The Problem Hunter   作:男と女座

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ダイミョウサザミって何であんなに跳べるんでしょうかねー?

あ、ちなみに今回のタイトルは「鷲は舞い降りた」をもじったタイトルです。ネタが無かったし、誰も元ネタ知らないだろうとか思ったりw

では本編をどうぞ!


~メモ~
ビル君の防具、アグナ亜種装備です。




第13話 蟹は舞い降りた

「だぁぁああああああッ!クソッ!」

 

 

重いガンランスを抱えて走る砂漠は、クーラードリンクを飲んでいたとしても暑い。雪山で似たような体験をしたばかりじゃないのか。

 

 

ズドォン!

 

 

すぐ後ろに尖った骨角が突き出た。現在、たまたま遭遇したダイミョウサザミと交戦中。俺とアイルー達は角からの攻撃から逃げるために、砂漠を駆け抜けている。

 

 

ズドォン!

 

「ニャー!ニャー!」

 

「走れ走れ!今は走れー!」

 

「あ!ご主人!ダイミョウサザミが砂の中から出てきたニャ!」

 

「よぉし!みんなは隠れて待機していろよ!」

 

 

砂から出始めて隙だらけの腹にジェネシスの拡散砲撃を2発発射。堅い甲殻がわずかに軋む音があった。大きく一歩後ろに跳び、全弾リロード。

 

 

「ギィィィィィイ!」

 

 

両手を高らかにあげてダイミョウサザミが俺を見た。そして近づきながら頑丈な右盾爪を振り下ろす。俺はそれを盾で受け止め、腹部を銃槍で突いて砲撃。ズドン!と甲殻の一部を焦がすが効果は見られない。ダイミョウサザミは反撃に前進して巨体を叩きつけた。

 

 

「ぐあぁッ!」

 

 

さすがにぶっ飛ばされた。無防備な腹に体当たりを受けて、予想以上のダメージに意識がかすむ。あお向けに倒れているのか、太陽が妙に綺麗に輝いている。

 

 

ドサッ…!

 

「ううぅぅう…?」

 

 

ぼんやりとした意識がはっきりした目に入ったのは、落ちてくる蟹。蟹。蟹…?

 

 

「やぁぁあべぇ―――!」

 

 

俺は手足をバタつかせて後ずさりをした。砂地で思うように動けずにやたらと焦り始める。

 

 

ズドム!

 

 

足元に衝撃が走る。なんとかギリギリに避けることが出来た。ダイミョウサザミが落ちる轟音が響くと、着地の風圧と飛び散る砂に襲われた。

 

 

「だぁっ!砂が口に入った!蟹が跳ぶんじゃねぇよ!」

 

「ご主人!大丈夫かニャ!」

 

「ああ、ありがとう。」

 

 

リリーが手を差し伸べ、俺を立たせてくれた。身体中の砂を、はたいて落してからリロード。落下攻撃後でダイミョウの体勢が崩れている間に、俺は腹部へ向けて銃槍を突き出し、2回、3回と突く。

まだやれる!俺はガンランスを構え、砲撃を放った。

 

 

ドカン!!

 

「ん、な!?」

 

 

タイミング良く堅牢な両盾爪のガードで砲撃が防がれた。さすがの竜撃砲でも有効にならないだろう。ならば

 

 

「リーーーーーリーーーーーーー!!!!!」

 

「了解ニャ!みんな行くニャ!」

 

「ニャーーン!」

 

 

ダイミョウサザミを取り囲む様にリリー含めアイルーたちが地中から飛び出し、一斉に小タル爆弾を投げつけた。

 

 

ドカン!ドカン!ドカァン!

 

 

爆発音に驚いてダイミョウサザミはガードを崩してダウンした。俺はその隙に後ろへ向かって、モノブロスの頭蓋骨に登った。

 

 

「お前の弱点は中だろ?悪いが撃ち砕かせてもらう!」

 

 

俺は思いっきり目の空間の中へ銃槍を突っ込み、砲撃、砲撃。リロード、砲撃、砲撃!リロード。

 

 

「倒れろォーーッ!」

 

ドッガガン!!!!

