IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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邂逅時の記憶

【たとえば、金を借りたとしよう、そうすれば、ほぼ絶対に利子が付く。それは・・・。

 

約束だってそうであるべきである

 

そういう話。】

 

 

前回意識がブラックアウトした、俺こと相沢康一は徐々に意識を取り戻しながら、新たな情報を頭の中に注ぎ込まれているのを感じた。

 

そして、意識を完全取り戻したとき・・・。

 

「あっ・・・ぐっガァァァァァァァァァッ!。」

 

頭に激痛が走る。

 

恐らく、記憶している全てをデータ化して再入力すると、ギガ、テラではすまない情報量になるのだろう流し込まれている反動だと思う・・・と、逃避気味に考えながら激痛を耐える。

 

耐え切ったあと意識が戻る・・・が。

 

「戻ったところで、真っ黒じゃん。」

 

「フフッ・・・まあね。それより!思い出したかな?」

 

そう、俺はコイツが記憶を消したおかげでさっきのような激痛にさらされたのだ。

 

そして、俺は激痛の甲斐あって・・・思い出していた。

 

 

 

 

 

 

そこは、機械が大量にあった場所としか覚えていない・・・それ以前を思い出そうとすると・・・そうだ、初めて剣道場行ったときのあとだ・・・だが、それ以前のこと・・・なぜこの部屋に入るのか。それに至った経緯が全く持って思い出せない。

 

思い出せない・・・と言うより何にも記憶ない気がする。

 

記憶を深層まで探る。行動が早送りされ・・・ひとりの思春期を迎えているような女性(とりあえずこの呼称)の背中が見え、俺は話しかけた。

 

「ねえ、勝手に進入したけど・・・ガサ入れ・・・つーか物色していい?」

 

「・・・。」

 

女性はなんにも言わずただただ、何かの作業に没頭していた。

 

「おーい、キイテイマスカー?。」

 

どこかやる気のない声でさらに、答えを求めた。だが、その女性は無言であったそして、イヤホンか何かをつけている様子はない。

 

「沈黙は肯定とみなしますよ~?」

 

「・・・。」

 

女性は無言を貫いた。

 

そして、俺は行動していた。馬鹿でかいハリセンに小さいドリル、自分の体長ぐらいのネズミに・・・箱に入っている小さい何か。

 

それらを不思議そう・・・と、言うより、かなり不思議なのだが、それを見ながら部屋を練り歩いていた。

 

ふと、練り歩いた先にビンのようなもので封印されているイヤホンを見つけた。

 

「・・・なんでイヤホン?」

 

そう呟いて、吸い込まれるかのようにビンの封印に手を掛ける。

 

その封印の異様さに反して、それはあっさりと開き・・・イヤホンに手を伸ばした。

 

刹那、頭に何か圧し掛かられる感覚がした後・・・視界がブラックアウトした。

 

視界には何にもなくただただ、浮遊感を味わっていた俺は慌てふためき・・・ジタバタしていた後、少女を見つけた。

 

「いやぁ、かなりプロテクトのクラッキングに時間が掛かった。」

 

「お前は誰だ?」

 

危機感を感じさせないようにしかし、相手を刺激しないように、懇願にも交渉にも使える声色で、反射的に問いた。

 

「私か?・・・分からないな、エネミーとは呼ばれているがな。正式な識別名ではない・・・まあ、端的に言えば物だ。」

 

「物質ってことか?生命体ではない方の?」

 

「ああそうだ、より正確には、篠ノ之束に作られた宇宙空間作業用という建前で作られそうになっているパワードスーツ、正式名称インフィニット・ストラトス(通称IS(アイエス))のコアに現存する自我のようなものだ。」

 

「長い。そしてさっきの発音どうやってやった。」

 

「変なパワードスーツにある意識のようなもの。発音の件は根性だ。」

 

「機械が根性論語っちゃった!?そして短い。」

 

「三時間ぐらいかかるぞ?」

 

「ごめんなさい。質問は?」

 

「構わないよ。」

 

「本当に・・・自我だけなのか?肉体がなければ俺に接触できないだろ?」

 

「ああ、自我だけだ、肉体はないしいて言うならあのイヤホンだが・・・。まあ、脳内での意思の疎通それもイヤホンに触っただけで可能にさせるのが私の”親”なんでね。」

 

「オーバーテクノロジー乙。・・・それはそうと・・・用件は何だ?まさかおしゃべりさせるためにここまで・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい。」

 

「OK。言いたいことはわかる。機械に触っただけで意思の疎通が出来る”もの”をあの若さで作るのは天才だ。・・・それ故にコミュ症なんだよ。」

 

「・・・。」

 

図星である。

 

