文化祭の、一つの生徒会イベントである演劇をやっている時の事。その、発案者である更識楯無は、焦っていた。
「(何…………この胸騒ぎは?)」
実は、この演劇は男性IS操縦者を狙う人間をあぶりだす為の作戦のようなものだ。
「(敵が来ないのは良い、けど何。この感覚は。)」
その時連絡が来た。
『敵影確認、迎撃体制に入ります!』
『了解、援護に向かう。』
オペレーター代わりにしている虚に返信して、敵の顔を拝む為に出て行った。
「(織斑君に危害は及んでいないし、相澤君に動きは無い。IS学園の機密部の監視に異常はない…………なぜ、このタイミングで?)」
疑問を残しながら。自身の力を振るう為に、出る。
◆ ◆ ◆
IS学園上空、そこに学園の名を冠するものが三機
「…………」
二つは、凰とセシリアのものだ。そして、もう一機はIS学園に存在しない、いやむしろ、存在してはいけないものだ。
「サイレント・ゼフィルス。それをどこで。」
セシリアが、サイレント・ゼフィルスの搭乗者に語りかける。
「答える義理は無い!」
上空で、一つの戦場が展開された。
◆ ◆ ◆
一夏が呆然と、上空を見た。そこには過激な戦いが繰り広げており、それに舌をまいていた。
専用機持ちの代表候補生に連絡は行ったようだが、一夏がISを展開していないと言うことは、一夏には連絡が行っていないことになる。
それもそうだ、さっきまで、王冠を奪われまいと数多くの女性から逃げていたのだから。
「楯無さん!」
そこに、今のコーチ更識楯無が駆け寄った。
「よかった、無事?」
「はい、でも鈴たちが…………。」
「あの子たちは心配ないわ。心配だからと言って、参加しないで。足手まといになるだけだわ。」
一夏が言った心配をたしなめ、さらに命令を追加する。
「それより危ないのは君。奴らの狙いは、君のISよ。」
「奴らって…………なんですか!?」
「…………奴ら、奴らの名前は「おいたはそこまでよ、ロシア国家代表。」
楯無が言いかけて、一夏でも楯無でもない声と打撃音が一緒にやってきた。気が付いたら、楯無の姿が消え楯無がいた場所は黄金の装甲を各所に纏ったISがそこに鎮座し、楯無は壁に叩き付けられていた。
「始めまして、織斑一夏君。」
「楯無さんになにをした!」
激昂し、ISを展開する。白式が姿を表した。
「何、ちょっと邪魔だったから跳ね除けただけよ。」
「ふざけんな!」
「ああ、ちょっと。そんなに怒らないの、折角のいい顔が台無しよ?
それに今回、私は君に用はないから。もう一人の男をちょっとぶっ飛ばしに来ただけよ?」
からから、と笑うその顔とは裏腹に態度から殺気をにじませている。
「で?もう一人の男性、居場所を知らないかしら?」
「だっ、誰が仲間の居場所を教えるか!」
といいながら手に刀、「雪片弐型」を呼び出し、構える。
「…………クスクス、負けん気が強いのはいいことだけど、それじゃ足元を掬われるわよ?
それに彼は、もうアナタの仲間じゃないかもしれないじゃない?」
「なにが、言いたい!」
煙に巻くような言い回しに苛立ちながら刀を握る力を強くした。
「ただの肉塊になっているわよ。」
「…………あいつが、そう簡単に死ぬたまかよ!」
「おっと、危ない。」
その言葉に苛立ちをぶつけるように刀を振い、そして避けられた。そこに、追撃のように実弾が叩き込まれる。実弾が飛来して来た方向に目を向けると、ランスを構えた楯無が居た。
「そうよ、だまされてはダメ。彼に付けた発信機は教室から移動していないわ。」
「…………。ふうん、なかなか使えるのかも知れないわね。」
何かを呟いたが、それを無視して楯無は攻め入った。
「そうだ、私がここに来たのは。私の部下がISと交戦しているって連絡が入ってきて…………私の物に傷をつけたから、その報復よ。
今彼は、死に掛けながらも抗っている頃かしらね?もちろんとどめは私が刺すけど」
「戯言を…………っ!?なんですって!?」
プライベートチャンネルで、連絡が来たのだろう。それを聞いた楯無は頭を抱えた。
「どっ、どうしたんですか!?」
「連絡が…………。康一君が教室に居ないって。」
「なんだって!?」
その時、IS学園の何処かで光の柱がそびえ立ち、膨張したそれがだんだんと収縮していく。
「なにが、起こってるというの?」
「……………康一だ。」
楯無の呟きに一夏が反応し、その光の柱の発生元へISで駆け寄っていった。
「待ちなさい!一夏君!」
目の前に強敵がいる故に、それを物理的な手段で止めに行けない。一夏はその場を逃げるように去った。
「仲間思いのいい子じゃない?」
「それのおかげで、時間外労働させられるような疲れが襲ってきてるわ。」
楯無も一夏と二人でこの敵と戦って、自身の足を引っ張られるよりは、康一を助けた方が良いと判断したのだろう。それに、康一が捕獲、殺害されても国際的に痛手は食わないだろうと、楯無は敵と向き合う。
「私も、役割は終わったし帰ろうかしら?」
すると、明日の夕飯の献立を考える時の様にそう言った。
「逃がすと思って?」
「私が逃げられないと思って?」
◆ ◆ ◆
「康一!どこだ!康一ィィィィィィィィィィィィィィィィ!!」
一夏が、ISのスピードを利用して光の柱の発生元を見た。そこでは巨大なフラスコ状に地面が削りと取られていた。その、元に一人の男がISを纏い立っていた。
「…………よぉ。」
「大丈夫か!?」
すぐに、一夏は康一に駆け寄った。その刹那一夏の脳裏に女の言葉が過ぎる「もうアナタの仲間じゃないかもしれないじゃない?」何かが引っかかる、でも確認はしなければ。
「ああ、大丈夫だ。だけどちっと、疲れた寝る」
といって、そのまま床に向かって倒れこんだ。
「はぁ!?って、おもっ!」
とっさに、体を支える。その本人を見ると、死んだように眠っていた。
「寝てるって…………。おい!起きろ!はぁ、運んでいくか。」
諦めたように、一夏は康一を背負い保健室に連れて行った。