転生して原作キャラと仲良くなりたい。@異世界から問題児がくるそうですよ?   作:冬月雪乃

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第4話

「焦らずともレディ達は三十日間この箱庭で自由が約束されています。両者のコミュニティを充分視察した後に結論を--」

「結構よ。私はジン君のコミュニティで間に合ってるもの」

「私も結構だ」

「じゃあ私も。元々、箱庭には友達作りにきただけだもの」

「あら意外。なら私が友達一号に立候補してもいいかしら?」

 

驚いた様に耀は飛鳥を見て、声に嬉しさを織り交ぜて笑った。

 

「……うん。飛鳥は私の知る女の子達とちょっと違うから平気かも」

「なら、私も立候補させてもらおう」

「え?ごめん……」

「この後に及んで大逆転!ごめんなさいかね!?」

「冗談。これからよろしく」

「うむ」

 

三人で笑い合う。

面白くないのはガルドだ。

額に青筋を浮かべ、怒りを押し殺したような声を出した。

 

「失礼ですが、理由をお聞きしても?」

「春日部さんは友人を作りに来ただけなのだし、七海さんはどうか分からないけど、私は約束された将来も、裕福な家も、何もかも捨ててきたのよ。それを今更恵まれた環境を与えられても困るわ」

「ちなみに私には目的はない。--しかし、ガルド君。淑女に声をかける時は臭いに気をつけたまえよ」

 

特に濃密な怨嗟と血、死の臭いにはね。

 

「あぁ、貴方にはまだ訊きたいことがあるの。『貴方はそこに座って、余計なことは喋らず私の質問に答え続けなさい』」

 

ガキン、と無理矢理口を閉ざされ、座らされる。

なるほど、支配するギフト、威光。

その強制力は伊達ではない、と言うことか。

 

「貴方はこの地域を『両者合意』によるギフトゲームで勝利し支配していったと言ったわね。でもね、私はゲームのチップは様々だと聞いたわ。それをコミュニティそのものを賭けたゲームなんて早々あるものかしらね、ジン君?」

「やむを得ない状況なら稀に……」

「そうよね。そんなこと箱庭に来たばかりの私にだってわかるわ。だからこそ主催者権限を持つ魔王は恐れられている。それなのに、それを持たない貴方がどうしてそんな大勝負ばかり出来たのかしら。 『教えてくださる?』」

 

言いたくない、しかし強制力のある言葉に逆らうことは出来ず、苦渋の表情でガルドは口を開いた。

 

「き、強制させる方法はいくつかある。一番簡単なのは女子供をさらうことだ。だが、それでも応じない連中は周辺のコミュニティを従わせ、どうやってもゲームをせざるを得ない状況に追い詰めていく」

 

おや外道。

 

「それで? そんな手段で傘下に収めても彼等は従順に従ってくれるかしら?」

「各コミュニティから数人子供を人質に取ってある」

「子供はどこに幽閉してるのかしら?」

「もう殺した」

 

周囲のざわつきがすごくなる。

何人かは口に手を当てたり、拳を握り締めたりと、怒りと嫌悪感をあらわにしているのが見えた。

 

「初めて連れてきたガキは泣き喚くから殺した。次は自重しようかと思ったがやっぱり我慢できずに殺した。けど身内のコミュニティの子供を殺したとなれば組織に亀裂が生まれる。だから遺体は見つからないように腹心の部下に喰わせて」

「『黙れ』」

「中々の外道だね?ジン君」

「ここまでの外道は箱庭を探し回っても中々居ません」

「で、箱庭の法がこの虎男を裁くことは可能かね?」

 

ふふ、腕から虎の毛が生えているよ。

怒り心頭な様で何より。

 

「おそらく難しいでしょう。箱庭の外に逃げられては最後ですし」

「ふむ。それもそうだね」

「なら仕方ないわね」

 

パチン、とガルドの支配が解ける。

瞬間、虎男に化けたガルドが怒りの形相で飛鳥に襲いかかる。

 

「この小娘ェェェェ!!」

「・--地に這え、ガルド=ガスパー」

 

しかし、その拳か飛鳥に届く事はなく、ガルドは地面に叩きつけられた。

起き上がる事は無い。

というか、起き上がれない。

 

「いい感じに無様だね、虎男君」

 

尚も動こうとするガルドを耀が拘束する。

 

「喧嘩はダメ」

「テメェ……どういうつもりか知らねえが、俺の上にいるのが誰かわかってんのか! 箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!」

「なるほど。--素晴らしい。ならば魔王にこう伝えるといい。私、七海詩織は何時でも貴様の挑戦を待つ、とね。もちろん、私がゲームを用意しても構わないが」

 

挑発的な笑みを浮かべてガルドを見ると、割って入った人影があった。

飛鳥だ。

 

「はい、そこまでよ、七海さんに虎男さん。私としても貴方をこのまま解放するのは嫌よ。だから、ゲームをしましょう」

 


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