The Problem Hunter   作:男と女座

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今回は仲間との会話がメインになってます。
小説家になろう投稿時、結局サブタイトル考えるのに一番時間を費やしました思い出が懐かしいですね。費やした結果がコレってのが、捻ってなくて泣けてきます。




第6話 太刀に願いを…!

ビルと別れてから約一ヶ月。

小生に珍しく手紙が届いた。どうせギルドから『生態保護について』だ『正しいハンターの在り方』だのと、余計なお世話だ。だが届いたのは意外な者からだった。

 

 

 

ユクモ村。温泉好きの小生にはハンターを辞めた晩年を過ごすには理想的な村だ。朝風呂を堪能し刀を愛でる。昼食は自慢の刀と一緒に木の実や魚を堪能。夜は温泉と酒を堪能し、刀を愛でてから一緒に寝る。なんと素晴らしい生活になることだろうか。

 

 

「よぅ、モンタナ!相変わらずジジくさい事でも考えてんだろ?」

 

「へっ、うるせーやい。」

 

 

小生にユクモ村への移動許可証付きで、手紙を送りつけたビルが村の入口で立って待っていた。気になるのは手紙の内容。『謎の鉱物を発掘した。武器になるそうだから、お前に託すよ。』

 

 

「見せてみろよ、その武器を。」

 

 

 

 

 

ビルが借りた宿屋の部屋で、その武器を見せてもらった。それは武器になるのか不安になる、細長い鉱物だった。

 

 

「気持ちは分かる。けどコレはギルド注目の一品だぜ。素材はギルドが誇る知識陣ですら解析不能!

 約束通り、俺が貰ったから好きに加工して良いんだ。ここに呼び寄せたのも加工屋のジイさんの腕が最適だと思ったからだよ!お前の太刀技術を教えてくれたのも、そのジイさんだもんなァ!!?」

 

「落ち着け。」

 

 

コイツが多弁の時は大興奮している時。まぁ大発見が嬉しかったんだろう。説明を聞いている内に、小生もその武器に興味が湧いてきた。

 

 

「俺は一度ロックラックに行って来るから、部屋は好きに使ってくれ。武器が出来たら見せてくれよな。」

 

「ああ、良いだろう。」

 

「フフフ…。ギルドの連中、悔しがるぞー!」

 

「どんな喜び方だよ。」

 

 

考えてみれば、奴もギルドに腹を立てる思い出も幾つかあるみたいで、それなりの感情は持っているんだろう。

 

 

 

「おう、お前さんかい!前に修復した太刀・狩龍は問題ないか?」

 

 

狩龍とは昔に折られた龍刀【朧火】を残った部分を修復したものだ。いつかあの飛竜に復讐の刃を突き立てるために。ただ通常の太刀の半分程度なので特殊リーチ武器扱い(リーチ短)になってしまったが、気にはしない。

 

 

「ええ、問題なく。この前もリオレウス亜種にリオレイア、あとイャンガルルガの討伐を成功しました。」

 

「そうかそうか。」

 

「しかし、やはり角度、タイミング、速さがベストに当たらないと上手く斬れませんね。」

 

「おう。お前さんの使っている武器は通常のリーチが短い分、鋭利な斬撃が可能。だぁがソレは様々な条件をクリアして生まれらぁ。まぁそれが難しいから今主流の太刀は、大剣と同じ“切る”武器なんだがなぁ。

まぁワテの自論の“斬る”を実現出来たのはお前さんぐれぇだ。何かあったんなら、いつでも来い。」

 

「ありがとうございます。それで早速なのですが、コレを見てくれますか?」

 

 

小生がビルに渡された物を見せると、オヤジさんの顔つきが変わった。手に取ると日にかざしたり、叩いたりして観察し始めた。

 

 

「ギルドでも未知の成分らしいです。」

 

「…面白いなぁ。つまりコレで太刀を作り出すってつもりかぁ?」

 

「小生も手伝うので、お願いしたい。」

 

「よぉし、ちょっくら気合入れてやっかぁ!」

 

 

未知の素材を扱うことは思った以上に難航した。この素材はギルドが一通りに調べたところ、衝撃に強いので砕かれる心配は無いが非常に硬い。そのため小生達が刀の形状にするために削り出す作業だけでも丸1日を費やした。大体の形が出来上がったが元々の物が大きくないので、コレも特殊リーチ武器になりそうだ。

 

 

「こらぁ斬る武器に相応しいなぁ!見ろ!加工するに連れて刀身の色が変わってきたなぁ!」

 

「美しいですね!」

 

 

ここ数日の作業で加工屋のオヤジさんもこの素材に魅了されたのか、一心不乱に自慢のハンマーをふるっている。いや、それ以上に魅了されているのは小生だ。日に日に小生の物になってゆく刀には、いつも以上の愛しさを覚えた。

刀身を綺麗に研ぐ作業は、まさに至福の時間と言っても過言ではない。眼に映る鋭い輝きは、小生にどんなモノを与えてくれるか?

