やはりオリジナルモンスターとの戦闘は難しいです。自分の表現の無さに泣けます…。
タイトルは前回同様、CAPCON様の『デビルメイクライ』での、鬼畜な難易度『Dante Must Die!」をもじったタイトルです。本当はビル マスト ダイ!を英語にしようと思ったんですけどね
では、本編をどうぞ!
「っっぅぅうううあああああああああああッ!!!!!」
骨がへし折られる嫌な音以上のビルの叫び声。激痛によって叫ぶ事しか出来ないビルへ、ジンオウガの剛腕から繰り出された無慈悲な一撃がビルを襲い、離れた大木へと打ち付けられた。
「ビルーーーーッ!」
あのビルがヤられた…!
一瞬の出来事に目を背けたくなった。
叫びながらビルへ走る。小生の声に応えず、ビルはうずくまったまま動かない。
(ハンター再起不能なのか!?
もう共に狩りは出来ないのか!?
まさか…死んで…ッ!?)
目の前の惨事に、小生に嫌な予感が止めどなく溢れた。必死に走っているつもりだが、数m先のビルに行くまで何十kmもあるかの様に思えた。
「オォオォォォオン!」
「待ァて───ッ!」
ガギン!
ビルにトドメを刺そうとジンオウガの右前脚踏みつけを狩龍、ツクヨミを交差させて防ぐ。ギリギリだ。一撃が重い。背中から腕に伝う炎で、リオレウス装備でも焼かれそうに熱い。体力が徐々に削られていく。
「ビル…っ!大丈夫か、…ビル!」
ビルから返事は無く、ピクリとも動かない。嫌な予感がどんどん膨れ上がる。
「オォオォォォオォオォォン!!」
「うおぉッ!?」
小生ごと押し潰そうと左前脚も叩きつけ、全体重をかけて押し潰そうとしてきた。倍以上の一撃に膝を突きかける。それでも小生は気合いを入れて踏み止まり、腰を入れ、足の血管が破裂する程に力を入れた。
「手前にィ!負ァけるかぁぁあああぁあッ!」
火事場の馬鹿力とでも言うべきか、ジンオウガを数m下がらせた。しかしそう簡単にさせないと、ジンオウガも負けまいと尻尾と両後脚で堪えた。もう押してもビクともしない。目の前の敵に集中しつつ、ビルに幾度も目を向けて呼び掛ける。
「ビル!起きろッ!…起きてくれ!」
「────ぅ……モン…タナ…?」
動いた。わずかだが頭が動いてくれた。生きている。まだビルは生きている…!
「ガァァアゥ!」
安堵に気が緩んだ隙、小生の左脇腹へジンオウガの炎をまとった前脚が叩き込まれた。そして折れた角で器用に小生の身体を宙に投げ上げた。空中で己がどうなっているのか訳が分からなくなる。だが落ちる先を見れば悪寒が走った。下には炎、そして背中の突き出した蓄電殻を小生に向けてジンオウガが待機していた。
ドスン!
「うわぁああぁあぁ!?」
バチバチバチバチ!!!!!
燃え盛る炎に襲われ、身動きも取れず悶え苦しみ体力が一気に消えていく。激痛が走っているはずなのに、痛みが消え、段々と、楽になって 。
「――――モンタナぁああ!」
目を覚ましたビルの声に意識が戻る。
痛みが身体中を支配する中、声の方向へ顔を向けた。倒れそうに走りながらビルはジンオウガの胸元へ盾による打撃。そして盾を投げ捨てると銃槍のグリップを地面に突き刺し、下あごへ向けて足でトリガーを何度も踏んで砲撃を放つ。
ドガン!ドガン!ドガン!
