迷い家のお椀   作:ハム饂飩

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心理フェイズかな?


とりあえず書いたけどなんか納得いかないでき。最後のほうすごい適当になった。

メゲるわ。



とりあえずみんな宮守好きスギィ! あ、準決勝で負けてもらうけどね(有珠山とか臨界とかちと書きづらいからね、ダイジェストでね。仕方ないね)


第七話

自分の気持ちを理解することになった夏祭りから、一月。

 

久しぶりに、京太郎の家にお邪魔させてもらった。

 

縁側も、庭もいつも通り、風が入ってきて。風鈴も鳴っていて、気持ちが良かった。

 

けれど、いつも居るはずの、京太郎のおばあちゃんが見当たらなかった。

 

 

 

 

 

「え…入院?」

 

 

あまりにも突然の報告、私は、すぐには理解することができなくて。

 

 

「あー、うんおばあちゃんがね、転んで腰打ったみたいでさ…骨折…はしてないけど、ヒビ入ってるかもしれないからって。」

 

 

「あ…大丈夫、なんだ。良かった」

 

 

「病院で元気にしてるよ」

 

 

どうやら、命にかかわるような病気やけがではなくて、検査入院的なものなのかもしれない。

 

安心した。

 

どうやら両親のどちらかが来るまで、京太郎はこの家に一人らしい。

 

少し、用事を済ませてから来るとのこと。どれだけかかるかわからないけれども。

 

 

「…それなら、今日、泊まる。明日、休みだし」

 

 

「えっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京太郎は、夕食を作っている。手伝おうとしたけれど、何をすればいいのかよくわからなかった私はキッチンでただ立っていただけで。

 

結局居間のテレビの前で待機することになった。もうすぐ京太郎がご飯を運んでくるだろう。

 

私が京太郎にしてあげられることが無い、ということに改めて気が付いて、何も見る気が起きなくなった。くるくるチャンネルを回していると、不意に手が止まって、映ったチャンネル。

 

リーチ、ポン、ロン。そんな音がテレビから聞こえて。プロの試合の放送だということに気が付いた。

 

対局を呆けながら軽く眺めていると、だんだんとその対局の流れがわかってきた。

 

その中でも、やけに目立つプロがいて、もはや、この試合は彼女のためにあるようなもので。

 

 

「あ、はやりん!」

 

 

そんな声が後ろから聞こえてきて、京太郎が来たことに気が付いた。夕食はすでに並べられていて、準備はすべて整っていた。

 

 

「いつみても大きいおもちだなぁ…」

 

 

そんなつぶやきが聞こえてきたから、私はすぐにチャンネルを回した。

 

少し緩んだ顔をしている京太郎を、私は見たくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になって、月が空に出てくるような時間。こんなに遅くまで京太郎の家にいたことは無かった。

 

京太郎がお風呂に入ってしまったので、少し手持無沙汰。

 

親には、今日は友達の家に泊まる、と連絡した。たぶん、京太郎の家だってばれてるだろう。それでもかまわない。

 

 

 

きっかけがほしかった。

 

私は夏祭りの後、何もできなかった。今までの関係を簡単に壊すことは、できなかった。

 

今まで、私は無意識だとしても、彼に甘えていた。甘えすぎてしまってたから。

 

たぶん、今私が、何かをお願いしても、なにを言っても、京太郎は気づかない。今までのスキンシップの延長線上として捉えてしまうだろう。

 

無論、京太郎は何でも…とまではいかないだろうが、できることならやってくれるだろう。

 

今までのように。当たり前みたいに。いつも通りに。

 

友達としてなのか、親友としてなのか、幼なじみとしてなのか。彼の気持ちは、私にはわからないけれども。

 

 

「…ダル」

 

 

それじゃ、足りないよ。全然足りない。

 

私を女の子として見ていることは、今は無いのだろう。有ったとして、手のかかる姉、くらいの立ち位置だろう。

 

私も京太郎は弟のように思っていた。それなのに、気づいたら、京太郎を独占したくなっていた。欲しくなってた。

 

…いや、違う。もうすでに、手に入れているつもりになってたんだ。

 

京太郎は、私からは離れない。一緒にいてくれる。優しくしてくれる。私を見ていてくれる。私だけ。そんな、思い込み。

 

私以外と、一緒に居る光景なんて、考えなかった。

 

今日だって、テレビに出てる有名人に見とれてただけで嫌な気分になって。

 

そんな、何もしないで嫉妬してるだけなんて、少しみっともない。私だってまだ子どもだから。付き合うとか、わからないけど、今のままじゃ本当に他の人にとられてしまうことくらいはわかる。

 

 

そんなことを、空を見ながら考えてたら、月が雲に隠れて行くのが見えた。私の気持ちみたいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お休み、シロ姉ちゃん」

 

そういいながら、京太郎は布団に潜り込んでしまった。

 

一緒に寝よう、と勇気を出して言ってみたが、結果はこのざま。同じ部屋にはなったが、私がベッドで京太郎は布団。

 

近くにいるのに、遠い。まるで今の関係を見せられたみたいで。

 

私は余計に、眠れなくて、気づいたらもう二時で。

 

 

 

 

「京太郎…起きてる?」

 

 

「……」

 

