迷い家のお椀   作:ハム饂飩

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ほげぇ

眠気に耐えながら3時間で書いたものを投下する

だいぶテンションに任せて書いたから後で修正するかも


第二話

私の意識はその声で一気に戻ってきた。そして、先ほどまでの気持ちの良い感覚は消え失せた。

 

あまりにも突然だった。私は、目を瞑ったままで、動くことができなかった。

 

いつも通りの蝉の声、じりじりと照り付ける太陽の光、蒸し暑い夏の空気。

 

あぁ…私は、今まで何をしていたんだっけ?

 

 

 

「寝てるの?寝てるなら僕が食べちゃうよ?いいの?」

 

 

 

どこから来たのかわからないが、男の子が話しかけてきた。さっきの声も、この子の声。

 

見知らぬ私にアイスをたかりに来たのだろうか。少し瞼を開いて、声のする方向に目を向ける。

 

見た目は、私よりも小さい感じのする金髪の元気な男の子。そして、いかにも夏休みの小学生というスタイル。

 

Tシャツに短パン、虫かごに虫取り網、そして麦わら帽子。虫かごの中には蝉が何匹か入っている。

 

明らかに虫とりの帰りだった。この辺にこんな男の子が住んでいたなんて気づかなかった。金髪なら、目立っててもよさそうだけど…。

 

 

 

「あー溶けてる!アイス溶けてる!こぼれてるって!もったいねー!」

 

 

 

男の子の叫びで、やっと私は自分の手がアイスによって侵略され始めたことに気がついた。

 

 

 

 

 

 

 

私と男の子はベンチに座っていた。男の子は私があげた溶けかけのアイスを。私は新しく開けた、シンプルな棒アイスを手にもって。

 

 

「…ダルいなあ…」

 

 

「おねえちゃん、なんで寝てたの?」

 

 

無邪気…なのだろうか。男の子は私があげた溶けかけのアイスをたべ…いや、飲むのをやめ、話しかけてきた。

 

警戒心が薄いのは好奇心からくるものなのか、それともアイスをあげたということがいい人というイメージをこの子に与えたのか。

 

正直溶けかけのアイスを食べる気にはならなかったからあげたのだが。

 

 

 

「ダルいから」

 

「ふーん…」

 

 

 

納得したのかしてないのか、わからない曖昧な返事。男の子はちびちびとチューブから元アイスを吸うのを再開した。

 

会話が続かない。当たり前だ、初対面の男の子とこんな性格の私で会話が弾んだらそれこそおかしい。そう思いながら、アイスを食べる。

 

私の性格では、親しい友人はできにくい。ということは自覚している。気にしたことなどなかったのだ。

 

きっとこの子も、私と話していて楽しくない、だろうな、と。そう思ってしまったのはなぜだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

アイスを食べ終わった私は、ふと、思ったことを男の子に聞いてみた。

 

 

 

「そういえば…なんで君は私に話しかけてきたの?」

 

「あ、そうだ。ねぇ、おねえちゃん」

 

「…なに?」

 

「これおねえちゃんが捨てたんでしょ?悪いんだよ!ポイ捨ては!」

 

 

唐突に、私に向かって突き出したのは、さっきのチューブアイスの蓋(×2)。

 

別にポイ捨てしたわけではない。勝手に飛んでいったのが悪いのだ。

 

だから、私は悪くない。

 

それでも男の子は胸を張りながらゴミを私に見せつけるのをやめなかった。

 

屁理屈なのはわかっている。私が悪いこともわかっている。この子は善意で私に言ってくれてるのだ。

 

しかし、私は今日のダルいことの連続に思っている以上に苛ついていたのかもしれない。

 

自分でもよくわからないが。私はベンチから立ってしまった。帰ろうとしてしまった。

 

その瞬間、男の子が私の前に回り込んだ。帰り道を塞ごうとしているのだろう。

 

反対を向く。すると男の子は前に移動してくる

 

 

 

「ダルいなぁ…」

 

「僕悪くない。おねえちゃんが悪い。ゴミ箱におねえちゃんが捨てるまで邪魔するから。」

 

 

 

私が帰ろうと向きを変えると、男の子も前に立ちはだかる。なぜか、それを繰り返していた。

 

くるくる、くるくる、私たちはなぜか回る。右に回れば右に、左に回れば左に。正直な男の子は追っかけてくる。

 

男の子に正論を言われて意地になっていたのかもしれない。私が折れれば終わるけれども、私からは終わらせたくないと。

 

だから、少しだけイタズラ。早めに振り返って、軽く走ろうとした。そのとき、うわっ、という焦った声と何かが倒れる音。

 

走ろうとした足を止め、振り返ると見えたのはうまく方向転換できなかった男の子が転んでしまっているところ。

 

…やってしまった。男の子は足を擦りむいてしまっていた。地面に、鮮やかな赤い色が少し見えた。

 

 

「…大丈夫?」

 

 

言ってから気づいたが、私が原因なのだから、少しひどい言い方だったかもしれない。

 

それでも男の子は笑いながら、

 

 

「ゴミ捨てる気になった?」

 

 

と、何でもないかのように話しかけてきた。

 

地面に血の色がつくほどの怪我なのだ、痛くないはずがない。私は、何をしていたのだろうか。初めて会った子に、八つ当たりのようなことをするなんて。

 

 

「ごめんね…私が変なことしたから」

 

 

私が謝ると、男の子は不思議そうに

 

 

「なんでおねえちゃんが謝るの?僕がおねえちゃんの気を引くためにわざと転んだだけだし!痛くないし!」

 

 

なんてことを言うのだ。その答えは予想外だった。驚いて、男の子から目が離せなくなった。

 

私の視線の意味を勘違いしたのか、

 

 

「い、痛く、ないし」

 

 

男の子はプルプル震えて、言い訳して。その健気でおかしな行動に、すこし、ほんの少しだけど。私は笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おねえちゃん、笑ったね」

 

「…笑ってないよ」

 

「ずっとむすっとしてたし、僕が話しかけたことと、アイス食べたの怒ってたと思ってた」

 

「……怒ってもいないよ」

 

「でも笑ってくれたから」

 

「…笑ってない、よ」

 

「ほら!また笑った!僕も楽しかったよ!ありがとう!」

 

「…楽しかった?」

 

「うん!ちょっとだけ足痛いけど、最後のは楽しかったよ!」

 

 

「…そっか、ありがとう」

 

 

少しだけでも、楽しかったといってくれて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男の子の虫取り網と虫かごを私はベンチから回収してきて、ちょっと意地悪してみる。

 

「…さっき言ってたけど、やっぱり、足痛いんだ」

 

男の子の本音はあっさりと出ていたから。

 

「あ」

 

しまった、という感じの顔をしている男の子に、私は虫かごだけを渡す。

 

「消毒するから、うちに連れてってあげる」

 

これくらいはしてあげるべきだろう。私は虫取り網をもちながら家への道をゆっくり歩き始めた。

 

行きはあんなにもだるかったのに、今は不思議とダルくなかった。




らめぇねむいのぉ

変なの投稿すんじゃねぇって電波を受けた。

お願いします!許してください!何でもしますから!

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