迷い家のお椀   作:ハム饂飩

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仲直り麻雀をさせる…とは言ったが…

麻雀描写がある…とは一言も言ってない…!

つまり…こちらがその気にならなければ…半分でも全部でも省略することが可能…!!



てきとうにかいたと思ったら4573文字になっていた。な、何をいって(





子どもな宮永姉妹にはこんな仲直りで十分ですよ!十分!



嵐の中でも咲き誇れ

三月。すでに、中学の卒業式も終わり、少しだけ長い春休み。咲は、まだ学校があるようで、家にいなかった。

 

これと言って、出かける場所も目的もなく。ただただ過ごし、東京行きの日が近づいてくる。

 

私物をまとめた段ボールが、部屋の隅に積んであって。

 

もうすぐ、私はここからいなくなるんだなと、嫌でも感じさせられる。

 

咲との仲も拗れたままで。何も分かり合えないまま、居なくなってしまいそう。

 

それは嫌だと。そう思っているのに。

 

一人では、何もする気が起きずに。ただ、時計を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

まだ、片付けていない物があったから。それを整理していて。

 

机の上に乱雑に積まれた雑誌。今まで使っていた教科書。参考にしてきた麻雀の指南書。

 

その中に、紙切れが挟まっていることに気がつく。

 

広げて見てみれば、どこかの電話番号。

 

少しだけわからなかったけれど、これは確か初詣の時に会った男の子にもらったものだと思い出す。

 

 

「咲と仲直りしましょう」

 

 

ふと、彼と話した内容が、頭に浮かんでくる。

 

私だけじゃ何もできないけれど。それでも年下の子に頼るのはどうなんだ?

 

そう思えないほど、私は追い詰められていたのかもしれない。

 

 

「…もしもし、須賀さんのお宅ですか?」

 

 

気がつけば、私は電話をかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「京ちゃん、いきなり暇だから来ていい?なんて急すぎるよ!」

 

 

「悪い悪い、ちょ~っとな。暇すぎて咲の家に用事ができちまったんだよ」

 

 

「なにそれ…私と遊びたいなら、素直に言えばいいのに京ちゃんってば」

 

 

家のドアがあき、そんな会話が聞こえてくる

 

すでに、用意は済ませてある。残りの一人は、お母さんが打ってくれる。

 

 

「お、お姉ちゃんに、お母さん?なんで麻雀の用意してるの…?」

 

 

「咲、麻雀を打とう。咲は何も賭けなくていい。純粋に、ゲームとして打ってくれればいい。」

 

 

あとは、打つだけだ。そう意気込んでいたんだけれども。

 

 

「ただ、私は、本気で行くから。咲も、本気で打ってくれないと、嫌だよ」

 

 

「京ちゃん…どういうこと?」

 

 

「ま、まぁいいじゃねぇか、俺も久しぶりに打ちたいんだ。付き合ってくれよ」

 

 

「………少しだけだから」

 

 

麻雀は、あんまり好きじゃないのに

 

 

そう呟いた咲の声は、須賀くんではなく、私に向けられていたような気がして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツモ、嶺上開花一盃口、50符3翻で1600、3200」

 

 

最初の半荘、そのオーラスでの宣言。咲は嶺上開花を上がった。

 

中張牌を槓し、一盃口の嵌張待ちをツモ上がる、などという偶然には滅多に起こる筈のない和了りである。

 

 

「まじか?咲、お前ついてんなー」

 

 

咲の和了に関心したような声を出す須賀くん。咲は、リーチしても1位は狙えない点数だった。

 

だから、2位になれるのなら上がるのは当然だ、と須賀くんは思っているのだろうか。

 

確かにそうかもしれない。普通なら、そう。

 

でも、この打ち方でわかった。

 

 

±0。

 

 

咲は、本気にはなってくれていないと。

 

 

だから、私は。

 

 

 

 

 

「ロン、1000点」

 

二回目の半荘、東二局。須賀くんが出した牌で上がる。須賀くんは、私の手が安くて安心したようだった。

 

でも、ごめんなさい。私と咲が話し合えるように、こんな提案をしてくれたのは君なのに。

 

私は、本気で行く。咲に本気で来てもらうために、君をいじめるみたいになってしまうけれど。

 

 

咲が、±0にならないように。先に、須賀くんには飛んでもらう。そう決意して、サイコロを回す。

 

 

「東三局、私の親番、行くよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツモ、4200オール」

 

 

須賀くんは、私の2900点と8000点に振込み、更に今のツモで残りが8900点。

 

次に須賀くんから和了れば、文句なくこの半荘は終わる。

 

父も母も、麻雀は強かった。だから、途中で誰かを飛ばして終わらせる、ということは今までできなかった。

 

咲が、本気になるかは分からない。それでも±0以外で終わることは何かのきっかけになってくれると思う。

 

悔しさでもいい。怒りでもいい。悲しさでもいい。

 

麻雀に、何か意味を見出して欲しかった。

 

 

だから、これで終わらせる。

 

 

