でも実際、モンタナ君や弥生さんと比べたらキャラの濃さが薄い気が…w
まぁ少しは制御できるキャラがいないとホントーにカオスな話になってしまうから
「それで結局、弥生は俺と同じくギルドの人に管理される事になったんだ。」
渓流のトレジャークエストの休憩中、俺はオトモアイルーのクオンに昔話を話していた。
「ニャ…。結局他のハンターさん達はどうなったんだニャ?」
「そうだなァ。
「俺はクックだぁ!」って叫びながら走り回る奴。音色に合わせて身体壊す程に激しく踊った奴。武器捨ててシェンに頭突きに行く奴。多種多様だった。中でも、たまたま居合わせた山菜じいさんが大タル爆弾G抱えて突撃したのは笑った笑った。」
「ご主人は大丈夫だったんかニャ?」
「ああ。弥生曰く、「音の方向性が同じ」ってな。
雷と龍属性やられ状態みたいにはなったが、力が異様に湧いて調子が良かった。けどギリーガンランスが犠牲になったよ。脚1つを粉々に突き砕いた。」
「ニャニャッ!?」
事件の原因ではあるが砦の防衛成功と、音色を聴いて少し経ったらシェンが去った事はギルドの評価、と言うより興味の対象になったのだろう。絶対に街中等で弾かない事を条件に、無罪になった。その直ぐ後に俺達へ来た行方不明者の捜索クエストでモンタナと出会い、奴も仲間入りとは…。人の縁は不思議な物だ。
渓流の中でも高い山々に囲まれた未踏のエリアを俺達は探索している。いつもの装備であるアグナコトル亜種の防具を身につけている。武器がお気に入りではないソルバイトバーストなのは、ロックラックでの武器整備が未だに終わってないからだ。こんなに待たされるなら支払いの金を減らしてくれようか…!
「ご主人!この先に川があるニャ!」
「ん?あぁ、わかった。昼飯にしようか。」
こんな時は小柄なアイルーが心底羨ましい。細い道をひょいひょいと走り抜けて行った。
「どうぞ、ご主人。木の実ニャ。」
「ありがとう。」
ご主人愛のクオンは気が利くので、狩猟よりトレジャーのサポートを頼む機会が多い。
「魚も焼けた、いただこう。」
未踏の地での食事は妙に美味い。
今回はギルド側からの依頼でトレジャーを行っている。時折こういった未踏のエリアの調査を頼まれる。調査内容は鉱物、希少な動植物の有無、どんなモンスターが存在するか等、十数項目ある。ギルド側からのサポートが一切無く、面倒な作業に加えて報酬金額が素材ツアーと同じなのだが、入手したアイテムは基本的に全て貰えるので不満はない。こういう類いの調査は本来、別の者が行うのかもしれないが、俺の腕が良いからと強気になっても損は無い筈だ。
「今日はどうするニャ?」
「このまま登って通称“渓流山頂部"で調査だ。絶対に何かある筈だ。」
「勘ですかニャ?」
「そ。トレジャーハンターとしての勘だ。」
相変わらず崖沿いの細い道を登る。落ちたら流石にケガをするだろうな。
登り終わると竹林が広がるエリアに入った。クオンが拾った採集物を教えてくれるので、それを逐一手帳にメモをして他のエリアの探索を始めた。
そして小一時間後。
俺は頭を抱えていた。
何も無かった訳ではない。鉱物も動植物も見つけ、アイテムポーチが一杯になる程の収穫はあった。換金すれば結構な金額にもなる。しかし
「歴史的ロマンが溢れる物が見つからない!」
未知のフィールドを探索することは魅力的だ。だが過去に取り残された秘宝とロマンも見つけてこそトレジャーと俺は思っている。
「あーあ。いっそ何かブッ壊すかな。何か見つかるかもしれないし、火薬が爆発した後の匂いって最高だし。」
「また怒られるニャ。」
「だよな~。後は…この岩壁を登るか。」
岩壁を登れば本当の山頂部である。高さは密林のベースキャンプにある崖程の高さだが、ツタは無いので上に行くには直で登るしかない。正直武器を持って登るのはしんどいが、このまま引き下がるのは悔しい。俺は不安げに見つめるクオンに「行く!」と答えた。
「何もなかったら、どうするニャ?」
「叫んで終わり。じゃアイテムを預けるから見張っていてくれ。」
「気をつけるニャ!」
流石に重いのでアイテムをクオンに預け、俺は登り始めた。ガンランスが重いが、案外と掴む場所が多いので休み休みに頂上部へ向かった。崖の上まであと少しの所で休んでいた時。
「ん?」
何かがキラリと日の光に反射する何かがあった。よく見ると岩に包まれる様に金属か何かが埋まっている。
「こいつはもしかすると!」
俺は急いで頂上に向かい、適当な岩にロープをくくり付けて先程の地点に下りた。
まず堅い岩をガンランスの薬莢から出した火薬で、中を傷つけない様に軽く発破する。そして崩れた岩の中からピッケルを使って丁寧に掘り出した。
「オォーーー!」
思わず感動の声を上げた。掘り出された“ソレ”は堅い鉱物の様な細長い物だった。しかし数多くのトレジャー品を見てきた俺には何かの武器に生まれ変わる物だと分かった。長さから見ると片手剣か、リーチが短めの太刀になりそうだ。
これなら満足して帰れる。俺は一旦上に昇り、ロープを回収しようとした。
ズダァン!
