The Problem Hunter   作:男と女座

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アクション書くのって難しいですね…。

頭の中にはイメージがあるんですが、表現する難しさを改めて実感します。

では、本編をどうぞ!




第7話 雨に吼えれば

武器ジェネシス、防具はアグナ亜種と通常の装備にやっと戻れた。ガード性能・強化、砲術王を発動している、ガンランス用には調度良い装備だ。隣ではモンタナが夜叉シリーズに打刀・無名を装備に着替えながら、アイテムを確認している。

 

俺とクオン、そしてモンタナはジンオウガが目撃された渓流に向けて村を出発した。程無くして月を雲が隠し、打ち付ける様な雨が降り始めた。

 

 

「よし、ココからは別々に探索しよう。」

 

「うむ。小生は北から、お前さんは南から探してくれ。」

 

 

 

「雨が強いニャ…。」

 

「ああ。」

大雨によって草原地帯で雨水が川の様に流れている。

「クオン、足場に気をつけろよ。」

 

 

 

「ニャ…?」

 

森に入るとクオンは何かに気が付いた。それは俺もだ。

 

(何かが見ている…?ブルファンゴかもしれないな。)

 

いつでも武器を構えられるように俺達は森を進みだした。

 

 

ゾクゾクッ!

 

 

鋭い殺気がコチラに向けて放たれた。やはり何かがいる!

警戒しながら、ゆっくりと殺気の方向へ眼を向けると大きなジンオウガが茂みを踏み潰しながら堂々と現れた。背中には既に雷光中を集めていたのか、すでに黄緑色に輝いている。

 

 

「まさかとは思うが、俺を追って来たんじゃないだろうな?」

 

「でも大きさは同じくらいニャ!」

 

 

厄介な追っかけを作ってしまったもんだ。まだモンタナとは合流していない。少しでも時間と、怯ませる為にダメージを与えなくては。

俺は先手必勝!と、すぐさまジンオウガの前に走りこみジェネシスを抜き、顎下へ向けて挨拶代わりの砲撃を一発。このままの流れで前回のパターンに合わせようと、盾に隠れながら例の攻撃を待った。

早速そのタイミングは訪れた。右前脚の叩きつけを盾で受け止め、左前足の叩きつけにタイミングを合わせて、再び盾のアッパーカット。

 

 

ガチン!

 

 

前とは違った鈍い音がした。

不思議に思い思い見上げると驚いた。ジンオウガが俺の盾を噛み、口で受け止めていたのだ。ヤツが一瞬ニヤリと笑ったように見えた直後、何かを左脇に受けて俺は大きく吹っ飛んだ。

 

 

バシャァン!

 

「ぐっ…!?」

 

 

水の音から、どうやら川まで弾かれてしまったようだ。土臭い水と錆の味がする。

 

 

「オォォオオオオン!」

 

 

してやったとジンオウガは吠えながらゆっくりと近づいて来ている。まさかこうも簡単に対処されるとは、学習能力が高い様だ。

 

 

(落ち着いて考えている場合じゃあ無いな。)

 

 

立ち上がって周りを見ると、大量の雷光虫がジンオウガへ青い光を放ちながら飛んでいた。まずい!俺はジンオウガのチャージを阻止しようと走った。そして全身の力を込めたガンランスをヤツの胸に目掛けて突き出した。

 

 

「んなァ!?」

 

 

思わず声に出してしまった。雷光中集めながら後ろへ跳び、攻撃を回避したので見事な空振り。

 

 

「フェイントかよ!畜生!」

 

ズドォォン!

 

 

俺の空振りの隙に、雷光と共に超帯電状態のジンオウガへとなってしまった。その時、頭の中で警報が鳴り響いた。「クオン!」と離れるように叫び俺達は急いで距離を取った。後ろを見るとジンオウガは全身の力を溜め、一気に帯電した電撃を放つ。

 

 

「がッ!?」

「ニャァア!」

 

 

全身に電気が走った。

ジンオウガとの距離は少なくともローリング1回転分以上は離れていたはずなのに。俺とクオンは何が起こったか分からないまま倒れこんだ。そしてジンオウガは右前足で俺の身体を力強く押さえつけた。身体の痺れで抵抗出来ないと知り、徐々に力を加え始めた。

 

 

「手ん前ェ…!」

 

 

やはりヤツは笑っている。前にコケにされた仕返しと言わんばかりに対策まで講じて来た結果、今俺はヤツに狩られる。

 

 

「てこずっているようだな。」

 

 

モンタナの声と同時に、ジンオウガが素早い動きで俺の上から離れた。直後、刀身が俺の身体の上のギリギリをかすめて行った方に肝を冷やした…。

 