「オオォオォン!」
連続砲撃によって炎が弱まり、脱出のタイミングにツクヨミを背中に突き刺した。
「グォオォォン!?」
中々の手応え。さすがのジンオウガも怯んだが、背中の炎は消えても厄介なことに雷光虫が離れる事は無かった。
「跳べェ モンタナぁ!」
ビルの声に小生は背中を蹴って離れた。着地と同時にビルは煙玉を数個投げ渡し、「退くぞ…!」と閃光玉、煙玉と立て続けに放つ。そして先を行くビルを追いながら、小生は後方へ煙玉を投げ続けながら撤退した。
「…くそ!アイテムポーチの中身がほとんど、ゴミになってやがる!」
「…すまない……すまない……すまない…………」
逃げ切った直後、ビルは再び倒れた。そしてただひたすらに、うわ言を繰り返した。小生は、あの炎でアイテムポーチの中身まで燃やされ、失った体力を回復し全て使い果たしてしまった。
「もう少しでベースキャンプだ。充分に休めるからな。」
ようやく、いつもの渓流のフィールドへたどり着いた。
小生は途中で倒れたビルに肩を貸してベースキャンプを目指す。骨折は無理にしろ、深手を負ったビルの回復は期待出来る。重い装備のビルを半分引きずっているが小生は急ぎキャンプを目指す。
「…おい、マジかよ。」
目の前には岩や倒木で滅茶苦茶に破壊され、ベースキャンプは無残な姿になっていた。ユクモ村へのタル配便の道すら塞がれている。調べずとも倒木には所々に燃えた跡が残っていた。
「アイツ、こんな事まで…ッ!」
「…やるねぇ…。」
「感心してる場合かよ!もう回復アイテムだってビルのしか無いんだぞ!」
ここへ向かう途中に薬草やハチミツを採取しようと探したが、そこもやはり燃やされ、踏み潰された後があった。野生のアイルーにもアイテムを分け与えて貰おうと寄ってはみたものの既にそこは、もぬけの殻だった。
完全にヤツに包囲されている。こんな事態に冷静になろうとしても、焦りは徐々に膨らんでいった。
「モンタナ…。俺が囮になろう…。」
「あ?」
「アイツは…俺を狙ってる。まだ傷が浅く…移動も出来るお前なら……っ…何とかなるだろ…?」
「馬鹿を言ってんな!弱気になったのか!?」
「俺が倒し損なって…犠牲者が出たんだ。これが…報いだ。」
小生はそれなりの力を込めてビルを殴った。無論踏ん張れるほどの力はなく、小生の鉄拳制裁に倒れた。
「痛いな…。」
「拾った手帳をもう一度読め!コイツは最期に「狩れ」と書いているんだぞ!?お前が責任とか報いと思うんだったら、アイツを狩ってから考えろ!わかったか!?」
「…わかったよ…。
モンタナ…水辺だ。滝に向かってくれ…。」
「滝?だが…」
「大丈夫、かもしれない。頼む。」
渓流エリアの6へ到着した。寒冷期の渓流は初めて見た。まさか滝が凍って、洞窟への道を完全に塞いでいるとは思いもしなかった。
ビルが滝のそばへと言うので、小生は静かに下ろすとビルは調合器材を出し始めた。
「すまない、モンタナ。あ、あの木を…まずは骨折の添え木だ。それと紅黒いカサカサの草、割ると白い液が出る丸い実、あー…炎の様なキノコを採って来てくれ。キノコは素手で持つなよ、絶対に。」
「わかった。」
ビルに言われるままに言われた物を集めた。木はありふれた丈夫な物だったが、他の物はハンター歴の長い小生にも全く見当がつかない物ばかりだった。
「採って来たぞ。」
小生が頼まれた物を持ち帰るとビルはすでに小枝でたき火の準備をし、滝の脇から僅かに流れ落ちる水を片手鍋に集めている最中だった。しかしこのキノコ、本当に大丈夫なんだろか?近くで見るだけで「毒」という禍々しい気配が漂っている。
「寒冷期のユクモ村は行った事はなかったけどさ…。ここの渓流はすごいだろ?」
「ああ。」
「この凍った滝がせき止めている水の量は凄まじくてな、温暖季になると一気に下流まで流れ落ちる。山頂の鉱物や植物からの栄養を下流にまで運ぶ役割を持っているんだ。」
「聞いてねーよ。ほら治療だ。」
「…寂しいね。」
落ち込むビルの右腕装備を外し、完全に折れた右腕に添え木を施して包帯でグルグルに巻いた。もう右腕の防具は使い物にならない程に破損している。いや、だからこそ骨折だけで済んだのかもしれない。
ビルは「長くトレジャーでフィールドに潜ると骨折や病気もやる。大丈夫、慣れてるよ…。」と、小生に言っているのか一人言なのか、ビルは治療中にボソボソと語り続けた。
「さて、水も貯まったな。」
片手鍋を覗き込むと3人分のお茶が飲める程には水が貯まっていた。ビルは砲撃の弾を片手にも関わらず、さっさと分解し、中の匂いを嗅いで恍惚してから火薬をまぶして火を灯した。
ボッ!
