仮面ライダーディケイド~昭和リイマジの世界~   作:火野荒シオンLv.X-ビリオン

14 / 15
再会と遭遇

俺は"その言葉"を聞いたとき、最初は意味が分からなかった……

けれど、今の俺は、あの餓鬼の言葉の意味が、何となく分かる……

それが例え、【己の身体を犠牲にする行為】だとしても、だ……

 

 

けど、俺はもう、後には引けない……

俺はゴロウの仇を取るため、ユリコを救い出すためなら、俺の身体が"人間ではなくなってでも"、やつらに………NEOBADANに歯向かってやる……!

 

 

その為に俺は、あえてやつらに身体を"改造"してもらう。

麻酔をされているためか、身体にメスやらなんやらをされても、痛みを感じない……

それどころか、身体がどんどん、元々の自分のものではなくなっていくのが分かる……

麻酔をしているためか、脳みそすら弄くられているのではないか、うっすらと残っている意識が、そう告げている……

普通に見てみれば、俺は"人間じゃなくなり、異形の存在になる"。

それはつまり、"怪物(ばけもの)"になる、ということだ………

どういった形に、とかは知らねぇ………けど……

俺は仇を取るためなら……NEOBADANをぶっ潰すためなら………

 

 

 

こ の 体 な ん て 、 い く ら で も 捧 げ て や る

 

 

 

~~~

 

 

 

「―――手術は終わったぞ」

 

 

その言葉と共に、シゲルはゆっくりと、医療用のベッドから起き上がる。

途中から頭の改造をしたのか、そこら辺の意識はないが……どうやら手術は成功したらしい……

そして自身の手を、静かに見てみる。

…シゲルの腕は、既に人間のものではなく、機械でできた手になっていた。

見たところ両手は両方とも、コイルのようなものを埋められているのがわかり、シゲルはとうとう、人間ではなくなったことを、人工の肌で感じていた。

 

だが、最初からこうなる覚悟はできていた。

覚悟ができていたからこそ、己の体を、NEOBADAN

 

「変身用の起動プログラムも組み込まれてる。麻酔が完全に解けてから、自分の手で変身を行ってもらう」

「…」

 

するとシゲルの肉体改造に参加した研究員の一人が、シゲルに向けて説明する。

シゲルは何となく聞いた後、自身の指をしっかりと動かす。

そうしていると、研究員の一人が、ため息をついていた。

 

「…しかし、まさか本当に成功するとは……」

「ストロンガーに関しては、失敗続きだったからな……」

「無理もない。大首領キル様が予定していたやつと違った被検体を、副首領デルタローア様が連れてきたんだ」

「デルタローア様は何故、キル様の指示に従ってくださらないのか……」

「仕方ないだろう。聞けばキル様は、他の怪人たちと"違う考え"を持ってる方だ。デルタローア様はそれが気に入らないだけだ」

 

 

(……大首領……キル……デルタローア……この組織のトップか………?)

 

その研究員たちの話声を、シゲルはひっそりと聞いていた。

麻酔の影響で所々聞き取れなかったが、それでも一通りは情報を入手していた。

 

(後は、身体から麻酔が切れるのを待つだけか……流石に無理して行動を起こしても、絶対に捕まるだけだ)

 

シゲルは先程動かした手足や指を見ながら、静かにそう考える。

……流石に麻酔が切れるまでは、ここを脱走するのは難しいと判断し、しばらく行動を起こすのを待つことにしていた。

数分後、会話を終えた研究員たちが「こっちだ」と言って、シゲルの身体を無理矢理起こし歩き出す。

 

(……さしずめ、牢屋にでも閉じ込めておくつもりだろうな……)

「…しかし、……ある程度脳は弄くったものの、何故キル様は直接脳を改造して、洗脳をしないのだろうか………」

「確かに……」

(よかった。脳みそは無事か……いや、無事じゃねぇか…)

 

シゲルは密かに研究員たちの会話を聞き、更に情報を集め、更に眼のみを動かして、辺りの地形などをしっかりと確認していた。

そして数分後、シゲルは牢屋の前に連れてこられた。

どうやらここに閉じ込める方針らしく、研究員はシゲルに入るように指示をしていた。

 

「入れ。しばらくしたらキル様とデルタゾーア様、更にこの地区を担当するジェネラルシャドウ様とアポロガイスト様がいらっしゃり、貴様の脳改造を本格的にするかどうかの方針を決める」

「…どういう、意味だ……?」

「ほぅ、もう喋れるのか……簡単に言えば、もう一度貴様の脳を改造し、洗脳するということだ。だからそれまではここに……」

 

研究員が解説し、シゲルを檻に入れようとする。

……が、シゲルは口許を緩めると、そのまま研究員に殴りかかっていた。

するとシゲルの手から強い電流が迸り、殴られた研究員は黒焦げとなって倒れていた。

それを見た他の研究員たちは驚き、シゲルは自身の手を見つめる。

 

「……へぇ。俺の腕、電気が流れるのか……こりゃあもう、誰にも触れることが出来ねぇかもな……」

「なっ……貴様、何をしている!!」

「……ごちゃごちゃうるせぇよ……死にてぇのか………?」

「「「ひっ…」」」

 

シゲルはギラリと研究員たちを睨み、ゆっくりと歩み寄る。

それに怖じけついたのか、研究員たちは手に持ってるものをすべて投げ捨て、その場から一目散に逃げ出していた。

シゲルはやれやれといった顔をしてると、ふと研究員たちが落とした物の中に、手袋のようなものを見つける。

更にその近くには【電流遮断用特殊グローブ】と書かれた紙があり、恐らくこれの事だろう……

シゲルは試しにその手袋を触ってみる……

すると今までシゲルに流れていた電流が抑えられていくのが感じられ、シゲルは純粋に驚いていた。

 

「おぉ……まさかこんなモンまで作ってんのか……というか、これ俺用のか?……ま、これで物に触れるなら、なんだって使ってやるか」

 

シゲルは手袋を拾い上げると、自身の手に着用させる。

フィット感はとてもよく、本当に自分のために作られたのかと思ってしまうほど……

シゲルは少しの間手袋の機能を確認し、そのまま立ち上がる。

 

「さて、と……まだまともに動けるレベルじゃねぇけど……ゆっくりしていられる訳でもねぇ……さっさとユリコを探して、こっから出るか…。……待ってろよ、ユリコ」

 

シゲルはそう呟くと、そのまま走り出していた。

 

 

 

