The Problem Hunter   作:男と女座

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はい、ということでオリジナルモンスターとの戦闘です。

本当はタイトルに「進撃の巨人」っぽく一文字だけ変えようかと考えてはいたんですけどね。進撃の巨黒? うーん、変だ! ということで黒のみですw

小説家になろうから移動して、こちらでもアクセス、感想、評価をいただいてとても嬉しいです。今まで頑張った甲斐があったな…!と胸を熱くしております。
本当にありがとうございます!

では本編をどうぞ!!



第17話 狩猟物語 進撃の黒

ズズズズズズ…

 

 

深夜、砂漠が揺れ動いた。そして以前、洞窟で感じた背筋がざわめく様な悪寒が走った。

 

 

「ルーナ!来るぞ!危なくなったら小タル爆弾を置いて離れろ!」

 

「わ、分かりました!」

 

 

ルーナはヴァルキリーフレイムを手に持ち、高台から飛び降りてコチラへ走り始めた。会話で紛れたとしても、恐怖や不安が残っているのでは?と思ったが、顔は強張っているが大丈夫そうだ。少なくとも、あれなら動けるはずだ。

 

 

「リリー、爆弾を投げて敵を引き付けてくれ。ただし、無理はするなよ。」

 

「ご主人こそ。」

 

「ルーナにもヤバイ時には応援に行ってやってくれ。」

 

「分かったニャ!」

 

 

砂漠からゴドラノス4、5体を先頭に、月光に照らされた砂漠が黒く染まる程の無数のゴドラが現れた。ゴドラは初めて生で見たが何十体も一気に近づいてくる様は、確かに生理的な嫌悪感が湧いてくる。俺は爆竹爆弾に火を灯して投げ、後ろへ下がった。導火線の炎に釣られたゴドラが追い、群がる。そして激しい爆発と内蔵したカクサンの実に巻き込まれて、上空へゴドラが吹き飛んだ。

 

 

「シャアアァア!」

 

 

しかし熱に反応するモンスターと言えど、全てが向かってくれたわけではなかった。釣られなかったゴドラノスが俺に向かって飛び掛る。

 

 

「暗闇じゃなければ!向かい討てるぞ!」

 

 

跳びかかった所へ合わせて砲撃。ゴドラノスが反対方向へぶっ飛ぶ。砲撃の熱を感知して数体のゴドラが跳び付く。「おおぉッ!」気合いを込めてジェネシスを地面に叩きつけると、奴らは剥がれ落ちた。すかさず俺は後ろへ跳んで砲撃。

 

 

ドガァン!

 

 

拡散砲撃で黒こげになったゴドラ達が砂の中へと消えていった。

ルーナも俺達に合流し、散弾を撒き散らしながら確実にゴドラの数を減らしている。この物量で押される状況では、散弾のボウガンは非常に頼りになる。俺は爆竹爆弾を、リリーは小タル爆弾を使い、負けじと狩り続けた。

 

 

「リロードします!」

 

「了解だ。」

 

 

俺はルーナの前に出た。跳びかかるゴドラを突き、確実さを求めて砲撃のトリガーを引いた。

 

 

「シャアァァッ!」

 

「ッ!?」

 

 

炎の中を突っ切ってゴドラノスが来た。とっさに盾を構えて辛うじて防いだが、ゴドラノスは盾に張り付き、噛み付こうと暴れる。俺は叫びながら盾を地面に叩きつけた。「グシャァア!」と苦しげな声を上げた口へジェネシスを突き刺し「じゃあな。」と、トリガーを引いた。

 

 

ドガァン!

 

「お、終わりました!援護します。」

 

「頼む。回復薬グレートを使う。」

 

 

ルーナがいるのを少しの間忘れていた。少しやりすぎたかも知れないが構わない。砲撃や四方に投げた爆竹爆弾の煙の匂いが、俺を異常なまでの高揚感をもたらしてくれた。

 

 

「フフフ… アハハハハハハハ!」

 

 

モンタナ程とは言わないが、こうも一方的だと妙に楽しくて笑えてくる。調子に乗ると悪いことが起こると言うが、今回はそうはならないようだ。

 

 

「ビルさん!様子がおかしいです。」

 

「む!?」

 

「キュアァア!キュアァア!」

 

「何だ?」

 

 

ドゴラ、ドゴラノスが攻めるのを止め、一斉に砦とは真逆の方向へ向かって鳴き出した。俺もその異様な光景に武器を構えながら、その方向へ視線を向けた。

 

 