 

反応はなくて、聞こえてくるのは寝息だけで。

 

ベッドから降りても、京太郎は気づかない。

 

いつの間にか、また現れた月の光が部屋を照らしてて、金髪が光って見えて。

 

綺麗だと、思った。目が離せなくなった。

 

まだ子供だと思っていた。けれど、顔はもう立派な少年になっていた。もっと、よく見たい。

 

気づいた時には、私の顔は、京太郎の顔のすぐそばにあった。

 

 

「京太郎が、悪いから…」

 

 

あぁ…やっぱり、誰にも渡したくない。

 

 

大人になったとき、彼がそばに居てくれたら、どれだけ幸せなのだろうか。

 

 

この感情が、恋なら…私は、もう京太郎以外、考えられないよ。

 

 

本当に、料理も覚えよう。片付けも、自分でできる限りしよう。ただの、お世話される人で終わらないように、なんだってする。…胸を大きくできたら京太郎は喜ぶだろうか。

 

 

まだ、お互い子供だし、私は勇気が足りなくて、気持ちも伝えられないけれど。

 

 

これからは、もう、甘えるだけの私じゃなくなるために。

 

 

京太郎にも頼ってもらえるように。女の子として見てもらえるように、意識してくれるように、頑張るから。

 

 

私が覚悟するために、卑怯だけど、

 

 

「…今、これだけは、許してほしい」

 

 

軽くだけど、キスをした。

 

 

私というお姫様の眠り(勘違い)を覚まさせるためのキスは、子供みたいなキスだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、私は布団で目を覚ました。

 

幸い、京太郎はまだ寝ていたようで、布団にもぐりこんだことは、ばれなかったらしい。

 

いや、ばれた方が良かったのかもしれないけれど。

 

それよりも、せっかく早く起きたのだ。ここは、年上の女の人っぽく、朝ご飯を作っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思っていたのだけれど。

 

私が台所に立とうとしたときに来た京太郎の親からの連絡は、

 

「長野に引っ越しすることになった」という、無慈悲なものだった。

 

 

 

 

「明後日、引っ越すって」

 

…本当に、いきなりだね…

 

「おばあちゃんが、心配なんだって」

 

…でも、家の片付けとかはどうするの?

 

「業者に頼むって、言ってたよ」

 

変わろうと、思ったんだけどなぁ…

 

「仕事も、もうそこまで、忙しくなくなったから、みんなで暮らしたいって…」

 

京太郎に、喜んでもらいたかった…

 

「みんなとも、もう会えないかもしれないけど、や、やっぱり、さ」

 

うん…

 

「シロ姉ちゃんと、会えなくなるのが、一番悲しいよ…」

 

……ありがとう

 

「手紙、書くからさ、返事、めんどくさがらずに、書いてほしい…」

 

…書くよ。絶対。忘れないから、京太郎も、忘れないで…

 

 

 

 

 

そんな会話が、ぽつぽつ続いて、私は家に帰ったけど。

 

このままじゃ駄目だ。私は姉のままで終わってしまう。私は、まだ何もできてない。

 

 

 

昨日のあの時、覚悟を決めたんじゃないのか?なんでも、するって。京太郎に意識してもらうために。

 

 

「明後日…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

引っ越し当日はまるで、出会った日のように快晴で、蝉も、鳴いていて、ものすごく、暑かった。

 

 

 

 

京太郎…引っ越しても、元気でね

 

 

「シロ姉ちゃん…見送りに来てくれたんだ」

 

 

…ううん、シロ姉ちゃん、じゃなくて、名前で呼んでほしい

 

 

「え…?いきなりどうしたの…?」

 

 

…そこらへんはいいから、ダルイし、ほら、名前で呼んでよ

 

 

「…し、白望…?シロのほうがいいかな…?」

 

 

…うん、どっちでもいいよ、京太郎。ほら、これ、食べてよ。

 

 

「二人用のアイス…懐かしいね、シロ姉ちゃんと初めて会った時も食べたね」

 

 

名前で呼んで、って言ったのになぁ…

 

 

「ご、ごめん」

 

 

…じゃあ、お詫びに、目つぶってよ

 

 

「な、なんで…?まぁ…いいけど」

 

 

…私のこと、忘れさせないから。

 

 

 

 

 

目をつぶってる京太郎に、私は二回目のキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京太郎が連れていかれたあと、私はふらふらと歩いていたら、公園のベンチについた。

 

初めての場所。とても懐かしい。

 

ふと、手に持っていたアイスの蓋を、軽く投げてみる。相方をなくした片方の蓋が地面を転がる。

 

それを、軽く眺めてから空を見上げる。雲すら見えない快晴。光る太陽がまぶしくて、私は目を瞑った。

 

軽く、風を頬が撫でた気がして。木の葉を揺らす音が聞こえて。

 

ここで、目を開けたら京太郎がひょっこり戻ってくるんじゃないか、なんて思ったけれど。

 

目を向けた方には、蓋が落ちているだけで。

 

 

「…ダルイなぁ」

 

 

視界が、ぼやけて見えた。

 




おう、次は手紙のやり取り書いてすぐ高校編行くんだよ、あくしろよ。


ハンドボールなんてなかった、いいね?

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