The Problem Hunter   作:男と女座

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だいぶ間が空いてしまってすみません。

今回、新キャラ登場。そして久々のフリューゲル君の活躍?です


第25話 Hunter Never Cry

今日は本当に大変だった。相変わらず寿命が縮まる思いをしたが、「胃に穴が空かないなら案外とタフだ。」とモンタナから言われた事があった。

 

でも聞いてもらいたい。僕、フリューゲルが体験した出来事を。

 

 

 

 

 

僕の朝はいつもと同じ。少し立派なギルドの寄宿舎で目を覚まし、召し使いアイルーが用意してくれた朝食をいただく。

ギルド職員の建物へ向かう途中、新聞と今日発売の雑誌数冊を購入して行く。新聞は仕事を始める前に、雑誌は昼休みに読むのが日課である。

 

 

 

 

ざわざわ…

 

広場から見ると、ギルドの建物で調査棟が賑わっていた。

ああ、この前に新大陸からモンスターの輸送船が何体か持って来たモンスターを披露しているからか。ビル達には依頼していなかったが、現在でも新大陸のモンスターが旧大陸の村やエリアに発見された情報が届いている。なのでコチラでも対策を強化しようと研究を始めると会議で決まったのを思い出した。

 

 

思うに…僕はギルド職に就いてはいるが、ハンターとしての技術や能力は皆無で向いていないと言ってもいい。それに何よりモンスターの血や剥ぎ取りが苦手なのが最大の理由。気分が悪くなってしまうのだ。

うん、やはり得手不得手がある。無理はいかんね、無理は。

今は安定した始末書ライ…いやいや!ギルド職員ライフを楽しんでいる。今日も自室で気ままに過ごさせてもらおう。

 

 

 

「ん?」

 

 

不思議な事に僕の部屋の鍵は開いていた。時々忘れるが昨夜は…どうだっただろうか。

 

 

ガチャ

 

「おはよう、フリューゲル。」

 

「弥生?どうして?」

意外な事に気まぐれな弥生が僕の部屋のソファー──昨日部屋に入れた新品なのに…──に寝転がり、持ち主以上にくつろいでいた。

「あ、アレ…鍵は?」

 

「話すと長いがな…」

腕で目を隠し、とても眠そうな声で説明を始めた。

「朝、外を歩いていたら窓が開いていな。見たらお前の部屋だ。そこで親切な私はオトモのマーチに頼んで入って鍵を開けてもらい、中で待っていたわけだ。」

 

「そ、それはありがとう。」

 

 

窓を締め忘れていたなんて。次回からは気をつけなければ。しかし良い匂いだ。この匂いの正体は向こうから来てくれた。

 

 

「コーヒーですニャ。どうぞ。」

 

「あ、ありがとう。」

 

「弥生殿。眠気覚ましニャ。」

 

 

弥生はマーチが用意したお茶を「サンキュー。」と貰ってくつろいでいる。僕も飲みつつ、新聞と雑誌を置いて席に着いた。

 

 

「あー、苦い。コーヒーなんて好き好んで飲めないわ。」

 

「(じゃあ何で淹れたんだろう…?)

でも珍しいね。君が街に度々訪れるなんて。」

 

「モンスターか、私は。」

 

「ニャ…。実はボクの鞄に穴が空いていて特製燻製が無くなってたんだニャ…。」

 

「…我慢さする訳にはいかないだろう?」

 

「成程。」

 

 

意外とオトモには過保護らしい。まぁ失礼かもしれないが、僕やビル、モンタナに献身的な行動は全く想像できない。恐らく僕が知る限りでは最も唯我独尊のハンター。

 

 

「オイ。それをくれるか?」

 

「え?新聞?」

 

「な訳あるか。興味無い。 雑誌の方だ。」

 

「ああ、はい。」

 

 

僕は弥生に雑誌4冊を投げ渡すと物色し、好み以外の2冊投げ返した。

 

 

「情報誌はいらん。」

 

「えぇー?それってゴシップ誌だよ?」

 

「突拍子もない情報の方が面白いものよ。そもそもゴシップが嫌いなら買うな。」

 

「そりゃクロスワードが面白いから。」

 

「くだらないわね。」

 

 

