迷い家のお椀   作:ハム饂飩

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お ま た せ !

麻雀描写全部カットしたけど、いいかな?




あ…ダメ?許してください!素人なりに納得できる牌譜ができませんでした…(小声)

ほ、ほんとは麻雀描写入れて区切ってタコス回にするつもりだったんだけど、文字数少なくなったからくっつけただけなんや…

久しぶりすぎて展開がくっそひどくなったけど、仕方ないね。


ククク…この時間、更にここまで投稿が遅れれば見る人もほぼいないだろう…


第十一話

もうすぐ二回戦が始まる。ほとんど誰もいない廊下、歩いて対局室へと向かう。

 

カツカツと、足音だけが響いている。他の対局者はもう卓に着いているのだろうか。他に誰かが歩いている気配もなく、ひっそりとしていた。

 

それでも、足の早さは変えない。急ぐことはない。時間にならなければ、試合は始まらないのだから。

 

そして、この試合で、宮守と清澄がぶつかる。二回戦で、もう潰し合いになる。

 

できることなら、なるべく上の方までは当たりたくなかったチーム。

 

清澄の一回戦を観戦し、ここは強いと、そう感じた。

 

先鋒は、東場での速攻高打点。いつもの私の打ち方だと確実に先を越される。

 

次鋒は、派手さはないが堅実な打ち手だ。相手にうまく対応し、その上で自分の実力を発揮してくるだろう。

 

中堅は、理外の待ちを駆使して戦っていた。多分、それが彼女の力なのだろう。

 

副将から先は見ることができなかったけれど。この面子の中から選ばれたのなら、それ以上の力を持っていると考えてもいいだろう。

 

 

「ダルい…」

 

 

当然、宮守の皆が負けるとは思っていない。私達が、ここで敗れるようなことはない。

 

皆の前では、恥ずかしくて言えないけれど。私達なら、優勝だってできる。そう信じているから。

 

 

ただ、清澄。京太郎の居る高校を、破ってしまえば。京太郎は長野に帰ってしまうかもしれない。

 

彼が、個人戦まで滞在しているかは、分からない。それだけが、心の何処かで引っかかっている。

 

それが完全な私欲だと、気づいている。そんなことはわかっているけれど。どうしても、振り払えずにいて。

 

それに、わざと清澄を贔屓し、他のチームだけを狙うようなことをすれば、京太郎も、そのチームメイトも、姫松や永水の人たちも。全員の誇り、想い、覚悟、その全てを踏みにじるようなものだ。

 

私欲で、そんなことはできない。だから、本気で戦う。

 

足を止め、壁に背中を預けると、自然と視線は下のほうへ下がっていく。気分が少しだけ悪くなったように感じた。

 

 

「ほんと、ダルいなぁ…」

 

 

いつまで居るのか、京太郎に聞けば済む話なのだが。

 

あんなことをしてしまった手前、連絡を取るのは、少し恥ずかしい。

 

久しぶりに会った自分の想い人が。他の人と居るという状況に耐えられなかっただけだ。

 

そこはもういい。済んでしまったことだ、考えてもきりがない。

 

心にしこりが残っているような感覚、それでも、やるしかないから。

 

私は対局室に向かって歩き出した。

 

 

 

 

ふと、気がつけば。もうすでに、対局室の扉が見えるような所まで来ていた。

 

その脇には、カメラマンや、リポーターらしき人たちが集まっていて、フラッシュが焚かれている。

 

その中に居たのは、小柄な女の子。その子は、マントをつけていた。

 

 

「この対局は私の独壇場だじぇ!」

 

 

どこかで見た、その女の子。その子は、自らの力に自身を持っているのだろう。

 

普通なら、信じないような言葉でさえ、本当にしてしまいそうな、そんな力強さを感じる。

 

 

その子が、対局室に入っていき、扉が閉まる。次にカメラが向かってくるのは、当然次に入ろうとしていた私なわけで。

 

一斉にこちらを向いたリポーターや、カメラマンに、少しだけ恐怖を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダル…」

 

 

全員が揃い、席を決めて、着席する。

 

まだ、少しだけ試合開始まであるらしく、ピリピリとした雰囲気が、場に流れている。

 

そんな中、一人だけ我関せずといったように寛いでいる清澄の先鋒。

 

少しだけ、京太郎との会話に出てきたことが有る。

 

大抵、愚痴のようなもので、何がそんなに気に入らないか分からないがすぐに怒り出すとか、苦労しているような内容だったのだが。

 

 

「さっきから見てるけど、なんなんだじぇ?…もしかして私のタコスを狙っているのか!?絶対に犬特製のタコスは渡さないじぇ!」

 

 

「…いや、取らないけど」

 

 

不意に、その子から話しかけられて、少し面食らう。

 

どうやら、少し見ていたことがバレていたようだ。

 

だが、そのことよりも気になった、彼女が口にした言葉。

 

 

 

「…犬特製って…何…?」

 

 

「犬は犬だじょ。うちの部活の雑用係みたいなものだじぇ。

 

応援に来てくれてるけど、どうせなら全国に出るくらいになってて欲しかったじぇ。情けない男だじぇ」

 

 

 

 

 

当たり前のように返って来た言葉は、あまりにも酷いもので。到底、私には聞き流せるような物ではなかった。

 

 

彼女は今、何と言った?京太郎のことを。何だと言った?

