IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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さらばMまた会う日まで。

マジでさ、この状況はおかしいと思うんだけどそこらへんはどうなのよ?

 

「え?Mちゃんかわいいし、問題ないでしょ。」

 

そういうことを言っているのではないのだが…………。あ、どうも。康一から香に変わったときから地の文を担当しているエネです。

時系列的には、さっき一夏と話し合った時の後だ。

 

「はぁ、全くだれに説明しているのやら。」

 

君に地の文を任せていたら愛でる対象のどこがかわいいかということで完全に四万字は埋まる。

それか、唯一つの概念『かわいい』という一言で終わるかのどちらかだ。

 

「かわいいねぇ」

 

惚気か!

香にいたってはただの惚気ではなく職務のようなものだが。

 

「うん、今はMちゃんを……………守るって言うとおこがましいから、隣に居る。」

 

だそうだ、個人的な見解ではそっちの方が難しいと思うんだけどな。守りもするし、憎まれもする、道を正し、ずっとそばに。

 

皮肉な事に彼女、香はずっと、そばに居られない。私たちは何処か似ていて、決定的に違う。

 

「時間も短くなってきたし。いい傾向だよ」

 

「香、何言っているんだ?」

 

「ただの捻くれた独り言さ。…………それで、Mちゃん。」

 

「どうした?」

 

名前を呼びかけられた。Mからしたらまたかわいいだのといわれるのかと思ったが、それは良い意味で裏切られる。

いや、妙に停滞している安全の上に成り立っているこの状況であれば、通常の意味で裏切りというべきだろう。

 

「ここから逃げたい?」

 

「なにをたくらんでいる?」

 

圧倒的不可思議、それがMの頭の中に発生する。逃がすという行為に、論理的意味を見出せずに居たからだ。

香の中では当たり前といえば当たり前だろう。彼女の行動原理は人に好かれたい。

 

「何にも、それでMちゃんが喜んでくれるなら。」

 

「百歩譲って貴様が何も企んでいなかったとしても。現実的ではないな」

 

そういって、その理由を挙げる。

 

この理由は三つ。

一つは、襲撃者が多過ぎることだ。ここは、IS学園。ただのバカが身に付けただけで戦術兵器になるような代物がゴロゴロと置いてある場所だ。

二つに、守る対象が弱すぎる。M自身の戦闘能力は低くはないが、ISを相手取るような馬鹿げた、もちろん手でISの装甲を剥ぎ取るような馬鹿げたそれは絶対にない。

三つめが…………。

 

「貴様が元に戻った時にどのようなことが起こるかわからないからな。」

 

香の顔に嬉しさが満遍なく広がっている。

 

「え!?Mちゃんもう一回言って!」

 

「うるさい!殺すぞ!!」

 

「Mちゃんになら殺されていいけど、さっきの言葉を聞かないと死んでも死に切れないよ!」

 

「黙れ!私達に利益があると思ったからだ!!それ以外の理由はない!大体」

 

「もう!照れちゃって~」

 

Mの顔に怒りが満遍なく広がっている。いや、当たり前にウザい。それが香のアイデンティティー。

 

「心配してくれるのは嬉しいけど。そうそう死んだりはしないよ。心配される必要ナッシング

!」

 

「だが…………。」

 

「まあまあ、私はそこまでじゃないけど。」

 

といって二回自分のこめかみを人差し指で叩いた。

 

「この男に任せておけば大丈夫だよ。ま、特に何もしないんだけどさ。」

 

「は?」

 

「どういうことだ?」

 

切れた。堪忍袋の尾でもなく、声が。耳を塞いだ時のように途切れて。周りの景色が一変した。

 

「…………どういう。ことだ?」

 

「外」

 

IS学園ジオフロートの外。つまり、箱庭から脱出していた。うん、IS学園外の適当なスマホをポータルにして外に出たのだ。

めんどくさいと言いたかったが、まあ一方的に弱みを握られているようなものだし。寄生虫()最終宿主(康一)を殺すわけにはいかないんだよね。

 

「しかし、これでは戻れんぞ。ファントムタスクとも連絡が付かないが。」

 

「ホイ。」

 

香はISの待機状態を手渡した。それは。

 

「サイレントゼフィルス!…………あんなに損傷してこんな短時間で直るわけがないだろう。一体どうやって?」

 

私だ。さあ、感謝したまえ私がせっせと直したおかげで完璧な状態になっているZE!

 

「まあ、愛の成せる技だよ。」

 

うぉい!!どうやってあそこまでの特種金属を練成したのか分かっているのか!?一から元素を振り分けて原子配列からなにまで再構成して完成させたんだぞ!それを愛!?ちゃんちゃらおかしいわ!

 

「殺すぞ。」

 

「!?」

 

「あ、ごめん。こっちの独り言だからおびえなくていいよ。」

 

あっけらからんとそういった。

まあ、行動を言えばそれ以外に何の説明もしようが無いほどの裏表がなさ過ぎる人間に真意を話しても何もかえってこないから当たり前だが。

 

「で、これで逃げられるよね?」

 

「……………礼は言わんぞ。」

 

理性では理解できているのだが感情を飲み込めないような顔をして、それを受け取った。

 

「ま、いつでも会えるさ。」

 

「……………そうだな、香にはもう会いたくないがな。」

 

「あ!始めて名前呼んでくれた。」

 

Mは顔ではウザいといいながらも、さよならと言った。

 

 

「また何時か。会えるといいな。」

 

 

香が表に出て三日。そこで香の意識は途切れた。

 

 

『……………早くなってね?まあ良いや、確か部屋にスマホあったからそこに転送すれば良いか。』

 

 

後片付けというのも嫌なものだね。はあ、この腹の中にたまっている物を全部吐き出してしまいたい。

 

この香と康一が入れ替わった話の総括。

 

『めんどくせえんだよお前ら。』

 

はあ、カオスだ。


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