The Problem Hunter   作:男と女座

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基本的に1話短編です。が時折長かったり、前編・後編になったり色々です。


第3話 地獄の狩猟録

宿屋の部屋に戻って酒を飲み直し始めた。窓から外を眺めると丁度、飛行船が飛び立った。友の航空の無事を祈りつつ、この数年前の“あの日”まで書き続けていた日記帳を酔った勢いで捨てようと思う。

 

 

『モンタナの狩猟録

 

繁殖期 快晴

今回の依頼は密林地帯から行ける島でのリオレウスの討伐だ。島の村に近づく数体のリオレウスを何体か討伐し、牽制する、いつもの楽なクエストと思うと憂うつになる。まぁ精々ポイント稼ぎに利用させてもらおう。

島民は一時避難するらしく、島には俺だけとなる。数人は残ろうかと言ったが、邪魔になるだけなので断った。今日は食料と寝床を貰い、明日に備えるとしよう。俺の龍刀【朧火】も昂っているようだ。

 

 

快晴

絶好の狩り日和だった。リオレイアだったが1頭仕留めた。ギルドにレイアを与えた頃、日が暮れたので夕食の準備中に記す。

気がかりなのはレウスを見掛けなかった事だ。明日は島の中央の岩山へ向かおうと思う。ギルドには明日の回収や支援は不要と伝えよう。どうせ俺は敗けはしない。

 

 

晴れ

早朝に出発し、昼前に岩山の谷に到着。やや広い谷間でテントを作り、休憩を取っている。谷間の下には流れが急そうな川が見える。

山頂付近がレウス、レイアの生息域と聞いていたが、岩山に入っても姿が見えない。しかし何故、安全な岩山から生息域を移したのだろうか?

午後は遠くに聞こえる火竜の咆哮を頼りに探そう。

 

 

>この先は焼け焦げている…。』

 

 

 

思えば当時、小生は自惚れていた。だからこそ、こんな傷痕を作ってしまった。

暖炉の炎の中で燃える日記帳は、“あの日”の小生の様…。火竜の炎に焼かれて追い詰められてゆく小生。

 

 

「フフ…。傷痕が痛いな…。少し眠ろう。」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

日記を書き終えた俺は、ふと異変に気づいた。リオソウルU装備を着て、武器を持ちキャンプを出て辺りを見渡す。先程まで聞こえていた咆哮や鳥の鳴き声すら止み、辺りは静寂に包まれていた。

 

 

ブワァッ!

 

 

突然、辺りが急に黒い煙の様な物でおおわれた。

 

 

(何だ!?霧ではない!火事…?)

 

 

必死に落ち着こうと考えを振り絞る。だが俺は考えれば考える程、訳が分からなくなった。

ゾクリ!と嫌な悪寒が身体を走り、予感した方向へ身体を向ける。

 

 

(――――!?)

 

目の前には鋭い三爪があった。

 

「いや、迫っている!振り下ろされている!避けろ!死ぬぞ!」と身体中に危険信号が駆け巡る。俺は太刀を大剣の様に防ぐ体勢をとり、後ろへ跳んだ。

 

 

バキッ!

 

 

何かを砕く音と共に視界が更に暗くなった。何だ…?

 

 

「ぁあぁあぁあァァァア!」

 

 

一瞬の安堵が死よりも辛い激痛に変る。

顔が焼ける様に痛い。手探りで回復薬を取ろうとするが、身体段々とが痺れ始めて倒れてしまった。

 

 

ドカン!ドカン!

 

 

上空から飛竜の火球が、爆音と熱が近くで何度も起こる。

(死にたくない…!死にたくない…!死にたくない…!)

痺れる身体を引きずりながら、俺はその場から離れようとした。

そして

 

 

「うわぁあぁあぁ!!!?」

 

 

崖から落ちた。

 

 

 

 

 

 

…どれ程流されたのだろうか?

俺は流れが穏やかな川岸に流れ着いていた。

 

虚ろな意識の中で、腕を動かして回復薬グレートを飲んだ。身体の痺れは無くなっていた。

 

はっきりとは言えないが青空が見える。奇蹟的に目まではヤられていない。

 

頭を触ると防具がない。もし頭防具が無ければ、即死だったのだろう。

 

顔を触ると大きな傷が三本、額から頬へ向けて伸びていた。

 

 

(武器…。武器は…?)

 

 

指先を頼りに辺りを探すと、足元に武器が落ちていた。すぐの救援は期待出来ない。今は残された物が頼りだ。

痛みと中、身体を起き上がらせて武器を見た。

 

 

「…な…!?」

 

 

思わず絶望から声を漏らした。

頼りの龍刀【朧火】は折れて、刃の半分より先が失われていた。

 

 

「すまん…。すまん…!」

 

 

惨めだった。傲りが招いた結果敗北し、大切な武器を喪失し、今や島のどこか分からぬ所で救援を期待し始めていた自分が。

 

 

ドカン!

 

 

爆音と共に粉々の岩が降る中で振り返る。舞い上がった煙の向こうにリオレイアがいた。俺が立ち上がろうとした時、俺の周りが暗くなり上空からも火球が降り注いだ。

 

 

「ぐっ…!うぅう!」

 

 

ふらふらと歩き直撃は避けた。上空にもリオレウスが数匹も飛行し、俺へ向けて火球を飛ばした。

 

 

ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!ドカン!

 

 

熱と衝撃の渦が何度俺を襲っただろうか。揺さぶられ、川へ追い詰められてゆく俺の心の中で、何かが生まれ始めた。

 

 

「………貴様らが!貴様らも!!」

 

 

折れた武器を取り、怒りの感情のまま上空のレウスを睨んだ。俺の視線に応える様に、1体が俺へ滑空する。

 

 

「殺す!殺してやる!俺が…小生が!

来いやァァァア!」

 

 

レウスの鉤爪が俺に降る。それを紙一重に避け、翼の付け根へ太刀を振るう。

 

 

「グォオォォゥ!」

 

 

バランスを失ったレウスが墜落し、苦しそうに唸る。俺はレウスの足、翼、腹、顔へ太刀を何度も振るった。一撃一撃が気持ち良い様に決まる度に、レウスは苦しみの声を上げた。

そして俺は

 

 

「死ねェェェェええッ!」

 

 

首を斬り落とした。

 

 

「…フフフフフフ」

 

―――――――誰かが笑っていた。

 

 

レイアは俺へ怒りの咆哮を上げ、地面を強く鳴らし突進して来た。俺はレイアの突進を避ける様に足元へ転がり、通り抜けざまに足首を切った。倒れてジタバタともがくレイアは、レウスと同じ末路を辿った。

上空でレウス達が咆哮を再び上げる。それに応えるようにレウス、レイアの群れが集まって来る気配を感じる。

 

 

「来いよ!殺してやる!何度でも!!全て!」

 

「グォオォォゥン!」

 

「フハハハハハハハハハ!」

 

 

誰かの笑い声がやはりあった。

その狂気じみたおぞましい笑い声が、自分から発していたと気づいた頃、すでに島の火竜の命は全て消えていた。

 

 

 

 

 

「スゲーな。ハハ、全滅か。」

 

「ビル。この男が行方不明のハンターよ。」

 

「おい、生きてるか?」

 

「………ああ。」

 

そして小生はビル達と出会った。

 

 

 




今回登場した謎のモンスターの討伐。これがモンタナ君の最終目的です。ゲームだったら倒したらEDでしょうね。

次回は3人の内の最後の仲間の登場です。

ありがとうございました!

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