「わわわ」
いきなり噴き出す炎に驚いてしまった、恥ずかしい。
「脅かすなよ。」
「んーー…。」
「それどころじゃない。」、「少し待ってろ。」。そんな意味のビルのリアクション。これから何をやるんだか。
「この草は切り刻んで、潰して汁を。丸い実は割って液と実を。キノコは炙って水分を取り、次に細かく切り刻んで全部煮る。」
小生に説明しながら、片手なのに手際良く調合し始めた。やはりこんな調合は見た事も聞いた事も無い。いわゆるトレジャーハントにて得たビル独自のもののようだ。
「最後に残りカスを取り除いて終わりだ。」
「コレは?」
「俺が飲む薬。ハハハ、元気になる薬さ。薬の調合も得意なの忘れたか?」
そういえば以前に粉末にした眠魚の飲み物を飲まされたな…。(6話参照)とは言っても、あんなキノコが大丈夫なのか不安にはなる。
「…大丈夫なのか?」
「秘薬級のアイテム…。まぁ、絶ッ対に採用されない劇薬だろうけど。」
「おい、大丈夫なのかよ!」
「ハハ…まあな…。効果は滋養強化、…つまり徐々に体力が回復する。」
「そんな効果が?」
ビルは頭防具を取り、一瞬ためらいながらも一気にその薬を飲みほした。飲み終えると小生にほとんどの回復薬系を渡し、「この薬を飲んだから必要ない。お前が持っていな。」と強制的にアイテムポーチへと入れた。
「お、おい、ビル。」
「俺が持つより……ましさ…。」
「オイ、ビル!」
「…やっぱり、いくらでも言うよ。……巻き込んで…すまない。」
「バカ言うなよ。」
「………」
薬のせいか、それとも体力の限界か寝てしまったようだ。(寝た…?)不安になり鼻のそばに手をかざすと息をしていた。
「お前も勝手な奴だな…。
言っておくが、小生はお前を信じている。だからこそ小生だって闘える。背中を預けられる数少ない仲間なんだからよ。“巻き込んですまない”なんて言うな。気にもしていないからな!」
「…………」
やはり反応は無い。
…とは言っても、もう一度こんな恥ずかしいセリフをさらっと言えるわけない、ビルじゃあるまいし。考え始めたら熱くなってきた。
「―――――オオオオォォォォォォォォオオオン!」
遠くからジンオウガの咆哮が聞こえる。小生達を探しだしたようだ。怒りに身を任せているのか、木々が薙ぎ倒しながらコチラへ向かってくる。
「ヤツが向かって来るようだ。出陣する!
……またな、ビル!」
決意と覚悟を共に友の元を後にする。迷いは無い。小生の額に傷を付けたあのモンスターに刃を突き立てるまで、どんな敵であろうとも、ただ斬り捨てるのみ。
――――――ビル―――――
ザッザッザッザッザ……
「は…恥ずかしいセリフを言う。」
僅かの間だけ意識が飛んでいたようだ。意識が戻ってからモンタナが行くまで平静を装うのが大変だった。起きて「ありがとう。」とでも言おうと思ったが、恐らくお互い赤面の気まずい空気になると思って黙っていた。
「イタタ…」
やはり右腕は指先すら動かない。だが左腕は問題なく動く。薬で体力、スタミナ、気合い諸々問題なし。その内に色々な薬効がくる。その前に俺は俺の出来る事をやるだけだ。
「ありがとうよ、モンタナ。弱気になっちまっていたな。だから待ってろよ。
すぐに行くぜぇぇえぇい!ヒヒヒヒヒ…。」
―――――モンタナ―――――
「おおおぉぉぉお!
我が名はモンタナ!振るう刃は相手を選ばず!向かえば血潮の海となる!」
ジンオウガへ威嚇と自分への士気高揚に叫んだ。これをやると武器にまで気合いが乗り移り、いつも以上の切れ味と攻撃力が増す…気がした。別に小生には不思議な力があるわけでもない。あるのはいくつもの修羅場を潜り抜けた経験だ。
ズシン! ズシン! ズシン!
