IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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親の心子知らず。確実に十は年が離れているはずなのに子供に悟られるってことはそれだけ薄っぺらい人間なんだバカヤロー。

終わったのだ。全てが。

傍から見ればお前何やっているんだよ。ってツッコミがきてもおかしくはないが、結構逃げることにも意識を裂かなければいけなかったし大変ちゃ大変なんだよ。

 

「デュノアの娘っこよ。まあ、無人機襲撃撃退と聞き取り調査お疲れ。」

 

「…………なんだ相澤君か。」

 

俺が話しかけたのは、デュノアの娘っこことシャルロット・デュノアだった。学食の机に突っ伏して、周りに暗いオーラが漂っている、その様子だとこってり絞られたようだな。俺はさっぱりと危機を回避していたがな。

 

「愛しの一夏じゃなくて悪かったな。」

 

「今日はもう、そんな煽りにも反応できなくなるぐらい疲れたよ…………」

 

声にも覇気が無い。まるでスライムのように手ごたえが無い、これは由々しき自体だ。デュノアの娘っこが疲れたという時は愚痴が始まる、まあ聞くにはやぶさかではないのだが、長いのでこっちも精神力が居る。

 

「そうかい。」

 

「そうだよ。」

 

とりあえず対面に座る。愚痴は聞いていて面白かったりするからな、あ、ICレコーダーでもつけとこ。

 

「大体さぁもう慣れたとは言っても。一夏も僕たちの気持ちに気が付いても良いと思うんだよね…………。」

 

「俺だって常々思ってるわそんなの。誰と付き合うのかなぁ、って具合には。」

 

とりあえず、放っておいたらこんな会話でホモ疑惑を掛けられているよりかはマシだ。自分の発言にフォローをしておこう。

 

「まあ、普段の生活では機微は察せるんだけど、一夏は恋愛がらみになると点でダメになるのはどうしたら良いのさ。」

 

「グイグイ行くしかないんじゃない?」

 

むしろハニートラップのように動くしかないような気がする。あ、それでもダメだったらどうしようもないな。

 

「僕に女としての魅力はないのかなぁ…………」

 

「大丈夫だ、それについては十二分にある。俺が保障しよう。」

 

正確には俺のお客さんが保障しようだ。めちゃクソ売れる、もう飛ぶような勢いで売れる。ちょこっと盗撮した裸の写真なんて百万は余裕だったね。

 

「一夏が喜んでくれるかどうか、だよ問題は。」

 

「すまんね、そりゃそうだ。」

 

俺に保障されたってそんな役には立たないよね。

 

「しかも、僕の会社がらみでも変なことがあったし…………。」

 

「へえ。」

 

ああ、アルさん今度はなにやらかしたんだ?

 

「驚かないでね。機体を調べて、中に第四世代のような装備が満載されていたんだって。」

 

「へえ。」

 

「分かっていないのか、分かっているのか」

 

失礼なちゃんと分かっているよ、あれだろあれ。

 

「臨海学校のときに聞いた。確か装備の換装をさせずに全ての状況に対応するように作られた兵器だよな?」

 

「うん、だけどそれはまだ机上の空論段階で、他の企業が行っていない段階なんだ。」

 

「ああ、分かっている皆まで言うな。」

 

「…………相澤君何か知っているんじゃない?」

 

「なんでそう思う?」

 

と聞いたのは良いのだが完全に心当たりが有り過ぎる。あそこまでヒント出しておいて説明しないって言うのも、なんかアレだ。

 

「なぜだか僕の父親とコネクションを持っているような感じがしたからね。」

 

いつの日か男性と偽ってこの学校に入ってきたのを思い出す、というかほんのニ、三ヶ月前ぐらいだったから。

 

「ま、持っているっちゃ持っているな」

 

「なんでただの一般人である君が、大企業の社長と接点を持っているのさ」

 

ああ、アルさん…………いや、アルベール・デュノアとの邂逅か。そういえば結構前のような気がするぞ。

確かアレは…………そうだ、うっかり密入国した時の話だ。

 

 ◆ ◆ ◆

 

眩しい。

 

俺が意識を覚醒させていの一番に感じたのはそれだ。太陽光線を浴びて体の中からあたたまる。目をしかめて丁度よさげな枕から頭を上げた、寝ぼけた目からはまだ視覚の情報が巡らしてこない。

変わりになぜか知らないが、花のような甘ったるい匂いがむせそうなほど濃厚に漂ってくる。

 

そよ風が吹き妙に清涼感がある空気だ。東京も常日頃このような気候であれば良いのに。

 

と思いつつ、目やにが付いて使い物にならない目をこすりつつ立ち上がった。そして、少々の立ちくらみを起こしながら、今日という一日を…………。

 

「あれ?」

 

完全に覚醒して視覚がくれたのは、一面のお花畑だった。

 

「え?」

 

ただただ不思議。そして俺は…………。

 