 

京太郎は、部員ではないか。お前の奴隷じゃない。

 

お前は知らないのか。彼は地区の大会で負けたあとに泣いていたのに。皆に申し訳ないと、一人で泣いていたのに。

 

皆が試合に集中できるように、サポートするためについていくんだと。そう決意して。

 

わざわざ女子の大会に、泊まりがけで応援に来てくれるほどに、部活を、仲間を大切に思っているのに。

 

それなのに、それが当たり前だと。

 

彼の厚意を、当たり前のように享受して。その上情けないと、彼を貶めるのか。

 

 

許せなかった。許すわけもなかった。

 

 

「…うん、決めた」

 

 

「じょ?」

 

 

「本気で戦うって決めてたけど…やめた。君のことは…」

 

 

全力で、叩きのめす。

 

 

その言葉は、試合開始のブザーに掻き消され。

 

彼女に届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合終了のブザーが鳴った。

 

ただ、しん…と静まっている。

 

圧倒的だった。ただ、そうとしか言えなかった。

 

不思議な上がりを見せる人は、全国大会ならばそう珍しくもない。

 

しかし、この対局での勝者は違った。ただ、傍目には不可解な打ち回しをしていただけ。それなのに、その全てが、最終的に有効性を持っていた。

 

数分後、堰を切ったようにざわざわと、周りが煩くなった。

 

 

永水、姫松、この二校を相手にして、どの程度優希が点数を稼げるか、というのが部長の考え。

 

だが、結果はほぼ宮守高校の一人浮き。永水の神代さんが、最後に大きな上がりを見せたものの、ほぼ原点での終了。

 

姫松の上重さんは置物状態だったが、-はそこまでひどいものではなかった。

 

そして、清澄。うちは、この先鋒戦だけで5万点近くの点数を吐き出した。

 

優希は、得意の東場でほぼ点数を稼ぐことができず、その影響か南場ではいつも以上に焦って居るように見えた。

 

そのせいだろうか、最後のほうはほぼ何も考えられないような状態になっていた。

 

その結果だけをみてやはり長野はレベルが落ちた、なんて声もチラホラと周りから聞こえてくる。長野で戦ってきた人たち、すべての人を馬鹿にされたような気持ちになる。

 

控室に戻っていく優希の顔は、とても辛そうで。でも俺だけ何もしてあげられることがなくて。

 

控室に戻れば咲と和が、必死に慰めてくれるだろう。

 

俺は、何を言ってあげればいいのか見当もつかなくて。

 

勝者のことをよく知っている俺が、何を言っても優希を傷つけることになりそうで。

 

応援するためにここに来たのに、観客席で何もできずにいる自分に腹が立った。

 

 

 

そして、その上、シロさんが清澄を狙い撃ちするような打ち方をしたことが悲しくて。

 

自分にはわかった。あの打ち方は、シロさんにしかできないだろう。

 

咲の嶺上開花や、照さんの連続上がりのようなものではない。

 

 

悩んだ結果が、彼女にとっての最高の終わり方になる。それは、麻雀だけでなく、日常生活でも使える彼女の「力」。

 

 

どちらかというと、超能力や霊能力のほうが近いのではないだろうか。

 

それを麻雀に生かす。それがシロさんの打ち方。

 

シロさんだけの、シロさんにしかできない打ち方を、一緒に考えたときのことを思い出した。

 

 

 

シロねーちゃんさ、なんで悩んだら高い手になるの?

 

 

…わかんない ただ勝つなら高い手一度上がるだけで終わるからダルくない

 

 

でも逆に言えば一度もあがらせなければ勝てるよね!

 

 

あー…うん

 

 

悩んだら解決したって普段から言ってるし、麻雀も悩みながら打てばなんでも出来るんじゃない?上がらせないとか、最終的に勝つにはどれ切ればいいかとか。

 

 

あー…それは考えたことなかったなぁ…

 

 

 

 

なんとなく、思ったことを口に出しただけだった。

 

そのあとの麻雀の結果を思い出したくない。ぼこぼこにされ、本当に一度も上がることができなくなった。

 

たぶん、最初のころは、高い点数を和了れば勝てる、という思いから「どれを切ればいいか」という悩みが、「手が高くなる」という結果になったのだろう。

 

自覚してからの麻雀は、最終的にどう勝つか、それが変わった。長考も多くなったのだが、「手が高くなるには」「相手のあがりを阻止するには」「誰からあがれば自分の得になるか」など。

 

迷いの幅が広がり、勝つ為の道筋が多くなった。最高の結果につながる過程は、ただ手が高くなるだけではなくなったから。

 

そして、今の対局。

 

悩めば、シロさんが思い浮かべる最高の結果になる。その最高の結果が。今の点数に現れている。

 

