【第六感というものを信じるだろうか、俺は・・・信じる、盲信ではないがかなりの比重を持っていると自覚している。今世でいやというほどに助けられたしな・・・。
だが、絶対に固定概念から外れたそれは、時に途轍もなく信じられないものになってくる・・・そしてもし、勘が当たっていたら・・・。
思考がとまり、完全に無防備になるだろう。そういう話である。】
今俺は受験生になっている・・・つーか、今受験だ。
俺の小学校の半私立(俺が作った造語。)と言う特性上かなり変な授業(シーケンス制御やプログラミングに農業体験、ガラス細工体験もあれば、演劇の公演も見に行った。さらには女子はインフィニット・ストラトス、通称ISにまで網羅させようとしている。)がある。そしてその大元の高校・・・つまり藍越学園の生活はもちろん、受験にもかなり有利に働いてくるというわけだ。
進学率も就職率も高いしそりゃあ行くことになるでしょうね。
進学までしてやりたいことないしなぁ・・・。
とそんな、後ろ向きな考え方を頭にに残しながら試験会場に行くため電車に乗った。
いつからか、気づいたときにはもう持っていた某音楽プレイヤーの付属品のような、それで居てなぜか高音質なイヤホンを耳につけ、お気に入りの音楽を聴きながら、車窓の景色をただ呆然と眺めていた。
寝ていても(この場合は比喩表現。)受験に受かるので、その景色を呆然と眺める暇な時間はこのところの生活を思い返していた。
俺が”あの事件”のあと小学校を卒業し義務教育の二段階目である中学校ではすでに男女差によるパワーバランスが崩壊していた、物心と言うものがすでに付きに付き捲っているころだから、女子が高圧的になっていたのは想像に難くないところだった。
因みに俺はのらりくらりとかわしていたから実質的被害はかなり少なかったが、ほかの男子は卑屈になるしかない。容姿がよければ女子の奴隷かおもちゃにされ、逆なら人というものが少なからず持っている、加虐精神の矛先にされた。
俺の周りはそんな程度だ。
だが私生活の部分のターニングポイントがあった、あ、これは俺に関するところだから重要ね。
そしてそのターニングポイントは、この三年で、この体の母親と父親が顔を現した・・・そこで聞いたのだが、母はISの研究に、父はその血筋ゆえの外交を担当しているらしい。その血筋ってのは詳しくは分からないが・・・。
『○○市民会館前~○○市民会館前~』
おっと、ここまでにしておくか・・・。そこで思考を打ち切り、受験会場に行った
しかし、受験会場が遠い・・・去年に起きたカンニング方法の対策らしい、とりあえずそんなカンニングを思いついた奴に呪詛を送っといてやろう、何でこんなに移動しなきゃいけないんだ。
・・・呪詛を本格的な物にしたほうがいいのかもしれない。
「迷ったーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!。」
おい・・・なんだよこれ迷うよ!地元の人間でもない限り迷うよ!!なんでこんなに迷路じみてるの?設計者出て来い!お年寄りに配慮しろ!市民会館だろ!?・・・不毛だ。
さて・・・どうするか・・・。
・・・何してもいいから試験会場にたどり着くしかないだろ。
とりあえず適当に探してまわ・・・。
「あっ。そこの人!。」
「ん?」
なんか後ろから声を掛けられた。
俺は声の方向を見ると、どこか愛嬌を持たせた顔立ち・・・いわゆるイケメンだろうか?そんな、顔だけでも特徴的な少年がこちらに声を掛けてきた。
・・・この十五年間で培われた危険センサーが俺の脳内でガンガンと警鐘を鳴らしているのはなぜだ。そんなに危険なのか?このセンサーよ。
因みにこのセンサーがなっていいことは一つもなかった。そんなことはどうでもいいから地平線上の彼方にひとまず吹き飛ばしておこう、まずは新たな登場人物との会話を優先させる。
「えっと・・・さっき、迷ったって叫んでたけど・・・あんたも迷子か?。」
「ああ、・・・まさか迷う人が俺以外に居るとは・・・。」
「そこは突っ込まないでくれ・・・。」
「了解。そんで・・・どこ行く?」
「勘でこっち!。」
「・・・大丈夫なのだろうか。」
「なんか言った?」
「何も。」
とりあえず会話は成功・・・同年代だと俺って言う自称が適当だろう。
どんどんと迷子の少年が突き進んでいく・・・ちょっ警鐘うるさい!。・・・それにしても、イケメンと仲良くなると・・・被害が。
・・・そういえば少年と言う呼称を改めたほうがいいな。
「なあ、お前さ。」
「なに?」
「名前なんていうの?」
「ああ、ごめん名前言ってなかったか・・・俺は織斑 一夏だ。一夏でいい。」
「よろしく一夏、それと俺は
「出来る限りな~。」
「酷い!?」
「ジョークだ。」
「・・・ギャグセンス無いって言われない?」
「・・・言われる。」
そうこうしているうちに・・・うっせんだよ!!危険センサー!!。
頭の中で警鐘を鳴らしている何かを無視し俺は一夏についていく・・・。ってか、ここはどこだ?