「また、記憶が飛んだのか。」

 

一つの結論に行き着いた。まあ、多々あることだ記憶が飛んだりその程のことだ、俺にとっては。最初は混乱していた物だがその頃が懐かしいと、半ば現実逃避しながらあたりを見回した。

 

「あれ?」

 

気になる者が一人。いや、誤字ではない。と言うより、なんで先にこっちの方に気が付かなかったのか頭を抱えるほどだ。

 

美人が俺を見上げていた。

 

ああ、ゆったりめの服から分かる絶大なプロポーションに、長いまつげ。小さい顔に、それに、日本ではめったにお目にかかれない映えるような天然物の金髪。

例えるなら、人形に一番近いが人と認識できるギリギリのラインを堂々と進んでいるような、そんな儚げな美しさを持つような女性だった。少し理解を超えた出来事に気が動転したようで

 

「ど、どうも~」

 

と、日本語で話してしまった。それでも、その美人はにっこりと微笑んでくれた。

それはまるで、草原をなびかせる風のような爽やかさで心の中の荒みを全て吹き飛ばしてくれる、深い慈悲を表した笑みだった。

 

 

理解を超えた出来事に気が動転した。

 

「アブレベラバァ!?」

 

と、日本語にもならないような悲鳴を上げてしまった。

どこからともなく現れた金髪の男が、鬼のような形相で走りより、しっかりとした握り拳でぶん殴ってくれた。

それはまるで、地獄を斡旋する閻魔のような憤怒で地獄の苛を全て裁量一つで決めてしまう、そんな深い憎悪を表した行動だった。

彼こそがアルベール・デュノア。シャルロット・デュノアの父親だ。

 

「なにしやがる!?」

 

「俺の妻には指一本触れさせねえ!!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「出会いがしらにいきなりぶん殴られたかな。思えば酷い出会いだった」

 

少し当時のことを思い出しながらそんなことを思う。

 

「あの父親だからね。」

 

「まったくだ。そういえば、あのバカに成された所業って」

 

「母が死んだら本社に呼び戻されて、妾の子だとカミングアウト。本妻から泥棒猫の娘と認定、半ば監禁状態で会社の装備を使わされて、そこからテストパイロットの缶詰状態。仮にも血を分けたのに顔も全くといって良いほど見せなかったり。まあ、ひどいものだよ。ま、今はここに居るから良いとしてもね。」

 

あのバカは死んでも直らないレベルだ。OBKには困ったものだな。そうそう、そうだなんであんなに酷いことをアルベール・デュノアが言っているのかというと。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「娘が居るんか。」

 

会話の流れでこのような会話に行き着いたのだが、俺はそれを物凄く後悔しなければいけないらしい。

 

「そうなんだよ!僕の天使さ!」

 

「親ばか乙。」

 

「いやぁそれほどでも。」

 

「褒めてない。まあいい、その天使とやらを大切にしてやっているのか?」

 

「ふっふっふっ。この良い父親ぶりに君も失神するかもしてないぞ。」

 

自信満々にそういった。

 

「で、どうなんだ?」

 

「まずシャルロットを会社に迎える時…………女優を雇ったんだ。」

 

「は!?一体なんで?」

 

少し訳の分からない行動に質問した。

 

「それはだね。女優を雇ってシャルロットに泥棒猫の子が!って言わせるためだよ。」

 

「…………あ?一体なんでそんなことするんだ?」

 

少しめまいがした

 

「バカ!そりゃ、そういわせれば『パパ!女性を二人も手篭めにするなんて男として最高だよ!ステキ!抱いて!』ってなるからだろう。」

 

俺は意識を手放しかけた。

 

「人として最低だがな。で?顔は何回合わせたんだ?」

 

「そこもぬかりはない、シャルロットと顔を合わせそうな時に仕事を目一杯入れるんだ。」

 

「は?なんでそんなことするんだよ?」

 

「バッカ!そりゃ、そうなれば『パパ!なんてスピードで仕事をこなしているの!ステキ!抱いて!』ってなるからだろう。」

 

多分、今頭がいたいのは病気ではないだろう。

 

「ちゃんと誕生日とか祝っているのか?」

 

「そこもぬかりはない、誕生日だけ仕事を入れないんだ。」

 

「なんで?」

 

「祝いたいから。」

 

「なんでそこだけまともな感性なの!?日本人的な感性だけど、プレゼントとかやっているのか?」

 

「そこも問題はない。代表候補生へって感じで大量にイベント時には送っている。」

 

「…………差出人の名前は?」

 

「全て手書きで別名義。」

 

「ばかだ、ここにバカが居る。」

 

 ◆ ◆ ◆

 

「まあ、お前も頑張れや。」

 

「うん。ありがとう少し愚痴っぽくなっちゃったけど。」

 

「気にしていない、それじゃあな。」

 

 

少し、昔のことを思い出しながら部屋に戻った。

 


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