IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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世界が乖離するようですが俺あんまり関係ないっす、レーション食って寝た

「これが暮桜か…………。」

 

俺は先に暮桜を確認しに来、もし、逃亡者の目的がこれであるなら先に行き着いてもいいはずだ。できることならこのISも回収したいところだが、このISは凍結状態、つまり強制的に眠らされている。

 

「そんなんじゃ持っていく意味もないし、凍結解除ができたところでって所だな」

 

まだ、逃亡者もここまで来た形跡はないし、網は張ってある。エネの力を使って極細の糸を張り巡らせた、それがセンサーとなって警告するようにした。

 

「エネ、聞こえるか?」

 

こうも会話ができないと暇なのかとびっくりする。が、無い物を嘆いても仕方がない。

 

「来た」

 

ふと、勘のようなものが働いた。息を潜め、獲物を待つ。タイミングは一仕事終えた後。ここを立ち去るその時に仕留める。

 

ドクン、ドクンと心臓が力強く血液を循環させているのがわかる。落ち着かせるために、心を無にして待った。

 

俺が入ってきたところそのままに扉を開けて出てきたのは待ちに待った人物だった。といっても初めて顔を合わせる、それにISを装備している可能性が高い。戦い方を知らないし、それは相手も同じだ。

 

彼女は暮桜に触れながら立っていた。たぶん、ISとリンクして凍結を解除しているのだろう。たとえるなら、言葉が通じない人間に「おはよう」に類するような言葉を覚えさせるみたいなものか。

 

作業が終わったようだ。ここしかない、俺は彼女の前に姿を現した。

 

「回収しに来た。」

 

「……………。」

 

無言で首を縦に振った。それなら責務を果たすだけだ。俺は手を差し伸べた。陸路で来ている分にはそれ相応の場所からでなければいけない、あらかじめスマホをおいてポータル代わりにしてるので戻るにはそこまで苦労はなかった。

 

「まあ、回収は完了かな?」

 

俺は、目いっぱいカゲアカシのビットを加速にまわし帰っていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「帰ったぞ。」

 

クロエは、篠ノ之束の人質だ。そこまでひどいことはしないと思うが、まあいいだろう。

黒服がぞろぞろと列を作ってクロエを囲み連行していった。

 

「飯でも食いに行ってくるか。」

 

それにもうそろそろ、祭りが始まるらしい。何を隠そうISが集まりすぎたのだ、つまり、亡国企業が国を取り戻すために世界に喧嘩を売る。

英気という訳ではないが、飯でも食っておかないとやってられないし会いたい人もいるしな。

 

今日の飯は何だ?肉だったらいいが、たまにまともな物を出さなかったりするから性質が悪い。そのときは野草でも採って食べてるけど。

俺は、食堂のような場所に向かった。

 

「げ」

 

品書きを見たらとんでもなかった。まだましな部類には入るが、レーションを配布していた。

ここは正規軍ではないし、ましてや合法な活動をしている訳がない。そんなところがまともな糧食がある時はない、こんなときは皆どこからか備蓄しているところから食料をかっぱらってくる。

 

が、そんな伝は俺にはないので放置だ。レーションを受け取り、近場の椅子に座ってモソモソと食べる。

 

本当に、今回の作戦は疲れた。一夏も成長していたし、収穫はいろいろあった、たとえばIS学園から武装をもらってきたりな。

それも、ランドルに持っていって魔改造してもらいたいのだが、その協力を取り付けるようにしたいところだ。

篠ノ之束にでも持って行きたいのだが、あれは俺の手に余るものを作るか、それか自分の脱走に使うことだろう。

 

危険すぎて、今は実際の運用もできない形だが、他国へのけん制ぐらいはできる。

 

つまり、俺にはランドル以外に装備兵装の面で頼る相手がいないのである。

 

一応俺は、ファントムタスクの一員として名を連ねている。その間は派手な動きは見せないだろうし、まだ手を組み易い…………はずだ。

 

まあ、そこらへんはこれからの交渉力に掛かってくる。ランドルが能動的に俺に会いに来たら即座に計画は頓挫すが…………そんなことはないな、調べる前から人前に姿を現さない変人として名が通っていたし、人気が大量にある食堂になんか顔を出すわけがない。

 

「やあ。始めまして。」

 

始めまして(・・・・・)?」

 

あれ?いる?俺がレーションを食べている途中にランドルがいた。何だ?腹のそこに刀を隠し持って、俺の命を刈ろうとしている顔をしている。奇妙な笑顔を貼り付けて、俺に話しかけてきた。

少しは隠そうとしろ、と突っ込みを入れたくなるほどだ。それにふざけんな。

 

「えっと、誰ですか?」

 

「私は、ここの研究開発の主任のランドルだ。以後よろしく。」

 

それを言うなら以前よろしくでしょ。白を切っておいたが、ランドルがいつぼろを出すか分からない、俺はランドルに自主的に部屋に戻さないといけない。

 

「早速本題に入るが、私に君の装備の面倒を見させてくれないか?」

 

「…………その申し込みは悪いけど他の人にしてくれないか?」

 

「何でだい?君は活躍しているからね僕の作品を使うのに適している。」

 

嘘付け、あわよくばインストールさせてエネを調べるつもりだろ。

 

「常識的に考えて他のところに戦力を均一化するべきでしょう。他の人の装備をいい奴にしてやってくれ。」

 

「これからの戦いは群ではなく群を抜いた個で決まると言うことを知らないのか?。」

 

ごもっともだ。戦力になるISの数が限られているから、おのずと使う物の腕と新兵器増強を両立させていかなければいけない。それは俺もよく分かっている。

 

「俺は、俺の大切なものを傷つけた奴をぶん殴るためだけにここに来た。」

 

「……………」

 

「強すぎる火は自分の身を滅ぼす。俺には、新しい武器くれても使いこなせなさそうだし。遠慮させていただきますよ。」

 

この日本語を翻訳すると、「うるせえ、さっさと消ろ。暴力に訴えんぞ、殺す」の意味だ。その意味を汲み取ったのか、また来るとだけ伝えて此処を去った。

 

「なんだったんだ?」

 

変な行動をするという事はそれなりの理由があるということであり、これは変な行動に当たる。理由は検討はつくがそれと断定はできない。

 

「これ以上妙な真似をしないでくれ…………。」

 

心から、そう思うばかりだった。

 

 


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