~~~

 

 

 

そして30分後………

 

 

 

「……っだあああああああああああ!!広すぎだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

シゲルは現在、1回ずつ階段を上がっていき、フロアを回っていた。

というのも、どうやら最初にシゲルがいた場所は、地下深い所だったようで、それをしらみ潰しで探索していた。

途中戦闘員たちが警備で巡回していたのを、何回かは避けながら探索していたが、あまりにも広すぎて、中々ユリコを見つけられずにいた。

 

しかも厄介なことに、階段は全部繋がっておらず、エレベーターらしきものもあったが、恐らく研究員などといった関係者しか使えない仕組みであることから、かなりの距離を走り回らないといけないのだ。

 

「ちっ!この階でもねぇ!!これで3階は登った……後何階あるんだ!!」

 

シゲルは近くの壁を殴りつつ、そのまま探索を再開する。

そして新たな階段を見つけると、そこを上っていく。

次に到達したエリアは、下の階よりも狭く、更には殆どが牢屋になっていた。

 

「これだけの牢屋、何で下に持ってこなかったんだ……?下の方が重要な情報とかでもあったってことなのか……いずれにしろ、下には殆ど全身黒タイツ共しかいなかったからな。ここら辺に大抵のやつは囚われてる可能性も……とにかく、急いでユリコを」

 

 

 

―――シゲ……ル……?

「!?な、なんだ……今、ユリコの声が……頭に……」

 

 

突如、ユリコの声が頭に入ってくるように聞こえ、シゲルは動揺する。

が、なんとか落ち着きながら、もう一度ユリコの声を聞こうとする。

 

「ユリコ……!この階にいるなら返事を……!ユリコ……!!」

―――またシゲルの……声が……!?どうなって……

「!ユリコ!聞こえるか!?俺だ、シゲルだ!!」

―――嘘、本当にシゲルなの……!?え、どういうことなの………?

「よかった……無事だったか………!」

 

シゲルはこれの原理がわからないままユリコの無事を確認し、その場でほっとする。

が、それで終われるほど甘くはなく、シゲルはユリコに何処にいるのかを尋ねる。

 

「ユリコ!今お前、どこにいる!?」

―――……分かるわけないでしょ!?私も目覚めたときは……

「…、……とにかく、なんか目印になりそうなやつを教えろ」

―――め、目印っていったって……辺りが牢屋だらけ……あ

「!見つかったか!?」

―――向かいにある牢屋の上に、【193】って書かれてる!

 

ユリコの言葉を聞き、近くの牢屋を見てみる。

番号は【301】と書かれており、辺りを見回してみると、左側の通路から201の番号になっている。

そしてその牢屋の前は……【101】と書かれた数字が。

 

 

「…あった!よし、待ってろ!今すぐお前ンところに向かう!!」

―――えっ……向かうって……アンタもしかして……!?

「それに関しては、この際【お互いに】後だ!!」

 

シゲルはその通路を全力で走る。

途中、いくつもの牢屋をちらりと覗いたが、その中に何人か人間はいた。

が、その殆どは既に、精神が死んでいるようなほどで、外を走っているシゲルにすら気付いてない様子だった。

恐らくあの者たちも、既に体を機械の体にされたのだろう……

それを考えると、そのショックが大きすぎて、気力を持てずにいるのだろうか……

 

シゲルはそんな事を考えつつも、ただひたすら、ユリコがいるであろう部屋に向かって走り出す。

少しすると、ユリコが言っていた【193】の番号が見えてくる。

そして………

 

 

 

「ユリコーッ!!」

「―――シゲル!」

「ユリ……え………?」

 

