IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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人目の群像に写らない

それでまあ、なんか中にいろいろあったようだがそれはどうでもいい。

俺が色々な所に巡って行った結果…………俺がフォローしなくても大丈夫という報告をしておいた。

 

正直、一夏の鈍感さが女子達に耐性を作った。つまりは一夏が別の女の所に行くのは慣れたということだ。ここまで一夏の耐性ができるとは驚きだ。

 

そんな中全学年合同タッグマッチを開催する為の準備がなされている。…………というか、もう始まる。

 

そして、俺こと相澤康一はそれに出場せず。

 

「なんでこんな所に居るんでしょうかね?」

 

「不審な行動をしないようにだ。」

 

俺はアリーナの管制塔。俺は、それがなにか分からないのだが、先生たちが見る用のVIP席と考えれば良いと思っている。

それよりも、なんだよ不振な行動って。笑っちまうぞ。

 

「さいですか、ま、今回も厄介ごとが起きなければ良いんですけどね。」

 

「全く、私もさっさと終わらせて一杯煽りたいところだ。」

 

最近描写はしていないが、俺の目の前で自然体で居ることが多くなった。まあ、普段教壇に立っているのと言動、仕草、行動が全く違うというところからしか推測は出来ない、つか言動が違う。だからそこまで信用できるものではない。

 

…………実は、俺に好感度を全振りしていたり、自然体でいるような人が、俺としては一番避けたい手合いだったりする。

 

「さいですか。俺としては、さっさとやれよ世界最強と言いたいですね。」

 

「いいか、一つ教えてやる。力持つ者はその責任を負う、だがそれは人社会の顔も知らないお偉いさんがその者の人格に問わず勝手に押し付ける責任だ。人の中で生きている限り、責任は負わなければならないんだ。」

 

「それはそれは、力なんて持ったこと無いんでよくわからなかったっすわー」

 

軽く挑発するように喋る。ま、世界が織斑千冬が怖くて、足枷を付けたいのだろう。

 

「はぁ、まあ良い。もうそろそろ出場者のIS整備が終わる頃だ、見る準備でもして置け。」

 

「ウィーッス、了解で」

 

不意に聞こえる爆発音。俺は笑った。

 

「あっはっはっはっは!!祭りに介入するなんて無粋だなぁおい!」

 

半ばやけだ、ふざけるなと言いたいが、言ったところで何かが変わるわけではない。俺は早々に諦めて、喧騒を外から見ていた。

 

「…………観戦者の避難を急げ。絶対に一人として殺させるな!」

 

指示を担任殿が出す、それに応じて周りの人間たちが働きアリのように散り、そして動いていく。いいねぇそんな権力あったら俺、持て余しちゃうよ?

 

「お前も、避難しておけ。」

 

一通り指示が終わった所で、俺に向かいそう言った。

 

「おやおや、てっきり俺はMAP兵器のような扱いになると思ってたんですがね。」

 

俺の用法なんざその程度しかない、カゲアカシもそういう風に出来るからな。そうなったら俺も無事じゃすまなそうだが。

 

「フン、誰が上の意思に従ってやるものか。お前もアレをそこまで打つな。」

 

上の意思とは…………恐らく、俺の機体のことだろう。前にも言ったかも知れないが、二人いる男性IS操縦者の実験機のうち、ひとつはソフト面での、もうひとつはハード面でのデータ収集だ。俺はハード面でのデータ収集機体を持っている。

 

「分かりましたよ。ま、死なないでくださいね。」

 

「毛頭ない。さっさと行け。」

 

そういって俺は踵を返し、避難した。

 

 ◆ ◆ ◆

【凰、オルコット】

 

「くっ、なによこれ!」

 

「私に聞かれても困りますわ!」

 

凰、オルコット嬢ペアの二人が毒づきながらも敵を迎撃している。

 

「しかもこれ、無人機の動きに似ているわ!何が来るか分からない、気をつけてきなさい!」

 

