IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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文化祭。それにへばり付いたゴミ

IS学園に喧騒というか、浮き足だったような、しかして緊張しているような心情が広がっていく。そう、今日はIS学園の文化祭。

 

通常の生徒は緊張を紛らわす為に喋る。そんな中少数派の男子の俺こと相澤康一は、黙ってその光景を見ていた。クラスの出し物の責任者となっているからな、全員の体調やコンディションを確認しなければならない。

 

クラスの出し物は喫茶店に決まっていた。まあ、それを進めるに当たってどこで間違えたのか、メイド喫茶のようになっている。それについてはコスプレをしてみるのも若い内なら良いだろうと思っている、そこまで否定してしまったら大衆がどう動くか分からないからな。

それに、この喫茶店の特性上、ゲストを大いに楽しませなければいけない。

 

これは、喫茶店とは名ばかりの俺の罠。○KB商法のように食事や茶を飲んだときに発生させる、織斑一夏との写真撮影。これにより一夏を狙う敵を炙り出せるのと、俺に標的を移すかもしれない。

 

…………おっと。女子が騒ぎ始めたぞ。さて、俺が出ないといけないようだ。

 

「みんな。こっちを向いてくれ」

 

クラスの全員が雑談を止めてこちらを向いた。

 

「まず、責任者としてみんなに礼を言いたい。よく、ここまで頑張ってくれたありがとう」

 

俺としては罠が展開されただけで、大万歳なんだけどな。

 

「実際は、ここからが正念場なんだがな。」

 

次に、役割分担ずつ叱咤激励でも送るか。

 

「ホール!クレーマー対応頑張れ。厨房の料理を転んで台無しにしないように!」

 

「分かりましたわ!」「全力で事に努めよう」

 

俺がホール責任者に推薦した代表候補生二人、オルコット嬢とラウラだ。この二人を推薦した理由としては、絶対に厨房に入れてはいけないからだ。

 

「厨房!客が来たら地獄かもしれんが、助っ人が来るまで頑張れ!それに、ホールの人間に迷惑はかからないようにしろ、良いな?」

 

「うん、分かったよ」「分かった」

 

俺が厨房責任者に推薦した二人は、デュノアの娘っこと箒さんだ。この二人にはかなりの料理の腕を持っているからな。

 

「撮影!変な人とか居るかも知れないから気をつけろよ!」

 

「お前に言われたくは無いわ!」

 

一夏だ、今回のミソだ。これが餌にならなければこの計画も。

 

「さて、これまでも辛かったと思うが、これからが一番キツイと思う。だが、努力と友情とかその辺の気合的な物で何とか頑張ってくれ。」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「いい返事だ。それじゃ!1年1組の喫茶店、開店準備に取り掛かれ!!」

 

俺の一言で、皆が方々に動いていく。そして、開店の準備を進めていた。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

さて、まず最初に、一夏に給仕の仕事をさせる、格好は執事服で。最初に来る客足をここで掴み、口コミ効果を狙う。

 

「いらっしゃいませ。」

 

早速一人来たらしい。IS学園の性質上、御偉いさんがやってくるか保護者の人だ。

 

俺は今、ホールの端にある一夏との写真撮影場に居る。そこから覗く感じだ。ま、今はそこまで忙しくは無いからな……………。

 

撮る!!

 

いやぁ、いいねぇ。一夏の周りはめっちゃ笑顔だもの。

 

最初の写真撮影の客が来るまで撮りながらこれから時間を潰していた。

 

ん、アレは……………。ブラック神風さんか?

 

「良いところに来たな。」と口の中で呟いた俺は、口角を上げていた。助っ人のお出ましだ。俺は助っ人をどうにかして、出迎えなければいけないが。

今は、親子との再会を祝福してやろう。

 

「いらっしゃいませ…………って、どうしたんですか!?泣いてますよ?」

 

丁度良いところに一夏が接客対応した。

その時、まだ二十台後半と言っても通じそうな三十路後半の親父の目には涙が浮んでいた。あいつの胸には色々な感情が渦巻いているんだろう。だが、今ではそれを全て押し殺さなければならない。

 

「いや、なんでもない。すまない」

 

涙をふき取りながら、そういった。まだ担任殿にばれていないようだ。息子に、親として一言掛けたいのだがそれを自分の立場が許さない。

 

「そうだ、人を呼んで欲しいんだ。野良や………相澤康一って人は居るかい?」

 

「あっ、呼びますね」

 

こっちにコールしてきた。

 

「なぁ、康一なんか変なオッサンが呼んでいるんだけど?」

 

「ブフォッ!?」

 

「どうした?」

 

「い、いや。なんでもない。とりあえず、撮影場に連れて行ってくれ」

 

「わ、わかった。」

 

 

 

 

「で?どうだった?久しぶりすぎる親子の再会は?」

 

「最低に最高で最盛だったよ。」

 

「ちげぇねえや。んじゃ、業務はこれを作ってくれ。」

 

「了解…………ありがとうな。」

 

「いいってことよ。それなりに見返りもある品。」

 

よし、これで料理に文句を付けられることは無くなった。……………お?

