タイトルは、あの3部作のです。エルフやホビットやドワーフはいませんし、ましてや指輪を捨てる話でもありませんw
なんか前編・後編とかよりサブタイがある映画のをもじった方が、見栄えが良い気がしたからです。
ルイーナの砦。
元は小さな丘だったが頂上に街を作り、周りを壁で囲った防衛都市。街の出入口は1つで、ラオシャンロンやシェンガレオンとの砦防衛戦、最後のエリアの様な巨大な扉がある。この都市は砂漠に現れた危険なモンスターをドンドルマ等の大都市に向かわせない砦の1つなのだが、ポッケ村があるフラヒヤ山脈への守りが薄いのでイビルジョー襲来の原因になった。
ゼト達の村から出発し、朝日に照らされるルイーナの砦を見た。話からでしか想像していなかったが、立派な街だと遠くから見ても分かる。だが近づくに連れて違和感が現れた。
砂地には何かモンスターの血や尻尾が落ちていて、回復薬のビンやボウガンの薬莢などモンスターとの攻防があった事を物語っていた。
「やはりこちらにも来ていたか…。」
「ニャ。ご主人の思っていた通りですニャ。」
「さ、街に入ろう。」
街の門の前にいた兵士にギルドカードを見せると、すぐさま門を開けて案内された。坂を上ると、土で出来た四角い家々が並ぶ住宅街らしいところへ。そしてその中でもギルドの集会場でもある、2階建ての大きな建物の中へと案内された。兵士に話を聞くと、昨夜から調査をしていた学者がモンスターにつて発表を行うと言うことらしい。
部屋へと入ると3名の学者が黒板の前に座っていた。中央に座っているヒゲを蓄えた老人の学者が代表者なのだろう。ハンターの2名は幾つも並んだ椅子に学者と向かい合うように座っている。昨夜で疲弊しているのか、俺が席に着く時に覗いてみると、顔色が凄まじく悪かった。俺が席に着くと中央の学者は「オホン!」と咳をして話を再開した。
「では最後に結論から言おう。ここを襲ったモンスターは今まで見た事が無い。諸君も知っての通り、新発見のモンスター!我々が詳しく調査した資料を渡すので、一度解散としよう。また今夜、狙ってくる可能性が高いのでな…。」
本来ならこの新発見の事実に喜ぶのだろう。だが部屋には重苦しい雰囲気が一層と強まった。ハンター達は先に資料を受け取って部屋を出て行った。俺は資料を受け取り、気になる事があるので部屋を出た。少し気張っていたのか「ビルさん。」と何度か声を掛けられたのに気づかなかった。
「ビルさん!」
「あ、ああ、すみません。
あれ?ライラですか?」
「はい。以前はどうも!」
「あー…前回は内の連中がすみません。」
「いえ、モンスターと身体を張った調査だ!ってある意味有名になりましたよ。そしたら新発見の最前線に連れて来られました…。今度こそヤバいです…。」
流石に返答に困って俺は笑うしかなかった。
「ところで、コチラに来たと言う事は我々調査団に何かご用ですか?」
「ああ。コレを。」
アイテムポーチから前回狩ったモンスターの素材をライラに手渡した。彼女は驚いた顔をし、「どこでコレを?」と聞いたので地図を広げて位置を教え、そして昨日の体験を簡潔に説明した。
「うーん、後で調査に向かうべきかもしれませんね。その時は紹介を頼めますか?」
「ああ、大丈夫だと思う。で、まだ用事があるんだ。」
「何ですか?」
「テオの遺体、ある?」
ライラのお陰もあり、案外あっさりと俺は建物の地下にある一室に招かれた。部屋は大きくて広く、中には倒されたテオ・テスカトルが横たわっている。
「そう長く遺体は持ちませんが、貴重なテオ・テスカトルの上位級です。本当ならコチラを調査・観察をしに来たんですけどね。」
「とっとと埋葬でもしてやってやりたいね、ホントは。」
死んでからも色々とすまない気持ちの俺は、テオの遺体に深くお辞儀をしてから調べに入った。
「身体中に何かの噛み痕があるな。」
「はい。ハンターさん達の攻撃で見えないものもありますが、分かる所ははっきりと付いています。」
「俺が持ってきたモンスターの…」
「ゴドラノスですね。資料を読んでくださいよ。」
「ああ。そのゴドラノスとはサイズが小さいな。」
「ここを襲ったのは15体のゴドラノスと40体のゴドラです。」
「ゴドラ?」
「ですから」
「分かった。読むよ、読む。」
『・ゴドラ
砂漠で発見された四足歩行型の夜行性モンスター。全身はうす黒く、全長50cm程度のトカゲの姿をしている。潰れた丸みを帯びた頭には目が無いが熱を感知して近づき、跳びつく習性がある。複数で行動し、一斉に跳びつかれると鋭い牙で噛まれるために危険。しかし毒は無いので回避行動などで払おう。』
『・ゴドラノス
ゴドラと同じく新たに発見されたモンスター。ゴドラよりも全身は黒く、背中に赤い斑点があるのが特徴。全長は2mと遥かに大きい上に、速く動ける。頭には目らしきものがあるが、やはり熱を感知して攻撃する。頭部から尻尾まで硬い鱗で覆われており、生半可な切れ味の武器では通らない可能性がある。
武器は強力な尻尾と鋭い牙による噛みつきであるが、ゴドラと違い、牙からは猛毒を注入する仕組みになっている。またゴドラノスの唾液は腐食性があり、防御力を低下させる。この唾液は相手に向かって飛ばす時もあるので注意が必要。』
よくここまで調べられたものだ。相変わらずの仕事の早さには驚かされる。
熱を感知するために、このテオは標的にされたようだ。全身の噛み痕がその証拠。どんな強いモンスターも、多勢に無勢が世の理のようだ。そして手傷を負ったテオはコチラへ向かって、討伐された。勿論テオを追い求めていたゴドラ達は、当然ここを襲った。そして今は目の前にある俺達、餌を求めて進攻中。といったところか。しかしこのゴドラノス、ゼトと一緒に見た壁画の赤黒いトカゲなのだろうか?