「了解ですわ!」

 

そうして、一つの戦場が展開した。

 

 

【ラウラ、シャルロット】

 

オレンジの機体と黒の機体が一機の敵ISに対面している。二人の表情は、とてもではないが良い表情とはいえない。

 

「これは流石に多勢に無勢だね。」

 

「しょうがない、こういうときもあるさ。」

 

デュノアの娘っこ達が居るところは、少し教師部隊が行くには遠い場所にある、それまで耐えなければいけないのだが。

 

「未知の敵が一体で、形状から見て同型…………兵装によっては命も危ないかもしれんな。」

 

冗談っぽく口角をつり上げながらそういった。仕草は、まるで担任殿のようだ。

 

「上等だよ。」

「ならば良い、3数えて散開する!」

 

「1,2,3!」

 

 

【更識楯無、篠ノ之箒】

迫るビーム、戦火の中で彼女らは戦っている。

 

「くっ、大丈夫!?」

 

「何とか!」

 

一日で師弟関係を築き上げてきた会長が、弟子(のような存在)箒さんに安否の言葉を投げかける。攻撃を受けて、その主を見る。

 

「…………」

 

物言わず、宙に漂っている。その姿は異常なまでに腰が細く天女のような布のようなものが背後に展開している。その姿を見て会長の脳裏には、一つの可能性が上がってくる。

 

「無人機ね。」

 

「まさか、あのバカ()が!?」

 

「その可能性は高いわ。」

 

そして、会長は考える。彼女の耳には全ての戦況の情報が流れてくる。そしてその情報を統合した結果一つの結論が浮かび上がる。

 

篠ノ之束がテロ組織に拉致され、その上で技術提供をしている。

 

状況的にそれしかない。しかし、それを箒に伝えることは無い、伝えても意味は無いからだ。

そして会長は今の自分の置かれている状況で最適の戦術を考える。

いま、ここのアリーナは対戦表の関係で、彼女らが試合をする所では四機の専用機がある。それ故に。

 

『教師部隊は現状送れない、そちらで対処してくれ。』

 

「こちらの優先度は低いわね…………」

 

少し、残念そうに呟く。

 

「そんな!」

 

「そう言わない。あの二人を狙われないように頑張るわよ!」

 

「…………はい!」

 

そうして再び戦場へと舞い戻った。

 

 

 

 

【更識簪、織斑一夏】

 

そこはアリーナの整備用のスペース。そこで必死に作業をしている簪が、爆発音を聞いて一つ溜息を吐いた。

 

「……………ああ、なる。ご都合主義ですね分かります」

 

「何言っているんだ!?それより早く、みんなを助けないと!」

 

遠い目をしながらそう呟く簪に一夏が突っ込む。

 

「いってらっしゃい、ちょこっと整備してから行くわ。」

 

「いや、簪を置いていくわけには…………。」

 

すると脱力したように笑い、簪はこう言った。

 

「行って。パートナーを信じているのなら。」

 

「うっ…………分かった危なくなったら助けに来る。早めに終わらせてくれよ。」

 

一夏はその場から立ち去った。

 

「さっきのヒーローの相棒っぽかったな。うはwwwww役得ww」

 

 

 

逃亡者(相澤康一)

 

「あららぁ、こりゃ酷いね。」

 

俺は逃げながら状況を確認した。まあ、酷いこと酷いこと。一番酷いのは俺なんだけどな。逃げていたら道に迷った。

 

「………ここどこだ?」

 

思わず笑いがこみ上げて来るほどに、焦燥している。心臓が早鐘を打ち、思考を鈍らせる。

だが変なところは冷静で、俺の体は一直線に一つの行動原理にそって進んでいく。

 

「はぁ、対人戦闘に特化した奴の弊害だよなぁ。」

 

危機を避ける場所を探すと言う行動を取っていた。それは、敵を作らないとまともに動けないらしいということだ。

 

「ここか?」

 