 

「フフフ。まさに無双の狩人…!」

 

「お前、殺す気か!でも助けてくれてありがとう!」

 

「落ち着け。

 このジンオウガ。他のと違い、戦い方を熟知しているようだな。」

 

「渓流の奥地の山のボスみたいだからな…。どうやら水を使って、電撃の範囲を広げたりしているよ。」

 

「面白い。ならばこの小生の友と師によって与えられし打刀。

 無名、改めツクヨミ!いざ―――――参るッ!」

 

 

モンタナは突撃した。俺は受けたダメージを回復するために水の無い場所へ上がり回復薬グレートを飲んだ。ここまであっさりとダメージを受けるとは、油断したとは言え情けない。

 

正面からモンタナは右脇腹へ転がりつつ切った。しかし思ったと通りにいかなかったのか「ええい、浅いか!」と不満を漏らした。ジンオウガのタックルを刀身で受け止めながら後へ跳びんだ。今度は飛び掛ってきたところへ攻撃を左へ避けつてツクヨミを振る。三日月のような太刀筋を描いたツクヨミは、左前脚の突出した爪を容易く斬り落した。

 

 

「ビル!来い!!」

 

 

ジンオウガがモンタナに気を取られている内に俺は背後に回り、背中に向けて竜撃砲の発射体勢になった。正面ではモンタナがツクヨミでジンオウガの右前脚を受ける。俺の攻撃が当たる様に援護してくれている。ありがたい!

 

 

「発射だ!」

 

ドガァァァン!!!

 

 

だが竜撃砲の攻撃にもジンオウガは怯まなかった。自慢の武器だっただけに少しショックではある。それでもモンタナは前脚を払い除け、胸元をクロスに切る。そして最後に雄雄しく叫びながら切り上げた。

 

 

「良いぞ、ツクヨミ。このまま小生に君の美しさを見せてくれ!」

 

「あ!不意に行くな!」

 

「斬ぃり捨てェェェェェェエエエ!御め―――」

 

 

勢い良く飛び掛ったモンタナをジンオウガは見逃さなかった。切り払った太刀に身を屈めて避け、電撃を纏った右前脚で薙ぎ払った。

 

 

「モンタナーーーーーッ!!!!」

 

 

俺はモンタナに駆け寄って、ダメージの具合を見るとモンタナの胴防具が引き裂かれていた。

 

 

「ご、ごめぇん…。油断、した…。」

 

「モンタナ。掴まれ!」

 

「俺はいい…。構わずやれ。」

 

「大丈夫だ。アイツはツクヨミの毒で苦しんでいる。」

 

 

コチラの動きに構わず、ジンオウガは身体を震わせながらジタバタともがいていた。たった数回の斬撃であの効果は恐ろしいのだが、その太刀を舐めたモンタナの方がよっぽど恐ろしい。今の内に俺達は洞窟の中へ一時退避した。

 

 

 

 

洞窟の中で思った。こうも最近運が悪いか。人助けに行けばイビルと戦い。トレジャーに出掛ければ厄介なジンオウガに今も付け狙われる。

 

 

「ご主人。来ますニャ。」

 

 

いや、今は余計なことを考えずに集中しよう。ヤツを倒さないと終わる。俺がやらねば!

 

 

「クオンは地中に潜ってな。モンタナは動くなよ。」

 

 

俺の後の洞窟出口でモンタナは治療しながら「すまねぇな。」と言った。むしろ、こんな厄介な事になったクエストを頼んだ俺が謝りたい。

ジンオウガはコチラを警戒しつつ洞窟に入り、ジリジリと近づいて来る。俺はガンランスの薬莢を取り出して匂いを嗅いだ。

 

 

(やはり良い香りだ。)

 

 

火薬の匂いは俺に勇気と興奮を与えてくれる。死ぬかもしれないと思うと、よりいっそうに興奮する。

 

 

「あぁ…、楽しいねェ…!来い!」

 

「オオォォォォォオン!」

 

 

ジンオウガは勢い良く突撃して来るのを、俺は盾で受け止めた。凄まじい衝撃が身体を突き抜け、意識が飛びそうになったが歯を食いしばって耐える。

 

 

「動きが止まったな!」

 

 

火薬をジンオウガの上へ撒き散らした。ヤツはそれに気づいて離れようと動いたが、今回は俺のほうが動きは早い。ガンランスを取り、砲撃の引き金を引いた。

 

 

ドッカァァァァアアン!

