転生して原作キャラと仲良くなりたい。@異世界から問題児がくるそうですよ?   作:冬月雪乃

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第9話

触れたら呪われそうな扉を回し蹴りで吹き飛ばして館に入る。

飛鳥に『はしたない』と怒られたが……触りたくないのだから仕方ない。

内装は、それはもうひどいものだった。

装飾品は見るも無残に砕かれ、床や壁、天井に至るまで無差別に大きな獣らしき爪痕が残る。

 

「ふむ。私達と戦うのがそんなに楽しみだったのだろうか。見たまえジン君。虎がはしゃいで駆け回った様に見えるね?」

「……可愛い」

「絵面は可愛らしいが中身はガルドだ」

「それを言わないで欲しかった」

 

耀のテンションを落ち着かせたところでガルドが居るらしい部屋に向かう。

 

「おぉガルド、理性を失うとは情けない」

 

--そこには、理性を失い、ただ自らの住処を守ろうとする虎の姿があった。

 

「耀。手筈通りに頼むよ」

「うん」

 

襲いかかる虎に黒鍵を投げつける。

鉄甲作用の乗ったそれは、ガルドに突き刺さらずとも吹き飛ばすくらいはしてくれる。

 

「・--黒鍵弾幕!」

 

私の手によって半ば強引に概念にまで押し上げられた黒鍵は分裂を起こし、弾幕となる。

全てに鉄甲作用の乗ったものだ。

ガルドは咆哮を上げ、その咆声によって黒鍵を叩き落とす。

なるほど、賢い手だね。

 

「耀!」

「おしまい」

 

だが、残念な事に私の役割は囮だ。

瞬間。

ガルドの姿がブレた。

耀の振り切った銀色の十字剣は空を切り、慌てて背後から急襲したガルドから身を守ろうと耀は右腕を盾にする。

 

「・--世界は一瞬で真逆となる!耀!飛鳥とジン君を連れて逃げたまえ!体制を整えて再び攻撃を仕掛け--ッァアアァ!!」

 

ガルドの巨大な爪が右腕を抉る。すごく痛い。

時間遡行カウンターが発動しない。

なぜだ……?いや、今は気にすることでは無い!

青ざめた耀に再び叫ぶ。

 

「足を止めるな思考を辞めるな!AHEAD AHEAD GO-AHEAD!ここは任せろガルドは、私が止めるッ!!」

 

ユグドラシルを展開し、抱きかかえるようにして全身で耀に襲いかかろうとするガルドを止める。

パワーアシスト全開。

右腕の損傷が激しい痛みを脳に叩きつけるが知ったことか。

いかに原作ではなんの問題も無かろうが、勝つことが運命付けられた主人公達だろうが知ったことじゃ無い。

 

--私の目の前で、私の友人を傷付けられるのは見たくないのでね。

 

背後、走り出す耀を尻目に、私は全力でスターライトブレイカーを放った。

ダメージなど無いに等しいだろう。

だが、それでもガルドの注意を引くことができる。

 

「ユグドラシル、我が親愛なる友人達は逃げたかね?」

『yes.建物内からの離脱を感知。黒ウサギと接触中です』

 

気まぐれに部屋で改造してユグドラシルに意思を表示する機能をつけて見た。

8th-G様様だ。

 

「ならば、私達も離脱するとしよう。……ぐ」

 

いい加減意識が朦朧とし始めた。

ユグドラシル、x-wiのダブルブースターで戦線から離脱する。

着地は背中から派手にいった。

 

「し、詩織さん!?」

「……うむ、黒ウサギかね。とりあえず戦線を立て直すぞ諸君」

「いいえ、その必要は無いわ七海さん。『あなたはそこで、ゆっくり休んでいなさい。』春日部さん。『七海さんに膝枕をしてそこで待っていなさい』」

 

飛鳥の威光には勝てなかったよ。

ともあれ。その後間も無くしてガルドは飛鳥に討ち取られ、飛鳥は銀の十字剣をギフトとして入手。

さらにそのあと十六夜がジン君を担ぎ上げての魔王討伐の演説、旗と名前の返還を行い、我々初の命を賭けたガチなギフトゲームは終わりを告げた。

……黒ウサギと耀、飛鳥にはこっぴどく怒られた。

十六夜は何も言わなかったが、実は心配してくれていたらしい。私が寝ている間に何回か様子を見に来てくれていた。

……可愛いね?

 


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