重い足音が近くまで来ているのが伝わる。アイテムを確認すると回復薬が3、回復薬Gが2。秘薬はもえないゴミになってしまっていたが、これならなんとかなる、かもしれない。
「オオオォォォォオオン!」
「来たな…ッ!」
発見されると小生はすぐさまエリア5へ移動し、誘導する。
エリアへ移動するやいなや怒りの咆哮と共に、ジンオウガを中心に炎が広がり辺りは再び火の海となった。砂漠の様な熱が小生の体力をじわじわと奪い始める。
「熱烈だな。だが今度は小生のアプローチが上回らせてもらおう。」
「グォォオオオオッ!!!」
「小生達は…託されたんだ!行くぞッ!!!」
もはや山火事となっているエリアの中を駆け抜け、狩龍を振り落とす。バックステップで避けられた。まだだ!更に一歩踏み込んで振り上げる。また同じく避けられた。だがヤツの後ろは木だ、もう下がれない!狩龍の剣先を喉元へ向けて突――。
「オオォン!」
「ゾゾッ!」と悪寒が走り、攻撃を止めて後ろへ跳んだ。直後、ジンオウガ周辺に炎の柱が上がり、直撃は避けられたものの衝撃でバランスを崩された。急いで立ち直そうとする小生に、追い打ちでジンオウガのタックルを受けた。吹っ飛ばされて倒れた小生へ追い討ちに、炎が燃え盛る前脚を叩きつける。
「くらうかよ…!」
狩龍で辛うじて防ぐ──ごめんよ、狩龍──も体勢が悪い。徐々に炎が、鋭い爪が迫り来る。そして「ゴォォォォオン!」と、業を煮やしたジンオウガが咆哮と共に背中を揺らし、大雷光虫が小生へ降り注ぐ。
ドカン!ドカン!ドカン!
「グッ…ぅぅ…っ…!」
脇腹と足でいくつもの大雷光虫が弾けて爆発した。コイツの性格か、直撃をさせずに周囲を爆破し、じわじわと体力を削っていき、残りが僅か。腕の力が弱まり、抑え込めない…!
「オォオォォォオ…!」
尖端恐怖症には最悪な光景だ。鋭い爪と熱が間近に迫り、自分の末路が嫌でも浮かんでしまう。
(やっぱ一人では…、クぅッ…!)
力に屈してしまう。その時、
『モンタナさん!』
アベナンカの声が聞こえた気がした。
「!
―――そうだ!まだ終われんな!」
右腕に力を込めてわずかにジンオウガの前脚を弾き返す。そしてツクヨミを抜き、振り落される前脚へ突き刺した。
「グゥワァアァウ!?」
怯んだ隙に腹を蹴り、反動でその場から脱出。瀕死の中、息を整えながら回復薬Gと回復薬を飲む。ツクヨミが根本まで紅く染まり、深々と突き刺さった事を物語っている。
「どうする…?小生はまだまだ生きているぞ?」
「オオオオォォォォオオオン!」
まだ戦い方はある。ツクヨミを鞘に納め、左手に持つ。ジンオウガは一気に距離を詰め、燃え盛る前脚が迫る。今度は、小生は叩きつけられる前脚をギリギリまで引き付けてから、左右へステップで避けた。下手をすれば致命傷になる危険はあるが、大きく転がれば嫌でも隙が生まれるからだ。
「オォオォォォオン!」
「来た…ッ!」
大きく振りかぶった左前脚の叩きつけにタイミングを合わせ、鞘頭を掌へツクヨミを当てる。
ガキン!
「ガァウッ!」
小生は衝撃に、ジンオウガはピンポイントの痛みでお互いが怯む。それでも攻撃の隙を逃さない為に大地を蹴り、胸元へツクヨミで薙ぎ払う回心の一太刀が決まる。
「まだだ!今の小生は!激昂ラージャンすら凌駕する存在だ!!」
このタイミングが最大にして最後の攻撃のチャンスだと猛攻を仕掛ける。至近距離では、普通の太刀は長すぎて充分な切れ味を出さないだろう。だがこの距離はリーチが短いツクヨミには最適だった。連続して斬る度に気持ちの良い手応えが、ジンオウガへ与えるダメージを物語ってくれる。
「オォオォォォオ…!」
ジンオウガが苦しそうな声を上げ、毒状態となった。だがジンオウガはそれでも構わず後方に飛ぶ予備動作の後、背中から突っ込んでくるジャンプバックプレス。とっさの判断で後方へ転がって避けて直撃を避ける。それでも落下の衝撃で雷光虫達が放出され、リオレイアの広範囲ブレスの様に爆風が巻き起こる。
ドカドカドカドカァン!