「うわぁぁぁあぁぁあぁああぁあ!!!?」
俺は何かに頂上から叩き落とされた。落下する時、崖下を覗くヤツの姿を見たが、直後、背中から地上に叩きつけられた。あまりの衝撃でマヌケにも「ぐへぇッ!」と声が漏れてしまった。
「ご主人!?何もなかったからって叫んでダイブは危ないニャ!」
「んな事言ってる場合か!上見ろ、上ーッ!!」
クオンが振り向くとヤツ、ジンオウガが崖の小さな足場を使ってコチラヘ向け、駆け下りていた。
「荷物持って先に行け、クオン!!」
ドガガガガン!!!!
ジンオウガの着地と同時にフルバーストを腹部に放つ。不意打ちの攻撃にはジンオウガでも怯んでくれた。多少の時間を稼がないと、あの大荷物を持ったクオンは逃げられないだろう。リロードだ!!
ポキン!
「………はい?」
本日2度目のマヌケな声が出た。何故か中折れの部分から先が落ちたのだ。
「オオオオォォォォンン!!」
「ちょっ、ちょっと待ってくれって!」
勿論ジンオウガは待ってくれるわけがない。右前足、左前足、また右前足の連続叩きつけを盾で受け止められたが、反撃が出来ない。最後の左前足の攻撃の時、俺はとっさに懐に潜り込み、力一杯に盾でジンオウガの下顎へアッパーカットを打ちつけた。
ゴンッ!
良い一撃が入った。ジンオウガの勢いが収まった隙に急いで背中の上へ駆け上がり、今度は頭へ向けて盾を振り下ろした。
ガィィィイイイン!
「痛ぅッ!」
硬い頭を殴ったシビレが左腕を襲ったが手応えは確か。証拠にジンオウガはめまいを起こしたのか、倒れこんだ。
俺はすぐさまクオンと合流のために走り出した。一度縄張りを荒らした相手をおいそれと逃がす程、コイツは甘くないだろう。アイテムや仲間の助けが無いにしろ、盾で殴り続けるのには無理がある。
「ご主人!」
「武器!武器が壊れた!」
「背中から落ちたのが原因じゃニャいのですか?」
しまった。確かに結構な勢いで落ちたが、こんな状況になるとは。しかし最近は武器の運がない。
めまいが治ったのか唸り声をあげ、木々をなぎ倒しながら向かって来るジンオウガの音が、遠くからでも聞こえる。
「クオン、お前さんに荷物を預ける。穴を掘って地中から行きな。」
「ニャ!?ご主人は?」
「上手く逃げるよ。大丈夫、武器が壊れているから倒そうとは思ってないよ。」
「ニャ…。ご主人は言い出したら止まらニャいから…。
分かったニャ。必ず帰って来てニャ!」
「当たり前だ。」
クオンは一度俺をじっと見つめ、決心したかの様に穴を掘って地中へと潜った。
「オオォオォン!」
「見つかったか!だがッ!」
俺は急ぎ林の中へ走った。林の中は坂で、岩や砂利にバランスを奪われそうになるのを堪えて走る。もし速度を落とそうものなら、後から猛追するジンオウガに簡単に追い付かれる。
「ハハハ…!」
そんな状況だというのに俺は笑ってしまった。最近は濃密なピンチばかりだからか、これが妙に笑える。面白いアイテムを発掘してテンションが変になっているようだ。
「おっと…!?」
林を抜けると崖に出た。流れ落ちる滝の音が辺りに響き、眼下には大量の水が流れる大河。この川がユクモ村付近の渓流へ流れているのかもしれない。
「グルルルルルル…」
「追い詰めたぞ!」と言いたいばりに、ジンオウガは先程とは違ってジリジリと近づいて来る。俺もジンオウガの眼を睨みながら後ろへ後退する。だがもう後ろには足場は無い。
「オオォォン」
「勝ったと思ったな?
じゃあな!」
俺は滝へ飛び込んだ。背中にヤツの爪が、かすった感覚を感じながら重力に身を任せる。ダイブは嫌いだが、このトレジャー稼業をやっていると嫌でも慣れてしまう。
「オオォオオォォォォォォォン!」
落下しながら滝の音に混じり、ジンオウガの悔しそうな咆哮が聞こえた。
武器失うのがビル君のお約束状態になってきましたねw 自重しましょう。
今回手に入れた武器は、次の話に復元します。