The Problem Hunter   作:男と女座

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相変わらずのタイトルですが、ホントにネタが切れて…w
映画とかのタイトルをもじれば大丈夫だと思っていたんですけどね~w

では物語は9話、閉じ込められたビルと弥生の運命は?

本編をどうぞ




第11話 Monster Hunter めぐりあい ネコ

ドッカーーン!!

 

 

「良い匂いだ…!」

「良い音ね。」

 

 

俺達は再び地底湖に戻れた。帰りの水路への道は硬い岩に塞がれている以上、わずかな可能性のある地底湖を選んだ。ガノトトスが出入り出来るなら地上の草食竜を狙いに行くだろう。ならば地図を描くついでに脱出できるかもしれないと期待があった。が…

 

 

バシャン

 

「ビル、どうだ?」

 

「いやダメだぁ。水中の洞窟も完全に塞がっている。」

 

 

あっさりと期待が潰えた。まぁ洞窟内で岩に潰されなかったんだ、まだ俺達は“達人のドクロ”になるべき運命ではなさそうだ。あのガノトトスは、天井から落ちた鋭い鍾乳石に身体を貫かれて息絶えていた。

 

 

「お騒がせなヤツだったな。」

 

「そう言うな。一応、俺達がお邪魔した様なものだし。痛みわけだ、痛みわけ。ごめんな、ほんと。」

 

 

そう言っていないと状況にやられそうになる。さぁて次は、脱出の手立てを考えなければならない。食料は多少あるが、その期間で助けが来るわけはない。幸いにもグレートピッケルは持っているので、ちまちまと掘ることは出来る。だが砲撃、特に竜撃砲は危険かもしれない。これ以上崩れたら今度こそ助からないだろう。

 

「じゃ、行ってみる!」と、俺はまず水に飛び込み洞窟へ向かい、多くの岩に塞がれていたところへピッケルを突き刺した。カン!と思った以上に硬い手応え。これは時間がかかるかもしれない事実に、どっと疲れを感じた。

 

 

バシャン

 

「…時間がかかりそうだ。交替で掘ろうか?」

 

「しょうがないわね。じゃ、私が行ってあげますか。」

 

「ありがと~。」

 

 

――――――――――しばらくして――――――――――――――――

 

 

「………ん?」

 

「♪ーー…♪…♪ーー……。」

 

「おはようさん。」

 

「起きたか、ビル。気分は?」

 

「柔らかい枕が欲しい…。」

 

 

弥生は挨拶を済ますと再びハミングを始めた。掘らないで暇そうにハミングしている事は、この際は目をつぶろう。俺を起こさないように気をつかってくれているんだと信じたい。

日の光が分からない以上、思い出しながら今の時間を考え始めた。フリューゲル達と別れて洞窟に来たのが午後。その後、閉じ込められて脱出しようと作業したのが、午後~夜中。手持ちのこんがり肉を食べて就寝。寝起きの悪い俺は、オフなら朝食と昼食をセットで取る。腹の空き具合を考えて昼前(10時半)だな。

 

大体の時刻の予想はついたのは良いものの、完璧に状況は悪い。手持ちの火薬も少なく、あるのは辺りを照らすチャナガブル製のランプと肉焼きセット。

 

 

「あーーー、砂漠に行きてぇーー…。」

 

 

俺はぼやきながら大の字になって再び寝転がった。身体中にまとわり付く、このジメジメとした湿気を好き好む人間はあまりいないだろう。キツイが、乾ききった砂漠の空が懐かしく思えるとは思ってもみなかった。

 

 

「ガノトトスの肉を焼いたわ。食う?」

 

「お前は順応し過ぎだろ。」

 

「良くても悪くても状況を楽しむのが私の持論だ。」

 

 

どんな状況でも腹は減る。弥生が渡してきたのを手に取り食事にした。ガノトトスの肉を食うのは初めてだ。肉が少々硬いが、味は白身魚のようにあっさりとした味わい。ある意味、弥生の方がトレジャーハンターは合っているんじゃないかと思えてしまう。

 

 

「気楽だなー。俺は諦めんからな。」

 

「まぁ私も助かりたいんだが、街へ帰ったら弾けないんだ。なら死ぬまで弾いていたいわね。」

 

「ご立派です。俺はまた食休みしたら掘るかな。」

 

「なら特別に弾いてやろう。何かリクエストは?」

 

「お前の暗ったるいハミングで滅入ってんだ。陽気な曲にしてくれ。

 あ、そうだ。『ハンターロック』。弾けるだろ?」

 

「私を誰だと思ってる?」

 

ギュイィィィイィイィン!!!

 

 

弥生は笑ながらヴォルガニックロックを弾き鳴らした。ハンターロック、いつの間にか広まり始め、現在はハンターの応援歌としても知られている歌曲。洞窟内に音が反響して、ただでさえ大きな音なのに鼓膜が破れそうな大音響になる。

 

 

「イィィィィィィイイイイェヤャャャァアアアアアアアア!」

 

 

いつものスイッチが入った。テンションの上がった弥生は、気持ち悪くならないのかと心配になる程に頭を振り乱す。いつもの事ながら、見ている俺が気持ち悪くなる。だが弥生の弾き鳴らす音に次第と俺も高揚し始めた。

 

 

「立て、ビル。

 踊れ、ビル!

