仮面ライダーディケイド~昭和リイマジの世界~ 作:火野荒シオンLv.X-ビリオン
何故に今さらと思う人もいるでしょうが………それは近いうちに分かると思います……多分
シゲルは目の前の相手……ジェネラル・シャドウの攻撃を、必死に避けていた。
突然襲いかかってきたジェネラル・シャドウの攻撃は、どれも鋭く、剣先が当たれば致命傷は免れないほどの速さで、避けるだけでも至難なもの……
それでもギリギリで避けられるのは、やはり人体が機械であるためであろう……今のシゲルにとって、昔と比べ物にならないほど、反応の早さと動きの切れが上がっているのを感じていた。
だがそれでも、シゲルの劣性には変わらない……
(くっ……麻酔は殆ど切れたみたいだけど、まだあいつらみたいな姿になれそうには……! )
「……どうした、変身はしないのか…?」
「っ……!」
「…成程、麻酔をかけているとは聞いたが……万が一のために、変身のプロセスまでも遮断させているのか……その様子だと、後5分は変身できないようだな」
ジェネラル・シャドウはそう告げると、トランプを一枚取り出し、ユリコがいる牢屋に投げる。
トランプの切れ味をあらかじめ見たユリコは、小さな悲鳴をあげつつ、慌てて避ける。
「ひっ……」
「!ユリコに手を出すな!」
「安心しろ、あの娘……タックルを狙ってはいない。タックルは後でも殺せるからな」
ジェネラル・シャドウはそう言いながらシャドウ剣を構え直し、再度シゲルに切りかかる。
シゲルは慌ててそれを避け、ジェネラル・シャドウを睨み付けていた。
「……後4分…それまで逃げ切れるかな?」
(くっ……武器の代わりになるものがあれば………!そうだ、あいつが最初に切り落とした鉄格子!あれで時間を……駄目だ、短すぎるしダメージも期待できない!)
「どうしたストロンガー!逃れないと死ぬぞ!」
「っ……!だったらこれでも………食らいやがれ!!」
シゲルは手袋を外すと、膨大な電気で殴りかかろうとする。
だが、ジェネラル・シャドウはフッと笑うと、自身の体をトランプみたいにし、その場から姿を消す。
それを見たシゲルは立ち止まり、辺りを見回す。
「!?あいつ、どこに!!?」
「!シゲル、後ろ!!」
「!?しまっ」
「……せいっ!」
「がっ、あぁ……!」
「シゲル!」
ユリコの叫び声を聞き、シゲルは慌てて後ろを振り向こうとするが、その前にいつの間にか背後に回っていたジェネラル・シャドウの攻撃を受けてしまう。
背中を思いきり斬られたシゲルは、ゆっくりと地面に倒れ、ユリコは悲痛の叫びをあげていた。
「…避けるぐらいなら攻撃しようと考えるとは……貴様もバカなやつだな。それに私がわざわざ後ろに回り込まなくても、我が愛剣とのリーチの差があったのに」
「っ……ユリコ!今のうちに逃げろ!!」
「は、はぁ!?逃げろって……アンタを置いて!?」
「いいから早く!」
「させるか!」
シゲルは背中の痛みを押さえつつ、ユリコに逃げるよう告げるが、その前にジェネラル・シャドウは再びトランプとなり、瞬時に彼女の前に立ち塞がっていた。
そのままユリコを突き飛ばし、再びシゲルの方を向く。
「そう簡単に逃がすと思ったか……?」
「っ…!」
「ったい……!シゲル……アンタ……その身体………」
「……こんな暗い中で…よく見えたな……お前…」
ユリコは起き上がるや否や、先程斬られたシゲルの方を見る。
が、シゲルの傷口を見た彼女は思わず絶句していた。
……シゲルの傷口から見えたのは、バチバチと漏電した電流を放つ、機械のような身体……
しかしシゲルはヘッ…と笑いながら、無理矢理身体を起こしていた。
「…何か言いてぇだろうけどよ……ワリィが…ここから逃げ出せた…時に……しっかり話す、からよ……」
「逃げ出せた時、って……アンタ、その怪我で、あんな化け物相手に逃げ切れるわけないでしょ!?」
「タックルの言う通りだ、ストロンガーよ……そもそも貴様は、まだ変身ができない状態……否、仮に変身できたとしても、貴様ごときが私に勝てるわけなかろう」
「へん、しん……ね…」