毎回の事ながらも弥生のセリフは厳しい。が長い付き合いともなると、それも慣れてしまった。決してマゾとかそういう意味では無いので。

今弥生が読んでいる雑誌のトップは『現れた新大陸モンスター』だった。やはりどこでも話題に上がっている。とは言っても―――

 

 

「とは言っても『地下を潜って現れる』、『泳いで渡る』なんて笑いの種にもならないわ。」

 

「あー、そう思うよねー。」

 

「現場を知らない記者って良いわよね~。イビルジョーなら可能かもしれないけどね。」

 

「えっ、そうなの?」

 

「島伝いに移動はする。泳いで来たり、地中を進んで来たりとかね。」

 

 

イビルジョーの生きている所は見た事がない。だが、そんなモンスターに襲われるのは勘弁だ。多分失神するのが関の山だ。

 

 

カー…ン カー…ン カー…ン

 

 

遠くから鐘の音が聞こえる。この鐘の音、ここの建物の屋上に設置された職員に連絡を告げる物である。確か今日は…

 

 

ガタッ!

 

 

しまった。今日は会議があるんだった。急がないと……とは言っても資料は有るし、どうせ居てもそんなに意味は無い。別に悲しくともないさ、別に…。

 

 

「用事か?」

 

「うん。定例会があるんだ。部屋の鍵を渡しておくから、出る時は鍵をかけて入口の受付の人に渡しておいて。」

 

「ふーーーーーーーーーーーーん。」

 

「え?な、何だよ、その笑いは。」

 

「気にするな。」

 

 

 

 

 

「では定例会を始める。」

 

 

円形の神殿のような造りの大長老の部屋。そこで大長老を囲む様に大勢のギルド職員、中には数名のハンターも来ている。基本的に権威がある者が前に座り、順々に並んでいる。ちなみに僕は最後列。何とも思ってはいない…さ。

 

 

「おい。他ヤツ等が邪魔で見えんぞ。」

 

 

…気まぐれにも程があるが、何故か弥生が一緒に来ている。開始1分も経っていないが帰りたい。絶対何か起こる。むしろ起こらなかったらこの話にならないって。たかが数行で『定例会は大変だった。』ってなる程度んだから。

 

 

「ウォッホン!まず新大陸より帰ってきたイオリを迎えよう。」

 

 

大長老が手を指すと階段から初老で痩せたギルドナイト、イオリが赤い専用の服装を身にまとい上がって来た。そんな彼を温かく迎えるように拍手が巻き起こり、最前列に座る前に一礼をした。僕の横から禍々しい気配が高まるのを感じる。ゆっくりと視線を移すと弥生が刺す様な視線を向けていた。

 

 

「…アイツか。」

 

「や、弥生?頼むから騒ぎは止めてくれよ?ホントに。」

 

「……フン。」

 

 

弥生が不機嫌になるのも分かる。アレは何度か僕の活動や、ビル達のハンターライセンスを没収しようとした事が何度かある。どうせ今も虎視眈々と狙っているかもしれない。そしてビル達に制約を考えたのもアレ。皆のギルドナイト嫌いの原因と言ってもいい。真面目な御方だ、ホント、嫌になる位に。名前を心の中で言いたくない程に。

 

 

「さて………、では予算の案から始めようかの。」

 

 

「おい。いつもこんな話し合いなのか?」

 

「うん。予算案の検討、市場・アイテム管理、モンスターの発見エリア報告、密猟者対策、未開拓地への派遣検討、その他いろいろ。」

 

「…………。」

 

 

露骨に「来るんじゃなかった。」と言う様な顔をした。実際、給料を貰っている立場ではあるが、本音を言えば毎回こんな事をやるのもどうかと思える。とは言ってもサボる程の度胸も余裕も無い僕には、これ仕事の一環として我慢するしかない。周りを見ても最後列の者は眠そうな目を擦ったり、別の書類を見たりと似た者同士が揃っている。

 

 

「…作曲でもするか。紙もらうぞ。」

 

 

僕は素直に弥生にメモ帳を渡した。機嫌をさらに悪くして何かされるより余程良いし、僕の不安も杞憂に終わってくれる。

 

 

 

 

 