「ズザァーーンッ!」

 

 

砂が間欠泉の様に高く吹き上がった。そして地響きと共に凄まじいスピードで、地中から巨大な何かが来た。

 

 

「ゴォオオォオオオオオォオォオッン!」

 

「コイツは…!?」

 

 

砂を掻き分けながら現れたのは、ゴドラノスより遥かに大きいドスゴドラノス――と呼んでおこう。俺達ハンターの倍以上ある全高。全身は黒く、平べったい口はドスガレオスすら一口で飲み込める程に大きい。頭にはオオナズチのような丸く大きな、黄色い眼が俺を見つめた。

 

 

「まさか…、アレが壁画のモンスターか…!」

 

 

最悪な予感が走った。“死を運ぶ”、“触れてはならぬ存在”。

俺はすぐさまにモンスターに近づき、下あごをジェネシスで突いた。背中と同じく堅い皮膚で、攻撃は辛うじて通る程度。

 

 

「ガァァァアアアァァア!」

 

 

威嚇の咆哮を上げ、開けた口から見えたのは鋭い牙。そして凄まじい口臭が辺りを包み、今までの高揚感が台無しにする程、最悪な気持ちにさせた。

 

 

ドスン!

 

 

ドスゴドラノスの口の中から何か重い物が飛んで落ちた。振り返って見ると、少々溶けて変色しているがティガレックスの胴防具(男性用)。

 

 

「防具…?コレは―――」

 

「隊長!隊長ーーーーーーッ!いやぁぁああああぁ!!!」

 

 

ルーナの叫びが砂漠に響き渡った。彼女の悲痛な叫びは、辛うじて「隊長」と聞き取れる。隊長、確か彼女をここへスカウトしたハンター、ドクトル。ではあの防具は彼のものか。

 

 

「ルーナさん!落ち着くニャ!」

 

「赦せない…!」

 

 

俺や、怒りのまま散弾を乱射するルーナを無視するかの様に、ドスゴドラノスはルイーナの砦へと歩み始めた。

 

 

「リリー、止めるな。今は奴の意識を俺達に向けるんだ。」

 

「わ、分かったニャ。」

 

 

出来ればラオシャンロンのように、ハンターにはただただ無関心に向かってくれれば討伐も幾らか楽かもしれない。だがゴドラやゴドラノスの性格を考えると、俺達より砦を襲う方を優先しただけだろう。すでにルーナは泣き叫びながら散弾を撃ち込み、リリーも爆弾を投げつける。

 

 

「ガァァァアアアァァッ!」

 

 

ドスゴドラノスは口を開け、ルーナの上空に向けて大量の緑色の液体を放った。その液体は砂に染みこむことなく、彼女へ降り注ぐ。イビルの唾液に似た、独特の腐臭と刺激臭に俺は鼻を押さえつけた。

 

 

ジュッ…!

 

 

何か妙な音が目の前で発した。よーく見ると、腕防具の手甲に数mmばかりの穴が開いている。

(これは…マズイ!!!!)

俺はすぐに盾を傘のように差し、ルーナに向けて声を荒げて叫んだ。

 

 

「ルーナ!すぐにそこから離れろ!防具が溶かされるぞ!」

 

「キャァァアア!」

 

 

時既に遅し。降り注ぐ酸の雨に体力が、見る見る内に削られていく。

 

 

「ルーナ!」

 

 

俺は彼女に駆け寄り盾で、まだ降る攻撃を防ぐ。彼女は「ごめんなさい、ビルさん…。」と、力ない声で何度も謝った。俺は自分のアイテムポーチから回復薬グレートを取り出し、彼女にゆっくりと飲ませると、楽になったのか気を失ってしまった。

 

 

「ご主人、大丈夫ですかニャ!」

 

「リリー、ルーナはダウンだ。攻撃が止んだら砦に連れて行ってくれ!」

 

「で、でもご主人が!」

 

「心配すんな。今は彼女の体調が先決だ。頼む。」

 

 

リリーは「でも…」とオロオロと俺とルーナ、そして時折ドスゴドラノスへと目を向けて困惑した。俺はそんなリリーへ「いつも通りに帰ってくるさ。だから行け!」と叫ぶ。そしてリリーは目に少し涙を浮かべながら、「約束ニャ!」と攻撃が止んだ隙にルーナを抱えて砦へと向かって行ってくれた。

 

 

「すまんな、リリー。」

 

 

俺はドスゴドラノスへと近づき、コチラへ攻撃する前に口へ竜撃砲を先制で叩き込む。まだ竜撃砲の一撃に怯んではいないが、続けざまに砲撃、砲撃と攻撃を重ねた。

 

 

「ガァァァアアアァ」

 

 

砲撃のリロードをしている時、ドスゴドラノスは叫ぶと背中を揺さぶった。すると背中から蠢く何かがボトボトと落ちた。

 

 

「シャァ…」

 

「マジかよ…!」

 

 

ゴドラだ。背中に何十匹もまとっていたのか、俺を狙ってゴドラ達が一斉に駆け寄って来る。

(アイテム、どの爆弾が良いんだ!)