ユリコやジェネラル・シャドウの言葉を聞いてもなお、シゲルは立ち上がる……
そして目を鋭くしながら、ジェネラル・シャドウの方を睨み付けた。
「へっ……ワリィがよ……俺ァ諦めが……悪いん…だよ……確かに今、は……テメェを倒せ、そーに……ねぇーがよ……脱出する…ぐらい、なら……充分…だぜ……」
「ふん…ならどうやって、私から逃げようと言うのだ」
「はっ……決まってん……だろ……!」
シゲルはフラフラとしながらも叫ぶと、両腕を右に伸ばす。
すると彼の腹部にベルトのようなものが装着され、それを見たジェネラル・シャドウは少々驚きつつも、シゲルに「無駄だ」と告げる。
「無駄だ。貴様は後2分ほど変身できない。それを無理矢理変身のスイッチを作動させるなど、何が起こるのか分からない……下手したら、死ぬぞ?」
「へっ……誰、が…死ぬ、もん、か……」
「フッ、好きにしろ………尤も、俺は待つ気はないがな!!」
ジェネラル・シャドウはそう叫ぶと、シャドウ剣を素早く構え、同時に走り出す。
―――瞬間移動を使わなくても、この速さなら……!
ジェネラル・シャドウがそう思った………瞬間だった。
突然彼の体が、一瞬だけ軽く痺れた感覚に襲われる。
どういう事だと思い、後ろを振り向くと……腕に電気を纏った、ユリコが………
彼女は足を震わせながらも、再び攻撃の態勢に入る。
「はぁ…はぁ……で、できた……」
「…成程、タックルの技『電波投げ』か……脳に埋め込まれた技のデータを……だが、所詮はその程度………俺を倒すには至らない」
「―――いや、怯ませる程度で十分だぜ……」
「!」
その言葉を聞いたジェネラル・シャドウは、慌てて後ろを振り向く。
そこには既に、変身プロセスの最終段階に入ったシゲルが……
しかし変身可能まで後一分もあるのを知ってるジェネラル・シャドウは、高らかに笑いながら襲い掛かる。
だが、それでもシゲルは動こうとせずに、両腕のコイルを擦るように、右腕を引いていた。
それと同時に、腹部のベルト『エレクトラー』から強い光が発せられ、目前まで迫っていたジェネラル・シャドウはや離れていたユリコは目を瞑ってしまう。
そして光が消えるのを感じたユリコは、ゆっくりと目蓋を開き、シゲルが立っていた場所を見る。
そこに立っていたのは、真っ赤なプロテクトに大きなS字が描かれ、黒いスーツに赤いライン、白の手袋……そして大きな緑色の複眼をした、カブトムシに似た存在……
しかしユリコは、そこに立っているのは、明らかに自分が知る者だと、はっきりと感じていた。
「シゲ…ル……」
「……ふーん…これが俺の、新しい姿、か……」
「…まさか、変身してしまうとは………なれないと思い油断したが……面白い……」
「?何言ってるんだ、お前?」
「いや、なんでも……だが、これはこれで面白い。さぁ来い!ストロンガー!!逃げたければ私を倒すか出し抜いて見せろ!!」
「はっ……上等、だ!!」
ジェネラル・シャドウは大きくマントを広げ、シャドウ剣を構える。
それに対してシゲル………否、【ストロンガー】は声を張り上げると、拳を地面に叩きつける。
すると彼の腕から電流が迸り、更に衝撃波となってジェネラル・シャドウに襲い掛かっていた。
しかしジェネラル・シャドウはトランプになってそれを避け、一瞬で間合いを積める。
そして愛剣で……斬ろうとして、何故かその腕が、その場で止まってしまっていた。
「なっ…!?何故、剣を振れない……!!?」
「へへっ……どうやらそれ、軽く鉄製らしいな……」
「!そうか……確か貴様には【反磁力線】なる技があるらしいな…」
「いくらバカって言われる俺でも、磁石の性質ぐらいは知ってるんぞ……!」
ストロンガーに剣が当たらない理由……それは己の体から、鉄や金属などを反発させる磁力を放出していたからだ。
ここでユリコと会う前に、大雑把に変身プロセスと共に確認しており、あらかた能力を理解できる技のみを頭に叩き込んでいたのだ。
もしジェネラル・シャドウの剣が鉄、もしくは金属ではない何かで出来ていたらという心配もあったが、どうやらその心配はなかったようだ。