定例会も終盤。昼が近づき頭の中は昼食の事で支配され始めた。今日は寒い。久しぶりに鍋も良いしカレーも捨てがたい。ポポの肉が美味い季節。何にせよ、早く終らないかな。

 

 

「では腹も減ったし、そろそろ切り上げようかの。」

 

 

大長老の言葉で会場に笑い、そして終了への解放感から和やかなムードになり、やっと長く続いた定例会が終りを告げようとしていた。

 

 

「1つよろしいでしょうか?」

 

 

イオリが手を上げて立ち上がった。大長老は「どうぞ。」と頷くとイオリは立ち上がり、声を高らかに話し始めた。

 

 

「今回新大陸のモンスター数匹の輸送は大変困難を極めました。しかしそれは私だけの力ではありません。ハンターズギルドの為に働く部下、いえ仲間達のおかげです。」

 

 

はいはい。僕も始末書とか無ければ、いつでもそう思っていますよ。

 

 

「しかし長旅から帰還し、留守の間の報告を聞いて愕然としました。新種のモンスターが砂漠に現れて撃破、されたとか?」

 

 

物凄く嫌な予感がしてきた。

 

 

「どう思いますかな?皆さん。この発見は新たなモンスターの生態や発見への可能性の種だったのでは?」

 

 

舞台の演劇役者の様に大袈裟に手を振り上げながら回り、全員の顔を見回した。そしてゆっくりと振り向きながら叫ぶ。

 

 

「どう思いますかな?フリューゲル殿。」

 

 

ほぅら、やっぱり来たよ。

先程の説明に付け加えるなら、あの人は──僕から見れば病的に──ハンターズギルドへの貢献を考えている。モンスターの長距離運搬という危険な作業にも率先して行動し、優秀な部下であるハンターを何人も持っている。いわゆる準ギルドナイトと言った所だろうか?口癖は「我らギルドの為に。」。…何と言うか、柔らかく言うとヘドが出る。それは僕とあの人との考えが違うから致し方ない。

 

 

「現場の判断に任せた限りですよ。」

 

「現場の?君のご自慢の部下ですかな?」

 

「そうですよ。報告書にも書いてありましたけど読みました?全員の名前や協力者の事も充二分に細かく書いたつもりなんですけど…?」

 

 

一応ビル、モンタナ、弥生、そして協力者であるルーナについて事細かく聞いて折角書いたのに、読んでくれなかったのだろうか。まぁ忙しそうだからね。横で弥生が「言うね~。」とか言っているが何か変な事を言ったか?

 

 

「………。」

 

 

不思議な事に睨まれた。まぁ僕もあの人は嫌いなので気にはしない。ここで終わってくれればいいのだが、まだ言い足りないらしい。

 

 

「私が言いたいのは…捕獲する様に言わなかったのですか。貴重な一体だったのかもしれないのですよ?それを無闇に殺すとは……ふぅ。

ハンターとしての底が知れますな?相変わらず。」

 

 

これが嫌いな理由だ。意にそぐわない者は何とも思っていない発言。この人はギルドの為に―――と言えば聞こえは良いが―――組織を優先する。僕だけならまだしもビル達をバカにするのは許さない。こうなったら勇気と減給覚悟で―――――!

 

 

「ハハハハハ!

こんな些細な事でネチネチ言いやがるお前のほうこそ底が知れるぞ?」

 

「おや、こんな所に現れるとは。随分と珍しいですね?弥生。」

 

(ええええぇぇぇぇぇ!弥生がまさかのご乱入ー!?)

 

 

僕に構わず―――いや今まで僕を構ってくれた事なんて数える程しかないけど(むしろ無い)―――弥生はガンガン前に進み、イオリの前にドン!と腕を組んでの仁王立ち。イオリは身長が高く、弥生とは頭一つ分の差があるのに堂々と出来る彼女が羨ましい。なんと言うか、さっきまでの気合が空回りして冷めた僕は、彼女の行動について睨んでくる他の職員の目を見返す事すら出来ない…。

 

 

「フン。もしかしたら上司がいじめられると思ってな? 楽しませてもらったさ。」

 

「それはそれは。だが今は引いてもらおうか?君はここに相応しくない。」

 

 

相変わらずの丁寧な悪意ある物言いに、弥生は「ハッ!」と馬鹿にする様に笑いイオリを睨み上げた。まさかとは思うけれども殴ったりしないよね?この前、ビルが勲章を叩き返した事件もネチネチ言われたばっかりなのに。

 

 

「ずいぶんと偉そうな物言いだ。ギルドの連中ってのは皆こうなのか?フリューゲル。」

 

(連中って言うのやめてー!会場の皆さんにまでケンカ売らないでーーーー!)