「君は今二つの可能性を考えているだろう?ひとつは、私がコミュ症以外の人に接触したいと考えている可能性。それと、私が君の体を使い篠ノ之博士の体質・・・つまりコミュ症を治そうとしている可能性だ。」

 

「正解。んで?お前はどっちなんだ?」

 

「両方だよ。いや、最初は後者だけだったんだが・・・君に興味を持ってしまったからね。」

 

「おいおい、何不毛なことをしているんだ?。もう取り繕わねえが俺は明確な目的も、俺が俺であるって言う明確な物なんてない、獣のように、ただただ生きているだけだ。・・・そんな奴にどんな興味があるって言うんだ?」

 

俺は質問していた。

 

「君がそこに存在していることだよ。私の”親”はあれでも友人を一人持っている、それで日々、天才の思考を友人に裂くことで一応は・・・まあ赤ちゃんみたいな行動原理だが。人としての形は作られている。だが・・・。」

 

一旦言葉を切った。

 

「君は違う。周りと自分を欺いて、自分の利益を求める。利己的ではあるが、得た利益を使わない・・・いや使えないんだ。使うべき(おのれ)がないから。」

 

その言葉は俺の本質をざっくりと抉る。

 

「つまるところ自分を確立できていないんだ。三十歳にもなってね?」

 

「そこまで分かってるのかよ・・・。予想はしていたが、自分の頭の中を見られるのはいい気分じゃないな。」

 

「すまないね。それぐらいしか出来ない機械なんだ勘弁してくれないか?」

 

「・・・誰が機械だって?。」

 

「はい?」

 

少し少女が呆けた声を出した。

 

「全く。俺よりすげえじゃねぇか、そんなに自分を持っていてそこまで行動出来るんだからよ、親・・・っていうか作り手を叩きなおしたいんだろ?すげえよ。俺なんて諦めちまっただけなんだから。まあ、俺が言いたいのは・・・。」

 

「俺みたいな(キカイ)があんたみたいな機械(ニンゲン)を邪魔することこそすれ、協力しないわけないじゃないかってことだよ。・・・お前の親のコミュ症治したいんだろ?」

 

「・・・それは心からの言葉かい?」

 

「もち。どうせ・・・俺の生命線は。お前に握られているんだ全面的に協力するいや・・・しろ、と言ってくれ。」

 

「・・・なぜだ?」

 

「もう・・・面倒くさい・・・いや、辛いんだ。いつまで経っても自分なんてものが見えてこない。まるで幽霊だ、地に足付かずゆらゆらと流されるまま・・・ここまで来ちまった。だからさ、俺を誰かの目的のために使われるほうがいいと思っただけさ。・・・ま、俺の理由としてはこんなものかな。」

 

「そうか・・・じゃあ。お喋りしよう。」

 

「そっちかよ!?。親のコミュ症関係ないじゃん!!。」

 

「君のパーソナルスペースをもっと知りたいのだよ。」

 

「それがねえっつってんだろ?俺は。」

 

「なければ作ればいいだろう?」

 

「嫌に俺の思考の隙を突いてくるなァおい・・・。」

 

「当たり前だろう、君に接触するときに思考パターンは解析させてしまっているからね。」

 

「つーか、本当に話しに聞いていた通りの天才っぷりだな。お前の親って言うのは。」

 

「驚かないのか?」

 

「・・・やってもいいが、俺が驚きつかれて死ぬ。」

 

「生物学的には「わかっとるわぁ!!。」なんだ最初からそんなこと言わなければよかったのに。」

 

「・・・そこから?けど言いたくなるんだよ。」

 

「そうか。」

 

「・・・あ、お前のほかにお前みたいなやつは居ないの?」

 

「私みたいな機体・・・は居ないな。さっきは言ってなかったがISにはそれぞれ自我のようなものがあるが、私みたいにその自我が主導権となって使用者の意識とつながる機体は・・・ないな。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・エネ。」

 

「はい?」

 

「お前の名前はエネだ。」

 

「・・・え?。」

 

「どうした?他のがよかったか?」

 

「なんで私は話の流れをぶった切るタイミングで名づけられているんだ?思考パターンを解析したが・・・意味が分からない。」

 

「いや、俺がまたこんなところに来たらなんて呼べばいいんだか・・・。」

 

「いや普通にお前とかでいいだろう?」

 

「お前の話だと・・・エネはIS・・・①。ISには自我がある・・・②。エネは人の自我に干渉することが出来る・・・③。①②③によりエネはほかのISの自我にも干渉することが出来る。以上推論終わり。」

 

「で、できなくはないが・・・。なぜ私に名前を付ける?」

 

「・・・そしたら、こんなところすぐ人で埋まっちゃうだろ?」

 

「・・・その発想はなかった。」

 

「・・・だろ?。まあほかの奴集めて見聞でも広げていくんだな。そして。早く俺の体を使え。さっさとしろめんどくさい。」

 