「リーチ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カン」

 

 

その声を聞いて、寒気がした。

 

威圧感だろうか、それとも、妖気、とでも言うのだろうか。そういう雰囲気を感じた。

 

感情のこもっていない声。淡々とした宣言。

 

咲の方を見てみれば、私の宣言牌を3枚晒していて。

 

 

「カン、だよ。お姉ちゃん」

 

 

河から牌を拾い、王牌に手を伸ばす咲。

 

容易に、その先の結果が見える。

 

やはり、咲の顔には感情なんてなくて。

 

ただ、できるからやる。そんな表情で。

 

 

「ツモ、嶺上開花ドラ1。3900は4800」

 

 

親連荘を止められてしまった。つい、歯噛みする。

 

まだ、まだ南場の親が残ってる。

 

そう、自分に言い聞かせても、焦っている自分を抑えることができなくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果として、須賀くんは飛ばず、咲は±0。

 

この半荘は、ダメだった。でも、次の半荘で、次でなんとか終わらせてみせる。

 

次で、私は咲と…

 

そう思って。次の半荘を始めよう、と私が言おうとしたそのとき。

 

 

「なんか、つまらねぇなぁ」

 

 

私は。

 

一瞬、須賀くんが、なんて言ったのか、理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「京ちゃんもそう思う?やっぱり、あんまり楽しくないよね」

 

 

咲は、麻雀を終わらせるための口実になると思ったのだろう。

 

話を合わせて行く。

 

 

やめてよ。どうして。

 

仲直りさせてくれるんじゃなかったの?提案してくれたのは君だったのに。

 

私は、最後のチャンスだと思ったから、お願いしたのに。

 

まだ、私は咲に何も言えてないのに。

 

 

咲が1位になってくれたら、おめでとうって。言ってあげたかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

「だって、麻雀って4人でやるもんだろ。咲、本気でやってねーじゃん。それじゃつまんねぇよ」

 

 

「え…?」

 

 

私は、須賀くんがなんて言ったのか、違う意味で理解できなくて。

 

ただ、言葉を失った。

 

 

 

 

「いくら負けたってさ、別にいいじゃん。何か賭けてるわけでもないし、本気で打って負けたなら、次勝ってやる!ってなるもんじゃないのか?

 

俺だって、そんなに勝ったことはないけど、勝ちに行くってことが楽しいし、カッコイイんじゃねーのかよ。

 

宮永さん…いや、ここは照さんにしとくか。

 

少なくとも照さんは勝とうとしてたぞ?本気で打ってたって素人の俺でもわかった。飛ばされるかと思った。

 

でも、咲の和了はなんかが違うんだよ。」

 

 

その言葉に、咲は明らかに苛立っていて。

 

 

「そんなこと知らないよ。楽しくないんだもん。」

 

 

「気づいてないのか?咲が嶺上開花で上がった時、明らかに。

 

照さん。泣きそうだったぞ?嶺上開花が特別なのか?

 

そんな楽しくなさそうなのに、なんで麻雀なんて始めたんだ?」

 

 

「そんなこと言わないでよ!

 

私だって好きでこんな打ち方してるわけじゃないよ!

 

京ちゃんは何も知らないくせに!

 

何も賭けてない?私達が家族で麻雀を打ってる時はお年玉が取られる!トップになったらお姉ちゃんに怒られた!

 

そんな麻雀ばっかりで、何を楽しめっていうの!

 

 

最初は、ただ、お姉ちゃんと麻雀を打ちたかっただけなのに!一緒にやれることが見つかって、嬉しかったのに!」

 

 

咲の、怒鳴り声。

 

それでも、その最後の言葉は。初めて聞く咲の気持ちだった。

 

 

 

「じゃあそれでいいじゃん。一緒に打てばいいじゃないか。」

 

 

「今だって一緒に打ってる!でも全然…」

 

 

「だから、咲は麻雀を打ってないだろ?(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 

「きょ、京ちゃん…!」

 

 

「さ、咲、そのへんにしておきなさい…?」

 

 

「お母さんは黙ってて!」

 

 

ダメだ。このままでは喧嘩したままになる。

 

止めなければいけない。だけど、なんて言えばいいのかわからない。

 

だから、咄嗟に自分の口から出た言葉が、信じられなかった。

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 

「え…?」

 

 

「咲が、初めて勝った時、怒鳴ってごめんなさい…」

 

 

「お、お姉ちゃん…?」

 

 

「咲が、私と一緒に何かしたくて、麻雀を始めたのは、わかってた…

 

でも、咲には、麻雀自体も好きになって欲しかった…!

 

嶺上開花を教えたのもそう…!咲の名前と同じ意味の役があるって教えてあげれば、興味を持ってくれると思ってた!もっと楽しんで強くなって欲しかった!

 

でも、さ、咲が!嶺上開花ばっかり狙うようになって!最初全然和了れないのにドラばっかり増やして!

 

お年玉もいつもより多く取られるようになったのに!それを注意されることすら嬉しそうな咲に苛ついて!

