転生して原作キャラと仲良くなりたい。@異世界から問題児がくるそうですよ?   作:冬月雪乃

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第3話

黒ウサギのコミュニティに向かう途中、十六夜が一緒に世界の端に行かないか、と誘ってきたが断った。

 

「そうか……なら仕方ないな。んじゃ、行ってくるな!」

「いってらっしゃい」

 

派手な音を立てて十六夜が視界から消えるが、鼻歌交じりに行進する黒ウサギは気づかない。

 

「……伝えた方がいいと思うかね?」

「「めんどくさい」」

 

ではやめておこう。

 

「ジン坊っちゃーん! 新しい方を連れてきましたよー!」

 

新しい顔よ、みたいな言い方はやめていただきたい。

 

「あ、黒ウサギ!えっと、後ろの女性三人が……」

「はい!男性一人に女性……さん……に……ん……」

 

黒ウサギのかたくなる!

 

「十六夜なら全力で世界の果てに行ってQしてるが」

「世界の果てぇ!?ど、どうして止めてくれなかったんですか!」

「止めてくれるなよ、と言われたもの」

 

と飛鳥。

 

「どうして黒ウサギに知らせてくれなかったんですか!」

「黒ウサギには言うなよ、と言われたから」

 

と耀。

 

「う、嘘です! 絶対嘘です! 実は面倒臭かっただけでしょう!」

「「「うん」」」

 

息ピッタリ。

これから仲良くなれそうだね?

 

「……はあ……ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御三人様のご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

「わかった。黒ウサギはどうする?」

「問題児を捕まえに参ります。事のついでに――“箱庭の貴族”と謳われたこのウサギを馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります!」

 

キリッ!

と凛々しく立つと、黒ウサギがピンクに染まった。

一歩目から全力全開の大加速。

その勢いは風を呼び、私達のスカートや髪を嬲る。

瞬く間に見えなくなる黒ウサギを見て飛鳥が一言。

 

「へぇ、箱庭の兎は随分と速く跳べるのね」

「はい、ウサギ達は箱庭の創始者の眷属ですから」

 

それは理由になってないような気がするが。

 

「あ、僕はコミュニティのリーダーをしているジン=ラッセルです。齢十一になったばかりの若輩ですがよろしくお願いします。それで三人のお名前は?」

「私は久遠飛鳥よ。そこで猫を抱えている人と貫頭衣で無表情な女性が」

「春日部耀。よろしく」

「貫頭衣で無表情な七海詩織だ。尚、私は別にシスターとかではなく、仕方なくこれを着ているだけなので懺悔に来ないように」

「あら、そうなの」

「神は死んだ。私の好きな言葉だ」

「し、信仰心のカケラもないわね……」

 

あんなクソジジイに捧げる信仰はカケラもないのでね。

 

「と、とにかく、中に入りませんか?」

「ふむ。立ち話もなんだからね。そうするとしよう」

 

 

 

 

 

 

#

 

 

 

 

 

 

コミュニティ“六本傷”、その旗を掲げるカフェテラスで軽く昼食を食べることにした。

猫耳の店員に三毛猫含め、各々注文をして、それを待つ間、我々は親睦を深めることにした。

 

「ふむ、中々に不思議なものだね。あの天幕は透過するものなのだろうか。興味は尽きないね」

「見た目より好奇心旺盛なのね」

「これでも科学者もどきでね。そんな私としては、君のギフトとやらが中々に興味深い」

「……私?」

 

耀が驚いた様に私を見る。

ついでに猫も見る。

 

「見たところ、通常言語が通じない相手と意思を疎通出来るのだろう?」

「あら、それは素敵ね。春日部さん、本当?」

「う、うん。生きてるなら……多分なんでも」

「これは予想外だ。ジン君。箱庭にはそんなギフトを持つものがいっぱいいるのかね?」

「ぅえぇっ!?え、えっと、他種族と会話するのはかなり難しいですね。黒ウサギでも出来ない種もいるわけですから」

 

不意に、影が差した。

我々のついているテーブルに勝手に相席する事を決めたのか、音を立てて座り込む大男。

 

「おんやぁ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ〝名無しの権兵衛〟のリーダー、ジン君じゃないですか」

 

いきなりの敵意だった。

 

「ガルド=ガスパー……!」

 

憎々しげに大男を睨むジン君。

しかし、大男は涼しい顔で流すだけだ。

 

「ち、この名無しめ。聞けば新しい人材を呼び寄せたらしいじゃないか。コミュニティの誇りである名と旗印を奪われてもよくも未練がましくコミュニティを存続させるなどできたものだ--そうは思わないかい、お嬢様方」

「失礼だが、同席を求めるならばまず氏名を名乗ったのちに一言添えるのが礼儀ではないかね?紳士殿?」

「おっと失礼。私は箱庭上層に陣取るコミュニティ“六百六十六の獣”の傘下である“フォレス・ガロ”のコミュニティリーダー、ガルド=ガスパーです」

 

礼儀正しく腰を折って礼をするガルド。

 

「いいかしら?」

「ええ、もちろんですとも」

「事情はよくわからないけど、貴方達二人の仲が悪いことは承知したわ。それを踏まえたうえで質問したいのだけど--」

 

一拍。

 

「ねえ、ジン君。私達のコミュニティが置かれている状況……というものを説明していただける?」

「そ、それは……」

「レディ。よろしければ“フォレス・ガロ”のリーダーであるこの私が、コミュニティの重要性と小僧--いや、ジン=ラッセル率いる“ノーネーム”のコミュニティを客観的に説明させていただきますが」

 

……出しゃばりだね?

 

「……そうね。お願いするわ」

「承りました。ではまず--」

 

ガルドの話すコミュニティ“ノーネーム”の現状は酷いものだった。

 

一つ。信用と所属、誇りを示す旗と名前が無いこと。

一つ。かつては人類最強のコミュニティと呼ばれ、栄華を誇っていたこと。

一つ。しかし、そんなコミュニティは魔王と呼ばれる強制イベントの権化ともいえる絶対的権力を持つものに目を付けられ、一夜にして壊滅させられた事。

 

以上が、ガルドの話したコミュニティ“ノーネーム”の現状だった。

その上で彼は私たちにこう告げた。

 

「どうでしょう、お嬢様方。この様なコミュニティより、我が“フォレス・ガロ”に入りませんか?」

 


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