 

しばらくして最初の写真場の客が来た。

 

「えっと、ここで織斑君と写真が取れるって聞いたんだけど?」

 

IS学園の制服に身を包んでいたのを見ると途中で抜け出して来た人なのか?。とりあえず凶器類が無いか金属探知機で調べる。

 

「はい、そうです。少々お待ちください、今呼びますので。」

 

よしよし、良い感じだ。後は一夏がヘマをしなければ大丈夫なんだが。

 

「お待たせしました。織斑一夏です。」

 

「は、始めまして。」

 

一夏を呼んで、写真を撮らせることにしよう。

 

「えー、写真を撮りますのでそちらの椅子に座ってください。では、行きますよーはい、チーズ!」

 

カメラのフラッシュが焚かれて、一瞬目を焼く。

 

「現像するまでしばしお待ちを、そのあいだ彼と喋っていてください。おさわりは同意の上で行ってくださいね?」

 

「えっと、止めてください。」

 

 

 

 

 

 

良い感じだ。最初の客が来てから写真のほうも溜まって来た。

 

「交代だ。」

 

そして、これから、俺は写真を現像する機械となる。ま、こちらの写真と、一夏につけた盗聴器で状況を確認して…………ビンゴか?盗聴器からそれらしき会話が聞こえてきた。

 

「すみません、紹介が遅れました。私こういうものです」

 

「巻紙礼子……………」

 

「はい、IS装備開発企業『みつるぎ』の渉外担当をしています。」

 

さて、釣れたぞ。俺が生徒会の仕事を手伝っている時には、そんな名前は出てこなかった。彼女をマークしておいたほうが良いな。

 

「是非に、我が社の製品を使っていただきたいな、と思いまして。」

 

「あの、そういうのはいらないんですけど」

 

そういった瞬間、いきなり手を掴んできた。だが、その手には一夏は食わない、何故なら手を握られた程度のことで落ちるようだったら、この学園は一夏を争奪するために紛争が起こっているはずだ。

 

「まあ、そういわずに。」

 

「う、あのですね…………。」

 

とりあえず。撮影にフォローと、チケットの入手枚数の情報を入れておこう。

 

『撮影、なにをしている。写真を撮らせてもらって、現像データをこっちによこせ。ちゃんとチケット枚数分な』

 

『了解しました。』

 

「あの、お客様。使用チケットは10枚でよろしいでしょうか?」

 

「いいえ、写真は撮らなくても良いわ。」

 

「お客さま、利用規約に一枚に付き一分時間を上げるとは書かれていますが、写真を撮らないことにはご退場して頂くしかないんですよ。」

 

「……………良いわ、撮ってくれないかしら?」

 

「はい、十回撮ります。」

 

一万越えか、良い収入になったな。しかも二次配布は禁止されているし。その時のレジ打ちの人の名前が書かれているからな。おっ、現像データが来た。……………顔を拝ませてもらったぞ。

 

「で、こちらの増設スラスターを装着していただきますと、こちらの脚部ブレードも」

「ですから…………」

 

後は、一夏の問題だ…………これが終わったら。休憩(・・)でも入れてやるか。

 

 

 

十分後

 

「お客様、写真が出来上がりました。十枚ですね。自分で言うのもなんですが良い出来になったと思います。」

 

俺が会話に割り込むようにして話かける。

 

「………………チッ」

 

聞こえない程度に舌打ちって、どれだけ取り繕わないの?。アレだな、戦闘員でISを奪いたい人なのか?それならばこの態度の悪さにも納得がいくな。

 

「ふぅ、一夏災難(・・)だったな。」

 

「災難の部分を強調してどうしたんだ?」

 

「それよりだ、一夏お前少し休んで来い。少しやつれているぞ。」

 

少し、疲労の色が見えている。いやまあ、それ以外にも理由は有るんですが。

 

「お前に言われたくねえよ。どこに行っているか分からないけど、何時も朝になったら何処か行っているじゃねえか。」

 

「それはそれ、大体同部屋になってから毎日だろ。」

 

今更になってよくそんなこと言えるな、気になることを土壇場で言うなや。

 

「早く行って来い。お前なら、そこらへんに居る女子でも誘えば付いてきてくれるよ。」

 

「分かった分かった。着替えるから。」

 

「あ、その執事服、着替えるなよ。宣伝になる。」

 

「そこまでいくと、ちゃっかりと言うか貧乏性と言うか……………。友達に会うんだ。わがまま、言わさせてくれ。」

 

それを、とりあえず。「了解だ、さっさと着替えろ。休みは一時間だ。」けど、そうだなその友達にもサービスしてやるか

 

「おい、一夏ちょっと良いか?」

 

「ん?」

 

「その友達とやらもここに呼んで来い。」

 

「え?なんで?」

「ああ、察しが悪いな。撮らせてくれっていってんだよ。俺が残せる思い出といったら。これくらいしかないからな」

 

「…………ああ、それだったら鈴の奴も呼んで良いか?」

 

「鈴?ああ、かまわないぞ。一緒に撮ろう。」

 

「ありがとう。すぐ呼んでくる!」

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

知り合いに街中で出会うとどうして良いか分からなくなって、顔をした向けることってあるよね。けど、向けないんですよ今は!!

