迷い家のお椀   作:ハム饂飩

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昼ごはん

「おかーさん、ごはんはやく」

「今日はシチューよ」

「えっ」



帰り道

「あ、お姉ちゃん」

「…なに?」

「他のアイス溶けてるよ」

「…あ」



夜ご飯

「おかーさん、ごはんはやく」

「シチューにカレー粉入れてカレーにしたわよ」

「………えぇ…」





頑張れシロちゃん!



第三話

あの時の男の子、京太郎と知り合ってからひと月ほど経った。そのひと月の間、京太郎は毎日では無いが、よく私に会いに来た。どうやら懐かれたらしい。

 

京太郎は無駄に元気な性格なので、外で遊びたくて仕方なかったらしい。あまり動かないで家に引きこもっていた私を引きずり出しに来た。母親は引きずられていく私をただ笑って見てるだけ。味方は居なかった。

 

私のほうが年上なのに手を引かれているのは何故か私で、ダルい、とは思ったけれども。公園に連れて行かれたり、森に連れて行かれたりして、暑い中走り回る京太郎をベンチに座ってみてたり、よくあることを楽しそうに話しかけたりしてきたり。虫を取って私に見せに来たりして。

 

元気に笑うのを見るのは、意外と、悪くはなかったと思う。こういう経験なんて無かったから。

 

 

 

 

京太郎の家にも何度か行った。京太郎は、両親の仕事が忙しいらしく、おばあちゃんの家に預けられているようだ。結構長期のようで、仕事が一段落するまでこちらに住むらしい。

 

縁側があり、日当たりも、風通しもある良い家だった。扇風機が無いのに風鈴が鳴るのを聞いていると、涼しく感じて、気持よかった。

 

京太郎が雑誌の付録についてきた紙飛行機を庭で飛ばして遊んでいるのを、縁側に座って見ていると、おばあちゃんが寄ってきて。

 

ありがとうね、京太郎と遊んでくれて、と言いながら出してきたのはスイカ。甘くて、美味しかったのを覚えている。私がスイカを食べていることに気がつくと、紙飛行機を放り投げて近寄って来るのが可愛かった。

 

並んでスイカを食べる。私はゆっくり食べて、種をかまないようにしていたが、京太郎は、一口が大きくて何回も種を噛んで、噛むたびに渋い顔をして庭に飛ばして遊んでいた。やめなさい、汚いからと、注意しても京太郎はやめなかった。

 

 

 

 

 

 

色々とあった夏休みだった。こんなに動いたのは久しぶりかも知れない。

 

夏休みが明けて、授業が始まってからは、京太郎とは会ってない。学年が違うとどうしても機会は減ってしまうのはしかたのないことだ。

 

昼休み、私は窓際の席でだらけていた。今日もやはりと言うか、天気が良い。教室に光が入ってこないように、教室の窓にはカーテンがかかっている。

 

京太郎は二学期から転校してきたらしい。ふと、思ってしまった。夏休みも、私と会うだけで、同年代の子と会うことがなかっただろう。

 

私のように、孤立、というか、一人になってないだろうか。少し、心配になってしまった。私は、会えばしゃべる程度の人もいるし、ダルいから気にしないけれども、京太郎の性格で一人になってしまったら。

 

とても、悲しむんじゃないだろうか。

 

 

 

 

そんなことを思っていたけれど、教室の中に外から風が吹き込んできて、少し、カーテンの隙間からグラウンドが見えた。

 

その中で、眩しく光る金色の髪が、元気に走っていた。みんなに囲まれて。

 

カーテンが戻る。外の光景が見えなくなってしまった。私は暑くて眩しいのを我慢してカーテンを開ける。

 

そこに居たのは、サッカーボールを追いかけて、仲良さそうにじゃれる京太郎。

 

悩む必要など無かったのだ。京太郎は、いつも通り元気だった。それだけで、何故か安心してしまった。

 

ホッとしていると、京太郎はこちらを見つけたのか、手をこっちに大きく振ってきて。少し恥ずかしくなってしまった私は、手を軽く上げて応え、カーテンを閉めた。

 

 

いつも暑くてダルいだけだったけど、窓際の席も、たまには良い物なのかもしれない。そう思った。

 

 

 

それから、私は授業中でもちょくちょく、窓の外を覗いてしまう癖ができてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

それから、たまに会い、一緒に帰って、たまに遊んで。そんな日々が始まって。

 

秋には焼き芋をした。熱くて甘くて、口の中をちょっと火傷したけれど、楽しかった。

 

冬には雪だるまを作った。最初はダルくて、小さいのを作った。でも、京太郎と一緒に作ったのは、顔のパーツがズレて変になったけれど、大きく出来たのが嬉しかった。

 

春になったらお花見をした。おかーさんやおとーさん、京太郎のおばあちゃんに連れて行かれた。おかーさんが酔っ払って大変だった。

 

そんな風に、一年、二年なんて、すぐ過ぎてしまう短いものだった。

 

 

 

 

そして、私達が会ってから四年目の夏、京太郎が四年、私が六年のときだった。

 

いつもみたいに、私が京太郎の家にだらけに行った、その日。

 

 

「シロねーちゃん、押入れでこんなの見つけたんだけど」

 

「…コレってあれだよね、テレビでよくやってる」

 

 

二人で"それ"を見ながら話していると、おばあちゃんがやってきて、

 

「あらふたりとも、麻雀やってみたいのかい?」

 

 

はじめて、麻雀というものに私達は触れた。




というわけで三年間キンクリ。

本当は全部書きたいけどそんなの書いたら十話くらい使っちゃうからね、仕方ないね。

元々十話くらいで収めるつもりだし、長くても十五話くらいで終わるつもりだから、ごめんなー ワハハ

てかまた思いつくままに書いたから、展開変だけど、ゆるしちくり~

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