この事態に俺は焦ってしまった。焦りは禁物だと常々に思っていたのにだ。

 

 

「ゴォオオォオオオオオォオォオッン!」

 

「ッ!!?」

 

 

不意を突かれた咆哮。ガードを出来ずに耳を塞いでしまった。

 

 

「シャァッ!」

 

(しまっ―――…!)

 

 

その隙を逃さず無数のゴドラが跳びかかった。俺は後ろへ跳び、武器をしまった。大量のドゴラがボトボトと、俺がいた地点に落ちた。だが獲物がいない感触からから直ぐ様に俺へ方向を定めて、跳びかかる。

 

 

「っ…!コッチだ!」

 

 

わずかに稼いだ時間で、何とか爆弾を用意できた。点火した小タル爆弾Gを置き、距離を取りに更に後ろへダイブする様に跳んだ。あと数秒後、熱に釣られて掃討できる。事実、今まさに熱に釣られたゴドラが、一斉に爆弾に向かった。

 

 

「ゴォオオォオオオオオォオォオッン!」

 

 

再びドスゴドラノスが咆哮する。今回はガードに成功したが、爆弾に向かったゴドラは俺へと進路を変えて向かってきた。

 

 

「お、おいおい!おい!ウソだろ、オイ!!」

 

ボン!

 

 

一体も爆殺出来なかった小タル爆弾Gが空しく爆発した。だがコチラはそんな事を気にしている余裕は無い。波の様に迫るゴドラ達は、逃げる俺の足に張り付き、一斉に噛み付いた。

 

 

「痛ぇな!離れろ!」

 

 

俺は自分の足に砲撃を放った。凄まじい熱と衝撃が襲ったが、何とかゴドラは焼け落ちてくれた。距離を取り、態勢を立て直そうと頭の中で警報が鳴る。武器をしまい、俺は駆けようと踏み出したが、背中に鋭い痛みが走り、俺は倒れ込んだ。その時、ゴドラの群れは俺へ跳びかかり噛みついた。

 

 

「う、うわぁぁあぁああぁああああぁあ!!!!」

 

 

吐き気のする腐臭の臭いと、生温かさ。そしてゴドラが身体のありとあらゆる所をゾワゾワと蠢く、不快な感触と重み。そして発狂する程の痛み。

振り払おう、アイテムを出そうと手で足掻き続ける。だがその手、指先にまでゴドラの牙に襲われて新たな激痛が走る。

 

 

「ああぁ…ッ…ぁあぁああぁああぁあ!」

 

 

ひざまつき、転がり、掻きむしり、殴り、岩に身体を打ち付け、叫び、走り

自分でも痛みの中で、どう行動しているのか完全に分からない。ただ確実に体力が削られている。俺は痛みの嵐の中、小タル爆弾Gを有るだけ地面に叩きつけた。

 

 

ドカンッ!

 

 

炎に包まれて身体中にまとわりつくゴドラ達が落ちた。痛みから解放され、俺は武器を取り、手で叩き落とし、踏み潰し、砲撃で散らせた。

 

 

「……身体が…ッ。」

 

 

結構なダメージを受けた。残りわずかな回復薬グレートを2つ飲み体力の回復をする。残り、回復薬すらもう無い事態に心底冷えた。

 

 

「まいったね…、ホント。」

 

 

こんな事態になるなら、次は素直に断ろう。何回キツイめに遭って来たか、もう忘れる程だ。…とか思いつつも、多分次も見過ごせないんだろうな。ハハ…、やっぱ気合入れて頑張るか。

 

 

「ゴォオオォオオオオオォオォオン!

