そこは闇。だがそこは物理的な闇でも、概念的な闇でもない。そうここは社会的なやm…………。止めだな。もうこんなことしなくてもいいや。と思っている相澤康一です。
今は、キャノンボールファストの襲撃を終えて先に帰還しているところだ。
『以外にあっさりしているな』
岩塩系男子でも自称しましょうかね?演出だけだからこれ。まあ、そんなことはどうでもいい。本当にめっちゃ襲撃して点数は稼いでいたからな、今回のダメ押しで俺の部屋にベットが支給され、それに。
「理由は、いろいろあるが。ここの技術者と出会えるかも知れないっていうのが大きいかな。」
『はあ、君には本当に迷惑をかけているよ。』
「なあなあで、流されてやりたくもないことをやらせるのは俺の本意じゃない。それに関しては俺を気にしないでいい。それにどちらにしろ俺はやるしかない」
そのままIS学園にいたら、研究機関で白衣の爺と薬品のランバダを踊らされる。実際更識の親父さんに聞いたらそういう機関に『就職』することになっていたらしい。
IS学園の国の庇護下から脱出すれば、悪い人たちのところに『就職』することとなってしまう。俺は就職先にもっとも安定した場所を選んだだけだ。
まあ、それを成功させてくれたエネに対する俺の実利は枚挙に暇がない。そもそもお忘れになっているであろうが俺とエネは共生的な関係になっている。どちらか死んだら両方…………死ぬのは俺だけかも知れないな。
『死ぬのはな。いい機会だここで私が君に住み着いている理由でも話そうか?』
「いや、いい。面白そうだったからだろ?」
最初に言っていたからな。戻された記憶にそういっていた。
『あの時はそうだったんだがねぇ。昔と今とじゃ事情が結構変わってきてしまってね。』
まあ、聞いたところでどう変わるわけでもあるまい。どうあがいても俺はエネを信じているからというか信じざるを得ない。それにしてもここも有名になってきたよな。
「露出しすぎなんだよな。そもそも、やっていることはテロ組織と似たような物だけどさ、もう少し隠れながらいろいろやっといたほうがいいと思うんだけど。証拠も残しすぎだ。」
『君が言うようなチートコードは持っていないんだろ。それに個人的にここの人間はあまり頭がよさそうにない。』
「だろうな。
エネは、今あるISの中で純粋すぎるぐらいのISだからな。強すぎる力はどうであれ人にぶつけたくなるものさ。
『はぁ、そんなものかね』
「のっぴきならない事情があれば、どんな聖人でもお前を使うだろうね。」
エネの能力は万能の限りを尽くしている。それの有用性に気がつくにはどうしたらいいのだか。根本の考え方から間違っているんだこの世界は。
『私たちは使う人間に左右されるしかないのだよ、どこまで行っても道具だからね。』
「根っこの部分では変わらんだろお前は。」
『魚心あれば水心ってやつさ。私たちはスポーツ器具兼、ただの殺戮兵器の烙印を押されてしまっているんだよ。もともとの
レッテルを貼り付ければそう使われるか。
「はぁ。俺じゃ不足か……………って言いたいところだけど不足だろうな。そうか、事情っていうのはそういう意味か。」
『ご明察。君は世間一般に知られる前からISというものを知っている。これは世界に五人ぐらいしかいない』
そういうことか。まあいい。
「かつてないほどの自己中心的な理由だなぁおい。」
『悪かったよ』
「いや、本気で言ってる訳じゃない。気にしないでくれ。……………そろそろ、研究者と会えるようにしてもらわねば」
時間も時間だ。これから迎えにいってゴマすっておかないと。
『言い方があるだろ!?というか君にはするゴマがないような気がしないでもないが。それより康一、結構口に出してしゃべっていたけど大丈夫か?ここらは超小型監視カメラにナノマシン発信機たぶん体に埋め込むタイプの盗聴器もあるぞ。』
「バカいうな俺はしりとりしていただけだぜ?何をしょっぴくって言うの?」
『……………君がいいならいいが。さっさと行ってきたまえ、はあ、全くこちらも忙殺されそうだよ』
俺は応援というのには微妙な応援を受けてあの人たちの迎えに行った。そういえば、あいつらを仲間といったことが果たしてあっただろうか?
