迷い家のお椀   作:ハム饂飩

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1年?1年ってなに?

多分1か月くらいでしょ(思考放棄)

てるてるとか咲とかそこら辺の関係投げっぱなしジャーマンで準決決勝すっとばして表彰式とかも考えたけど、まぁ多少はね?

まぁ書いたとしても闘牌描写は有りませんがね。

素人に改変は無理っす


第十五話

『さっきはごめん。それとありがとな。

 

いろいろと悪いこと起きちまったけど、それのおかげで吹っ切れた。

 

なんとなくみんなから邪険にされてるんじゃないかって思ってたんだけど、そうじゃないって気づけた。

 

俺は今清澄高校麻雀部の一員だから、表立って応援はできないけど、心の中では応援してるから。

 

あと、アレはなかったことにさせてくれ。このままじゃものすごくかっこ悪いからさ。ちょっとだけ待っててくれ。

 

 

最後に一つだけ言わせてほしい。

 

吹っ切れるきっかけはシロさんのおかげだし、感謝もしてるけど、こうなったのも大体シロさんのせいだわ。』

 

 

 

いまだに誰も起きていない部屋の中、一人だけ起きている自分に驚く。

 

昨日、寝る前に届いたメール。何度も読んだのにまた読んでしまう。

 

はじめに読んだとき、どうやら気づかないうちに顔が緩んでいたみたいで、みんなに問い詰められた。

 

一人で部屋に戻ったときは大騒ぎだったし、皆には悪いことをしたと思った。でも、このメールは見られたくなかった。

 

見られたくなかったから、布団の中に潜り込んだし、いくら揺すられて何があったか説明しろと言われても、顔すら出さなかった。

 

二人だけの秘密、というには余計な人にも知られてしまったけれど。

 

 

気持ちは伝えられた。勢いだけだった。

 

でも、伝わった。嬉しくてどうにかなりそうだった。

 

邪魔が入らなければ、多分、先に進めていたのに。自惚れではないとおもう。

 

でも、これでよかったんだとも感じる。不意打ちで関係が進んでも、問題しか残らない。

 

なにより、京太郎との()()をまだ達成できていないのだから。

 

 

 

 

 

 

今日、Aブロックの準決勝が行われる。やけに人が多いのは、やはり白糸台が注目されているのかもしれない。

 

すでに日差しが強く、動き回るのが億劫でしょうがない。正直、普段なら絶対にこんなに面倒なことはしない。

 

会場について、観客席につく。腕が少しべたついて、気持ち悪い。

 

椅子に浅く腰を掛けて、思い切り後ろもたれかける。

 

 

皆と一緒に部屋で見ることもできたけれど。

 

それでも、一人で会場で見たいと思ったのは。

 

試合開始前、席に着いたままじっと山を見ている彼女が気になったからだろうか。

 

京太郎と、会っていた、その目の前で関係を見せつけてやった。それなのに。

 

あきらめるどころか、こちらを睨み付けてきた彼女。

 

 

「宮永照…か」

 

 

つい、口から洩れた声。周りの人たちは少しこちらを見ただけで、すぐに画面に目を戻す。

 

そんな中、彼女がちらりとカメラを見て。また山に視線を戻した。

 

なぜだろうか、ただカメラを見ただけなのに。ほんの少しだけ、彼女と目が合った気がした。

 

 

 

 

 

先鋒戦が終わる。

 

画面の中の彼女は、圧倒的な実力を見せつけた。

 

まさに蹂躙。そう表現しても問題ない。

 

彼女を止められたのはその卓に居た全員が協力したからだ。

 

もし、それぞれが自分のために、自分だけのために試合を進めたとしたら。

 

3人のうち誰かが飛んで先鋒で試合が終わっていただろう。そう感じた。

 

この様子ならば、白糸台は決勝に進んでくる。

 

そして、宮守だって負けさせるつもりはない。

 

間違いなく、彼女は目の前に現れるだろう。そのとき、どうやって戦うか。

 

