さて、部屋に着いたところで。そうだな今日は、一夏の写真を整理しよう。俺はパソコンを立ち上げて
「えっと。これを旗艦にして、キラ付けでボーキが足りないから防空だな」
「何やってるの?」
いきなり声を掛けられて舌に電流が走ったように驚きが駆け巡る。その声に心辺りがありまくったのでその名前を呼ぶ。
「おい簪。いつからそこに居た?」
「最初からに決まっているじゃない。気が付かなかったの?」
正直気が付きませんでした。ここで文句の一つも言っておきたいところだが、あいにくと俺も人を驚かせることはやっているから、そんなことは言えない。
「まあな、で、なんのようだ?」
「久しぶりに話をとでも。いけなかった?」
「んにゃ、大丈夫だ。それに俺もなにやるってわけでもなかったしな。」
特に何もしなくても大丈夫だ。
「まあ、ついにお前のISも完成したな。」
「それね。武器の扱い方がいまだに手に余るのを何とかしたいの」
更識簪の専用機は打鉄弐式。俺がオルコット嬢と戦った時や、担任殿と戦った時のIS、打鉄の発展進化版だ。
「一枚葉は伊達じゃないからな、扱いにくさも随一だ。」
くっっそ使いにくい。鼻水が出るぐらい使いにくい。だけど武器だけだ俺の場合機体までクソ使いづらいから嫌だ。
「いや、最高の汎用性と最高の煩雑性を兼ね備えているって言うのがおかしい。私のミサイルなんて中に特種な薬品入れてそれを命中させて効果を得るって言うものだからね。」
「いや、話聞いてるだけだといい物じゃないか?」
「それが、二種ぶつけると違う効果を生み出してしまう。つまり、本当の力を出す為には瞬時に適応した薬品ミサイルを選択して、それを完璧に当てなければ成らないということをしなきゃいけないのよ…………」
頭が痛くなる話だな。俺には絶対に出来ないような類をやってのける。
「へえ、あいつらもよく分からないものを作るなぁ。」
「うん。そうだね。でさ。」
「いつまで私たちを騙し続けるの?」
「そりゃ、最初までさ。」
俺は答えない。いや、答えになっていないと思わせるのがこのコツだ。俺は、うそは、ついて、居ない。
「…………どういうこと?」
簪は問う。俺は答える。
「だって、一度騙せば
真摯に尚且つ狡猾に。言葉を相手に突き刺していく。
「つーか、いきなりなんだ?詐欺師にでもなりたくなったか?」
掛けた鎌は完全に効果を失墜させた。
「…………ごめんなさい。実は、内通者が居るって噂で色々聞き出せって。」
「へえ」
信用されていないのがありありと見えたな。むしろ信用する方がおかしいと思うけど。
「…………驚かないの?」
「イベントに毎回襲撃されるような場所があるんだって、だったら潜入されてもおかしくないよね。」
道理としてはおかしいことじゃない。俺たちぐらいの歳でスネークレベルの諜報能力を持っている奴も居るかもしれんぞ?
「それはそうだけど。」
「まあ、手放しで信用されるとは思ってないし。けど、痛くも無い腹を探られるのは不快だな」
隠し事は一杯あるから嫌なものは嫌なんだけどな。
「そうされるだけの理由があったからね。」
「心当たりが全く無いんだが」
ありまくりである。表情に全く出さないようにしているが。
「それならそれでいいよ。」
「そうかい。ぶぶ漬け食う?」
「帰れっていうの!?」
「ゲームでもしていく?お前もこれ以外に話すこと無いだろ?…………なら。」
俺は今、多分物凄い嫌な笑顔をしていただろう。
「「さあ、悪戯を始めよう。」」
同じく三日月型に引き絞った顔が鏡のように複製された。
◆ ◆ ◆
ふむ、そろそろだな。俺は一つしかない部屋の扉が見えるところに陣取ってPCをいじくっている。中身は何も問題が無いように普通に記念写真と思えるような物にしておく。
まあ、待っているまで暇だしな。写真整理でもしておこう。そろそろ更識楯無が来る時間だハンドサインで所定の位置で待機しろと合図を送る
カチャカチャカチャッ ッターン
カチャカチャカチャッ ッターン
カチャカチャカチャッ ッターン
カチャカチャカチャッ ッターン
外にでも聞こえるように、これでもかと言うぐらい音を立ててキーボードとエンターキーを叩く。パソコンを使っているよと言うアピールをわざとらしくやる。
あ、来た。
「やっはろー」
「なにしてはるんですか?」
俺は、モニターから目を離さずにそういった。カチャカチャカチャッ ッターンは継続している。餌だ。
「なにいじっているの?」
「写真ですよ。色々溜まって来たんで整理しているところです。」
「へえ。……………面白い整理の仕方ね。」
「そうですか?」
「なんで、何月何日とかそういうので保存しないの?。写真名が「あざといロリ(ごく一部)チャイナ」や「張り笑顔とかと」ってなにこれ?」
「その写真を見た時の率直な感想ですよ。全部記憶して。捕獲しろ」
「え?」
生徒会長の背後から簪が襲いかかり、捕獲するが背後であるが故に…………。
ドゴッ!
「グフッ…………!」
「簪ちゃーん!?」
そして、肉親の情を使って注意を逸らして。
「ニャッ!?」
「捕獲完了」
にやりと笑った。
「作戦成功だね!」
そして……………。
「え?なんで縄を持ってるの?ちょっと!?なんで嫌な笑顔をしながらこっちに来てるの!?まってまって。あっあっあっ…………あっーーーーーーー!」
◆ ◆ ◆
ドアが開いた。この部屋の中で起きていることは、開けた主は分かっていない。と言うより逆に分かっていたら逆に恐怖を感じる。とはいえ、全くそんなことは無く暢気にあくびをしながら部屋に入ってきた。
「ただいまー。」
「おかえりー。」
これから起こることの元凶となっている男は、モニターから目を離さずにキーボードを叩いている。何か見る人が見ればデジャヴだ。
「ふいー疲れた。」
そして、入ってくるなりIS学園指定制服を
「おつかれさん。」
「ああ、今日は学食か?」
「そうだな材料もすくねーしな。」
「ま、明日から休日だ疲れることはないだろ?」
「いや、お前はここからさらにお疲れる事になるんだけどな。」
「は?」
と言って、一夏が怪訝な目をしながら俺のほうを向く。鈍いな。俺は笑みをたたえながら一夏が腰掛けているベットにある布団の妙に膨らんだ部分を指す。
「……………」
何か物言いたげな目でこちらを見てくる。そして視線を掛け布団に戻して、それを一気に剥ぎ取った。
「何やっているんですか?楯無さん?」
そこには手錠で手を、ガムテープで口を封印され、Sで始まりMで終わるようなプレイのような荒縄で脚を縛られている生徒会長更識楯無の姿があった。
「もごごご」
「いや、なに言っているのか分からないんですが」
現実的に考えてこのタイミングしかないだろう。
「ほい。」
一夏が姉妹の板ばさみになるように更識簪を投げつけて。
「姉妹丼だ。たっぷり味わっとけよ。」
「康一お前っ。」
俺は一言アデューと返しておいた。
◆ ◆ ◆
「あれ?俺なにしてるんだろ。」
まいっかと思いながら俺は学食で時間を潰すことにした。
ああ、いいことをした後は気持ちがいいなぁ!と変にテンションを上げてその場を後にした。