 

 

 

そして加工作業はぶっ続けで一週間に及んだ。

 

 

「お疲れさん。ワテも数日は休みにすっかなぁ。」

 

 

完成後、小生はビルの部屋に戻った。出来上がった刀を抱きながら深い眠りについた。

 

 

 

――――――――――――モンタナ君に変わってビル君――――――――――――

 

 

ようやくマイ・ガンランス、ジェネシスの整備が終了した。これで本来の探索に戻れると思うと嬉くてたまらない。

ユクモ村に帰ると、加工屋のジイさんに未知の素材を扱わせてくれたことに礼を言われた。俺としても誰かの役に立てたのなら本望だ。数日前にモンタナの武器が完成した事を聞いて宿屋に急いで戻った。

 

 

「よう、モンタナ。3日も前に完成したなら連絡よこせよ。」

 

「…ああ。綺麗だろ?」

 

「お、それが出来た太刀か。刀身…が黄緑色か?」

 

「…ああ。綺麗だろう?」

 

「月光って感じ?」

 

「…ああ。そうだな。」

 

「性能、いや属性は?」

 

「…ああ、毒属性だ。」

 

 

毒属性とは意外だ。こういった発掘系の武器は龍属性と相場が決まっているのだが…。

しかし、さっきから似た返答しか来ない。礼儀正しい奴なのだが、太刀を様々な角度から眺めたり、嗅いだり、舐めたり――毒属性なのにコイツ、正気か?――するだけで、こちらに眼もくれない。

 

 

「…………。

 お前さ、まさかそうやってずっと眺めたりしてたのか?」

 

「…ああ。起きてからな。」

 

「三日ぶっ続けで?」

 

「そういえば…今日は太陽を3回見たな…。」

 

「レベル違うとは思っていたが、これは想像を超える程レベルが違うや。」

 

 

今更ながら自分の仲間が変態猟団だって事を思い知らされる。いや俺は普通だ。火薬の香りに興奮する、火薬フェチくらいだ。刀馬鹿や、音色マニアと比べたらレベルは低い低い……はず。

いや今は自問自答している時じゃない。この病める友人を助けないと。いい加減、身体が持たないだろうし、もしかしたら試し斬り称して村人に襲い掛かるかもしれない。

 

 

「お疲れ、モンタナ。昼前(10時くらい)だが乾杯しようぜ!ほら、飲みな。」

 

「…ああ。感謝する。」

 

「はい、乾ぱーい!」

 

 

モンタナは俺が差し出した飲み物を一気に飲み干した。そして

 

 

ドシャッ!

 

 

倒れた。火薬調合のついでに作り出した回復?アイテム。

 

 

「うん。粉末にした眠魚は直ぐ効くなぁ。」

 

「ZZZzzz…!!」

 

「おやすみ、モンタナ。よい夢を。」

 

 

 

案外と効き目が強すぎたのか、それともモンタナが疲労困憊していたからなのか。昼を過ぎても起きてくる気配はなかった。仕方がないので俺とクオンは時間を潰すために渓流にてハチミツや薬草など、疲労回復に良い物を取りに出かけた。

 

そして夜、俺はユクモ村自慢の温泉に浸かっていると「盛りやがったな。」とモンタナが入ってきた。

 

 

「でも元気になったろ?」

 

「未だに口の中に味が残っているぞ。」

 

「眠魚は食べると苦いからな。」

 

「眠魚以外に何か入っていただろ?いや、むしろ材料を言えよ。」

 

「元気ドリンコをベースに漢方薬、ウチケシの実の粉、強走薬をふんだんに混ぜ合わせた汁だぜ。」

 

「せめてジュースって言え。汁はないだろ、汁は!体に悪そうだろ!」

 

「結果的に健康になったろ。疑わずに簡単に口にするからだ!」

 

「お前、本当に斬るぞ!?」

 

「ああ、そうだ。例の太刀、名前決めたのか?」

 

「あ?今のところ、打刀・無名(リーチ極短)だ。」

 

「名無しって意味じゃんか。」

 

「いやー、やっぱね、閃かないんだ。」

 

「じゃあ月光刀で。」

 

「断る。「この打刀スゴぉぉぉいよぉぉぉぉぉお!」って言わせる気だろ、どうせ。」

 

「月光で思い出した。渓流でジンオウガ討伐のクエストを村長から頼まれたんだ。お前もどうだ?」

 

「ほう。試し斬りには相応しいな。」

 

「だろう?」

 

 

正直、モンタナが来てくれるなら心強い。前回のジンオウガのせいで、奴は懲り懲りな気分ではある。俺達は温泉を出て村長のもとへと向かった。

 

 

「あらあら、夜遅くにごめんなさいね。村にジンオウガが近づいているって話が届いてね?」

 

「問題ありません。」

 

「よろしくお願いしますね。なんだか天気が雨になりそうですから、十分に気をつけてくださいね。」

 

 

確かに空を見上げると、雲が月をおおい始めてはいた。ジェネシスを防水に整備したので、雨の心配はない。だが雨の中の渓流での狩猟は経験が少ない。不安になりつつも、宿屋にてクエストの準備に取り掛かった。

 

 

「雨か。打刀・無名のお披露目には無粋な天気だな。」

 

「だからって困った村長の頼みを断れないだろ?」

 

「はいはい。見捨てられないんだろ。もう慣れたよ、お前さんのそんなところ。」

 

「すまないな、モンタナ。」

 

「なら打刀への加工料金、割勘にしてくれないか?」

 

「それとコレとは話が別。」

 

 

文句を言いながらも付き合ってくれる友に感謝しつつ、クエストへの不安を拭い切れぬまま俺達は渓流へと向かった。

 

 

 




次回に太刀の名前を発表します。こういったオリジナル武器などを出すのがトレジャーハンターのビル君の活躍場。

所々にモンタナ君のセリフが、ガンダ〇の誰かしらのセリフを言うのは、私とモンタナ君のモデルの趣味ですw


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