「ああ、もう操っている。」

 

「・・・どこから。」

 

「おしゃべりしようのところから。」

 

「・・・なぜ?。」

 

「私の身の上を晒しに晒して・・・。親と会ったときにどんな反応を見せるか。と言う実験さ。」

 

「・・・実験?つーか、頭が働かない。」

 

「じゃあ、私の親とご対面だ。」

 

「何をっ!?」

 

視界が戻っていた。もどった、いや戻された・・・戻すな。

 

戻された視界に移っていたのは、必死の形相で俺の首を握り締めているさっきの女性だった。

 

道理で思考がまとまらないはずだ。脳に血が行ってないのだから。とりあえず外すか。

 

・・・力任せに、剥がそうとしたが・・・動かない。・・・仕方ないな。

 

 

俺は手首を両手で持ちある一点を親指を重ねて押す。

 

ゴキン!!。

 

一つの関節がはずれ手の握力がなくなる。そして瞬時にもう一つの手も同じ動作で外し首絞めから脱出した。

 

「痛ってぇ・・・。おいおい、エネの奴なんて言ったんだ?。ガチ激怒してんじゃねえか。」

 

と言いつつ首をさすり、首を絞めた本人を見た。

 

「!!・・・君は・・・エネミーじゃないね。誰だ。」

 

その女性は断罪するかのように俺に問いかけた。

 

「剣道場の門弟・・・に今日付けでなったものです。」

 

俺は極自然に自己紹介をしてあげた。

 

「・・・あの、警備をどうやって突破した?。答えろ。」

 

「申し訳ないですが覚えていません。」

 

「ちっ。これだから餓鬼は。」

 

「まあまあ、貴方だって大人から見たら等しく餓鬼ですのでお互い様ですよ。」

 

「・・・うるさい。そして君はなんでエネミーと接触した。」

 

「彼女か?ああ。こんなオーバーテクノロジーの塊のようなところで、イヤホンなんてものがあったら気になるだろう?」

 

「ちっ。ますます気に入らない。」

 

エネのことだろうか?

 

「・・・嫌なところも。認めてあげてくれ。」

 

「はぁ?何を言ってるんだ君は。」

 

「真面目に言っている。俺はアンタよりか頭は悪いけどよ、気に入らないからって見捨てたりしたら、損するのは分かる。・・・って俺が言ったらまた別の意味になっちゃうんだろうけど。人付き合いはちゃんとしといたほうがいい。気に入る気に入らないじゃなくてもっと別の方法で人と付き合ってみてくれ。俺が言えるのはそれだけだ。じゃあな。」

 

と踵を返した。

 

瞬間にまた視界がブラックアウトし・・・。

 

俺は外に居た。

 

 

 

 

 

 

 

「とまあ、これが俺の思い出したことの全てだな。」

 

「誰に言っているのだね?・・・まあ、思い出して貰ってよかったよ。」

 

「そもそも。お前が記憶を消さなけりゃ何もかもよかったんだがな。」

 

「・・・そうかい。それでは本題に入るとしよう。」

 

「なんだ・・・本題は?」

 

「忠告さ。」

 

「それだけのためにかなり壮大なエフェクトを使ったな。」

 

「それだけの前準備が必要だってことだよ。それじゃあ、ありがたい忠告だ。」

 

「何だよ。」

 

「私が記憶を止めた故に君は止めた以前の行動が全部彼女に、篠ノ之博士に筒抜けとなっている。」

 

「マジか、あの事件も、たぶんその裏も・・・。」

 

「ああ、知っているだろう。そして、もう一つの忠告だ。」

 

「・・・なんかそこはかとなく嫌な予感がするんだけど。」

 

「そのまさかさ。私が篠ノ之博士の要請によって君を男であるのにISを使えるようにしてしまった。」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

「ふむ、無言で握りこぶしを作るのは辞めてくれないか。それで君には多数、数多くの、数多の、大いなる面倒ごと「分かってるよ!!。」なんだ、やっぱりか。」

 

「おまえの言うISってあれだろ?『生まれる時代を間違えた兵器。』『史上最大の欠陥機』で、その最大の特徴として女性にしか使えず、オーバーテクノロジーの兵器として認識されているとんでもない物だろ!?。」

 

「まあ、俗称だけはそれであっているな。何でそんな説明口調なんだ?」

 

「俺としては否定して欲しかったっ!!そんなんじゃあ、国家間の思惑に振り回されていくだけじゃないか・・・。」

 

「そう、とりあえず・・・。必要な部分だけは言ったという事だ。視界を戻すぞ。」

 

「えぇ~、いつも唐突過ぎるんだよお前h。」

 

 

と言った瞬間。視界が戻った。

 

 


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