転生して原作キャラと仲良くなりたい。@異世界から問題児がくるそうですよ? 作:冬月雪乃
さて。
無事に二つの秘宝を手に入れた私たちは黒ウサギ経由でルイオスに宣戦布告した。
“ペルセウス”前で集まった私達は宮殿を眺め、各々の役割を決めて行く。
陽動・露払い担当は飛鳥。
突撃は私。
後はルイオスに向かう。
私も余裕があればルイオスにも突撃する。
「さて、見事に誰も居ないね。飛鳥は少し派手にやりすぎでは無いだろうか」
がらんとした廊下を一人歩く。
近くの曲がり角に一人。
あとは少し先の部屋に一人か。
「・--文字は力となる」
呼び出したのは自動追尾捕捉の文字を刻んだ弾丸をセットした銃だ。
二発の発砲。
少しすると打撃音が響き、肉が床を打つ音が聞こえる。
「--おや」
「あら」
少し進み、違和感を感じたので全速力で伏せると頭上を弾丸が掠めて行った。
「危ない危ない。素晴らしい私の素晴らしい顔が吹き飛ぶところだった。どうしてくれよう。死刑。以上」
「……なかなかおかしな方ですのね……」
いつの間にか現れた女性は左右非対称のツインテールを揺らし、再び銃を構える。
「ふむ?時崎狂三?」
女性は前世の記憶が正しければデート・ア・ライブの精霊、時崎狂三と同一の容姿をしていた。
「わたくしの名前を知っている……なるほど、あなたもわたくしと同じイレギュラーですのね」
「どういう事か説明いただけるかね?」
「平たく言えば、成り代わり転生ですわ」
説明しつつも構えは解かない。
どうやらかなり警戒されているようだ。
成り代わり転生という事だが、時崎狂三としての性格口調その他はロールプレイと言った具合で良いのだろうか。
「ふむ。何を警戒しているのか知らないが、安心したまえ。同じ様な身の上だ。私達と共に来ないかね?」
「……やはり転生者ですのね。わたくしにはルイオスに拾われた恩もありますし、かつて『時と影の魔王』としてのプライドもあります。その話はお引き受けできませんわ」
「では力業で私の仲間にしよう」
思わぬところで思わぬ人が思わぬ背景とか諸々引っさげて現れた。
狂三はかなり好きな方に入る部類のキャラだ。
仲間にしたら日々がまた一つ芳醇になるだろう。
--というわけで。
「現在私達“ノーネーム”は“原作通りにペルセウス”を叩き潰しにゲームをしている。それが終わったら私は君にゲームを申し込みたい。何、難しいことではない。単なる名前当てゲームだよ」
炎龍八又の真の名を答えよ。というね。
「……原作知識どころか転生したという事実しか知らないわたくしには判断がつきませんが、つまり“ペルセウス”は潰れると」
「うむ。完膚無きまでにね」
ふむ。と狂三は考えるような動作をして、仕方ありませんわね。と呟くと、
「〈刻々帝〉〈八の弾〉」
自身の背後に時計型の天使〈刻々帝〉を召喚し、八の文字を銃に装填。
自身に向けて引き金を引いた。
「おや」
「それでは行って参りますわ『わたくし』」
「えぇ、いってらっしゃいませ、『わたくし』」
倒れたのは狂三だが、その場でちょっと狂気入った笑みを浮かべて立ってるのも狂三だ。
「確か、〈八の弾〉は過去の自分を召喚する能力だったか」
「御名答ですわ。『わたくし』をルイオスの助力に向かわせました。正史からは歪んでしまいますが」
「十六夜ならば問題あるまい」
そもそも、これから石化ビームでルイオス、アルゴール、十六夜、ジン、黒ウサギ以外は皆石となるのだ。
私もなる気は無いが。
「大した自信……いえ、信用ですわね」
「仲間を信じるのに理由は要らないだろう」
疑うのは非常に疲れるしね。
「ともあれ。どうかね。時崎君」
「狂三、とお呼びくださいな」
「では狂三と。あぁ、そうだ。君はルイオスに拾われたと言ったが、隷属しているということかね」
「えぇ。ある方にわたくしのゲームを完膚無きまでにクリアされ、隷属していたところを。夜な夜な交わりを求める困ったさんですわ」
「ふむ。すまないがそこをどいていただけるかね」
「ふふ。わたくし達に対応させておりますから本体であるわたくしには指一本触れていませんわよ」
「……ふむ。やはり殴る理由が増えたね」
まぁまぁ、と狂三が私をなだめ、仕方なくその場で足止めされる。
「さて。そろそろ真面目に戦いませんこと?」
遠く、破砕音が聞こえる。
どうやら十六夜達はルイオスにたどり着いたようだ。
しばらくすると、褐色の閃光が宮殿を襲い、全てを石化させようと侵食を始める。
「・--石化はしない。有効範囲、私と狂三」
「お優しいのですわね。でぇもぉ--それが仇になりましたわねぇ!きひっ!」
弾丸が私に飛来するが、残念。
私の右目から生まれたスターライトブレイカーが相殺。
「〈刻々帝〉〈一の弾〉」
「いきなり始めるのかね!?」
しまらない始まりで私と狂三の戦いは幕を開けた。