「さて、作戦会議を始める。」
集めた8人に向かい、担任殿こと織斑千冬がそういった。言われた8人、専用機を持っている人物達。
織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、凰鈴音、シャルロット・デュノア、ラウラ・ボーデヴィッヒ、更識楯無、更識簪。
「千冬ね……………じゃない、織斑先生。一応聞いておきたいんですけど。」
「なんだ?」
「もしかしなくても、香のことですか?」
その、一夏の言葉で担任殿の顔が曇り始める。それも一瞬のことで、すぐに不敵な顔になっていたが。
「その通りだ…………現在侵入者を撃退した相澤康一だが、それを確保してしまっている。」
「馬鹿な!ここのセキュリティを突破するほどの相手だぞ!?」
箒が叫ぶように言った。それは、全員の共通認識だったが、一夏は一つ気が付いたことがありそれを話した。
「いや、康一がおかしくなった状態になったんだ。あの、学年別タッグトーナメントの時に、ラウラと一緒に組んだ時のように。」
「…………まあ、そこは追々話す。今現在の状況を整理させてくれ。」
といって、担任殿は一夏の言葉を制止した。いまだ、状況を把握していない者への説明だ。
「まず、相澤康一が匿っている者は、所属不明のISを持っていた。この時点で、何かしらの目的は持っていると思うのだが、テロ組織などの声明は出てこない。」
「つまり、完全なるアンノウンということですわね。」
そうだ、と担任殿は首肯する。不安そうな顔でそれを見ている。
「それでだ、私達の立場からしてこのアンノウンを確保し情報をなんとしてでも入手したいのだが。相澤がそれを妨害する。」
「なぜだ?」
「それは分からない。幸いにもまだ武力に物言わせた拒否はしてこない、抗弁だけで済んでいる。暴力に訴えても私ですら勝てるかどうかだ。」
額に手を添えたままそういった。頭痛がするのだろう、酷くやつれているような気がしないでもない。
「そんな…………。」
「むしゃむしゃと食べるようにISを破壊する奴とどう戦えというんだ?」
「ですよね。」
「それで、お前達に協力してもらいたいことが有る。それは、相澤康一から侵入者を奪取することだ。」
「出来る…………のか?」
不可能に近いと思われることを、担任殿はさらりと述べた。
「いや、相澤はSHRの前まで、侵入者を抱えながら生徒と接していたという情報があるのと、相手は同じ生徒だ、組みし易いと思ったからだ。」
つまりは。お前らのほうが殺しやすそうだからさっさと行け。ということだ。
「何時もの事ながら、こちらでもフォローはする。お前らに任せることは本来ならしたくはないんだが…………ISが壊れると、酷い事になりそうだからな。」
本当に頭が痛そうに、そういった。そこに、生徒会長更識楯無が、質問の許可を求めてそれを認証した。
「織斑先生つまり、勝利条件は、侵入者の奪還および相澤康一の戦闘不能。敗北条件は侵入者の脱出ということですか?」
「…………条件は逐一変わると思うが。大体それでいいだろう、そして、相澤康一の生死は問わない。」
全員に戦慄が走…………らなかった。
「殺す方が難しいと思うぞ。」
「あ、それは同意。」
その理由は、全員の総意が、ゴキブリよりも嫌悪感を抱きそれよりもしぶとい害虫。と言った、今の状況では考えうる限り最高の評価を得ているからである。
「それじゃ、さっさと行動をしましょうか。」
更識楯無は、担任殿から話された情報を統括しこの場をまとめようとした。その言葉と共に
「…………ま、抵抗しても無駄だと思うが。あの人の胸を借りるつもりで、当たって来るか。」
「遺書を書いていたほうがいいかもね。アレは化け物だ。」
そんなラウラと簪のつぶやきは、楯無が叫ぶようにまくし立てる作戦の立案に掻き消えた。