いつの日かのように、扉を開けまくる。受験の時には結構な面倒事はあったがそれを思い出しながら扉を開ける。

 

薄暗い鋼鉄の通路の中、俺は歩みを進めていった。

 

 

【織斑千冬、山田真耶】

 

「またですね・・・」

 

「まただな・・・」

 

無人機が襲来しているのはこれが始めてではない。この話では直接対峙はしていないが、無人機は一度襲来している。

 

「恐らく、形状からして先の無人機の改良改修機と言った方が良いだろう。戦線の拡大は?」

 

「やはり狙ったように、専用機のところにしか来ていません。」

 

専用機たちが戦うアリーナは全部で5つ、ひとつは今回の大会では使わず、4つ使われて居る。

 

「第一アリーナでは、織斑一夏、更識簪ペアと更識楯無、篠ノ之箒ペアが交戦中。

 第二アリーナでは、凰鈴音、セシリア・オルコットペア交戦中、すでに対戦相手は避難しています。

 第三アリーナでは三年の専用機持ちのペアが交戦中…………こちらは増援は逆に不利となると思います。

 第四アリーナでは、ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノアペア。すでに教師部隊を送り込んでいます」

 

「分かった。…………相澤はどうした?」

 

「分かりました確認を取って…………あっ、はい避難は完了しています。」

 

「そうか。」

 

 

 

OBK(相澤康一)

 

おおう。これは、全警備システムを統括している所か。所狭しとモニターやら厳重そうな装備が置いてある。

 

「まあ、流石にいじると不味そうだなぁ」

 

と言いつつ、なめるような目つきでその部屋を見回す。見るだけ無料だ、この期に見ておこう。

 

「…………。なんでこんな所にバ○ブが有るんだ?」

 

俺は脳内で、いけない妄想をしながらその部屋を後にした。多分、人が居なさ過ぎるからここで慰めていたんだろうなぁ。頭がピンクにでもなってそうだ。

 

 

【更識楯無、篠ノ之束、織斑一夏】

 

二機と一夏が合流した三機の連携が拮抗する、その状況は会長をじわりと焦りへと追い込むのに十分過ぎるほどだった。だが、ここで弱気になってしまっては、相方の士気に関ると感じ、その焦燥を喉元で押し殺した。

 

「…………大丈夫?」

 

「ええ、何とか。」

 

焦るのも無理はない。襲撃機は、ISの兵器としての要、絶対防御を無効化させるジャミングを発している。

つまりは、今戦っている者達は、ただの鉄を纏っている状態に過ぎない状態で、裸も同然の姿で戦っていることに他ならない。

 

「危ない!」

 

「!?」

 

考え事をしていたら、いつの間にか目と鼻の先にまで近づいていた、無人機を避け応戦する。

 

「無人機は人だと思わないほうが良いです!人と思って戦うと虚を突かれます!」

 

「一夏君!」

 

声を掛けた主に意識を向ける。すると、プライベートチャンネルで追加で話しかけてくる。

 

『すみません、妹さんピットに置いてきています。』

 

『なんですって!?』

 

『だけど、もうそろそろ来る【追加、更識簪】』

 

 

 

「そこを離れろ鈍亀共が…………ッ!」

 

雷鳴のように轟く、ミサイルの発射音。何十発、何百発と吐き出される破壊の種それが、無人機に突き刺さる。

 

ドガガガガガガガガガガッ!!

 

「今ッ!」

 

高々と腕を上げ、指を鳴らす。

 

「やっぱ、チューインボムってロマンだよね!」

ちょっと高性能だけど、と簪の脳内でこのミサイルの製作者の言葉を付け加えた。

 

人皮を内側から叩くような爆発音が衝撃として感じた。

 

「…………一枚葉は伊達じゃない」

 

「どこぞのニュータイプだよ!ってかエネルギーが切れそうだ。」

 

簪に突っ込みを入れる。

 

「一夏!エネルギーパックをパク調達しておいたから補給しておいて!」

 

「でかした!」

 

 

 

下衆(相澤康一)

 

あれ?ここは…………なるほど、先生用の女子更衣室という訳ですか。

こんな陰気臭い所に置かれて服にカビが生えないようにしないとな

 

「いやぁこれ俺には・・・」

 

宝の山に見えるぜ!!突撃だ!!