ジェネラル・シャドウは舌打ちしつつ、反発する磁力を利用して後ろに下がり、着地する。
「…貴様、なかなかやるではないか…」
「誉められても嬉しくは……ぐっ…!?」
「シゲル!」
「先程俺に斬られた傷が響いているようだな。ストロンガー、貴様は電気の力を使う改造人間だ。もしどこかで電気を通す部分が切れていたら、貴様は自身の電気で死ぬことになるぞ」
ストロンガーが揺らいだのを見たジェネラル・シャドウは、冷淡な口調で告げる。
しかしストロンガーは構わず、腕を擦り合わせると、再び電流が迸り、地面に拳を叩きつけようとする。
しかしその隙を見逃すはずもなく、一瞬でジェネラル・シャドウはストロンガーに近づき、腹部を斬りつけていた。
「ぐはっ……!」
「…他愛もないな……その程度の実力では俺は倒せないし、その前にその傷で、貴様はくたばる」
「っ……誰が……くた、ばる、……か…!!」
「フッ……ならばせめて、楽に逝かせてやれるよう、特別に【本気】で貴様を……」
ジェネラル・シャドウはそう告げながら、シャドウ剣を構える。
それを見たユリコは先程のようにストロンガーを助けようとするが、先程の事もあってか、ジェネラル・シャドウからは隙が一切感じられていない……
それどころか、彼女を囲うように何処からか大量のトランプが現れ、彼女を牽制してくる。
「貴様を殺すのは、ストロンガーを殺してからだ」
「っ……!」
「ユリ、コ……には…手ぇ、出す……な………!」
「これから死に逝く貴様の言うことなど、誰が受け入れるか………では、さらばだ、ストロンガーよ」
ジェネラル・シャドウは仮面の奥でニヤリと笑みを作りながら、剣を水平に振る。
それを見たユリコは悲鳴をあげ、ストロンガーは必死に抵抗しようとするが、先程の攻撃で電気が流れなくなったのか、インプットされた技を使うことができない……
そしてストロンガーのマスクに、シャドウ剣の刃が目前まで近づいた………瞬間だった。
「だめだめー、そんなすぐに殺されちゃー」
「…!?」
ストロンガーとジェネラル・シャドウ、二人の間に誰かが立っており、しかもその人物はジェネラル・シャドウのシャドウ剣を【小指指一本で】止めていた。
当然ジェネラル・シャドウは驚き、ストロンガーは剣を止めた人物を見て「あっ!」と声を洩らしていた。
その人物は、彼にこの場所を教えた、謎の少年だった。
「あっ!て、テメェはここの場所教えた……!?」
「あら、覚えていたんだ」
「き、貴様は何者だ!?いや、それ以前に……いつの間に俺の剣とストロンガーの間に入り込んだ……!?」
「さぁ、いつでしょーか?……っと、とりあえず電気カブトムシ君?さっさと逃げなよ。折角助けてやったんだから」
「で、でもお前は」
「い・い・か・ら・行・く」
「……すまねぇ……助かっ……っ!」
「あらら、怪我してるの忘れてた。しょうがないなー………」
少年は面倒臭そうな顔をしながら、目を妖しく光らせる。
するとストロンガーの傷が【まるで最初からなかった】かの如く、無くなっていたのだ……しかも、ストロンガー本人が一瞬気づかないほどに。
「…?治ってる……」
「なっ!」
「ほら、治してやったんだから、さっさと行った行った」
「す、すまねぇ……行くぞユリコ!」
「え、えぇ!!」
「させるか!トランプフェイ……」
「それこそさせないよ?」
「なっ……ぐぅぅぅぅぅ!!?」
少年の言葉に、ストロンガーは礼を言いながら、ユリコと共に逃げようとする。
それを逃さんとジェネラル・シャドウは彼女に向けて囲んでいるトランプで攻撃しようとするが、その前に少年の目が再び妖しく光る。
するとジェネラル・シャドウの身体が、急に何かの衝撃を与えられているような感覚に襲われ、それによりユリコを囲むトランプへの意識が途切れたのか、彼女を囲っていたトランプがバサリと落ちていた。
その隙にストロンガーたちは逃げ出し、その際少年は彼らに向けて叫んでいた。
「あ、そうだった。おーい、次にお兄さんたちが向かうところは、お兄さんが三日前に会った【ある人物を探している男】だよー」
「はぁ?なんかよくわかんねーけど……サンキューなー!!」