 

「…………ま、ひさしぶり。」

 

「おう、こんな所で会うとは思わなかったからな。」

 

(だん)、康一。お前ら知り合いなのか?」

 

「「おう」」

 

知り合いってヤダね。色々酷いことをして来た訳でもないし、俺の場合は、どうでも良い人間だったからこそ、素を見せている。いや、俺でも素って言うのがよく分かってないんだが。

 

「いや、しかし五反田と一夏が、友達とは。で、鈴は呼んできたのか?」

 

「ああ、今すぐ来るって。」

 

「来ているわよ。」

 

「おっ!久しぶりだな!鈴!」

 

「アンタこそかわり無いようね!」

 

よかった、喜んでくれて。飴と鞭を使い分けないとな。

 

「…………康一、何かおかしいぞ?」

「そういわれれば年がら年中おかしい事になるな。それはそうとして、撮るぞ。」

 

真ん中に凰、両隣に男が二人となっている。両隣がブサイクなら姫に見えなくも無い、だがそういうわけじゃないので助かった。

 

「はい、チーズ!」

 

カシャ!

 

 

「…………なんか改めて撮ると緊張するな。」

 

「なにを言っているんだ一夏。お前、彼女とのツーショット取ってくれって言ってたじゃねえか。」

 

「お前こそなにを「「詳しく聞かせろ一夏!!」」…………。」

 

カシャ!

 

「お前に彼女かぁ、ナンパしようって誘ったのに断られて一人でナンパした挙句についてきた一夏の連絡先を聞かれるのもこれで最後になるのか!」

 

「セリフ長いな。」

 

「相手はどこの誰なの!?」

 

それにしても、物凄い食いつきだな。無理は無い、俺も同じこと聞かされたら天変地異の前触れかと思うぐらいだ。

 

「It is a joke! 」

 

「なんだよ、性質の悪い冗談言うんじゃねえよ。」

 

「まあまあ、良い写真だったよ。」

 

「嘘のつき方が上手過ぎるんだけど。」

 

そういう人間ですから。

 

「よし、俺は現像したりしているから、お前らは遊んで来い。」

 

「おう、ここは頼んだ。」

 

俺は、撮影場から出て行く三人を見送った。…………結構、回り道したけど時間だ。

 

 

 

 

一夏が休憩に入り、そろそろ一時間経ちそうなとき。やっと来た生徒会長を迎えた。

 

「…………やるんですね。」

 

「一瞬誰かと思ったわ。」

 

俺は今執事服を着ている。少しでも集客が上がるのであれば、このようなこともする。

 

「酷いですね。で?やるんですか?例のアレは。」

 

「ええ、やるわ。全生徒参加型演劇」

 

「お疲れ様です。俺は参加しませんが。」

 

「なんで?」

 

「いや、一夏と同じ部屋ですし。」

 

この生徒会の出し物、全生徒参加型演劇は一夏との同じ部屋に入ることを目的としたレースのようなものだ。生徒会の手伝いをしているからこそ分かったが。

 

「利益がありません。店番もしなければいけませんし。そのために、部外者を連れてきたんですよ?」

 

といって、親指を立ててブラック神風さんを指差した。

 

「むしろそこまで店のことを考えているって、社畜の才能でも有るんじゃない?」

 

扇子を口元に広げた。その扇子には、「哀れ」と書いていた。あなたの親父さんも社畜見たいな物だろうが。

 

「嫌味ですか?」

 

「全然思っていないわ。」

 

「本当にそう思っているのであれば、そのセンスの欠片もない扇をしまってください。扇子だけに。」

 

「…………そういう類の冗談も言うのね。」

 

感想がそれかい。そういわれるもの仕方ないがな、ブラックジョークの領域をちょこっと超える程度の冗談だ。

 

「ええ、レアですよ。じゃなくて、もうそろそろ一夏が帰って来るので用意していた方が良いと思いますよ。」

 

「分かったわ」

 

その後、一夏が来て生徒会長が連れ去った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

「飛んで火に入る夏の虫……………って、お姉さんのことだよね?」

 

「…」

 

 




私は文化祭にはまともに参加してませんでしたねぇ。

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