IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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サードファントムの煉獄

表舞台では、もう一夏やその取り巻きによる、ドンチャン騒ぎが始まっていた。

 

『向こうは楽しそうだな。康一』

 

『向こうは向こうで楽しめば良いさ。こっちもパーリィーだぜ?』

 

これから…………整えに整えた、準備の集大成だ。やってやる。

 

『行くぜ、エネ』

 

『ああ。』

 

俺は、液体が入ったバケツを持った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

IS学園のロッカールームと言う空間で、女が一人立っている。そこに一つの影。

その影は一息で女の下に近づいて、持っているバケツから水をその人にたたきつけるように吐き出させた。

 

バシャン!と言ったような、水の音がした。影の主、少年のような男のような人間は言った。

 

「ねえ、お姉さん。僕と遊ばない?」

 

そういった者の口元には笑みが浮んでいる。

 

「…………だれだ?お前?人に水をぶっ掛けやがって。」

 

「やだなぁ、巻紙礼子さん。写真を渡したじゃないですか。」

 

男は女を巻紙礼子と称した。

 

「覚えてねえな。」

 

「アララ、そんな言動していると、火遊びが得意そうと思われますよ?。」

 

「気色わりぃガキだな。とっととあたしの前から去れ。」

 

「いえ、そういう訳にも、行かないんですよねェッ!!」

 

「!?」

 

男の手からISの腕が伸び、打撃と言う凶器で巻紙を襲った。それを彼女は驚愕しながらも、避けた。驚愕したのは、ISが原則的に女しか扱えないからだ。

 

「お前、二人目の男性IS操縦者か。」

 

「ええ、相澤康一といいます。フフッ、もしかしなくても一人目がよかったですかね?」

 

「ああ、まったくだ。」

 

「ですが、残念僕と遊んでいただきますよ、カゲアカシ!」

 

康一の体が発光する、実際には体の回りに光の粒子が纏うのだが、そして次の瞬間男の体にISが顕現する。現代における絶対的な暴力にして、益、その圧倒的な能力が巻紙の目の前に現した。

 

「こうなれば、私が何ものか知っていたみたいだな。ファントムタスク、オータム!行くぞオラァ!!」

 

巻紙が音も無くISを顕現させる。全身に装甲が行くフルスキンと呼ばれるタイプで、その様相を一言で言うなら「蜘蛛のような異形」だ。背部に脚が8本あるのもその要因と言えよう。

 

「ええ、こちらも行きますよ。」

 

「チッ、テメエを倒して、情報の出所を押さえる必要があるな。」

 

オータム自身のISの8個の脚から実弾が放たれる。それを呼び出した大きい盾のようなもので逃げながら防ぐ。

盾にすべて当たっており巻紙の腕の高さが伺える。だが種も仕掛けもなくして敵に立ち向かうような人間ではない。

 

「……………ああ、言い忘れてましたけど。痒くないんですか?」

 

「うるせえ!!あの水になにしやがった!」

 

「つらいでしょう?料理で山芋とか扱うとその苦しみが襲ってくるんですよねぇ」

 

巻紙は歯噛みした。実際に痒い、いやむしろ激烈な痛みのようだ。しかもこれは…………。

 

「ま、こんにゃく芋は山芋の比じゃないですが。」

 

こんにゃく芋だ。

康一が言ったようにこんにゃくには、激烈なかゆみをもたらすシュウ酸カルシウムと言う物質がある。むしろ痛みで死なないが痛いという点では集中力の低下を招くだろう。

そして、対ISの面から見て、死ぬような毒物は操縦者保護のプログラムが起動し、自浄するが。こいつは死なないから効くという寸法だ。

 

「ほら、守りがお留守ですよ!」

 

「グッ!?」

 

盾から腕を出しいつの間にか持っていたペトゥルで射撃を行う。

 

「こんな小細工でお前ごときに負けはしねぇんだよ!!」

 

「甘い!」

 

盾を背に背負い近場のロッカーをISのマシンパワーを使い、巻紙に向かって蹴り飛ばす。

 

「やかましい!!」

 

蹴り飛ばされたロッカーを八本の脚で切り裂く。

 

「少しは考えろ!」

 

「!?」

 

切り裂かれたロッカーだった物から、まばゆい光があふれ出る。これは世界研究者クラブの作品で中に特殊な光る液体が入ったBB弾だ。それが衝撃で光り、目潰しになったのだ。

 

「オオオオオオオッ!!」

 

出した三個のペトゥルで加速し、康一が体当たり、そして出した五個のペトゥルを湯花によりブレードの状態に固定し五個分のエネルギーを三太刀ほど叩き込み逃げる。

 