なんか同じところぐるぐる回っているような・・・いや、どこかに誘導されている気がするんだが・・・。
仮にそうだとして・・・その意図は?・・・俺のほうは、母親の交渉や父のほうの血筋が関係しているだろう、だがこんな受験会場でやる必要はない・・・。
それはいい、けど・・・こいつはどうなんだ?・・・何かしらの剣呑な雰囲気を帯びているわけでもなんでもないし・・・。
考えても仕方ない・・・か?
「どうしたんだ?康一。」
「ん?ああ、考え事をしてた。」
「そうか・・・それと、ここの部屋に入るぞ?」
「案内がないし・・・いいんじゃないか?。」
「よし、あけるぞ。」
一夏が扉に手を掛けそれを開けた。
【そして少し話しは代わるが・・・これは勘があったっていたケースの話だったらしい。】
そこには・・・二つのの鎧が鎮座・・・いや居た。
俺たちを出迎えるように、なぜか俺の中の警鐘と、鎧の存在感が高まっていく。
「ISか?」
「そのようだね。」
俺は少し思考が停止し、必死に回転させた脳で考え・・・結論。
「いや・・・まさか、ここIS学園の試験会場?」
「・・・マジ?」
おいおい・・・けど、乗れないし俺には無害だな。
「・・・ちょっと触ってみないか?」
たしかに・・・こんな状況いくつもないな。ISをいくつか紹介するイベントは何回かこの付近でも開催しているが、俺は生で見たことは無い。イベントに行きさえばあるが・・・確実に変態扱いされる。
考えても見て欲しい。付近の狭い会場、馬鹿でかい鎧、そしてISの特性による少ない開催時間。会場近辺の女子はこぞって行き、会場は混雑。男でいるのは親御さんくらいしかいないだろう。そんなところに居てみろ、満員電車の冤罪対策のごとく万歳するしかないぞ。それでなくとも女子専用みたくなるだろう。
何が言いたいのかと言うと、こんなケースは非常に稀であり、稀というワードに反応し俺の食指が動いてしまったと言うことだ。
「・・・だな。」
そういいながら片側の口角を吊り上げる。
それから、無言で俺たちはそれぞれの鎧に足を伸ばし・・・鎧の前で止まるそして、どちらが合図を出したわけでもなく・・・同時に触った。
だが、何も起きない・・・。だろうな・・・と結論づけ、ちょっとしたくだらなさに笑ってしまった。
そういえば、笑ったの久しぶりだな・・・。そういう意味だったら触ってよかったな・・・。あ、それと一夏は・・・。
「これ・・・動くぞ・・・。」
「はぁ!?」
・・・驚いた、いや・・・実際には男だって・・・いや、男子の平均を行っている俺がサンプルだ、コイツが特別なのか。
『・・・ふむ、そろそろ私も新しい・・・が欲しかったところだ。・・・これでも、動かせるようにしてやろう・・・はやっつけ仕事は向かないんだがね。・・・そろそろ、記憶も戻すべきだろうか?』
何か、聞こえた気がした。
それを感じた刹那、一気に数多の情報が頭の中に流れ込んできた、それは麻薬のような陶酔感と高揚感を感じさせ、ともすれば全能感すら感じられた。
だが、それはコンマ一秒ほどのこと、頭が慣れたのか情報の流れが遅く・・・。
なったと思った矢先に意識がブラックアウトした。
いや・・・ブラックアウトは適当ではない。
俺の意識だけははっきりし、周りが一瞬にして暗くなった。と言う表現のほうが適切だ。