カメラを手に俺は疾風の如く走った。

 

 

【ラウラ・ボーデヴィッヒ、シャルロット・デュノア】

 

激しい戦闘を繰り返し、無茶をしている結果デュノアの娘っこにガタが来た。

 

「くっ…………。」

 

「シャルロット!」

 

シャルロットが苦しそうに胸を押さえている。絶対防御のジャミングに、見たことも無い特種兵装、精神を削り取るには過不足が無い。

元々、日常生活でもストレスがマッハな所に、一発当たったら終わりかもしれないというのは、厳しい所がある。

 

「不味いね、これ。」

 

「撤退しようにも、させてくれそうにも無いしな。」

 

まだ、教師部隊は来ない。拠点防衛の布陣を敷き、全生徒を守るようにしている為、まだこちらには来ない。

 

「…………私がやる。」

 

「無茶だ!二人でもきつかったのに!」

 

「それしか方法は無い!行くぞ!」

 

制止を振り切ってラウラは無人機に肉薄していく。それを見て、シャルロットの胸に汚い感情が渦巻いている。

その名は自己嫌悪。弱く、助けられてばかりと言う誤った認識が心を腐らしていく。

 

「荷物は…………嫌だよ!」

 

すると、ISにメールが送られてきた。差出人はすでに分かっている、自分の父親だ。

 

『気が付いていると思うが、君のISには特種兵装が付いている。まあ、こちらとしても兵装の情報を開示して君をIS学園に送りこんでも良かったんだが、それは君が拘束されそうになるから止めておいたよ。』

 

この時点で、シャルロットの堪忍袋の尾が切れそうになったが、さらに目を通す。

 

『で、まあ、本題なんだが。今回の襲撃に置いてその兵装を使え。』

 

「死ね」

読み進めた。

 

『性能は保証する、壊しても良いから存分に使え。』

 

「壊すか。」

 

決意したように、その兵装を出す為のコードを読み込み出現させようとした時。

 

「あ」

 

無人機からの攻撃を受けた。

 

 

 

 

空気(相澤康一)

 

「あ、アルさんがまた勘違いしているような気がする…………」

 

 

 

 

【シャルロット・デュノア】

 

「…………あれ?」

 

呆けたように、自分の手足を確認する。

確かに、自分のISのカラーリングは橙、つまりはオレンジ色であったのに対して、今ではカレーが大好きな大食漢の色、黄色。

 

全身を見回すとその色は目に痛いほどだ、だが形状はそこまで変わっている訳ではない。

 

「シャルロット!!」

 

「!?」

 

条件反射的に顔を上げた。すると、無人機からのビーム攻撃が来ていた。無意識に手を上げて頭を守る。しかし、いつまでたっても衝撃がこない、そして恐る恐る確認すると。

 

「盾の自動展開?」

 

とっさに上げた手を見ると堅牢とは言いがたいが光るヒレのような盾が出現していた。そして、先のメールの内容を思い出した。

 

『簡単に言えば、ゴットイーター2に出てくるヴィーナスのようなものだ、武器それ自体をISに埋め込みそれを展開(・・)する事によってラピットスイッチとは比較にならないほどの換装スピードを実現させている。ま、端的に言えば君のような愚図で鈍間なIS操縦者でも簡単に扱えるようなものだ。』

 

「やってやるか!」

 

 

主人公(相澤康一)

 

「ふう、ここら辺で問題ないだろう。後でエネに頼んで元に戻せば、オールオッケイだ。」

 

『私におんぶに抱っこじゃないか。』

 

「俺はいつだってやってやるさ。」

 

俺は安全に到達した。


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