「ふう。」

 

一息つきながら、使ったペトゥルを背の『灯火』に刺していく。

実はこれが、IS「カゲアカシ」のまともな運用法である。

エネルギーのバックパックである灯火でペトゥルのエネルギーを補給しローテーションしながら使っていく。

こうする事により、瞬間的な火力も持続的な戦闘能力が切り替えられる。

 

「…………分が悪ぃな。」

 

「敵地ですからね。」

 

今も、オータムは激烈なかゆみが襲ってきているにも関らず、減らず口を叩き続けている。

 

「(しかし解せねぇ。ここまで用意し予見できる能力があるのならさっさと援軍を呼べばいいはずだ。なにが目的だ?)」

 

「考えごとですか?余裕ぶってますね!!」

 

近場にあるロッカーを投げた。

 

「二度も通じるか!」

 

「ただの目晦ましでーす!」

 

投げたロッカーを警戒しに肉薄し、さらに加速をつけて、それを押し付ける。マシンパワーではオータムのISに軍配が上がったようだ、ロッカーを押し付けた側がのけぞったのだ。

 

「なにが目晦ましだ!!」

 

「そこ!!」

 

調べていたIS学園にある水道管の一つとあらかじめ仕込んでいた、コンセントをペトゥルで撃ち抜く。そこから水が吹き出てきて、感電させる。

 

「あり……………やっぱ家庭用じゃ無理があるか。」

 

康一がそう呟いた。シールドエネルギーは少しは減っているが無視できるレベルだった。

 

「オラアァァァァァァァァッ!!」

 

それに気を取られている間に、オータムが八本の脚で攻撃する。近接攻撃も遠距離も出来る優れものの脚だ。それを踵を返し走り逃げようとする。

 

「逃がすか!」

 

「逃げてない!」

 

康一が走った近くのロッカーからガスボンベを取り出し目の前に放り、それをペトゥルで撃ち抜き爆発させる。

 

「うぜぇんだよォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

怯まずにオータムは攻撃を繰り出した。康一は下を潜り抜けて、その攻撃を避ける。

 

「これでも喰らえ!」

 

康一は持っているペトゥルをオータムに投げた。

 

「POP!」

 

ペトゥルが自爆した。普通の手榴弾よりは数段威力が高い。

 

「……………」

 

オータムが尋常ならざる殺気を出している。そして、ロッカーを投げた。逆に考えたのだ、敵がビックリ箱のような武器を用意してくれたのだと。

 

「エエッ!?それは不味いって!」

 

それに驚いた康一は、ロッカーを喰らった。そこにロッカーごと実弾を叩き込む。一気にロッカーが膨れ上がり…………大きな音を鳴らした。

 

「あー耳がキンキンする。」

 

「油断したな。」

 

オータムの腕から糸が出てきて康一の手に絡みつく、次々に出される糸に四肢を奪われて、さながら蜘蛛の糸のように動きを封じていく。

 

「…………あれ?これ何?身動き取れね、あり?死んだ?」

 

「殺すか、バカが。本当は織斑一夏のISが欲しかったんだがな。お前のをついでに奪っておくぞ。」

 

オータムが、手に持ったのはヒトデのような趣味の悪い機械。それを康一に付けた。

 

「ガッ………ガァァァァァァァァァァァァァァァァッ」

 

突然に康一が苦悶の表情を浮べ、全身を痙攣させた。

その機械はリムーバーという、それはISにつけると対象者に電流を流し、その流された者からISを奪う代物だ。

康一の周りに、ISを顕現させたときと同じような光の粒子が現れ、消えた。その後は生身の人間しか残っていなく、オータムの手の中にはカゲアカシの待機状態である、足輪があった。

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

「これを耐えるとはやるじゃねえか。だけどな、散々コケにされてこっちは苛立ってるんだ。死ね!!」

 

再度、手足に糸を絡みつけ磔のようにした。平均的な康一の手足に締め付けられ、糸が食い込んでいるISの力で抜けられなかったその糸は、もちろん人間の力で抜け出せる訳は無いそれなのに。

 

ぶちぶちッ!!

 

嫌な音を鳴らしながら康一の胴体がISの全力で殴られた。

 

辺りは血で染まり。

 

甲高い悲鳴が聞こえてくる。

 

しばらくたち悲鳴が消えた。

「気を失ったのか。運がよければ生き残れるかもなぁ。」

 

手向けのように、そういって踵を返した。

 

 

 

『エネ、直せるか?』

 

『問題無いよ。行こう、あいつはやりすぎた。』

 

 

 

 


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