不自然な浮遊感と、なぜか懐かしさを覚える光景を感じながら、思考を加速させる・・・いや、させようとしたが情報が足りない、ISというのはこういうものなのか?・・・いや視界を全部消すなどと言う変なことは出来ないだろう。などという推測しか出来ない。
一通り思考し終わったあと、ひまを持て余していた。
「おーい、誰か居ないの?・・・まっ、居るわけないか。」
と一人ごちしながら、意識をハイに持っていこうとする。
「失礼だぞ。よく探せば居るかもしれないじゃないか。」
そしたら、誰かが話しかけてきた。
「・・・そうだよな、ごめんな、よく探してみるよ・・・礼節は重んじないとな。」
「そうだ、その意気だ。私は君がこんなに成長してくれてうれしいよ。」
「お前は俺のお母さんか?」
「ふむ、母親の定義をしっかりしてもらいたいな。私はおおよそ通常の家族・・・この場合は母親を見たことがないんだ。」
「奇遇だな。俺もだ、さっきのせりふだって漫画や小説それに準じるものからすっぱ抜いただけだ。」
「なんだ、気が合うな。」
「そうだな。」
「「あっはっはっはっはっは」」
「まあ、十年ほど一緒に居たんだ。気心くらいは知れてもいいだろう。」
「十年も一緒に居たのか~。って誰!!?」
さっきまで会話していた青いジャージを着た少女に驚いていた。
「気づくのが遅くないかね?」
「もう、流れるように会話していたよ!!そして十年って何だ!?」
「いや、まずは自己紹介からだろう。」
「こんなところに居る変な人間に常識を説かれた・・・。なんかショック。」
「いや安心してくれ、私は人間ではないからな。」
「そうか、それはあとで突っ込まさせて頂くとして。俺はあいざ「私の名前はエネだ。」自己紹介を途中で突っこんでくるんじゃねえよ!!人の話はちゃんと最後まで聞けって母ちゃんに習わなかったか!。」
「すまないね、教えられていないんだ。私の親はいささかコミュ症気味でね。」
「それはそれは残念な母親だな。そんなやつ、もしくはその知り合いがが名付け親とは。」
「それはそれは、残念な母親だったんだよ。しかし・・・かなり盛大なブーメランを放ったものだ、これは君から貰った名前だからな。」
「そうか、俺から貰った名前か・・・はぁ!?俺はお前なんか会った覚えなんてないぞ?」
「覚えを消させてもらったからな。」
「・・・まさか、記憶操作?」
「ご明察、そのまさかさ。」
「なるほど、それは普通の人間じゃないな。」
「だろう?」
「で、本題に入るぞお前は何なんだ?」
「ん?私は君のイヤホンさ。」
「は?・・・俺が持っている・・・あれ?あの・・・気が付いたら持っていたあれ?」
「ああ、とりあえず気が付いたって言うのは違うし、誰かが君に持たせたわけじゃない。」
「受け取ったのを、俺が忘れていた・・・いや忘れさせられていたってことか?」
「そういうことだ・・・。そして今からその記憶を返す。」
「・・・面倒ごとに?」
「なるね。」
「・・・記憶を戻せ。」
「おや?面倒ごとは起こすのは得意でも巻き込まれるのは嫌がる君がどういう風の吹き回しかな?」
「さすが十年も一緒にいるだけはあるな・・・十年来の面倒ごとなんて初めてなんでな、そろそろ潰さないといけないと思っただけだ。」
「フフッ分かったじゃあ戻すよ・・・・・・・・・・必要な部分だけね。」
と俺に手をかざす。
「ちょっ!?余計なことをっ。」
するな、と言い切れずに俺の意識が、今度は文字どうりにブラックアウトした。