転生して原作キャラと仲良くなりたい。@異世界から問題児がくるそうですよ? 作:冬月雪乃
「やめて下さいいいぃ!」
いやぁああ!と叫びをあげて逃げ出すウサギを追ったのは意外にも耀で、その大人しそうな見た目からは想像も付かないアクティブな動きで時に地を駆け、時に木々を飛び回る。
三次元的な追跡……もとい狩猟だ。
ギャップ萌えだね?
ともあれ、ゼーハー言ってるものすごい疲れている黒ウサギが中々に可哀想なので、草の獣を呼び出して背中に乗っける。
「ひゃぁ!?な、なんですかこの……犬……?いえ、幻獣?」
「草の獣。植物が支配者となる世界に唯一生息する--色々端折って言えば、疲労を糧とする獣だ」
『おつかれ?おつかれ?』
耀が目を輝かせて草の獣を見ているので、彼女の足元にも呼び出す。
十六夜と飛鳥などは黒ウサギの背中に乗る草の獣を突ついたり観察している。
「あふぅうぅ……気持ちがいいのですよぉ……ありがとうございましゅしおりさん……」
蕩けた顔で私に感謝を述べる黒ウサギ。
十六夜がニヤニヤして見てる。
「有難く感謝されるが、その顔は女の子として色々まずいのでやめた方がいい」
もう疲労が少ないのか、獣はゆっくりとした動作で背中から降り、近くの湖に身投げした。
あ、と飛鳥が心配そうに声と手を伸ばすが、やすやすと泳ぐ獣に安心の視線を向ける。
「へぇ、疲労を熱として吸収してる訳だな。ちょうど、機械の排熱みたいに」
「おや、中々に鋭いね」
まさにその通りである。
「--あ、ありえない、ありえないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはこのような状況を言うに違いないのデス」
「いいからさっさと進めろ」
復活した開口一番がそれだった。
「うー、えへん、そうですね、それではいいですか、御四人様。定例文で言いますよ?ようこそ、“箱庭の世界”へ!我々は御四人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!御四人様は皆、普通の人間ではございません!皆様が持っていらっしゃるその特異な力は様々な修羅神仏、悪魔、精霊、星から受け賜った恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその恩恵を用いて勝負するゲームのことなのです。そしてこの“箱庭の世界”はギフト保持者が楽しく生活する為に作られた世界なのですよ!」
やっと自由に話せる!とテンションが上がりつつある黒ウサギ。
出来ることなら話の主導権も握ってしまいたいところ、と息を巻いているのが分かる。
「質問いいかしら?貴方の言う“我々”とは貴方を含めた誰かなの?」
「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにしたがって、数多の“コミュニティ”に必ず属してもらいます。今回でいえば、私達のコミュニティに ですね!」
「嫌だね」
「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者”から提示した商品をゲットできるというシンプルな構造になっております」
「……“主催者”ってだれ?」
「様々ですよ。人から修羅神仏、それこそ商店街の主人から神様まで、つまりゲームを行う意思を持つ物全てが“主催者”になることができます。またギフトゲームも種類がありまして、参加者が“主催者”に『挑戦』するものと、『参加』するのがあります。『挑戦』は凶悪かつ難解なものが多く、命の危険もあるでしょう。けれどその見返りも当然大きく、クリアできればそれ相応の商品を得る事ができます。また『参加』は賭ける物が必要となり、参加者が敗退すればそれら全てが“主催者”のコミュニティーに寄贈されるシステムとなっております」
「『参加』は結構俗物なのね……賭ける物には何を?」
「それも様々ですね。お金、土地、利権、名誉、人間、そしてもちろんギフトも賭けることが可能です。ただし、ギフトを賭けた戦いに敗北すれば当然、ご自身の才能も失われるのであしからず」
ふむ。
それは困るね。
「そう。なら最後にもう一つだけ質問させてもらっていいかしら?」
「どうぞどうぞ」
「ゲームはどうやったら始められるの?」
「コミュニティー同士のゲームを除けば、それぞれの期日以内に登録していただければOK!街に行けば小規模のゲームがたくさんやっておりますのでよかったら参加してみてくださいな」
「つまり、ゲームは箱庭の法に近いものがある、と?」
「ふふん?中々鋭いですね。しかしそれは八割方正解の二割間違いです。我々の世界でも強盗や
窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞な輩は悉く処罰します--が、しかし!『ギフトゲーム』の本質は全くの逆!一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることも可能だということですね」
なるほど、法は別としてあるが、ゲームの内容は全てに優先される、と。
「そう、中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし〝主催者″は全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます」
まぁ確かに、箱庭は遊びの場だ。
そんなところでゲームを開催して文句など、言いようがない。
「さて。皆さんの質問に全てを此処で話すとなるとものすごく時間が掛かります。全てに答えていては時間だけが過ぎてしまいます。ですからここから先は我がコミュニティーでお話を「待てよ」はい?」
十六夜のただならぬ雰囲気に、黒ウサギが真剣な顔で相対する。
「まだ俺が質問してないだろ」
「……どういった質問でしょうか? ルールですか?ゲームそのものですか?」
「そんなことはどうでもいい。心底どうでもいい。俺が聞きたいのは一つ」
十六夜から多大なプレッシャーが発せられる。
「------この世界は、面白いか?」
「--YES!『ギフトゲーム』は人を超えた者たちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保障します!」
黒ウサギは誰もが見惚れるような笑顔でそう言った。