」
オータムがそう言った。戦線布告。突然に動き出した亡国の手先は、世界に触れて、来た。