「ありがとう、ライラ。じゃ俺は宿屋で休む。ここから近くの宿を取るから、何かあったら。」
「はい。ごゆっくり。」
―――――――翌日―――――――
「ご主人。お昼ニャ!」
「む…?」
リリーに起こされて目を覚ました。よく眠った。俺はベッドを降りて、リリーの頭を挨拶にと撫でた。俺は防具を着て部屋を出て、市場でパンや果物を買って部屋に戻った。
「じゃ、調合を始めようか。」
「ニャ!」
あの素早い動きには大タル爆弾を置いて爆発させるのは難しいだろう。小タル爆弾Gを幾つか用意した。終える頃、リリーが調合出来るだけ火薬を用意してくれた。よし、本格的な作業を始めよう。まずは火薬を多めに含んで導火線を作る。以前よりも多く、長く。そして敵の数が多いだろうから、爆竹型爆弾の数を増やす。爆弾の中にはカクサンの実を組み合わせた。
調合を終える頃、もうすぐ日没となる時間だ。市場で回復薬や使えそうなアイテムを用意しないといけない。俺はリリーと部屋を片付けて後にした。目当てのアイテムや行商人から忍耐の種も用意できたのは有難い。
買い物を終えてリリーと食堂に入った。砂漠の料理は豆やイモから作ったパン、香辛料を使った料理が多い。軟体動物の食べ物以外なら何だって大丈夫なはず。
「あの、はじめまして。ここの席良いですか?」
「ああ、どうぞ。」
反対の席に女性ガンナーのハンターが席に着いた。確かギルドの集会場にいたハンターの1人だったな。ライトボウガンのヴァルキリーフレイム、防具はアロイシリーズの散弾を主体とした装備だ。顔は可愛らしい。
「はじめまして、ビルだ。」
俺が手渡したギルドカードを取り、「あ、ああ、すみません。ごめんなさい!」と慌てて自分のを取り出して渡してくれた。
「ルーナです、よろしくお願いします。」
「休めたか?」
「朝は顔色が悪かったニャ。」
「え、エヘヘ。もう…大丈夫ですよ。もう他に私しかいませんから…。」
「なに?もう1人いなかったか?」
「む、迎えに行ったら『ごめん。』って書置きが…。」
「なんて事だ。」
「他にも2人いたのですけど、1人は大怪我。隊長のドクトルさんは私達を逃がすためにモンスターを引き付けて、まだ帰って来ていません…。」
「無事だと良いな。」
「はい…。」
逃げ出したくなる気持ちも分かる。彼女も逃げ出したい気持ちと、ここを守る気持ちで揺れ動いているのだろう。顔色はいっそうと悪く見えた。
「あの!コレ、食って下さい!」
「え?ありがとう。」
何故か市民が寄り、美味しそうなガレオスの燻製をいただいた。初めて見たが、非常に香ばしい香りがする。
「こ、コレもいただいて下さい!」
「ルーナさんが好きな果実ジュースです!」
「あ!オトモアイルーには魚を!」
「ニャニャ!?ご主人。」
「えーっと、皆さん気持ちは有難いんですか、コレはこの街の歓迎ですか?」
俺の質問に市民は黙り込んでしまった。ふと目を下ろすと、男の市民の1人の手が震えていた。いや彼以外ではない。今、俺達の席を取り囲んでいる者達全てが事態に恐怖しているようだ。
「砦の壁の上から見たんだ。月明かりに照らされた青い砂漠が、アイツらで黒く染まっていって…。」
「あんな恐怖、ここに何年も住んでいたけど初めてだった。」
「私は震えが止まらなかったわ。街から逃げようにも砂漠は危険で…。」
「だからこんな事を言うのは可笑しいかもしれない。だけど、俺達を守ってくれ!どうか…お願い…しますッ!!」
「―――ああ、任せてくれ!」
「いやーー、食った食った。な?リリー。」
寒冷期が近づき、日が短くなってきた。空には血のような紅い満月。そして夜の砂漠の冷たい風が身体を包み、アグナ亜種の防具がより冷たく感じる。これから狩りの長い夜となる。
「ニャ…。当分は魚の燻製は食べたくないですニャ。