 

 

フルバーストの攻撃にやっと崩れ落ちた。頭蓋骨の中からは蟹の焼ける匂いと、火薬と煙の匂いが入り混じって、なんともすばらしい!

 

 

 

 

予定よりもだいぶ遅れてアイルー村に到着した。俺達が抱えたダイミョウサザミの素材に砂漠のアイルー達は感動し、早速交易市場が開かれた。砂漠のアイルー達にとってもモノブロスの角は貴重なようで場は良く盛り上がり始めた。

 

 

「ご主人。こっちのハンター、サンドさん(オレンジ)がこの前の事を知ってるらしいニャ!」

 

「ありがとう、リリー。

 はじめまして、サンド。俺の名前はビル。よかったら以前にここらで現れたイビルジョーについて話してくれないか?」

 

「イビルジョー 、ニャ?」

 

 

ああ、そうか。旧大陸住いのアイルーでは名前を知らないはずだ。俺は出来る限り特徴を話や絵で説明をすると、「それなら知っているニャ!」とサンドは答えた。

 

 

「砂漠で採取をしていた時ニャ。とっても大きな声を上げてアプケロスを追いかけていたんだニャ。オレは他のみんなにソイツを見張っていてもらって、急いで近くの村人に知らせに行ったんだニャ。」

 

「村人?アイルーの?」

 

「いや、この時期はオアシスの近くに移り住む人間達の村があるんだニャ。そこへ行ったんだニャ。」

 

「砂漠の村人か。その後は?」

 

「近くにティガレックスがいたから、みんなで石とか投げて連れて会わせたニャ!その時のオレたちの活躍は、ハンターさんにも引けを取らない位ニャ!」

 

 

確かに素晴らしい活躍だ。サンドや他のアイルー達の活躍が無かったら、下手すると村は……。

 

 

「ご主人?どうしましたかニャ?」

 

「リリー。その村に俺は行ってみるよ。

 サンド。その村の場所を教えてくれ。」

 

「任せろニャ。」

 

 

 

昼を過ぎでも、まだ暑い。サンドに記されたポイントを頼りに岩山を歩くと、照り返す熱でいつも以上に辛い。俺の隣にはリリーが険しい道のりに悪戦苦闘しながらもついて来ている。俺が砂漠のアイルー村を出る時に、他のアイルー達に了承を取って一緒に来たのだ。

 

 

「リリー。付いてこなくても良かったんだぞ?」

 

「ニャニャ。ボクはご主人のオトモニャ。ご主人が行くニャら、ボクだって行くニャ。」

 

 

本当に良いオトモを持ったものだ。俺は嬉しさと誇らしさで岩山を進んだ。

 

山頂に近づいた頃に鼻を突く様な異臭が漂ってきたので、俺は布をリリーの口元に巻いた。臭いの成分はモンスターのフン、銀色杏、あと何かの炭に薬草系が少々だな。たしかサンドが、モンスターが近づかないようにしていると言っていたから村が近いのだろう。

 

 

「よっ…、と。」

 

 

山頂は大きな広場になっていた。ただ天井のように適度に突き出た岩によって出来た影の下に三角錐のテントがいくつも立っている。昼間でも周りで燃えている松明がこの臭いを出しているのだろう。この場に来てから、いっそうと臭いが強くなっている。

 

 

「こんにちはー!」

 

 

村の見回りをする屈強な大男が、手を振りながら野太い声をかけてきた。装備は村特有の物なのだろう、ダイミョウサザミの盾爪をそのまま使った盾や、何かの骨で出来た槍と防具を装備している。俺は挨拶をしながら頭防具を外し、ギルドカードを見えるように手で掲げて村へ近づいた。

 

 

「ハンターさんですね。なにかトラブルでも?」

 

「少し聞きたい事があって来たんです。よろしいですか?」

 

「では村長の所へお連れしましょう!」

 

 

予想外にもあっさりと通してもらった。村中央部にある円柱型の大きなテントへ進むと「中でお持ちください」と大男が入口の布を上げた。俺は「ありがとうございます。」と中へ入ると

 

 

「動くな!」

 

「…あれ?」

 

 

