二次元街道迷走中   作:A。

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第二十一話

マジうけるんですけど! もう最高だった。特等席で観戦した甲斐があったってものだ。原作の荒垣のあのシーンを見ることが出来て遠野誠は、はしゃいでいた。実は夜行くのは目立つと思って昼間からこの隠れ場所に待機していておりましたが何か。

 

というか普通に物騒な場所だしなー。ちなみに垂涎のシーンに迫力を演出するためというか、単純にハム子達に絡むであろう連中にさり気無い出来心で油を用意しておきました。角度は多分ここだろうなーなんて暇だったから無駄に観察した甲斐がありましたとさ、グッジョブ荒垣。

 

お陰さまで、超爆笑。ヤヴァイ位に笑わせて頂きましたとも。この時は性格が悪いなんてのはすっ飛ばして心底笑わせて頂いた。後から思い出し笑いとかしなきゃいいけど。

 

 

◆◇◆

 

 

さて、2日後。実は一つ発見ししていた事がある。好奇心、そうつい好奇心だった。ネットゲームをして一段落ついての事だ。冗談で弟の名前を検索してしまったのだ。するとどうだろう。『月姫』というワードが引っ掛かったのだ。この時は偶然だろうと思ったのだが、実はそこに間違いなく遠野志貴の名前が記されてあった。

 

…………マジ?

 

いやいやいやいや、偶然ですよね。と思ったのだが、気になる。大いに気になってしまう。

 

結局、勇気がなく検索してヒットした記事を読む気力がなかったので、そのままにしておいた。しかし、本音を言えばサイトを覗きたくて堪らない。痺れを切らすのは存外早かった。

 

(まだ、確実に決まった訳じゃない。決まった訳じゃないんだ確認、そう確認するだけだ)

 

言い訳をしないととてもじゃないが、心境的に難しいものがある。本来ならば自宅へ帰ってから見れば良いものの、気持ちが焦った。近場の、人気のない建物と建物の隙間に入り込んだのだ。心臓が大きく脈打つ中、ウェブサイトを開いてTOPページにそのまま入力する『遠野志貴』文字。

 

接続までにかかる時間が無駄に長く感じる瞬間だった。喉を唾が嚥下(えんか)する音が響く中、表示されたそれに目を見開いた。隅から隅までゆっくりと記事を読む。理解出来ない単語で埋め尽くされているが遠野誠が事実を知るには充分過ぎたのだ。

 

(コイツ『主人公』だったのかよおおおおおおおおおおお!)

 

しかも、18禁同人ビジュアルノベルだと馬鹿な。馬鹿な。繰り返し読むも記載に変化などある筈がない。モテモテか? ずるいだろうそれは。しかも、リアル中二病ではなくガチの超能力を持つとか何なのソレ。ありなの? とばかりの衝動が湧きあがる。

 

何か分からないが負けた気がする。切なさとやりきれなさが吹き出し、そのまま駈け出した。とてもではないが思いっきり走って解消しなくてはやってられないのだ。レベルがUPしてからついた体力はある意味厄介だ。余裕がある分、どこまでも距離をのばせるのだから。結果、そのままどこまで来たのかは不明だが凄い距離を走ってしまった。

 

漸く息が切れる頃には逆にどうしようもなくへたりこみそうになっていた。本音をいえば倒れこんでしまいたいが、そうもいかない。微かなプライドがそれを妨げた。ギリギリで堪える。荒い息が唇から零れおちた。駄目だ。耐えられなくなり、膝をつく。格好悪いがモロ四つん這いのポーズになってしまう。更に唾が気管に入り込んでしまったのか、激しく咳き込むし散々な気がしてならない。

 

縮こまる身体を無理やり起こしながら、必死で震える足を叱咤しながら現在地を把握し、遠野誠は帰路につくのだった。

 

 

◆◇◆

 

 

弱り目に祟り目とはよく言ったものだ。誠は溜まりに溜まった鬱憤を解消させるべく、オンラインゲームに挑んだのだが――この時間の為に飲食物も用意したり面倒な宿題を片付けたりなど――あっさりと『メンテナンスのお知らせが』無情にも現実を突き付けて来る。

 

これは酷い。ストレス解消が出来ないではないか。遠野誠は困った顔のままで思案した。暫くベットでゴロゴロ不貞寝を決め込みながら、ぼんやりと考える。

 

(する事無くなったら暇だ…どうすっかなー。せっかくだし、どうせ身バレしてるしタルタロスにでもいってみるか?)

 

そうだ。いい暇つぶしになる。というか、リアルがゲーム見たいな刺激を提供してくれるのならばそれに越したことはない。正に逆転の発想だった。

 

しかし、無理は禁物だ。現実では命は一つきり。ゲームオーバーをしても、じゃあもう一回やり直しが効かないのだ。

 

つまり、安全性が第一になる。保身を考える必要性が出て来る。前に、無駄な高揚感だけで突っ走ってしまった事があったがそれは不味い。大体にして単体だと心もとない。

 

―――つまり、ペルソナ3の世界のセオリーに従ってパーティを組もうと考えた。

 

まずは王道はハム子はどうだろう。なにせ主人公なのだし、ちょっとやそっとじゃ危ない目にはあってもデットエンドにはなる可能性は低めかもしれない。桐条先輩からもスカウトされている事だし、ちょっとその気になってみましたと話すだけで事足りる。

 

格好悪かったとしても、危なくなったら庇ってくれる事もあるだろう。なにせ、主人公なのだから。そう―――主人公。

 

駄目だ。やめよう。主人公のワードが今の誠にとってはNGワードになっている。

 

更にハム子の性格を考えたら大変良心的だったとしても、辞めたくなった時に直ぐに辞めるとは言えない。気晴らしなんて持っての他だろう。

 

誠は即座に思い浮かんだ案を却下した。次に思い浮かんだのはチドリだ。街中で偶然にも遭遇した事件があった。

 

ストレガの一人とはいえ、知らずに話した時は普通そうに見える。単純にゴスロリ趣味を持っていても似合っているから問題ない。というか、もっとやれ。……アイテムで衣類をGETしたら着てくれるかもと脳裏に多機能エプロンを装備したチドリが浮かぶ。イイネ!

 

これは良いかもしれない。とノリ気になるも、この案もボツにする。というかせざるをえない。何故なら、接触手段を持たないからだ。

 

大体の居場所が分かるも確実ではない。居ない時の方が多いであろうし、もうあの物騒な場所へいくのは御免被る。

 

というか、確か能力上の制限というかペルソナを完全に己の支配下には置けなかった筈。逆にチドリの事を危険にさらしてしまう恐れの方が大きい。

 

続いて思い浮かんだのがコロマルだ。コロマル……協力してくれるだろうか? 疑問に思うも、前にタルタロス内で遭遇している。せっかくだから偶にコンビを組んで貰う方向で提案してみるのは良いかもしれない。

 

勢い良くベットから起き上がる。これは良いアイディアに思える! 一回タルタロスに潜った時の荷物を背負うと外へ飛び出した。

 

現在の時刻は夕方だ。作戦会議をして、回復薬関連を揃えて向かう事を考えれば早め早めの行動が必要不可欠になる。

 

自宅の門前を勢いよく右折しようとした瞬間だ、大声で引きとめられる。

 

「あの……私も…私も一緒に行きたいんです。連れて行って下さい!!」

 

何故か包丁を持った山岸風花がそこに居た。


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