       ゴォオオォオオオオオォオン!」

 

 

部下か子供か、ゴドラを殺されドスゴドラノスは全足で砂を踏みしめ、怒りで目が真っ赤に染まった。気持ちは分からないでもない。むしろ、ボスか親としては素晴らしい絆じゃないか。とは言っても、出来れば今すぐにでも御退場願いたいんだが。

 

 

(ルーナは…まだ無理だろうな。仕方ない、か。)

 

「ガァァァアアアァァアアアアアン!」

 

 

怒りの眼のまま地響きを立てて一直線に俺へ走り向かう。俺は盾を砂に刺して身を隠し、両手両足に力を混めて叫んだ。

 

 

「来ォい!!!!」

 

「グシャァアッ!」

 

ガキン!

 

 

重い衝撃が身体を突き抜けた。ガード性能、強化とガードに対しては十二分な対策をしていたが、意識すら飛び飛びに大きく後へ後退し、体力は削られ、スタミナも大きく減らされた。

 

 

「ぐぅうッ…!さすがに…攻撃が重い。」

 

 

痺れる左腕を我慢しつつ顔を上げた。そして俺の目に入ったのは、勢いよく振り回された1m程ある尻尾だった。「マジかよ!」俺は残り少ないスタミナに望みを掛けて、再び盾でガード。

 

 

「ぁぁあああッ!」

 

 

強力な尻尾の一撃に負けてブッ飛ばされた。月が見えるのは、自分が仰向けで倒れていると気づくのに数秒の時間を要した。

まだ体力はある。右手は動くが、ジェネシスは…大丈夫だと信じたい。盾は大丈夫だろうが、折れてはいないだろうが左腕が痺れている。

 

 

ブンッ!

 

「んぉおおおお!!?」

 

 

一瞬視界が黒に染まった。それは追撃に振り落されたドスゴドラノスの尻尾の影。俺は振り落ちる尻尾の真下にジェネシスを突き上げた。次の瞬間、尻尾に深々とジェネシスは差し込まれ、ドスゴドラノスは醜い痛みの叫び声を上げた。そして

 

 

「うるさいよ、発射!」

 

 

竜撃砲を放った。

 

内部での爆発は大きなダメージを与えたようだが、やはり尻尾を飛ばすほどの破壊力には至らなかった。しかも最悪な事にヤツを更に怒らせてしまったようだ。

 

 

「ゴォオオォオオオオオォオォオン!」

 

 

真っ赤な目で、俺が起き上がる隙すら与えず尻尾の一撃を振り落とす。ギリギリの反応で防ぐも、尻尾の重みと勢いある一撃で、俺の身体で内臓が悲痛な叫びを上げる。

 

 

「ガァァァアアアァァアアアアア!」

 

ドスン!ドスン!ドスン!ドスン!

 

 

痛めつけるのが趣味なのか、ドスゴドラノスは叫びながら何度も尻尾を叩きつける。辛うじて防いで入るものの、拘束技のように徐々に砂地に身体がめり込み、余計に身動きが取りづらくなった。そして俺の意識も段々と薄れていった。それでも攻撃は止む気配は無かった。

 

 

「―――――――っ…」

 

 

もう痛みすら感じられない。視界がぼやけ、振り落とされる尻尾はゆっくりで、そして何重にも見え始めた。いよいよ終わりが近いらしい。

自分でもしぶとい身体だ。痛みはないのに、何度も攻撃を受けているのだけが伝わった。そして一撃一撃のたびに、様々な記憶が浮かんでは消えていった。そしてモンタナや弥生の顔が浮かんだ。

 

 

 

(最期に会いたかったな…。

 みんな…すまんな、―――――リタイアだ。)

 

 

俺は全てに幕を引く様に目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

♪ジャァァァァァァァァァァアアアアアアン!!!!!!

 

 

幕を引いた俺の元に届いたのは、とても懐かしくも五月蝿くて騒がしくて懐かしい音色。

 

 

「ビル。まだ曲は始まったばかりだ。」

 

「ハハハハハハ。らしくねぇな?ビル。フハハハハハハハハハ!」

 

 

聞きなれた男女の声が聞こえた。そして身体に力が湧く。生命の粉塵の匂いだ。

 

 

意識が戻り始めると、身体を反らして爆走しながらギター型の狩猟笛を弾く弥生と、爆笑しながら俺を背負って走るモンタナがいた。

 

 

「ああ、あの世だってのに気色悪い連中がいる…。」

 

「おーい、お前斬るぞ?」

 

 

 




ご都合主義だと笑わないでw

しかし、ボスも捻りのない名前ですね。ちなみに走馬灯でフリューゲル君がいないのは、わざとです。基本的に彼は“残念”が売りですからw

この狩猟物語シリーズの最終話に、今回のモンスターの特徴や何ンかを載せますので!

ありがとうございました~!

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