「ウオォッ!?」
予想外の爆発にダメージと後ろへ吹っ飛ばされた。そして何かが背中に当たったが、木に激突にしては柔らかい感触の違和感に顔を上げると、そこにはビルが立っていた。頭と腕の防具を装備しておらず、笑いながら「待たせたな!」と小生に頭を下げた。
「お、おい。もう大丈夫なか!?」
「ああ、勿論。」
「オオオォォォオン!」
「そうか、なら…
ビル!来るぞ!」
「さぁ!俺を殺してみろ!!」
小生とビルをまとめて攻撃せんと、ジンオウガの背中が迫る。ビルは小生を後ろにやり、盾を構えた。
ガン!ズガガガガン!
ジャンププレスと無数の爆発を見事に防ぎ切ったビルは、妙にテンション高めに叫ぶ。
「めっちゃ痛ぇ!けど、耐えられない程ではなァい!」
片腕が折れているのだが、笑いながら盾でひたすらジンオウガ前に回り、腹を殴り続ける。「痛いなぁ?」と激痛に悶えるにも構わず攻撃する光景は、流石に小生でも引く。弥生の音楽に狂った一般ハンターと変わらない姿だ。
今の内に回復を、と最後の回復薬Gを飲みほした小生へ怒号が飛ぶ。
「何をしている、モンタナ!立て!行け!斬れ!!」
「お、応!」
ビルの盾殴りで怯んだ瞬間を狙いツクヨミを振る。その間にビルはアッパー、蹴り、また盾殴りと、本当に腕が折れた怪我人か疑いたくなる程の猛攻を仕掛けている。…やっぱり相当怒っているのか?
「オオオォォォォオン!オオオォォォォン!」
小生達からバックステップで離れ、ジンオウガは炎雷を発しながら咆哮を上げ始める。それに応える様に、どこからともなく雷光虫が集まり始めた。哀れな末路を辿るとも知らずに。
充電を止めさせようと攻撃に向かう小生をビルは止め、「時間切れだ。後ろに来い!」とビルは前に出て盾を構えた。
ボオォォォォッ!
「来るぞ!隠れろ!」
小生達の辺りに爆炎となった雷光虫の塊が次々と舞い上がり、まるで意思を持っているかの様に小生達目掛けて襲いかかった。その度にビルは小生に炎が当たらないように盾を向けて対応する。
「グッ…!熱い…。」
「ビル!無茶をするなよ!」
「大丈夫…大丈夫だ…」
先程までの元気が無い。盾を持つ手も熱や衝撃で、体力やスタミナが限界に近いかもしれない。それでも少しずつジンオウガへの間合いを詰めて行く。小生に出来る事は、後からビルへ回復薬を飲ませる事ぐらいなのが、もどかしかった。
「もう時間が無い…。」
「なんか言ったか?」
「…いいや。まだ炎の攻撃は止まらないが突貫するぞ?」
「良いだろう!」
「よし、援護する…。相図を出したら…行け。」
間合いを確保する為にツクヨミから狩龍に持ち替え、切れ味を確認する。大丈夫、問題ない。後は近づくだけだ。
ジンオウガは咆哮しながら地面を叩く。雷光虫達が渦を巻いて飛び立ち、それは炎の竜巻と変貌し小生達を襲った。
ジリ…ジリ…
あと数歩。
近づくに連れて緊張感が漂う。炎が当たり、後ずさりしないように小生も支えて堪える。
もう少し。
ジリ…ジリ…
「オオオォォォォオン!」
(炎が止ん―――)
「行け、モンタナ!Showtimeだ!」
「引導を渡す!」
ビルの左肩へ足を掛けてジンオウガに向かって跳ぶ。叩き落そうと右前脚を振り上げたジンオウガに眩い閃光が炸裂し、攻撃を阻止した。小生の後ろでビルが放った閃光玉だ。
顔面へ一太刀を入れ着地。続けて胸元へ狩龍を突き刺した。そして狩龍を足場にして、ジンオウガの頭へ跳びながらツクヨミを抜く。
「ゴォォォオオオオ!!」
「しまっ―――」
小生の動きを先読みしたかのように牙をむき出し、小生の顔(喉笛か?)目掛けて噛みつこうと顔を伸ばす。
「ああああああッ!させるかァーーーッ!!」
ビルは小生の前に飛び出し、左手に持った壊れた右腕の防具をジンオウガの口へ叩き込んだ。そして左手に銃槍を取り、叫びながらトリガーを引く。
「モンタナ、後は…頼んだ!」
カチ!