テントの中にいた男数名に槍を顔面に向けられたので、ゆっくりと両手を上げた。こんな状況に陥ると、返って何故か冷静になる。俺はゆっくりと槍を向ける男たちを眺めた。人数は4人、全員怒りと恐怖が入り混じった様子で睨む。息遣いも荒い。あ、コラ。右から2番目の男、あんまり槍を押すな。顔に刺さるだろ。

 

 

「や、止めてくださいニャ!皆さん!ご主人は悪いハンターさんじゃニャいのニャ!」

 

 

俺は「リリー。」と落ち着くように声をかけた。俺が大丈夫なのが分かってくれたのかリリーは「ニャー…。」と鳴いて黙った。

 

 

「お前さんは何しに来たんだ?聞きたい事があると言ったな。」

 

 

聞き覚えのある野太い声が後ろから来た。先程の大男がテントにある椅子に座り、やはり俺を睨む。だが他の4人とは違って幾分かは落ち着いているようなので、俺はとにかく説得しようと質問に答えた。

 

 

「俺のポーチに雑誌がある。取っていいか?」

 

「妙な動きをするなよ。」

 

 

俺はゆっくりと慎重に、刺激しないようにアイテムポーチに丸めて入れた週刊誌を取り出し、大男に渡した。

 

 

「栞を挟んである。」

大男がページをパラパラと動かすのを見ながら説明を始めた。

「沼地の村がモンスターに襲撃された記事だ。俺はそれを読んで、この村も生息地が違うモンスターに襲われかけた事を聞いてここまで来た。

 ちなみにこの砂漠に現れたモンスター、イビルジョーは俺が狩った。」

 

「ふー…む。」

 

「他にはー…、この村を教えてくれたのは砂漠のアイルー村のサンドだ。」

 

「もう良いじゃろう?ゼト。」

 

「族長様。」

 

 

テントに入ってきたのは初老の男性。彼が手を軽く振ると、槍を向けていた男たちは槍を下ろした。そして俺の目をジッと見つめ、わずかに微笑むと「彼は大丈夫じゃ。」と周りを見ながら答えた。

 

 

「すまなかったな、ハンターさん。非礼をお詫びしよう。」

 

「いいえ、大丈夫です。ただ話してくれませんか?以前の事、そして今回の事。」

 

「そうじゃな。」

 

 

族長は重苦しそうに口を開いた。思うならばこの村の風習に始まる話らしい。この村は季節によって移動する民族で、寒冷期が来るまでの期間をこの砂漠の岩山で過ごす。そして寒冷期に入る頃には南の温暖なエリアに移る生活文化を何代にも渡って行っている。移動距離も大きいのでギルドの連携も難しく、危険なモンスター(古龍など)が来ない限りは村人や村で焚いている香で対処できている。

そんなある日にハンター数名が訪れた。そのハンターはギルドと連携を持ち、村専属のハンターや街のギルド支部を置けと交渉に現れた。勿論先程の理由もあって、彼らは俺へとは違って丁寧に断った。しかしそのハンター達は数日置きに訪れて、段々と荒々しく迫ってきた。それでも族長は丁寧に断ったが、見かねた若い男達がハンターを追い出した。

 

 

「その時、彼らは私たちに叫んだんじゃ。「何が起こっても知らないからな!」と。」

 

「そして数日後にイビルが現れた、と。」

 

「アイルー村のサンドが支援してくれなかったらと思うと、今でもゾッとするわい。」

 

 

確かにそんな出来事があれば村人が殺気立つのも分かる。

 

 

「何かハンターについて分かる事は?名前とかカードとか。」

 

「すまないな。ゼト、何かあるかの?」

 

「そうですね…。ハンター達のリーダー格が緑色の格好をしていましたね。」

 

「緑色?」

 

「ええ。ですがハンターの防具と言うよりも高価な服装でしたね。」

 

(緑色が好きな貴族かなんかか?)

 

 

ともかく聞きたい事は聞くことが出来た。そのハンター達が関係しているのかはまだ分からないが、何かがありそうだ。

 

 




はい、1話から出し始めたフラグを回収し始めました。


まぁ相変わらずの見切り発車なんですけどねw


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ありがとうございましたー!

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