まるで清澄だけを狙ったかのように、叩きのめしたというその事実、それがとても悲しかった。

 

 

そのときだった。

 

携帯が震える。そして、それはすぐに止まった。メールの着信だと気づく。その瞬間、辺りの喧騒が耳に広がる。どうやら、相当考え込んでいたようだ。

 

観客席なので、マナーモードにしてたことが災いして、今までのメールに気づかなかった。

 

すぐに確認すると、優希を気晴らしに連れて行ってほしいらしく、もうすでに優希は会場の出入口に向かっているようだ。

 

待たせてはいけない。すぐに優希が待っているであろう出入口に、急いで向かうことにする。

 

陰鬱とした気分を、変えるために。優希のためだけでなく、自分にとっても、この休息はありがたい、と。そう感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ…」

 

 

「おう、どうしたタコス娘、元気ねーな」

 

 

当たり前だろ。あの結果では、優希が元気なわけがないじゃないか。

 

でも、そう声をかけることしかできなくて。

 

 

「う…い、犬のくせにナマイキだじぇ…」

 

 

「おいおい、どうしたよ、いつも通りにしてなきゃ張り合いねーぞ」

 

 

元気だけが取り柄のような優希が、今にも泣きそうで。でも、その顔を俺に見せたくないのだろう。

 

すぐにうつむいてしまう。暗い雰囲気が消えず、会話が続かない。

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

何か、言わないと。俺は、何のためにここに来たのかわからなくなる。

 

 

「…なにも、できなかったじぇ」

 

 

ポツリと。優希がその言葉を放つ。

 

その言葉に、いろいろな感情がこもっている、それだけは分かった。

 

 

「…今回は…さ、相手が悪かったんだよ。

 

それに、負けっぱなしで落ち込んだままなんて、お前らしくないしな

 

次があるさ。先輩や咲たちが、きちんと準決勝の切符持ってきてくれるって。」

 

 

だから。大会に出ることすらできなかった俺が言えるのは、これだけだった。

 

たとえ、無責任な言葉だとしても。

 

 

「犬にはわからないじぇ…」

 

 

「わからないから、言いたかったんだ。」

 

 

「…ずっと、東風だけで点を稼げば、負けないって信じてたんだじぇ。

 

でも、今日初めて、何もできなかったじょ…

 

鳴きでズラされるってのは、予選のノッポにもやられたけど…特訓して、頑張って、なんとかなるって思えてたんだじぇ…」

 

 

何かしなきゃ、と思っていたけれど。

 

優希の独白を、無責任な俺は、ただ聞くだけ。

 

でも、それで良いんだって、そう思えた。

 

 

「あそこまで、徹底的に、自分の鳴きだけじゃなくて、他人にまでわざと鳴かせたり、上がらせたりなんてされて…

 

まるでお姉さんと、ノッポが合体したみたいだったじぇ…

 

和了るときはまるで私みたいに打点が高かったし…」

 

 

喋りだせば、こうだ。泣きそうだった顔が、不機嫌そうな顔になって、悔しそうな顔になって。

 

最後には笑顔になる。それがこいつだから、心配なんていらなかったんだ。

 

まだ大声で悔しがっている優希を見て、少しだけ気分が晴れる。

 

もう、大丈夫だろう。コレで、優希は次も頑張れるだろう。

 

 

「ほら、愚痴はもういいだろ。タコスの売ってる店、探しといたんだ。

 

ここから近いし、食いに行くぞ」

 

 

ちっこい頭を叩いて、無理やり起動させる。

 

 

「お、犬のくせに気が利くじぇ!ほら、さっさと行くじょ!」

 

 

返って来たのは、想像通りで、いつも通りの、元気な笑顔。

 

それが見れただけで、俺がここに来た意味になる。そう心から思えた。




京太郎(どうしてシロさんは清澄だけ狙うような打ち方を…)

優希「京太郎、お前あの白い人と知り合いか?」

京太郎「え?あ、あぁ…岩手に住んでる時に姉みたいだった人だよ」

優希「う…だから一気に雰囲気変わったのか?」

京太郎「なんか言ったのか?」

優希「タコス取られると思って

※『犬は犬だじょ。うちの部活の雑用係みたいなものだじぇ。

応援に来てくれてるけど、どうせなら全国に出るくらいになってて欲しかったじぇ。情けない男だじぇ』

ってつい言っちゃったんだじょ…」

京太郎「なんとなく狙われた理由想像付いたわ…」(冷や汗)



※ 釘宮語訳

「(私にとって大切な)犬は犬だじょ。うちの部活の(率先して働いてくれてる優しい)雑用係みたいなものだじぇ。

(私の)応援に来てくれてるけど、どうせなら全国に出るくらいになってて(一緒に大会に出て)欲しかったじぇ。(鍛えて欲しいって言えば鍛えてあげたのに)情けない男だじぇ」




ちなみに、近くの物陰でシロちゃんが話を盗み聞きして嫉妬パワーが更に溜まってきただろう…



ってなることは無いです。

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