「いいから早く逃げるわよ……!!」
「お、おぅ!!」
「ま、待て……ぐぅぅ!」
ストロンガーはその言葉を聞くと、礼を言いながら、ユリコと共に逃げ出していった。
ジェネラル・シャドウはそれを制止させようとするが、未だなお続く謎の力に、身動きを封じられていた。
そして彼らが逃げ去って数分後………もう大丈夫だろうと判断した少年は、目の光を消していた。
「………さて、行ったようだねー」
「ぐっ……貴様は何者だ…そして何が目的だ………!」
「あらま、これはお怒りで……別にこれといって目的はないよー。ただ、ここで彼らが死んでしまっては、つまんないと思ってねー。要するに、神様の【ご都合主義】ってものさ。本当は各世界の事情に、介入したらいけないんだけどね」
謎の拘束に解放されたジェネラル・シャドウは、何が目的かを少年に尋ねる。
それに対し少年は、あっけらかんとした理由を述べていた。
その際、少年の言葉に疑問を持ち、ジェネラル・シャドウは更に質問をする。
「……貴様は神だとでも言いたいのか……?」
「何故そう思うんだい?」
「貴様は『神のご都合主義』だと言った。そう都合よく、運命を変えられるわけがないし、何よりここに来る前に、俺の占いには【ストロンガーは絶対に死ぬ】、そして【誰も邪魔が入らない】という結果が出たのだ……そんなものを変えられるなど、神に等しい存在しか出来ないはずだ」
「……君、なかなか面白いこと言うね?」
ジェネラル・シャドウの言葉を聞いた少年は、ゆっくりと彼に近づく。
「…運命はね、基本的に神様でも変えられない概念なんだ……もし運命が変わったと言うなら、それは僕がこの世界に介入したから。幾つもの分岐点で、確定した運命が変わるのは、本来【この世界にしてはいけないモノ】が出入りしてるからさ。そして君が予言した運命は、たまたま僕が介入したから変わった。それだけさ」
「……貴様もディケイドたちと同じように、異世界から来たとでも言うのか!?」
「そだよー?あ、でももうこの世界には居られないから。今回以降は彼らを手助けしないし、君の邪魔もしない。君を殺すこともしないよ」
少年はそれだけ言うといつのまにかその場から姿を消す。
それに驚いたジェネラル・シャドウは立ち上がり、辺りを見回す。
しかし、先程の少年の気配は完全に消えており、ジェネラル・シャドウはただ一人、その場に立ち尽くしていた。
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「はぁっ、はあっ………な、なんとか逃げ切れた、か……?」
「た、多分……勢いに任せてあの子供に任せたけど……ていうかあの子誰なのよ…」
「俺もそこまでは知んねぇよ!あの場所教えたのはあいつだけど!!」
一方その頃、ストロンガーたちはなんとか支部から脱出し、できるだけ遠くに逃げ延びていた。
彼らは息を切らしながら、後ろを振り向いてみる。
……どうやら追手は来ていないようで、それを確認したユリコは溜め息をついていた。
と同時に、彼女は先程の少年の事が気掛かりになり、助けにいくべきではないのかとストロンガーに告げる。
「……ねぇ、あの子を助けにいった方がいいんじゃない……?」
「……俺もそう思ったが、ジェネラル・シャドウ……だっけか………あんな化け物を、容易く押さえたんだ………多分、普通に逃げてるだろうよ」
ストロンガーの言葉に、ユリコは思わず納得してしまう。
……確かに、油断していたとはいえ、ストロンガーを普通にあしらっていたジェネラル・シャドウを簡単に押さえたのだ……恐らくは普通に逃げているだろう……
が、それと同時に疑問に思ったこと……それはあの少年は、いったい何者だったのだろうか、という疑問だ。
明らかに普通の人間ではないだろうが、ジェネラル・シャドウの反応を見たときは、恐らくNEOBADANも知らない人物であるのは確かだ。
しかし考えてもどうしようにもなく、仕方なくユリコは、一番気になることを、ストロンガーに尋ねていた。
「………あの子も何者かは気になるけど、その前に……シゲル……アンタや、私の体………いったいどうなってるの……?」