 

「口が悪いのもそうだ。アナタは、いやアナタ達はハンターに相応しくない。」

 

「ハンターらしさ、ねぇ…。ハンターなんて結局は自分を弾き鳴らして、敵と己の純粋な闘志と魂を奏であうだけ。それ故に純粋で良い。」

 

(…いや弥生。その表現に共感するの君と僕らだけだと思うんだけれども。)

 

 

僕の予想通り、周りを見渡すと弥生と僕以外の全員がポカンとした表情をしていた。時折ビル達が言っていたけれど、弥生はビル達も音楽を奏でる楽器の1つとでも捉えているのかも知れない。まぁそれでも仲間の仲が良いなら問題ないけど。

 

 

「さ、話は終わりにして良いか?良いよな。退屈だし、腹も減った。それにギルドナイトは私も好かん。」

 

 

弥生は振り返り、僕の前に戻った。そして「帰るぞ、フリューゲル。」と一言だけ言い、また堂々と歩いて出て行った。静まり返った会場に居づらい僕は弥生の部下・執事の様に出て行った。

 

 

 

 

「あ~も~!どうしよう!!」

 

 

自室に戻って椅子に座り、頭を抱えて悩む僕をよそに弥生は出前で頼んだ『こんがり肉G御膳 松セット』を美味しく食べている。機嫌が良いのか鼻歌までしている。

 

 

「泣くなよ。ハンターは泣かないものだ。Hunter Never Cry~♪、ってか?」

 

「……下手したら僕達路頭に迷うんだよ?」

 

「そんな権限まであるか、あの馬鹿に。」

 

「あるよ。アレは貴族のボンボンのご子息で、ギルドに多額の援助をしているらしい。」

 

「ほう。でギルドを自分の物とでも思っているのかしらね?」

 

「…そう思っているかも。上にも顔が利くみたいだから、ホント下手したら…。」

 

「その時は…バンドでも組もうかしら?」

 

「バ、バンド?」

 

「ギターまたはボーカル、私。ベースまたはボーカルがビル。お前にはドラムでもやってもらいましょうか。」

 

「え?あれ?モンタナは?」

 

「……………剣舞のパフォーマー?」

 

「アッハッハハハハ!それは良いかも!飛龍を模した岩とか斬ってもらおう。」

 

「随分とお気楽なものですねぇ?」

 

 

いつのまにか…イオリがドアを開けて立っていた。そして「何度もノックしたのですがねぇ。」と頭を下げ、僕は「何の用ですか?」と素っ気なく言うと嫌な笑い方をして答えた。

 

 

「私は貴方達を認めない。」

 

「わざわざ言いに来るなんて、暇ね。」

 

「…弥生、お前に聞きたい。なぜハンターをする?」

 

「自分の為にさ。―――ああ、ビルは人の為と言うだろうがな。」

 

 

弥生の問いを聞くと、フッ…と笑うかのように肩をすくめて「そうですか。つくづく不必要だ。」と笑った。

 

 

「ああ、そうだ。

 これから先、どんなクエスト成功困難な依頼が来ても、フリューゲルは部下を送るのかな?」

 

「勿論。僕の大切な部下が必要とあらば。それが僕の、僕達の役目でもありますからね。」

 

「死ぬと分かっても、かね?」

 

「死にませんよ。そう信じています。」

 

「…それは楽しみだ。期待しましょう?その哀れなビルの様な結末を迎えてくれる日をね。」

 

「今…何て言った!?」

 

 

弥生が強面で詰め寄ると、また憎たらしく「おやおや、新聞も読まないのですか?」と僕の机の上にある新聞を手に取り、広げて見せた。

 

 

『ユクモ村を襲った悲劇。ジンオウガ変異種にハンター数名が死亡。

 (中略)