ご主人も全部食べなくても。5人前以上はあったニャ。」
「想いを込めて与えられた物を無下には出来ないだろう。」
「でも限度があるニャ。ご主人らしいですけどニャ。」
「ハハハ。ああやって頼りにされるとよ、何か涙出て来ないか?やっぱり人助けってのは良いな。」
「ニャ!」
俺とリリーとルーナは門を出て、数箇所ある高台の1つに上って見張りを始めた。砂漠はまだ静けさを保っている。いつ来るか分からない不安と恐怖にルーナは沈黙したままだ。
「なぁルーナ。少し話でもしよう。退屈なんだ。」
「は、はいッ!」
「そうだな…、アロイシリーズを装備って事は新大陸出身か?」
「はい。ロックラックの出身です。」
「へぇ。そこの出身が何でここへ?」
「ティガレックスの討伐で来ていたドクトルさんに誘われてです。砂漠に慣れたハンターが必要だったそうでして。それから随分と、こき使われましたよ?散弾を当てて何回怒られたか…」
気持ちが落ち着いたのか、時々可愛らしい笑みを浮かべながらルーナは話をしてくれた。
「ビルさんも何か話してくださいよ。」
「俺?じゃあティガレックス関連で…
俺はポッケ村出身なんだ。俺がまだハンターになる前、ティガレックスが確認され始めた頃だな。」
「知ってます。ポッケ村のハンターが討伐した記事は今でも残っています。」
「うん。村人から頼りにされて、いざ危険な時は駆けつけたヒーロー、俺の憧れのハンターだ。
そしてある日、雪山の奥地からウカムルバスが現れた。」
「私は見たことがありません。でも現れただけで近隣の住民は避難命令が出るんですよね?」
「ああ。当然ポッケ村も避難命令が来たさ。だけど誰も避難しようとは思わなかった。」
「どうしてですか?」
「あのハンターなら、きっと倒す!って皆が信じていたから。」
良い思い出だった。あの頃の俺にはガンランスを持つ事すら出来なかった。あの人は冗談半分に思って持たせたのかもしれないが、それが切掛けで今はガンランス使いになっている。あの人は何と思うのだろうか?驚くのだろうか?それとも「当然だな。」と笑うのだろうか?
「素敵な話ですね。」
「え?あ、あぁ。ありがとう。」
つい長く語ってしまっていた。こんな事、モンタナ達にも易々と話した事がなかったのに。やはり食堂での自分を、あの人に重ね合わせてテンションが可笑しくなっているようだ。
「ライラさんに聞いて、少し怖い人だと思ってました。」
「あ?ライラ?」
「はい!」
「………参考までに何て聞いたかな?」
「奇人変人のチーム・びっくりハンターを束ねるリーダー!と。」
「違うって。」
事実とは口が裂けても言えない。いや、俺はまだ普通だ。刀を舐める程に溺愛していないし、呪われている様なギターを弾く事もない。ただの…そう、爆弾系が人より数倍好きなだけだ。それこそ何と思われる事やら。
「違うんですか?」
「そう見えないだろ?」
「はい。おかしな話ですね。アハハ。」
「ニャハハハ。」
「お前も笑うなよ。ハハハ。」
俺達は笑いあった後、ルーナは真っ直ぐに俺を見て「ありがとうございました。もう私は大丈夫ですから。」と微笑んだ。やっぱり可愛い。少し不意打ちの笑みに心臓が脈打ったが、悟られまいと平静を装いながら「ソウカ、ヨカッタヨカッタ。」と言いながら高台を降りた。自分の演技の上手さに惚れ惚れとする。高台から少し離れてからリリーが「棒読みでしたニャよ。」と言ってきたので、痛くない程度にゲンコツを落した。
ゴドラ~、ゴドラ~
…ネーミングセンスの問題w まぁ安直だとか深く考えない事にしましょう!
決して数分間しか戦えない特撮ヒーローに出てくる、反重力宇宙人ではありません。知らない人は調べ…なくてもw
次は本格的に狩ります。戦闘は苦手ですが頑張りますので、お楽しみに!