「…」
「ねぇ……答えてよ……」
「…仕方ねぇ……俺が分かる限り、話してやんよ」
ユリコが気になったこと……それは自身やシゲルの体が、いったいどうなっているのか……
それを聞いたストロンガーは、軽く沈黙してしまう。
……そもそもストロンガーは、僅かな詳細しか知らない……だが、その僅かな詳細でも、彼女はショックを受けてしまうのではないか……そう思い、話すのを思いとどまってた。
しかし彼女の目は、必死に真実を知ろうとする目であり、それを見たストロンガーは意を決し、話すことにしていた。
そして数分後………ストロンガーは自身が知る事すべてを話し終える。
そして………それを聞いていたユリコは案の定、顔を真っ青にしていた。
「そん、な……それじゃあ私たち……人間じゃ…なくなったの……?それに、ゴロウが…死んだ……?」
「っ……あぁ………俺らはもう……普通の人間じゃあ……ねぇんだ……」
「うそ、よ………嘘よ嘘よ嘘よ!!そんなわけない!!あんな【化け物】と同じなんて嘘よ!!」
「嘘じゃねぇ………これは紛れもねぇ事実なんだ」
「そん、な………」
ストロンガーの言葉を聞いたユリコは、その場で膝をつく。
そしてマスクの奥から涙を溢しているのを見て、ストロンガーは彼女の肩を掴み、必死に揺すっていた。
「しっかりしろユリコ!!もうどうしようにもないんだ!」
「…何よ……じゃあどうしろって言うのよ!人間じゃなくなったってのに、アンタは何でそう落ち着いてられるのよ!!」
「そ、それは……」
「もう嫌!沢山よ!!シゲルの馬鹿!!」
「あ、おいユリコ!?」
ユリコは立ち上がると同時に、ストロンガーの元から走り去る。
ストロンガーはそれを追いかけようとしたが………出来なかった。
そもそも彼自身、最初はどうなるのかは知らなかった。
ただ、親友の仇を取るため………彼女を助けるために、己の体を差し出した………
しかし体を機械にされて、しかも先程となって知った彼女にとっては、薄々感じていた彼と違い、混乱するしかないのだ。
(…そりゃあ、そうだよな……俺は……ある意味最初から、知っていたんだ……)
ストロンガーはそう思いながら、元のシゲルの姿に戻る。
そして手袋を嵌め、その辺に落ちていた大きめの小石を拾うと……軽く力を入れた。
すると小石は簡単に砕け散り、軽く握った手を離すと、ぱらりと砂と同じ大きさになって溢れ落ちていた。
(……もう、まともに人を触ることは、出来ねぇかもしれねぇ……手袋をしていても、この握力じゃあ、なおさらだ………)
シゲルは自身の右手を凝視する。
そして暫く見つめた後、もう一度ユリコを探すことを、決心していた。
「……とにかく、ユリコを探すしかねぇか………何か嫌な予感がするし………あ、でも………あのガキが言ってたよな……俺が会ったって言う『ある人物を探している男』………そいつも次いでに探さねぇと……ていうか、そんなやつと会ったっけ……?」
シゲルは少年との別れ際の言葉を思い出し、そこから必死に記憶をた辿る。
あの少年の言うことが本当なら、もしかしたらその男は仲間になるかもしれない……
そう思いながら必死に記憶を辿っているときだった。
「―――おや?君、この間のじゃないかい?」
「んぁぁ!?……テメェは確か、この間の……」
すると彼の後ろから声が聞こえ、シゲルは振り向いてみる。
そこにいたのは、ゴロウが死んだ日に出会った男だった。
シゲルは彼を見て、何をしているのかを尋ねようとしたとき………思い出していた。
(……確かこいつ、写真に写ってた腕輪を持ったやつを探してるって………まさか………!!)
「?急に黙ってどうs」
「―――見つけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「!?ちょっ、いきなり飛びかかってくるのは……うわぁぁぁぁぁ!?」
シゲルは少年の言葉と、目の前の男を無理矢理合致させ、男に飛びかかる。
男はそれに驚き避けようとしたが……その前にシゲルとぶつかり、そのまま二人仲良く、緩やかな坂を転がっていった。