ドガァァァアアン!!
「うわッ!?」
ただの砲撃にしては爆発が強烈すぎる。恐らくビルのことだ、腕防具の中に火薬を詰め込んでいたのだろう。爆風によってビルは後方へ吹っ飛ばされてしまった。だがヤツが作ってくれたチャンスを無駄には出来ないと、煙に映る影へ向かって走る。
「オオォォォォ…」
「その首ィ!!!!!」
ザン!!!!
「この森で殺るのはせめてもの手向けだ。朽ちて大地に還るが良い!」
猛攻するジンオウガは静かに崩れ落ちた。そして背の雷光虫達は散り散りに飛び立ち、再び渓流の自然の中へと帰って行った。
ツクヨミに付いた血を綺麗に拭き取り、狩龍を回収してからビルを探し始めた。何度かビルの名前を叫ぶと、遠くの茂みから手を振っているビルをみつけた。
「やったな…モンタナ…。」
「ああ!」
近づいた小生に、背中を向けたままビルは話しかけた。思えばビルから受け取った回復薬にずいぶんと救われた。弱気になっていたとは言え、殴るのは今更ながらやりすぎたか…?
「ゴホッ!ゴホゴホ!」
「おいおい大丈夫かよ、ビル。流石に無茶しすぎだぞ?」
「……ああ、そうかもな…。」
中々顔を向けないビルを不審に思い、正面へ回り込むと驚愕した。
「お、おい!嘘だろ!?ビル!」
「…副作用だ。」
ビルの前にはおびただしい量の鮮血が広がっていた。今も口からポタポタと血が落ちている。
「…悪いな、モンタナ…。」
「ビル!」
そう言ってビルは倒れた。
まだ続きます、この『デビクラ』シリーズ。次で終わりです。そして1章も終わります。
この話が小説家になろう様で上げた最後の話なんです。ついにここまで来たなー、って気持ちです。
では、諸々のデータを。
トレジャーアイテム
・狂狩人の秘薬
体力・スタミナを150に上昇し、ステータスも上がる。テンションも悪い意味で上がる。飲んで5分ほどで効果が表れるが、効果が出てから約10分後に確実に1死する毒薬。
炎狼竜 ジンオウガ
復讐の狩人
亜種と言うよりも変異した剛種。常に帯電状態のため、過充電した結果、雷光虫が耐えきれなくなり発火した。そのため炎をまとったジンオウガとなった。性格は凶暴で頭も働くため、フィールドの薬草やハチミツは勿論、ベースキャンプは前もって破壊している。攻撃力は凄まじく上昇しているが、防御力は低め、身体は燃えているので体力は少ない方。
上位よりG級のモンスター。ガンナーなら良いかもしれないが攻撃が当たったら、まず即死級。防具を作れば、悪霊の加護は発動確実でしょうか。
ジンオウガの様々な攻撃に加えて…
・炎の鎧
テオ、ナナ同様の近づくだけでダメージ。
・火柱
自分の周囲やマップに火柱を発生させる。
・拘束攻撃
燃え盛る背中にハンターを乗せて焼く。電撃もあるため思うように動けない為、要仲間の援護。通称電気ベッド。
・大雷光虫放出
直進、カーブ、ホーミングがある。
ちなみに元ネタは「ゴッドイーター バースト」に登場する、“ハンニバル”を出してみたいだ為に考え出された案。
拘束攻撃の炎・電気ベッドは「帰ってきたウルトラマン」に登場する“磁力怪獣 マグネドン”の技から。背中に乗せて電撃攻撃するシーンより。画像検索すれば、そのシーンのが出てきます。
これで初期から考えていたモンスターが1つ使えました。
閲覧ありがとうございました!