The Problem Hunter   作:男と女座

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いきなりピンチ?な主人公ビルくん。
旧大陸の雪山にこんなモンスターと、最初からやってますがよろしくお願いします。

~メモ~
旧大陸⇒MHP2G以前及びMHFの舞台の大陸
新大陸⇒MH3、P3の大陸




The Problem Hunter
第1話 ビル 怒りの脱出


俺は走り続けていた。

昼過ぎだというのに旧大陸の雪山の激しい吹雪は夜と思わせる程に暗く、露出した顔面を雪が痛めた。

マフモフ装備の暑さの中でガンランスの盾や荷物、更には負傷したハンターを抱えて走るのは辛い。時折顔に当たる、臭く温かい物は血なのだろうか?顔を拭きたいところだが後ろから今も追って来る大型モンスターを考えると、そんな余裕はない無いほどに切羽詰まっていた。

 

 

そもそも間違いは…ポッケ村に里帰りした時、村長から新米ハンターの捜索依頼を軽く了承した所からか?装備をもっとよく考えずにマフモフ装備や土産物の真ユクモノ銃槍にした所?新大陸を越えて来たらしいモンスターの最後の目撃情報と雪山の近さから推測しなかったからか!?

 

 

「おわっ!?」

 

 

ズズン!とすぐ後ろで地面が揺れた。危うく転倒しそうなのを堪え、また一気に走り出す。その際の衝撃でも腹部に受けたのか「あ、あれ…?」と荷物は間抜けな声を上げながら目を覚ました。今すぐ放り投げたいが我慢した。

 

 

「う、うわああぁぁああ!?」

 

 

間抜けな叫び声に、放り投げたくなる思いをこらえて俺は叫んだ。

 

 

「追われてるのは理解しただろ!あの洞窟に行くから速く閃光玉投げろ!!」

 

 

 

 

 

無事に逃げられた俺達は、山頂付近の小さな洞窟の中、残り少い薪で焚き火を灯して暖をとった。

 

 

「血止めは出来たか?」

 

「はい。すみません…、ビルさん。」

 

 

出血が激しかった様だが、幸いにも手持ちの道具で手当てが出来た。

ちなみにビルとは俺の名前だ。今頃はポッケ村の温泉に浸かっている頃だったろうに…。泣きたくなるが、空腹では話にならない。アイテムポーチから取り出して、腹しのぎに食べようとするホットミートが、最期の食事にならないと良いんだが…。

 

 

「あのモンスターは何なんですか?」

 

「狂暴竜イビルジョー」

 

「イビル…ジョー?」

 

「知らなくて当然だ。この大陸には生息していない筈だったんだがな。食料を求めて来たのかもな。……それとも………。」

 

頭に?を浮かべてコチラを覗きこむ新年の視線に「いや、なんでも」と返して一応説明を続けた。

 

「本来ならプロから接触が許される獣竜種だ。」

 

「危険って事です…よね?ボクも出会い頭に尻尾の一撃で飛ばされて…。」

 

「お前さんは運が良い。喰われる前に俺が見つけたんだからな。」

 

笑うと思ったが、新米は全然笑わなかった。むしろ顔が凍り付いている。…まぁ話題を変えるか。

 

「ティガレックスと縄張り争いをしていたらしい正体不明のモンスター。このニュースは知っていたか?」

 

「はい。ティガレックスが勝利したらしいですけど…。」

 

「問題は遺体が無かった事。ティガがイビルを倒してくれたら良かったんだが、アイツの食欲は底なしだからな…。この雪山まで来ちまったようだ。」

 

「あ!まさか僕のターゲットのフルフルは!?」

 

「…………。巣の洞窟に“食べ残し”なら見つけたが?」

 

「そんなァ…昇級試験だったのに…。」

 

イマイチ事態が飲み込めていないヤツに少し怒りが込み上げた。

 

 

「…俺は閃光玉投げろと言ったよな?でお前さんは持ってないから、「俺の鞄から出せ。」て言ったよな?」

 

「はい…。すみません。」

 

 

流石に謝った。まぁ事態の悪化の原因を理解しているようだ。

 

 

「でお前さんは散々テンパって何を投げた?」

 

「あ、貴方の武器…です。」

 

 

そう、今の俺には武器がないからだ。しかも当ててすらいない。急いで助けに入った結果がコレだよ…。

 

 

「お前さんはガンナーか。」

 

「はい、パワーボウを使ってます。」

 

「だよなー。下位だよなー。」

 

 

明らかに火力不足だ。せめてもう少し火力があれば援護には使えそうだったが…。

俺の落胆っぷり見たせいか、本日の濃厚でイレギュラーな狩猟体験に心が折れた、といった感じだ。流石に俺も単独で――もちろん新米を当てにしてない―─イビルは少しキビしい。

 

 

「もう…諦めて何処かに行きましたかね?」

 

 

「無理」と怒りを込めつつ、俺は淡々と続けた。「相手はもうお前の匂いを覚えてるだろうな。手負や獲物って事、俺がお前にガンランスを落とされた事もだな。

 

顔が一気に冷めるのを見ただけて心情が分かる。俺は俺で武器が無いから似た様な心境だと思うが。

 

 

「下山するには洞窟か崖を降りる道。だが崖は雪崩れで通れそうにないから…?」

 

「あのイビ…ルがいた場所ですか?」

 

「俺の武器もな。」

 

 

相手は「根に持ってるな。」と思っているんだろうが構わなかった。

土産物のガンランスではあるが、今は頼れる唯一の武器。拾えると心強いが、イビルに遭遇する可能性を考えると洞窟の安全地帯から出たくなくなる。

 