 

 

空中に散布した火薬が一斉に爆発した。トレジャーでもたまにやるが、火薬の量を間違えて遺跡ごと壊したことがある。そのためモンスターに与えるダメージは大きい、頑丈なジェネシスだから出来る芸当。

 

 

「ハハハ。いーーーーィい感じだ!熱と衝撃、芳醇な火薬の香りが洞窟全体へ伝わって行く。

 …君もそう思わないかな?」

 

 

黒煙の中からは、背中の逆立った電殻が崩れたジンオウガが現れた。どんな攻撃を受けたのか分からないと、硬直したままの姿は間抜けで面白い。

 

 

「随分とスッキリしたな?ハハハハハハ!」

 

 

俺の笑い声に、ジンオウガは完全にブチ切れて突撃してきた。再び盾でガードしようと身構えたが、怒りの攻撃は俺の身体を軽々と持ち上げ、洞窟の外まで吹っ飛ばされた。あまりの衝撃に意識が朦朧としたが、振りおろされる前脚に気づき、辛うじてガード。だが怒り狂うジンオウガの前足の猛攻で、次第に後ろへと追いやられ始めた。

 

 

「ご主人!危ないニャ!」

 

 

クオンの声と同時にジンオウガはその巨体で高く跳び、俺へボディプレス。重い一撃に後ろへ後退しながら耐えられたが、俺の足元が急になくなり落下した。いつの間にか崖際まで追い詰められていた。

 

 

「ク、クオン!前から情報は正確に伝えろって!」

 

 

いや、今はそんな事を言っている場合じゃない。なんとか左手で崖の淵を掴まえられたのは、運よくガードし続けていたおかげだった。

 

 

「オオオォォォォォオオオオン!」

 

「ちょっ、ちょっと待て。俺って今すごい取り込み中だぜ?這い上がるまでの時間ぐらい…!」

 

 

なんて待ってくれる訳無く、辺りに放電を始めた。頼りの左手の付近に落雷が降る度に「バカヤロウ!」「止めろォ!」「ごめんなさいっての!」「勘弁して!」など叫んだ。

雨水が電気を伝えて左手に何度も痺れが走る。自分でも情けない声を上げているのは分かるが、俺は待っていた。十分に楽しんだのか放電が止むと、足音が段々と近づき崖の上まで音が近づく。そしてジンオウガは俺を見下ろしながら左手を踏み、勝利を確信して笑った。

 

 

「笑うは良いが、今なら動かないだろ?

(コイツを待っていた!)」

 

 

放電の中で耐えながら竜撃砲の準備をし、ガンランスをジンオウガの顔へ向けて引き金を引いた。

 

 

ドガァァァァアン!!!!!

 

「オオォ!?グォォゥオウン!

 

不意打ちの竜撃砲を顔面に受けたジンオウガは、苦しげな声を上げた。そして顔を押さえて暴れて始め、最後は脚を踏み外して崖下へ落ちていった。

 

 

「…ふーーーぅ。」

 

「だ、大丈夫か、ビル?」

 

「ああ。…追って来ない、よな?」

 

「気配は無いニャ。」

 

 

俺は崖から上がり、座ったモンタナの隣に座り安堵の溜息をついた。身体は痛みと電撃で痺れるし、モンタナは防具が壊れてしまった。やっぱり最近、不運なのか?

 

 

「お前さんさ、気づいているか?」

 

「何がだよ。腹減った…。」

 

「お前さんの人助けクエスト。大抵は厄介事なんだぜ?」

 

「………あ。」

 

 

思い当たる事を言われた。やっと撃退して安心した直後に言うのか、それを。

 

 

 

早速村に戻り、俺達は村長へ報告を始めた。

 

 

「討伐にまでは至らなかったのですが、撃退には成功しました。」

 

「あらあら、そうでしたか。ジンオウガは賢いモンスター、手傷を負ったのなら村にまたすぐに近づく事はないでしょうね?」

 

「でしょうね。身を持って賢さは知りましたから。」

 

「ご苦労様でした。これは少ないですけど、防具の修理にでもお役立てくださいね。」

 

「感謝します。」

 

 

 

「モンタナ。防具はどうだ?」

 

「修理できるか様子見だそうだ。しばらくはユクモ村でゆっくりするさ。」

 

「それも良いな。」

 

「お前さん…、本当にあのジンオウガは大丈夫だと思うか?」

 

「もう来ないって信じたいね。」

 

「そうだな。」

 

 

空を見上げた。雨は止んだが、未だに暗雲が立ち込めていた。

 

 




…あ!!モンタナ君がそんなに活躍してない!ごめんね、モンタナ君。

やっぱジンオウガ良いな~
彼の良さをさらに表現出来るように精進しないとですね


ありがとうございました!


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