 唄え、ビル!!」

 

「よっしゃぁあ!」

 

 

とりあえず曲が終るまで付き合おう。その後に脱出を考えれば良い。先程までの暗い気持ちだったのが、嘘の様に高揚している。俺も随分と弥生の曲に染まってしまったようだ。立ち上がって弥生の隣で歌い始めた。

 

 

「♪ 年がら年中狩っては生傷作るのさ!」

 

「♪それでも狩り続けるのさー!」

 

ジャン!ジャジャジャン!ジャジャャャャャャャャアアアアアアン!

 

 

「「♪やめられない ハ・ン・ターーーー!」」

 

「ニャ!ニャ!」

 

「まだまだ行くぞ!ビル!?」

 

「任せな!」

 

「ニャァア!!」

 

 

 

――――――――そして小一時間後――――――――――

 

 

「サァンキュー!」

 

ジャァァアァアン!

 

 

お、終わった。曲が終ると同時に座り込んでしまった。終わってから身体中にじんわりと広がる疲労感が、どれ程に体力を消耗したのかわかる。

 

 

「ニャ。もう終りかニャ。」

 

 

俺はぜぇはぁしながら

「アイルーの…体力は…ある意味……ハンター以上…だな。」

と答えた。

 

 

「私は良いわよ。リクエストがあるなら死ぬまで弾き続けてあげるわ!イェヤァ!」

 

「やったニャー!」

 

 

すっかり弥生とアイルーは楽しんでいる。地下に閉じ込められているというのに、随分と能天気な奴らだ。

 

 

「―――って待てい!」

 

「ニャ?」

 

「何だ、ビル。」

 

「アイルー!アイルーがいる!な、何でココに!?」

 

「ニャ?

 スゴく楽し気な音が聴こえたから来たニャ。」

 

「ありがとう。なら期待に応えてあげるわ!」

 

「お前は少し黙ってろ!」

 

 

弥生もよく考えて欲しい。俺達が踊り始めた時、このアイルーは居なかった。しかし途中からアイルーは楽し気に参加していた。ならば

 

 

「君はどこから来たんだ?」

 

「掘って来たニャ。」

 

「ほ、他にハンターとかは?」

 

「居ないニャ。でも仲間は大勢いるニャ。」

 

「仲間?」

 

 

俺は弥生の顔へ目を向けると「さぁ?」と言う様な顔で返した。

 

 

「あ、居たニャ!はぐれたら危ないニャ!」

 

 

聞き覚えがあるアイルーの声がした方へ目を向けると驚いた。

 

 

「あれ?ご主人。」

 

「リリー!リリーじゃないか!久しぶり(2話以来)だな。どうしてここに?」

 

 

休暇中のオトモアイルー、リリーが数匹のアイルーを引き連れて現れた。他のアイルー達も俺達を見て「ハンターさんニャ。」「リリーさんのダンニャ様かニャ?」などと後ろで会話をしている。

 

 

「どうしても何も、ボクらの村が近くにあるんニャ。ボクはそこでハンターとして働いていて、クエストでここに来たんニャ。」

 

 

そういえば聞いた事がある。アイルーは独自の村を築いて発展し、交易物を得る為にモンスターに挑んだりすると。まさか休暇中にアイルーの村でハンターをしていたとは、少し鼻が高い。

 

 

「ご主人こそ、どうしてここにいるんだニャ?」

 

 

俺は手書きのマップを見せながら事情を説明した。洞窟を探索し、ガノトトスと戦い、洞窟が崩れて出られず、弥生と大合唱。その音にリリーの仲間が釣られて飛び入り参加したと事細かく丁寧に。

 

 

「つまり閉じ込められたんだニャ?」

 

「ああ、そうだ。」

 

 

「「「「「「「カルチャーショック!」」」」」」」

 

 

「え?カル…え、何?」

 

 

一斉にアイルー達が叫んだので言葉を失った。カルチャーショック、文化的驚き?

 

 

「コレはボク達が驚いた時に言う合言葉みたいなヤツニャ。」

 

 

「へぇ。」

アイルー独自の文化に俺の方がカルチャーショックを覚える。こういった驚きや感動がアイルー達の文化の発展に繋がったのだろうな。

「で助けてくれないか?」

 

「お安いご用ニャ!

 皆、ハンターさん達の為に穴を掘るニャ!」

 

 

リリーの掛け声に他のアイルー達は「ニャー!」と応えて洞窟の壁へ一斉に穴を掘り始める。そしてわずか数秒で大きな穴へと広がった。

 

 

「さ、また崩れる前に出るニャ。」

 

「ありがとう。行こう、弥生。」

 

「ああ。」

 

 

 

木々が生い茂る森に出た。久々の太陽の光が眩しい。もっと喜びたいところだが、目に入る光の刺激が強くて痛い。

 

 

「少し行けばボク達の村があるニャ。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

 

こうして俺達はリリー達のおかげで脱出することが出来た。しかしアイルー達の村か。噂話程度にしか聞いていない場所へ行くと思うと、俺は不安と興奮が高まっていた。

 

 

 




というわけで、アイルー村に行きます。スピンオフ作品でもありますから、前々から良いなと思って考えていました。ビル君たちが2頭身になるのは、どうかと思いますけどねw


これから前後編になるような大きな話を、そろそろ書こうと思ってますのでお楽しみに。


ご意見・ご感想、お待ちしております。閲覧ありがとうございました!




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