シゲルはユリコが言っていた部屋の向かい側を向き、彼女の名前を呼ぶ。

それに対して彼の名を呼ぶ声が聞こえたが、シゲルは牢屋の中を見た瞬間、一瞬だけ戸惑ってしまう。

その理由は、彼の目に写ったのは……てんとう虫のような格好をした女性だったからだ。

 

当然シゲルは、目の前のてんとう虫の格好をした女性は知らない……

なので一度後ろを振り向き、もう一度数字を確認する。

しかし数字は、先程と変わっていない……

シゲルは暫く考えたあと、目の前の女性に尋ねていた。

 

「…」

「…」

「…あの……ここに園野ユリコっていう、男みたいな女は……」

「……私以外誰も部屋にいないんだけど…」

「え、じゃあ……どちら様………」

「ふざけてんならハッ倒すわよ!!声で分かんないの!?私よ!ユリコよ!!正真正銘、本物の園野ユリコよ!!」

 

目の前の女性は、自身の事をユリコと言い放つ。

しかしシゲルにとって、目の前の女性はユリコと別人だと思い込んでいた。

 

「……はぁ!?ユリコがこんな外見がおかしくて、更にぺちゃんこのはずの胸を強調するようなスーツは着ないだろ!!」

「何意味わかんないこと言ってるのよ!?というか胸がないってどういう事よゴルァ!?」

「まさか……NEOBADANのやつら、俺を騙して……ちっくしょうがぁぁぁぁぁ!!!」

「人の話を聞きなさいよ!!」

「もう騙されねぇぞ……NEOBADANの手先が!!」

「聞けやこのパンツ覗き魔!人のパンツ覗いて、しかもご丁寧に感想をのべた変態が!!」

「……え、パンツ……感想……お前……本当にユリコ……なの、か……?」

「なんでそれで私と思い始めるのよ!?」

「じ、じゃあ聞くぞ……俺の出身高校は?」

「神海高校」

「その高校のある地域は?」

「東京都菊一町」

「俺の家の住所」

「菊一町上川5103-69」

「……ゴロウのは…」

「菊一町中川753」

「………マジでユリコなのか、お前……!?」

「なんでしっかり答えてやったのにまだ疑うのよ!?」

 

シゲルは信じられないような顔をして、目の前の女性―――ユリコを見つめる。

一方のユリコは、目の前の男が未だに信じられないといった顔をしているのを見て、拳を握りしめていた。

そして……突然シゲルが、笑い出していた。

 

「…は、ははっ……あっはははははははは!?」

「∑なんなのよ急に笑って!?」

「い、いや……お前がユリコなのは……よく……分かった……けど……ブフッ!」

「だから何を笑ってるのよ!?」

「そ、その格好……は……な、なんだ、よ……ぶはは!」

 

シゲルが突然笑い出した理由………それはユリコの格好だった。

それを聞いたユリコは動揺しながらも、最初からこの格好であったことを伝える。

 

「わ、私だって……好きでこんな格好してるんじゃ……ないわよ………」

「わ、わりーわりー……。……とにかく、急いで脱出しよう」

「脱出、って……そもそもアンタ、どうやってここに……?アンタもここにいる変なやつらに捕まったの?」

「あ、あぁ……ただ、なんとか無事に……」

「…、……そう……」

「と、とにかく急いで……!」

 

 

 

「―――どこに逃げようというのだ……。"ストロンガー"に"タックル"」

 

 

 

シゲルは牢屋のユリコに共に逃げるよう告げるが、突然どこからかトランプカードが飛んできて、二人は慌てて避ける。

そのトランプカードの切れ味は凄まじく、ユリコのいる牢屋の鉄格子は、いくつか音をたてて崩れ落ちていた。

同時にどこからか声が聞こえ、シゲルは「誰だ!」と叫ぶ。

暫くすると、ゆっくりと足音が聞こえ、同時に人影が歩いてくるのが見える………

 

歩いてきたのは、白いタイツとマントを着て、フェンシングに使うような銀の剣を持ち、そして……… 皮膚が剥がれて筋肉や血管が剥き出しになった顔面を、透明なフードで隠した、人型の【異形】だった。

それを見たユリコは小さな悲鳴をあげ、シゲルも目の前の存在の放つ強い【殺気】を感じたのか、その場で後ずさりしていた。

 

「…てめぇ、なにモンだ……」

「俺の名か………俺はNEOBADAN幹部の一人……"ジェネラルシャドウ"」

「ジェネラル……シャドウ……NEOBADANの……幹部、だと ………!」

 

シゲルは尚も後ずさりしながら、ジェネラルシャドウを睨み付ける。

その顔を見てジェネラルシャドウは、フッと笑っていた。

 

「……やはり、どこの世界のストロンガーも……同じなのだな……」

「は?いったいなんの事だよ」

「いや……貴様には関係のないことだ。どうせ貴様は………」

 

ジェネラルシャドウがゆっくりと、自身の愛剣"シャドウ剣"を構える。

それを見たシゲルは体をゆっくりと後退させるが、それを見たジェネラルシャドウは、フッと笑う。

 

 

「―――ここで死ぬのだからな!ストロンガーよ!!」

 

その言葉と共に、ジェネラルシャドウはシゲルに襲い掛かってきていた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。