 

手持ちの薪を使い果たした頃、俺は覚悟を決めて洞窟の外へ出た。救援が来るかと少しは期待していたが望みが絶たれた以上、自分を頼りにするしかない。

生と死の狭間へ向かうと思うと身体全体がゾクゾクと震える。俺は鼻先にガンランスの砲撃の薬莢を当てて。思いっきり息を吸った。

 

この香りは良い…。

 

俺の身体中に火薬の香りが廻るように、勇気と興奮を与えてくれる。身体の震えは大事な部分へ向い、熱く鼓動する。まだ俺は生きたい。

 

 

「さ、行くか…。」

 

 

 

 

俺達は慎重に行動した。

吹雪の白闇の中で目を凝らし、少しでも異常が無いか確認して進んだ。谷間の風が強く吹くとイビルの咆哮を思わせ、新米が何度か武器を構えた。

 

下山する為、洞窟への拓けたエリアに入ったが相変わらず吹雪の白闇で先が見えない。

急に白闇を晴らす突風が吹き抜けた。俺は咄嗟に空いている右手で、アイテムポーチに手を突っ込んだ。突風の中に独特の異臭が混じっていた。

 

 

「うわぁああぁあッ!!」

 

 

またもや間抜けな声を上げた。晴れる白闇の中、洞窟の前にはイビルが立ち塞がっていた。

 

喜びか、怒りか。イビルが俺たちを見つめて高らかに咆哮する。俺の後の馬鹿が狼狽えて何か叫んでいるのが、ヤケにハッキリと聴こえた。

 

 

―――――ボゥッ!

 

 

新米が慌てて、俺が渡しておいた閃光玉を距離があるにもかかわらず投げやがった。イビルには光が届かずにピンピンしていたが、足元に鈍い光が反射した。

 

 

「アレは―――!」

 

 

ハッとして俺はイビルに走った。イビルは俺を迎撃するかの様に、器用に大きな雪玉を飛ばす。

放物線を描いて向かう雪玉の下の僅かな空間へ転がって回避。

(あぶねぇな。)

足に雪玉がかすめてゾッとした。起き上がると同時に、閃光玉を投げた。

 

 

―――――ボゥッ!

 

 

閃光が輝くと同時に、俺はイビルの腹下に滑り込んだ。閃光玉の光で怯んだイビルへ急ぎ、腹の下に滑り込むと念願のガンランスを取り、中の弾丸を確認した。中部に問題はないようだ。新米が放ったパワーボウの矢が弾かれ、俺の上に降ってきた。貫通力の高い弓矢だが、イビルの体を貫く事は出来なかった。まぁ期待はしてなかったが。

 

 

「ボォオオォォオ…!」

 

 

低い唸り声が俺の焦りを駆り立てる。俺は寝たままの体勢でイビルの腹部へ祈りを込めて引き金を引いた。

 

 

(壊れていないでくれよ。)

 

ズドォン!

 

 

砲撃の衝撃が体を伝わり、地面を揺らすがイビルには効果が見られない。残りは2発。

 

 

 

「怯め!いや倒れろ!むしろ死ね!」

 

ズドォン!

 

 

すがる気持ちで砲撃を撃つ。こんな事になるなら無茶をするべきじゃなかった。

 

 

「怯めっての!倒れて!お願い死んで!!!」

 

カチャン!

 

 

弾切れの音が焦りを募らせる。急いでクイックリロードをし、引き金を顎下へ向けて引いた。

 

 

ドカンッ!

 

 

イビルが砲撃を受けて怯む。直後、俺に嫌な予感が身体中を駆け巡った。イビルの全身の筋肉が赤黒く隆起し始めた。

 

 

「ヤバい!来るッ!!」

 

 

盾を顔に押し当てる様に構える。真上からの怒りの咆哮を盾でなんとか防げたが、大地はビリビリと揺れ動く。自分で狙った事とは言え、流石にコレは恐怖とか後悔に震えた。頭の中の俺は「こんな作戦やっぱ無茶!逃げた方が良いって!」と危険信号を最大に振り鳴らす。

 

 

「黙ってろ!俺の読み通りなんだからよ!!」

 

 

怒り状態のイビルに左脇腹には、怒りと共に吹き出した鮮血。まだ新しい大きな傷痕が現れた。俺は渾身の力を込めて、ガンランスを傷口に突き刺す。激痛の一撃にイビルも体を曲げて怯んだ。

 

 

「――竜撃砲、発射!」

 

ドガァァァン!!!!

 

 

砲撃とは比べ物にならない爆音が響く。竜撃砲の芳しい煙の中でイビルは緩かに崩れ落ちた。

 

 

(こんな無茶するモンじゃないな…。)

 

 

むせぶ様なイビルの臭い血や肉片の雨の中で、全身の力が抜けて大の字に寝てる俺は冷静に思った。

 

 

 

ポッケ村の村長からは多大な感謝と報酬を与えられた。土産のガンランスは新大陸の技術を楽しみにしていた武器屋の兄さんに渡せたが、イビルの臭いがやたら鼻につくのか感謝しつつも引き笑いだったが。

新米は集会場に行った。別れ際には何度も感謝に頭を下げられた。良いハンターになってほしいものだが……、まぁ……二度と組みたくはないが。

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?
ラストのトドメのシーンしか浮かんでいなかったので大変でした。
次回は仲間も登場です。

文字のミスやご意見、ご感想などがありましたらお待ちしております。
どうもありがとうございました!


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