IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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闇《テンサイ ノ カイコウ》

そこは闇の中。僕は、僕にあてがわれた部屋に腰下ろしている。その部屋は殺風景な場所で、何の娯楽や文化的なものは存在しない、あるのは打ちつけた鉄筋コンクリートの床、壁、天井それだけだ。

 

そんな殺風景過ぎる部屋で僕は虚無な時間を過ごしていた。…………まあ、端的に言ってしまえば暇なのだが、最近は皆ピリピリしているような気がしてならない。

 

一介の兵士である僕には詳しく分からないのだが、近頃大規模な作戦に出るらしい。ま、僕が分かっていることと言えば、標的はIS学園と言うことだけだ。

 

その作戦時に命令を聞けば良いだけだし、僕には関係無い。と言うか参加していない作戦は全然なにが起こったかわかっていない。そう、問題としてはどうやってこの暇を潰そうかということだ。すると、()の中の悪魔が囁いた。

それはファントムタスクにあるまじき行動であり、今の僕には非常に面白そうな案件。

 

「篠ノ之束に会いに行こう」

 

僕は部屋を出た。そして…………。

 

「篠ノ之束と面会しに来た。」

 

「確認を取ってみます。」

 

まあ、アポ無しで来たからな。弾かれることもあるかも知れないけど……………悪いことにはならないだろう。

 

「ええ『男』が…………はい、え?…………分かりました。」

 

難なくクリアだ。そして、僕は稀代の天才。篠ノ之束と対面する事になる。

その事実に生唾を飲みながら、閉鎖されている軟禁部屋のドアが開く。

 

 

 

「この人が、あの。」

 

 

 

「ええ、天災。篠ノ之束です。…………交渉、拷問もしましたが、芳しい結果は得られませんでした。現在は、軟禁し外交的な扱いをする為にこうしているのです。」

 

物凄いぺらぺらと喋ってくれたなぁ?秘密主義のファントムタスクさんにしては珍しいことだ。僕は頬に笑みを浮かべていた。

 

「へえ、ま。殺さないようにはしておくさ。」

 

と言いつつ僕は部屋に入った。とりあえず、これが終わったら看守を見守る看守をつけておくことを推奨することにしよう。

 

「…………またか。君たちも飽きないね。」

 

その中に居たのは酷く憔悴しきった顔をした女、篠ノ之束が、壁に取り付けられた手錠を付けられながら座って居た。またってのは、尋問や拷問まがいのことをやったのか?まあ良いや、それより僕はやらねばいけないことがある。

 

 

「今回は達じゃないんだけどな。篠ノ之束」

 

 

呟いても反応が無い。こちら側の世界では当たり前なことなのだが、やられ具合に対して結果が出来過ぎていると思う。

ともかく反応が無くても僕がやらなければいけないことは出来る。

 

「……………良いや。()は。」

 

そういって息を吸って吐く、もう一度吸って、止める。全身に酸素が行き渡り、体中の筋肉が歓喜の悲鳴を上げる。

そして、小気味良い銃声のような平手打ちの音が室内に響いた。

 

「なんで、あんなものISを作った?」

 

「…………私の知り合いに。(宇宙)に、行きたいって言っていた人が居た。それだけだ。」

 

僕の中で怒りが渦巻く、その中で僕はたどたどしくも喋っていく。これも、最初に平手打ちでもしないと、その怒りで自分がどうにかなりそうで、ここまで喋れなかっただろう。

それに、その返しは予想済みだ。

 

「それで何人の者を巻き込んだ?そしていつまで僕は犠牲になれば良い?」

 

「だからなんだよ。私は、私と私の認めた人のためにしか動いていない。」

 

()の感情の吐露。でも、篠ノ之束は僕を睨みつけながら口が減らない。

 

 

「お前の大切な人ぶっ殺してやろうか?」

 

「君程度で殺されるようなやわな人間じゃないよ。」

 

 

いちいち勘に触る言動をしてくる。まあ、僕としてもここで怒り狂ってISの元凶を叩いて復讐して終わりってなってもファントムタスクさんがら酷い報復がくるだけ。僕の今には代わりは無いのは分かっている。

 

「…………まあいいけど。天災とやらのご尊顔を拝みたかっただけだし。せいぜい、出してもらえるように俺達の女王様にでもその枯れかけた声で泣き付くんだな。その鉄カゴの中で。」

 

 

 

といって僕は踵を返した。背後で篠ノ之束が…………笑った。

 

 

巻き込まれる奴が巻き込み、巻き込んでいる奴が巻き込まれる。坂を転がる雪玉のように。

 

 

僕は思う、もう僕が物語りに置ける施行権はもうすでになくなっていると言うことを。

 

 

それを達観するでもなく、慌てふためく訳でもなく。ただ、そこにあると認識しているだけだった。

 


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