 

 

またカンして!お、怒って!その直後に嶺上開花和了ってぇ!と、トップ取ったことに、怒ったんじゃ、な、ないのに!

 

 

それから咲が!±0で打つようになって!麻雀が嫌いになったっておもった!なのに、嶺上開花ばっかり和了って!

 

 

私より明らかに強くなったのに!±0で和了って!嶺上開花ばっかりで!見せつけるみたいに!私が教えた役でつまらなさそうに麻雀してた!

 

 

だから!咲には麻雀で勝つことは悪く無いって言いたかった!でも今更咲にそんなこと私が言えなくて!だから須賀くんに協力してもらったのに!」

 

 

 

私は。

 

そこから先、自分で何を言っていたのか、覚えてない。

 

 

唯、わかったことは。

 

 

咲と大声で全く関係のないことまで喚きあっていたことだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふたりとも落ち着いた…?」

 

 

「うん…」「落ち着いた…」

 

 

「じゃあ、始めようぜ」

 

 

「麻雀を、打とう。咲」

 

 

「うん、今日からは、1位取ってもいい…よね?」

 

 

 

 

「咲、ツモだよ、6000オール」

 

 

「お姉ちゃん、それはカン。あとは、わかるよね?」

 

 

 

嶺上開花、和了れたよ、お姉ちゃん

 

 

おめでとう、そして、ありがとう。咲。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は、ありがとう。全部須賀くんのおかげ」

 

 

暗くなった空の下。家の前で話し込む。

 

たったの三半荘、でも、ものすごく長かった。

 

嬉しかった。その反面、こんなに簡単に解決してしまうことなのに、妹の友達の手を借りなければできなかったということに、恥ずかしさを感じる。

 

今日は、満月。金色の髪が、綺麗に光る。

 

 

「俺は自分で思ったこと言っただけですよ。宮永さん」

 

 

さっきまでは、照と、呼んでくれていたのに、二人きりになった途端に呼び方を戻されてしまったことに。

 

若干、不満を覚えてしまう。

 

 

「名前でいい」

 

 

「え?」

 

 

「名前で、呼んでほしい」

 

 

「じゃあ照さん、って呼ばせてもらいますね」

 

 

会話が途切れる。

 

なんとか、お礼をしたかった。たとえ、自己満足だったとしても。

 

 

「東京に行く前に、咲と仲直りできたのは、あなたのおかげだから。

 

何か、私にできることはある?なんでも、私にできることなら、なんでもするから」

 

 

そう、伝えれば。

 

彼は困ったように笑う。まさかそこまでとは思わなかったようで。

 

ただ、一言だけ。

 

 

「咲と、仲良くしてあげてください。

 

あいつ、前から照さんのことを話すときは、めっちゃ嬉しそうでしたから」

 

 

「…君は、優しいね」

 

 

そんなことはないですよ、と。お正月の時と同じ言葉を二人で繰り返す。

 

しかし、咲は彼のことを京ちゃん、とよんでいた。

 

だから、少しだけ。

 

優しい彼が、許してくれるだろうわがままを言いたくなった。

 

 

「京くん、って、呼んでもいいかな?」

 

 

彼は驚いた顔をする。いちいち顔に出るところが、歳相応という感じで、可愛かった。

 

 

「ええ、いいですよ。照さん」

 

 

じゃあ、帰りますね。そう言って、彼は帰っていった。

 

ただ、私の中には。彼の言葉が残っている。

 

 

嶺上開花を和了るたびに、私がなきそうだった、と。

 

 

そこまで付き合いのなかった、私の微妙な表情も理解してくれる。

 

やっぱり、君は優しい人なんだなと。

 

胸の中に燻る熱さを感じながら。

 

 

 

今日は、月が綺麗だな、と。空を見て、ふと、思った。




てか家が燃えるレベルの問題起こしてるのに麻雀を通じて話せる…!って思うとか頭のネジ何本か飛んで…おっと、誰か来たゾ。

つまりこの程度で仲直りさせるのが一番楽って思った(小声)

麻雀終了の後に~Fin~って付けたくなるレベルの打ち切りEND臭を感じた。



突然の次回予告

「幼なじみは岩手で生まれました。長野の宮永姉妹じゃあありません。
我が県のオリジナルです。
しばし遅れを取りましたが、今や巻き返しの時です。」

「可愛いのが好きですのだ」

「可愛いのがお好き?結構、ではますます気になりますよ。
可愛いでしょう?んあぁおっしゃらないで。
普段はダルダル。でも宮永姉妹なんて、いつもポンコツだし、魔王だわ迷子だわでろくな事はない。
身長もたっぷりありますよ。京太郎の身長でも大丈夫。どうぞ聞いてください、可愛い声でしょう?余裕の声だ、声優が違いますよ。」

「一番気に入ってるのは」

「なんです?」

「おもちですのだ」

「うゎあ何を…あぁ待って!ここで揉んじゃダメですよ!待て!やめろ!」

ウワァァァァ



なおドラローさんは出ません スマンな

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