 ダンジアの港にて調査の依頼を受けたハンター、ビル、モンタナがこれと遭遇。狩猟に成功するも、ビルは利き腕を折る等の全治数ヶ月の重傷である。』

 

「ビル…!」

 

 

珍しく弥生は動揺している。勿論、僕だってそうだ。多少の負傷はあっても、ここまで追い詰められたなんて事は今までになかったから。

 

 

「フリューゲル。ギルドに手紙か何かは届いていないのか!?」

 

「聞いていない…。」

 

「でしょうね。その報告書は私が持っているのですから。」

 

「ッ!」

 

 

ヒラヒラと見せびらかしながら封筒を取り出した。その封筒を舌打ちと共に引っ手繰り、乱雑に破り中の手紙を確認し始めた。僕も椅子から立ち上がり、手紙を読む弥生の横に立って読む。

 

 

『ビルは討伐から3日後に目覚めた。毒薬により体力の消耗もあるが、利き腕の骨折、打撲数ヵ所と2死しただけのダメージは容易く回復しないだろう。これから療養にビルはポッケ村に帰るので、護衛として同行する。この手紙が届く数日後にナイアスの港町に着くだろう。 ―――モンタナ。』

 

「フフフフフフ…。」

 

「何が可笑しい!?イオリ!」

 

「笑わずにはいられないではありませんか?貴方の大切な部下も期待外れだ!」

 

「…貴様…!」

 

「やめてくれ、弥生。」

ギターを頭にでも叩きつけようとでもする弥生をなだめ、僕は弥生とイオリの間に割り込んで正面に立った。

「他に用も無いのなら引き取ってもらう。僕はこれから部下、いいや仲間を迎えに行かねばならない。」

 

「随分と暇なのですな?」

 

「…お陰様で。

 弥生、準備を。」

 

「―――チッ!」

 

 

ムシャクシャするのは僕も一緒だよ、弥生。けれども今はコイツに構っている場合ではない、と遠出の為に準備を始めた。

 

 

「まだ要件は終わっていませんよ?」

 

「何ですか!?」

 

「ギルドからの依頼です。」

 

「え!?」

 

「“新大陸 水没林より奥。新たな狩場として検討している、通称ジャングルのトレジャーを依頼する。”です。コレが書類です。」

 

「ふざけた事を言うわね…。ビルは全治数ヶ月だと通知されただろう?」

 

「フン、全治数ヶ月だろうが数十年だろうが知った事か。依頼をする為に存在がギリギリ赦されている貴様らが!ギルド直々の依頼が出来ねぇえと言うなら、とっととハンターを辞めさせることだな。」

 

「…それが狙いか!!」

 

 

僕の怒号が部屋をビリビリと震わせた。(こんな風に叫んだのは久々だ。)イオリに対して勿論、僕は怒っていた。そして悲しかった。裏ではこんな事を考えている奴がギルドでは高く評価され、僕は弱い立場にいる現実がとてもとても悔しくて…悲しかった。

 

 

「フリューゲル。お前の本気の声は久々に聴いたが、良い声だ。胸に響く。その中に込められた怒りも…悲しみも…。

 ならば――――」

 

「弥生…?」

 

 

弥生は僕の後ろから手を伸ばし、イオリが持つ書類を取ると静かに読み始める。十数秒もしない内に厚い書類の束を読み終えると、彼女はイオリへ今までのうっ憤を晴らすかの様に荒々しく、そして透き通るような美しい声で叫んだ。

 

 

「私がそのトレジャーを受けよう!!!!」

 

 

 

 




これにて1章が終了となります。とはいえ、何事もなかったかのように2章は始まりますけどw

本当は「逆転裁判」をもじったタイトルで、フリューゲルが面白大変な目に合う話の予定だったんですけど…、だいぶ変わりましたね。


イオリ。嫌な男です。前世はおそらく蛇だ。コイツの登場で主役は揃ったって感じですね。
あらすじにあるように、基本的な話は見えてしまうかもしれませんが、ここはひとつ温かい目で見てください。

これからも弥生の暴走、無茶苦茶なモンスターやクエスト、それで大変な目に合うビルとモンタナをお楽しみに!

あ、次回は1章終了記念で「舞台裏浪漫 特別編」をやりますので!!

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