一人だけ、鳴いてツモをずらしている人がいた。それでも、連続和了は止まらなかった。

 

また、絶対に誰かを飛ばさないように耐えている人もいた。それも上から踏みつぶしていた。

 

最後の最後、ドラを初めて切って、やっと宮永照が止まった。

 

つまり、全員の動きを把握して、試合の動きを変える手を打つしかない。

 

 

「ダルいなぁ…」

 

 

それでも、勝てない、とは思わなかった。

 

最終的に勝てば、それでいい。だから、負けない。

 

画面の中の彼女は、またカメラを見た。

 

まるで、試合内容を見ていたか、と。私は絶対に負けない、と。

 

そう宣言しているかのようで。

 

明らかに誰かを見ている。そんな顔をしていた。

 

 

 

 

試合が終わり、観客はほぼ帰って行った。

 

緊張した空気は霧散し、観戦室は静かになっていく。

 

椅子から立つのがダルくて、少しだけ目を閉じて考える。

 

試合結果は予想外だった。

 

1位は阿知賀。白糸台高校は、まさかの2位に終わった。

 

あれだけ先鋒が稼いだ点棒を守り切れず、2位。

 

白糸台は個々が強い。いや、強いからこそチームとして組んだのだろう。そこに、チームとしての仲間意識は薄そうだ。

 

対しての阿知賀は、個々はそれほどでもない。まだ、全力ではないであろう大将以外は能力が強いか、麻雀が上手いだけだ。

 

それでも白糸台に勝てたのはなぜか。

 

チームを組んだからこそ、仲間意識が強いからこそ、それぞれが強くなった。それが阿知賀。そんな気がする。

 

 

考えがまとまり、目を開ける。

 

少しだけライトがまぶしい。ゆっくりと会場を出れば、もうすでに周りは暗くなっている。

 

 

 

そこに、()()が立っていた。

 

 

 

「やっぱり、見てたんだ」

 

 

返事はせず、目を合わせる。

 

 

「この前は、びっくりして何もできなかった。

 

でも、私は絶対に負けないから」

 

 

まっすぐ、こちらを見つめる彼女。

 

その眼には、覚悟と敵意が。

 

 

「それは、どっちの意味で?」

 

 

「どっちも」

 

 

京太郎を渡さないし、麻雀でも負けない。そう言いたいらしい。

 

でも、もう遅い。

 

 

「私は、京太郎に気持ちを伝えた」

 

 

彼女は、京太郎と仲がよさそうだった。

 

でも、それは友人としてのやり取りだった。

 

それならば。

 

 

「貴女は、伝えてない。伝わってない

 

なら、私が負けることはない。絶対に

 

麻雀も、私は負けない。貴女が強いことはわかるし、認めてる

 

それでも、私は貴女に勝つ。勝たなきゃいけないから」

 

 

少しだけ、彼女は息をのんで。それでも。

 

 

「なら、私が勝って、告白する。振り向かせてみせる」

 

 

覚悟が目から消えることはなかった。

 

 

「告白を私が止めることはできないし、しちゃいけない

 

でも、私だって譲りたくない

 

だから、私は負けない」

 

 

会話はそこで止まり、お互いから視線を逸らす。

 

お互いに、譲れない戦い。

 

宮守の為にも、自分の為にも。白糸台に、彼女に負けるわけにはいかない。

 

子どものころからの想いを、重さを。捨てたくないし、忘れたくない。

 

 

そして何より。

 

彼が居なくなってしまったら、私はどう生きていけばいいかわからないのだから。




てくてく


「「………」」


てくてく


「…なんでついてくるの?」


てくてく


「「………」」


てくてく


「…ホテルまでの道がわからない…

…同じホテルみたいだし…ついてけばいいと思って…」


てくてく


ヘクシッ


「「………」」


(いくら夏でも夜にあんなところで立ってるから…)

(ホテルで待っていればよかった…)


そんな二人

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