◆ ◆ ◆
IS学園にて。IS学園に相澤康一が残した傷跡は大きい。彼自身の離反、そして凰鈴音の行方不明この二つはかなりの衝撃を与えた。
その中で織斑一夏は一人、事件の現場となったアリーナのロビーにあるベンチにただただ座っていた。
「…………鈴」
織斑一夏は無気力に友人の名前を口にした。後頭部を殴られたような脳の攪拌が一夏の思考を鈍らせ、紛れもない苦々しい真実を頭で再現していた。
ゆったりとした日常。そこに現れた異物。胸を食い裂く鈍い光を放つ刃。硬直。狡猾に自分たちの心に滑り込むように邪な心が蝕んでいく。
真っ先に動き始めたクラスメイト、救うために。消失、鈴の体。そして、鈴のISが他人の手に渡るというひとつの事実。
後悔、自分は動けなかった。後悔、自分は友人と思っていた者の変化に気がつかなかった。後悔、鈴を救えなかった。後悔、自分が弱い。後悔、後悔、後悔。
後に続く悔やみだけが一夏をその場に捕らえていた。
だが、冷静に考えている部分は少ないがあった。
「死んだ」
鈴のIS甲龍。それを康一が使ったということはISと鈴のリンクが切れているということ。つまりISがぶっ壊れているのか鈴がぶっ壊れているのか。どちらが簡単かといえば後者だ。
前者は完全にありえない。あの一瞬でISを操作しリンクを切るなど。実際にやるには時間とそれ相応の知識、機材を要する。それこそ
「…………死んだ。」
だが、信じたくない。それでも、意識は拒否しようと、往々にして事実は反芻されていく真実だけが残っていく。
拳を強く握った。やり場のない怒りにそれを震わせ、自身の膝に叩き付けた。痛みが思考を楽なほうに逃避させていく。
「くそッ!!何でだよ!」
今、ここに康一が居たのなら問い詰めて話したいことがたくさんそれはもうたくさんある。だけど、それはかなわない。
それを、物陰から見ている人が居た。ほぼ全員の目にとまっていたが、それを言えるものはいまだに居なかった。
「……………織斑先生。一夏君大丈夫でしょうか?」
それを心配した山田真耶はそう隣にいる千冬に問いかけた。彼女も声をかけたところで慰めにもならないことはわかっているが、本当に見た限り織斑一夏と相澤康一は普通に「友人」をやっていたのだ。
「知らん。私はやれることをやるだけだ。始末書がエッフェルタワー並みになるぞ。」
その言葉がさすものは康一の裏切り。IS学園側がつかんでいる情報は少ない。
「篠ノ之さんたちが証言してくれた事は本当なのでしょうか?」
「…………こっちだって説明して欲しい位だ。」
巧妙とはいえないが16弱しか生きていない人間にしたら十分精緻な裏切り。それが呼び水となり大きな戦禍をまき散らしたこの事件は悲惨な物だった。
「それより、被害者の保護を優先しろ。」
「今も継続中ですよ。」
今回被害があったのはIS学園単体だけではない、一般人も巻き込まれたのだ。IS学園自体の被害も軽い物ではない、いやむしろ一般人を巻き込んだからこそ、ここまでの損害を与えられたというべきか。
「ISを三機も盗られるとはな。」
そのようなことがおきればどうなるか、それは世論がIS学園を批判するしその大本である日本自体も危うくなるかも知れないのだ。
「やることや書類は過剰に用意しなければいけないぞ。」
「はぁ、また睡眠時間が削られるのですか…………。」
といって仕事場に戻っていった。その後ろ姿は言外にあいつのせいだといっているような気がした。
◆ ◆ ◆
俺は帰還するであろう、俺の所属するところのトップ。スコールに催促をした。
「お帰りなさい。スコールさん。で?どうでした?」
「成功。と呼べるほどの戦果は得たわ。」
「それはよかった。ここに来てからの初めての全戦力投入みたいなものでしたからねぇ。」
今回の作戦は少数精鋭で三班にわけ、ひとつがISによるIS鹵獲、けん制班、もうひとつが一般人の人質を取り時間を稼ぐ班、最後に退路確保と遊撃の班。
総合的に動いてこの結果となった。ちなみに俺はIS鹵獲の班
「いつもは迎えに来ないのに今回だけ来るなんてとても現金ね。」
「いやはや、それほどでも。」
「褒めてないわ。それでも今回の作戦におけるお前の功績は大きい。…………ファントムタスクの研究チームと接触することを許可しておく、ベットも支給されるわ」
やりぃ。格段に暮らしやすくなったぞ。
「ありがたいですね。この機に研究班にでも行きたいものですが。」
そもそも直接入りたかったけど、俺の情報網だと近所のキャバ嬢のパンツの色は調べられても、こんなテロ組織の潜伏場所なんて分かる分けないもんなぁ。
「男がISを使えるというだけでも十分虚を突かれるわ」
「でも、それは俺がIS学園にいたときの話ですよね?俺がファントムタスクの一員になっていることはバラしちゃいましたから。」
「それくらいなら、よくないけど。もっといいやり方はなかったの?」
「『M』がバラしましたからね。前情報が大きいほうが処理落ちさせることができる。それでも
「そう、敵地に居たにしては良い戦果よ。」
「そうですか、ありがとうございます。それでは」
その場を後にして、俺の戦利品を盗られないためにスコールに背を向け、この場を後にした。
…………これで、もう少しタイミングよく技術者どもに会いに行くしかない。か。